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平成30年(2018年)2月(第118号)
近年、インターネットやスマートフォンの普及により、知りたい情報を誰でも簡単に手に入れたり、世界中の人と気軽にやりとりすることができるようになりました。
その反面、こうした利便性は気が付かない内に犯罪に巻き込まれたり、間違った情報や人権を侵害する書き込みが簡単に拡散するなどの危険性をはらんでいます。
最近ではスマートフォンを所持する小中学生も増えており、それにより、子どもたちの間ではSNSを利用したいじめ等の問題や犯罪被害が深刻化しています。
そこで今回は、インターネットの適切な利用について考えていただくため、昨年12月に開催したインターネット人権啓発研修会「インターネットと人権~子どもを守る大人の役割~」でご講演いただいた、京都ノートルダム女子大学心理学部 教授の神月 紀輔(こうづき のりすけ)さんの講演内容を紹介します。
~自分も他人も傷つけないために~(前編)
内閣府が毎年公表している、「青少年のインターネットの利用実態調査(外部サイトへリンク)」によると、小・中・高校全ての年代で、インターネットを利用できる機器を持っている人が年々増えています。特に、小学生のスマートフォン所持率はどんどん上がっています。
利用内容を年代別に見ると、小学生はゲームと動画の視聴が多く、中学生になるとそこにコミュニケーションが入り、高校生になるとコミュニケーションが1番多くなっています。いわゆるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使いながら、ネット上でコミュニケーションを取るということが年齢が上がるとともに増えていきます。
家でインターネットを使う時間は、小・中・高校生全体の平均で150分を超えています。夜遅くに塾から帰ってくる子どもたちも含めて150分使っているということなので、多くの子どもたちが寝不足の状態で毎日学校に通っているということも考えられます。
また、赤ちゃんにスマートフォンを見せるためにベビーカーにスマートフォンを固定するホルダーが売れているそうで、周囲を観察すると、ベビーカーの中でゲームをやっている子どもがものすごく多いことに気がつきます。このように、知識がなくてもデジタル機械の操作ができる子どもたちのことを「デジタルエイジ」と呼びます。
近年の携帯情報端末は、知識を持たなくても、誰もが簡単に使えるように作られています。そのため、現在ではインターネットを使うことに対するハードルが低くなって、子どもでも簡単に使えるようになり、何も考えずに適当に入力した訳の分からない情報に子どもたちが触れる危険もあります。
2年前に総務省が出した「未就学児等のICT利活用にかかわる、保護者の意識に関する調査報告(外部サイトへリンク)」によると、0歳児では10%、2歳児では30%近くがインターネットを利用しています。しかし、上に兄弟がいるケースでは利用率が一気に上がり、0歳児のうち、兄弟がいないケースでは4%ほどですが、兄弟がいると20%を超えます。兄弟でなくても、地域のコミュニティーなどでインターネットを使っている子どもたちと一緒に過ごすことで利用率は上がっていきます。
小学生ぐらいからは自分が楽しむために使うようになりますが、それより小さな子どもたちがインターネットを使うのは、外食するときの待ち時間などにおとなしくしているようにスマートフォンで動画を見せられるなど、ほとんどの場合が保護者の都合によるものです。
普段の生活では子どもはいろいろなものに守られていますが、実際にネットの中に入ってしまうと利用者が大人か子どもかは分かりません。大人は子どもを一生懸命守っているつもりでも、スマートフォンやインターネットを渡してしまうことによって、子どもを守れない状態になっているということです。
本来、インターネットは汎用性の高いアメリカ軍の情報通信網として作られました。当然、子どもが使うことは想定されておらず、責任を持った大人が使うことが前提なので、自己責任で利用することになります。しかし、正しい判断力や節度を身に付けていない人が使い始めている現状があります。
相手の話を聞いたときに、頭の中に何が残るかということをいろんな形で2,000人以上に調べた結果、目から入ってくる情報(視覚情報)や口調や話の早さなど(聴覚情報)は頭に残りやすいが、話の内容(言語情報)は7%ほどしか残らないということが分かっています。
つまり、SNSでやりとりするようなメッセージは7%の情報しかなく、残り93%は勝手に頭の中でイメージを補足することになります。社会経験のある大人なら、メールなどを使うときに、どういう風に書けば相手がどう思うかということを想定しながら書くことができます。しかし、小中学生は自分が普段喋っている感覚で書いてしまうので、誤解の応酬になってしまいます。
以前、男子高校生がプロフ(SNSの一種)に「ギターをやる奴にろくな奴はいない」と書いたことに元同級生の少年が腹を立て、その高校生を殴り殺したという事件がありました。正直「ギターを・・・」というのは大した文章ではありません。ただ思春期でカチンときやすい年齢で、また文章からは7%の情報しか得られないという状況で、その書き込みをした高校生がものすごく怒っているかもしれないなどと受け手は考えてしまう。そういった被害妄想により恐怖心が煽られ、事件を起こしてしまうこともあるのです。このように暴行事件にまで発展するのは珍しいケースですが、ちょっとしたことで、相手の悪口を言ったりして相手を傷つける行為が毎日のように行われています。
(次号に続く)
★次号(3月号)では「子どもたちがインターネットを利用することにより引き起こされる問題」と「子どもたちの人権を守るために大人に求められること」と「インターネットの利用にあたって心がけてもらいたいこと」について今号の続編(後編)を掲載します。
誰もが安全にインターネットを利用するためには、「大人の意識改革」と「子どもへの正しい教 育」が必要です。
昨年度実施した人権に関する県民意識調査では、インターネットによる人権侵害について特にどのようなことが問題だと思うかという問いに対して、「他人を誹謗中傷する情報が掲載されること」(60.8%)、「プライバシーに関する情報が掲載されること」(43.3%)、「子どもたちの間でインターネットを利用したいじめが発生していること」(37.3%)という回答が多く選ばれていました。
その結果も踏まえて、県人権施策推進課では、子どもたちにインターネットとの上手な付き合い方を学んでもらえるように、「
」というリーフレットを制作し、県内の新中学1年生に配布するなど、インターネットの利用に関するさまざまな啓発活動を行っています。