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当院で診療している筋疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーやベッカー型筋ジストロフィーが最も多いですが、福山型先天性筋ジストロフィーを代表とする先天性筋ジストロフィーや先天性ミオパチーを含めて全ての筋疾患を診療しています。
近年神経筋疾患は目覚ましい治療の進歩により,一部の疾患では治療が可能となってきています。早期診断による早期治療は治療薬の効果を最大限に引き出すことができる可能性が高いです。
そのため当科では早期の筋疾患診断のための遺伝子解析を積極的に行なっており,遺伝子解析で診断が困難な例では、確定診断目的に筋生検(筋肉の一部を採取して検査すること)を行っています。
筋生検は2泊程度の入院で行っていますが、生検翌日に退院できる例も多いです。筋生検は30分程度で終わる小手術で、筋疾患患者への麻酔に精通した麻酔医の管理以下で行えば、殆ど危険のない検査で、生検をしたことによる新たな筋力低下や機能低下は起こりません。
各疾患に対する特異的治療や全身評価を小児神経内科医が,理学療法を小児リハビリテーション科が、定期的な心臓検診を小児心臓内科医が、脊椎の側弯、や関節拘縮,関節脱臼などの整形外科的な問題は小児整形外科医が診療します。神経筋疾患を持つ患者さんの治療を全て院内で集約して行うことができるのは当院の特色です。(通常小児神経内科,小児リハビリテーション科,小児整形外科は同一の病院に揃うことは稀です.)当院で一括して診察・診療することにより患者さんの問題解決を早期に図ることができます。
当科は現在100名以上の患者さんに人工呼吸器の貸し出しを行なっておりますが、これは小児科としては全国でも非常に多い人数であり,人工呼吸器や排痰補助装置などの知識も豊富にあります。人工呼吸器や排痰補助装置の導入時期や人工呼吸器やマスクの選定など必要に応じてゆっくりと相談することができます。喀痰の排泄や肺機能の維持を図る機械的介助咳装置(カフマシン)は、現段階では在宅呼吸器を使用されている方に限り保険適応となっています。幸い滋賀県の大部分の市町では、呼吸器を使用していない方でも臨床的に必要と判断される方に対して、カフマシンのリース助成を行っています。カフマシンのリースも困難な方にはアンビュバッグ(携帯式の蘇生マスク)を購入していただき、バッグを使用して空気を肺に送り込んだ後に一気に空気を吐いて喀痰を喀出する操作を学んでいただいています。なお、呼吸リハビリに関するマニュアルはこちらのサイトからダウンロード可能です。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、まだ根本的な治療法はありませんが、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の内服で筋力増強や運動機能の改善があることが高いエビデンスをもって示されており、米国ではステロイド治療を積極的に行うことがガイドラインで推奨されています。
また2013年にはステロイド(プレドニゾロン)がデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対して世界に先駆けて保険適応となりました。当院では、ステロイド治療を積極的に行っています。またデュシェンヌ型をより軽症であるベッカー型に変える核酸医薬が出現しており,特定の遺伝子変異のある患者さんに適応があります。これに関して、ご自身の遺伝子変異が治療対象となる治療法の情報を得ることができるよう、国立精神・神経医療研究センターが中心となって行っているRemudyという名の患者登録制度がありhttp://www.remudy.jp/ 、登録することをお勧めしています。
またウイルスベクターという毒性を除いたウイルスの一部を用いた遺伝子治療も可能となってきており,日本でも使用可能となる予定です.この新たに始まる予定の治療も滋賀県下では当院が中心となると考えています。
同様に福山型先天性筋ジストロフィーも登録制度があり、こちらは一般社団法人日本筋ジストロフィー協会が運営する「神経・筋疾患医学情報登録・管理機構」が登録を行っています。
各疾患の治療やケアは基本的には診療ガイドラインに基づいて行われますが,昨今の医学の進歩にガイドラインが追いついていない場合もあります。当科は神経筋疾患の専門家として最新の診療を行います。