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平成30年(2018年)3月(第119号)
今回は前回に引き続き、昨年12月に開催したインターネット人権啓発研修会「インターネットと人権~子どもを守る大人の役割~」の講演内容を紹介します。
子どもたちがインターネットを頻繁に利用するようになった背景や、それによって引き起こされる問題を知ることで、誰もが安全にインターネットを利用するためにはどうしたらよいか考えていただくきっかけとなれば幸いです。
~自分も他人も傷つけないために~(後編)
インターネット上で他人を傷つけるような行為を行っている人は、依存症になっていっているケースがあり、そうした行為により、インターネット上のトラブル(ネットいじめなど)や、犯罪に巻き込まれるケースもあります。
医療機関では、まだこれを病気としては認定していませんが、薬物依存、アルコール依存の「薬物」「アルコール」の部分を「ネット」に変えると症状がピタッとあてはまるため、一部の医師は病気だと考えており、実際に外来診療を行っている医療機関もあります。
ネット依存には2つのタイプがあると言われています。一つ目が、コンテンツ(内容)に依存する場合で、二つ目が繋がり依存です。
ネット依存はさまざまな問題を引き起こします。特に身体面では、視力低下や運動不足、ずっと同じ姿勢で使うことによる腰痛、「スマホ首」などの悪影響があります。さらに、骨密度が落ちたり、エコノミークラス症候群に陥ったりもします。精神面では、夜通し使うことにより昼夜が逆転したり、ひきこもりになったりします。また、学校に行くのが嫌になるので成績低下や遅刻、授業中の居眠りにつながり、高校くらいになると、留年や退学ということも起こってきます。
また、ゲーム依存の子どもは、ゲームの中でお金を使うことに対して無頓着になり、ゲームをやっているときだけ人格が変わるようになります。自分のために使うなら構わないという変な錯覚に陥ってしまって、最終的には他の友達のお金を盗んだりしてしまうのです。そういう事が悪いことだと指摘されると、自分が甘えられる親や家族に対して嘘をついたり、暴言や暴力を働いたりするようになります。それを見た友達がだんだん離れていき、その結果、インターネットの社会に入り込んでいってしまいます。
さらに睡眠障害にも気を付けなければなりません。スマートフォンから出ている光のうちの一つのブルーライトは脳の中の覚せい作用を起こして昼だと思わせるため、夜毛布にくるまってスマートフォンを触っていると、頭の中で昼か夜かが分からなくなってしまうのです。これが睡眠障害で、夜になったら寝るというサイクルが乱れてしまいます。
依存症には基本的になりやすいタイプ・傾向があると言われており、どこかで自分に満足できてなかったり、なにか強いストレスがあったり、家族に受け入れられていないと感じているような人です。おそらくスマートフォンが好きで依存症になっているわけではなく、何か別のところに不足する何かを求めようとしてこうなってしまっているのです。しかし、ストレス解消のための依存というのは、依存によるストレスをまた増やすだけなので、何をやってもストレスが解消できない時には、心療内科や精神科の門をたたいてもらうのも良いのではないかと思います。その人の将来のための一つの手として大事なことなので、その有用性を理解していただきたいと思います。また、もし周りにインターネットに依存している人がいた場合は、依存することで一番失っているものはあなたの時間だということを伝えていただきたいと思います。
依存がひどくなると、他人に対しても攻撃的になります。これがネットいじめにつながります。ネットいじめには誰彼構わず攻撃するパターンや、決まった人を攻撃するパターンなどいろいろなパターンがあります。ネットいじめは大人には分かりにくいものなので、子どもにスマートフォンなどを持たせる場合には、依存しないよう注意しなければなりません。
もし、自分の悪口などを書き込まれたとしても過度に反応してはいけません。反論すると余計に攻撃されるので、書き込まれても多少は静観しておく必要があります。もしこういうことで相談を受けられた場合には、一人で対応するのではなく、必ず複数で対応してほしいと思います。
ちなみに、パソコンでLINEのホームページに入ると、LINE安心安全ガイドというものがあり、実際起こった事例や、困った事例があったときの対処法が保護者向け、子ども向け両方に書いてありますので、一度見ていただければと思います。
ネットいじめは、普段の人付き合いが希薄化することにより、ストレスを解消できない人たちが、インターネット上で言ってはいけない言葉を発したりしてストレスを発散しようとすることで起こります。掲示板などで誹謗中傷を受けた時には削除依頼を出して消すこともできますが、消したことに対する誹謗中傷がさらに出てくる可能性もあります。誹謗中傷は名誉棄損でしか訴えようがないので、警察に相談することが1番だと思います。プロバイダーは、全ての通信を記録してますので、どこで何が起こったが、誰が何を発信したかというのは一目瞭然です。ただ、事件性があるとわかったときに警察と法務局ぐらいでしか開示できないので、そういったところに言うのが良いと思います。
また、最近のネットいじめや誹謗中傷にはプロ集団がいて、ネットいじめの書き込みなどを見つけたときに、なりすましで入ってきて攻撃をしかけてきます。そういう人たちは書き込んだらすぐに姿を消すので、できるだけ早く警察に相談してください。
大津署に聞いたインターネットを使った犯罪で検挙例が多いのは次の4つでした。
・児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律・不正アクセス禁止法・名誉棄損・出会い系サイト規制法 |
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この中でもダントツで多いのは、児童買春、児童ポルノです。昨年児童買春・ポルノ禁止法という法律に、「自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則」というものが新設され、児童ポルノは所持するだけでだめになりました。しかし残念なことに、先生が児童買春やポルノを所持していることが非常に多いです。最近は、女性だけではなく、小学校5~6年生や中学生ぐらいの男性の裸の写真を撮るケースが増えていたり、学校で着替える際に、近所の人に望遠カメラで盗撮されたりするケースもあり、非常に怖い状況になっています。
さらに、画像や動画によるトラブルが非常に多く発生しています。例えばAさんからBさんに画像を送った場合に、実はAさんからBさんには直接送っておらず、AさんがSNSの会社に画像をアップして、それをBさんが見るという仕組みになっています。これが10人のグループになると、送った画像は10枚コピーされて、一人ずつにひも付けされて見られるようになっていきます。つまり、画像をアップした時点で少なくとも1枚以上はコピーされているということになるので、自分のスマートフォンの中にある画像を消してもインターネット上にはデータが残っています。そうと知らずに、恋人と撮った写真等が別れた後に使われてリベンジポルノにあうというケースもすごく増えています。とにかく1回アップした画像や動画を回収するのは無理なので、よほどのことがない限りアップしない方が良いと思います。
インターネット上のコミュニケ―ションだけで彼氏・彼女の関係になっているつもりの子どもがデートDVの被害に遭うケースもあります。多くの場合、加害者は、あまり売れていない芸能人の写真などを使って男性や女性になりすまし、最終的に「彼氏(彼女)なんだから、裸の写真を送れ」と要求してきます。断ると、「好きじゃないのか」などと言葉巧みに迫り、加害者の言いなりになり、写真を送ってしまいます。警察の話だと、小中学生の女子が被害の中心だと聞きましたが、LINEの人に聞くと、20%くらいがこういう交際ではないかと思われるとのことでした。
犯罪被害に遭う小中学生は、面白半分で自分の個人情報や写真を出したり、最寄り駅の写真で住んでいる場所を分かるようにしている傾向があります。また、自分は大丈夫だろうと過信して接触をしてしまい、被害に遭うケースが多いようです。インターネットの中にはこうしていたら大丈夫だったというような情報も多くあり、そのことによって自分は大丈夫だと思い込んでしまいます。
警察が言うには、メッセージを送る機能、人を検索できる機能、プロフィールを公開できる状態の三つの要素がそろえば、絶対に被害は起こるそうです。ほとんどのSNSではこれらができるので、自分でできることはプロフィールの公開をとめることくらいしかありません。自分から外に情報を出すか出さないかで随分とリスクは減るのです。
また、写真には、位置情報がついている場合があるため、悪意を持つ人が写真の撮影場所を読み取る恐れがありますが、子どもたちは写真は写真としてしか見ていないので、そこまでの危機感は抱いていません。なので、ある程度常識を知り、日本語を知り、インターネット利用のリスクについて考えられるようになるまではリアルな友達としっかり交わってもらってから、高校生くらいから情報通信の補助的な手段としてスマートフォンを使うのが良いと思います。
トラブルに対しては、相談を聞いた上で、適切な相談機関へ繋いでくれるワンストップの窓口があれば一番良いと思っています。しかし、ネットいじめや誹謗中傷は警察、被害を受けた子供の心のケアは全国webカウンセリング協会、SNS上でトラブルに遭った子どもたちの相談はSNSカウンセリング協議会という風に、現状では相談するところが少しずつ違います。もしトラブルになった場合は、落ち着いて行動するということが大事です。
インター ネット上でいろんなことに振り回されて、現実世界で充実感がない子どもたちがどんどん増えています。それは普段、人と人との関わりが少ないという状況に原因があると思うので、まずは人と 人との関わりを少しずつでも取り戻していかなければならないと思っています。
また、今、子どもたちがインターネットを使っている状況は、大人が誘導してしまっているところもあるという気がします。大人が一生懸命やっていることを子どもたちはすごくよく見ているので、大人が上手なインターネットの使い方を子どもたちに見せてあげないといけません。
またスマートフォンは包丁と同じだと思っています。一歩間違えれば人を傷つけるもので、しかも自分も傷つく可能性があります。ところが、うまく使えば私たちの生活を豊かにしてくれるものです。包丁を初めて子どもに扱わせるときに、いきなり渡して使わせるようなことは怖くてできないと思います。しかし、スマートフォンは渡して、あとは自分で使えという風になってしまっています。
インターネットの世界は子どもの方が適応が早くて、大人には分かりにくい世界ではありますが、大人も少なくとも興味は持たなければいけないと思っています。そして、大人がスマホ依存になって、ながらスマホや歩きスマホをしているような姿を見せないようにしなければなりません。また、一番困るのは、大人が無関心であったり、放任であったり、人任せであることです。みんなが自分の問題として捉えることが大切です。
子どもたちがインターネットを使う際にはできればルールを作ってほしいです。ルールが作れない場合はせめてパソコンやゲームやスマートフォンを使わない時間だけでも決めてください。
最後に、情報というのは絶対に「送り手」と「受け手」があり、勝手に流れる情報というものはありません。情報をうまく扱うためには、なぜこの情報がきたのかということや、どうすれば相手にうまく伝わるだろうという「思いやり」を持つことが大事だと思います。人を大事にする気持ちをきちんと持っていれば、おそらくインターネットを使っていく上でもそんなに困ることはありません。ぜひとも、インターネットの利用においても「人権尊重の視点」を持っていただきたいと思います。
講演内容は以上です。
インターネットはとても便利なものですが、使い方を誤ると、大人も子どもも関係なく誰かを傷つけたり、犯罪被害にあったりと人権が侵される危険性があるものです。
人権施策推進課では、このような研修会を始め、インターネット利用の低年齢化を受け、小中学生にも分かりやすく学んでいただけるリーフレットや啓発物品を配布し、安全にインターネットを利用してもらえるよう啓発を行っています。
また、県内の中学校では、生徒達が主体的にスマートフォンやSNSの使用ルールを決めるという活動も行われています。
【より】みなさんもこの機会に自分や自分の子どものインターネットの使い方を振り返ってみて、今後インターネットを安全に使い続けていくにはどうしたらよいか、家族や友達と一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
「あんしんネット 冬休み・新学期一斉緊急行動」
内閣府、法務省などは、例年、多くの青少年が初めてスマートフォン等を手にする春の卒業・進学・新入学の時期(2月から5月)に、関係省庁、地方公共団体、関係団体等と協力して、スマートフォンやソーシャルメディア等の安全な利用のための啓発活動を実施しています。
「あんしんネット 冬休み・新学期一斉緊急行動」専用ページより
保護者向けリーフレット
「ネットの危険からお子様を守るために、保護者ができること」
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「LGBT※」という言葉をテレビや新聞などのメディアで見聞きすることが多くなりました。
※「LGBT」とは、女性同性愛者(Lesbian:レズビアン)、男性同性愛者(Gay:ゲイ)、両性愛者(Bisexual:バイセクシュアル)、心と体の性別に違和感を持つ人(Transgender:トランスジェンダー)の頭文字を取った総称です。
LGBTの認知度や社会的な関心が高まる中、ありのままの自分が祝福され、自分を受け入れ、周囲に存在を認知してもらうための機会として、LGBT成人式が全国各地で開催されています。
会場にはLGBTの尊厳と社会運動の象徴である、レインボーフラッグが掲げられていました。 |
今回は、1月21日(日曜日)に開催された、「関西LGBT成人式2018」の様子をご報告します。
まず、式が始まる前に
・知り合った相手の見た目で性別やセクシュアリティを決めつけない
・相手を否定しない
などの約束事が発表されました。こうした約束事はこの式の中だけではなく、みんなで心に留めて実践していきたいものですね。
式では西原さつきさん、麻倉ケイトさんらの祝辞とトークショーや団体の活動報告のあと、参加者全員で嵐のHappinessを合唱して閉会しました。
自分の使いたいトイレを選べるセクシュアリティフリートイレの案内 |
会場内には参加者各々が使いたいトイレを選べるセクシュアリティフリートイレと記念写真撮影ブースが設置されるなど、「ありのままの自分」が認められる配慮と工夫がされていました。
式の中盤の「成人の誓い」で登壇された方が、「LGBTについて、全てを理解しなくてもいい。そうであっても、いろんな人がいて、みんな違っていて当たり前、と思うことが大切」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。ひとり一人違っているのが当たり前なのに、性については、その多様性に目を背けていることに気づかされた瞬間でした。
これから成人として歩んでいく若者が「ありのままの自分」を祝福される、このようなイベントの開催を通じて、性の多様性をみんなが受け入れ、違いが当たり前になる日常が訪れたらいいですね。