人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
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令和2年(2020年)2月(第142号)
インターネットは情報の収集や伝達など、日常生活を送る上で今や欠かせないものとなっており、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)や無料通信アプリなどの普及によりコミュニケーションの場としてもますます広がっています。
しかし、インターネットはとても便利である一方で、自分の名前や顔を知られることなく情報を発信することができ、また情報を一瞬に大勢の人に伝えることができるなどの特性があります。これにより、近年、他人の個人情報を流したり、誹謗中傷や無責任な噂を広めたりと、インターネットを悪用した人権侵害や犯罪が多発しています。
今回のじんけん通信では、昨年12月に開催したインターネット人権啓発研修会で講師を務めていただいた(一社)ソーシャルメディア研究会 チーフ技術指導員の竹内義博さんのお話の内容も引用しながら、インターネット上のトラブルから子どもたちを守るために必要なことについて、お伝えします。
自分の携帯電話やスマートフォンを持つ子どもは年々増えています。また、携帯ゲーム機や携帯型音楽プレーヤーなどからインターネットに接続することもできることから、利用者は年々低年齢化し、インターネットは子どもたちにとってもますます身近なものとなっています。
しかし、一度ネット上に流出した情報を完全に削除することは難しく、一度問題が起こると取り返しのつかない事態に発展し、子どもたちのその後の人生にも深刻な影響を与えてしまう可能性があります。子どもたちを「加害者」にも「被害者」にもしないよう、インターネット上のトラブルを未然に防止することは社会全体にとっても大変重要な課題であると言えます。
ここで、内閣府が平成31年3月に発表した「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要版)」より、子どもたちのインターネットの利用の状況を見てみましょう。
青少年のインターネットの利用率は93.2%となっており、利用する機器は、スマートフォン(62.8%)、携帯ゲーム機(30.3%)、タブレット(30.2%)の順に多くなっています。
子どもが自分専用として利用している機器は、学習用タブレットや携帯音楽プレイヤー、子ども向けスマートフォンが多いですが、高校生になるとスマートフォンを利用している子どもの99.4%が自分専用の機器を持っています。
また、低年齢層(0歳~満9歳)の子どもでも56.9%がインターネットを利用しており、年齢が高いほど利用率も高くなる傾向にあります。インターネットを利用する機器は、スマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機が多くなっていますが、自分専用の機器としては、学習用タブレットや子ども向け携帯電話が多くなっています。
インターネットを利用すると回答した青少年の利用内容を見ると、高校生ではコミュニケーション(89.7%)、動画視聴(87.4%)、音楽視聴(80.6%)、中学生では動画視聴(80.9%)、ゲーム(74.1%)、コミュニケーション(68.2%)、小学生ではゲーム(81.5%)、動画視聴(66.1%)の順に多くなっています。
また、低年齢層(0歳~満9歳)の子どもでは、動画視聴(85.3%)、ゲーム(60.0%)が多くなっています。
このような状況の中、青少年がインターネットに関する啓発や学習を受けた経験は88.7%で、学校種が上がるほど増加しており、 啓発や学習を受けた機会としては、学校や幼稚園・保育園等(97.6%)や、保護者(26.8%)となっています。
一方、保護者の学習経験は76.5%で、その機会は学校や保育園・幼稚園等の保護者会やPTAの会合など (71.5%)、学校等から配布された啓発資料等から(52.0%)となっています。
また、低年齢層(0歳~満9歳)の子どもの保護者の学習経験は58.6%で、その機会としては、学校や保育園・幼稚園等の保護者会やPTAの会合など(36.9%)、テレビや本・パンフレットなど(32.5%)となっています。
インターネットの存在が子どもたちにとって当たり前のものとなっている一方、インターネットを利用した犯罪によって被害を受ける子どもたちの数が急増しています。
平成29年にSNSを通じて児童ポルノや児童買春などの犯罪被害に遭った子どもは1,813人(前年比+77人)で、過去最多となっており、その被害者の51.9%が高校生です。
これら被害に遭った子どものうち、9割以上がフィルタリングを利用していませんでした。平成29年6月に「青少年インターネット環境整備法」が改正され、新規契約時や機種・名義変更時に、販売店などに、青少年確認・フィルタリング説明などの義務が新設されています。契約者である保護者がしっかり説明を受けて、年齢や利用に応じたフィルタリングを設定することが大切です。
また、インターネット(パソコン・スマートフォン等)を使用して行われるいじめも多数発生しており、子どもたちがインターネット上で様々なトラブルに巻き込まれる危険性は、大人が考えている以上に高くなっています。
1.無料通信アプリやSNSなどを使用したいじめ
無料通信アプリでのコミュニケーションをめぐって行き違いからいじめに発展した事例や、無料通信アプリのグループからはずされたり、悪口を書き込まれたりする事例などがあります。
ネットいじめの特徴は、情報があっという間に広がりますが、発覚しにくいことがあります。
2.児童ポルノ・リベンジポルノ
元交際相手などの性的な画像などを、相手の合意を得ることなくSNSやインターネットの掲示板などに公表する行為のこと。
なお、青少年の性的な被害のきっかけは、近年、出会い系サイトからSNS等に変化しています。
3.個人情報の無断掲載
無断で他人の名前や住所、写真やアドレスなどをインターネットに公開することは、プライバシーの侵害になります。
4.デマ・フェイクニュースの拡散
事実と異なる偽りの情報を安易に信じてSNSでシェアした結果、本来無関係な人々が誹謗・中傷を受けることになります。
5.著作権侵害
他人が作成した映像や写真などを無断でネット上に掲載したり、有料配信されている映像や音楽であると知りながら「違法ダウンロード」したりすることは、刑事罰の対象になります。
6.性犯罪
最近、SNSなどを通して知り合った異性により、トラブルに巻き込まれ犯罪にまで発展してしまうケースがあります。
他人の悪口や差別的な内容を書き込んだり、
根拠のないうわさ話を載せたりしたらいけないのだー!
※その他、様々な事例をご覧になりたい場合は、総務省「インターネットトラブル事例集(2018年度版)」もご参照ください。
今年度の研修会では、(一社)ソーシャルメディア研究会チーフ技術指導員((一財)インターネット協会インターネット利用アドバイザー、パソコン教室「ぱそこんる~む123」代表)の竹内義博さんより、「ネット上の人権侵害の現状と対策~増加するSNSトラブルへの対応を中心に~」と題して、子どもたちをインターネット上の人権侵害から守るための対策等についてご講演をいただきました。ここでは、そのお話の一部をご紹介します。
○子どもたちの間では、インターネットの存在は当たり前のもの。ネット上には多くの危険があるが、これからの情報化社会では単に「危険だからネットを使うな」と言うだけでは限界がある。そのため、子どもたちにはネットを「正しく怖がり、賢く使う」ことを教えることが必要である。
○SNSを利用して行われるいじめについて、いじめはよく「早期発見・早期対応」が重要であると言われるが、子どもたちのSNS上でのやり取りは大人の想像をはるかに超える速さで行われており、初期段階での対応は非常に難しい。
○SNS上では例え友達同士のやり取りであっても、不適切な投稿によって取り返しのつかない被害が起きることがあるため、SNSでの投稿の際には次のことに注意することが重要である。
1.友達であっても転載される危険性を認識すること
2.誰が見ても大丈夫な内容かを確認すること
3.一度投稿したものは一生消えないものであることを意識すること
4.投稿前に一度立ち止まってよく考えること 等
○子どもたちの被害を防止するため大人ができること
1.機械の対策: 年齢や利用に応じたフィルタリングを必ず設定すること。
2.人間の対策: 大人がネットの正しい知識を身に付け、子どもと一緒にルールづくりをすること。
なお、フィルタリングは利用率が低く、子どもに頼まれてすぐに全解除してしまう親も多いが、個別のアプリごとに制限・解除の設定をすることも可能なので、子どもときちんとコミュニケーションを取り、安全性を確認して個別に設定するようにしてほしい。
○大切なのは、「ネットはただの機械ではなく、ネットの向こうには人がいる」という意識を持つこと。スマートフォンなどのネットの問題は「デジタルなので難しい」と思われがちであるが、結局のところは一人ひとりの「心」の問題である、ということを忘れないでほしい。
※竹内さんが「インターネット利用アドバイザー」の認定を受けておられる(一財)インターネット協会では、インターネットの利用に関する正しい知識の普及のため、幅広い年齢層に利用されている主要なインターネットサービスの利用方法や注意点などをまとめた資料「インターネットを利用する際に知っておきたい『その時の場面集』」も作成されていますので、ネット利用に関する子どもとのルール作りなどの参考にしてください。
インターネットは決して架空の世界や仮想空間などではなく、私たちの現実の日常生活の一部です。
そのため、インターネット上で起こる数々のトラブルから子どもたちを守るためには、私たち一人ひとりがインターネットやSNSに関する正しい知識を身に付け、ルールを守るとともに、日頃から子どもたちとコミュニケーションをきちんととるようにすることで、困ったときに子どもがすぐに相談できるような環境をつくることが重要です。
竹内さんのお話にもあったように、「ネットの向こうには人がいる」ということを常に頭におき、自分の人権が侵害されたり、他人の人権を侵害したりすることがないよう、配慮しながらうまく利用できるよう、子どもにもしっかり伝えていきたいものです。
インターネット上でトラブルに巻き込まれたら、一人で悩まず、まず、相談しましょう。
全国共通人権相談ダイヤル(大津地方法務局内)TEL 0570-003-110
子どもの人権110番(大津地方法務局内) TEL 0120-007-110
警察総合相談電話「県民の声110番」TEL 077-525-0110
人権施策推進課では、インターネット上の人権侵害をなくすための様々な啓発等の取組を行っています。
◆じんけん通信
○インターネットとの付き合い方を考える~自分も他人も傷つけないために~(前編)(平成30年2月号)
○インターネットとの付き合い方を考える~自分も他人も傷つけないために~(後編)(平成30年3月号)
◆ふれあいプラスワン
○インターネットと人権情報発信はモラルをもって(平成30年9・10月号)
○インターネットと人権(平成28年9・10月号)
◆啓発冊子
これらの冊子も併せてぜひ、ご覧ください。
2月1日~3月18日 サイバーセキュリティ月間
昨今、サイバー空間において国民の個人情報や財産をはじめ、実生活に悪影響を及ぼすサイバー攻撃による被害が深刻化しています。安全・安心な社会の実現のために、サイバー空間の利用者である国民一人ひとりが、意識・理解を醸成し、対策を進めていく必要があります。期間中、政府機関が各種啓発主体と連携し、サイバーセキュリティに関する普及啓発活動を集中的に実施します。
4日~10日 滋賀県がんと向き合う週間
2月4日の世界がんデーに世界各国でがんに関する啓発行事が行われることから、滋賀県では、2月4日から10日を滋賀県がん対策の推進に関する条例で「滋賀県がんと向き合う週間」と定め、「県民および事業者の間に広くがんに関する理解と関心を深めるとともに、がんの予防、早期発見等に関する自主的な取組への意欲を高める」こととしています。期間中、がんに関心を持っていただけるよう講演会などのイベントや広報を行います。滋賀県ホームページ「がん情報しが」
20日 世界社会正義の日
国際連合は平成19年(2007年)の決議で、この日を制定しました。平成7年(1995年)の「世界社会開発サミット」で採択された宣言の内容である貧困の撲滅や、男女同権、労働者の権利について目標達成に向けた取組の促進を加盟国に働きかけるもので、啓発活動などが行われます。
21日 国際母語デー
言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的とし、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が平成11年(1999年)に制定しました。
自分の気持ちも、相手の気持ちも大切にして
楽しく、そして安心・安全にインターネット
を使ってほしいのだー!