ダムが設置される場所をいいます。Siteとは敷地、用地といった意味でダムサイトは「堰堤敷地」となります
ダムの貯水を利用する利水運用で想定しているもっとも低い位置の標高。これは貯水池からの取水口の設計上の最低位置でこれより下の貯留水は計画上は利用できないものとして、最低水位以下の容量は堆砂容量あるいは死水容量として設定しており、一般的に通常の利水運用では利用することはありません。略称はLWLです。下の図は姉川ダムのイメージ図です。EL.はエレベーション(標高)のことです。
洪水時に貯留することができる満杯の貯水位で、洪水調節容量と利水容量、死水容量、堆砂容量との組み合わせで決まる貯水池容量に対応する最高の水位です。略称はSWLです。
洪水でない時にダムに貯水することができる最高の水位で、利水容量、死水容量、堆砂容量の組み合わせで決まる貯水池容量に対応する貯水池の水位で渇水と洪水の時期以外はこの標準水位に保たれます。略称はNWL、または常満(じょうまん)です。
その地域で1年のうち通常、洪水の発生しやすい期間が洪水期であり、一般的には梅雨から台風襲来時期となります。それ以外は非洪水期としています。ダムの治水計画によっては貯水容量の制約の関係から洪水期には貯水位を低く保つ必要がある場合があります。→下の「洪水貯留準備水位」へ
洪水のおこりやすい季節(洪水期)には、平常時最高貯水位(常時満水位)では洪水調節容量に不足のあるダムの場合、平常時最高貯水位より低い水位に保つ計画を持っており、この水位を洪水貯留準備水位(洪水期制限水位)といいます。
所管のダムでは、余呉湖ダム、日野川ダム、石田川ダムが洪水貯留準備水位を持っています。
→余呉湖ダム:標高132.1メートル(平常時最高貯水位より0.7メートル下)
→日野川ダム:標高205.3メートル(平常時最高貯水位より1.7メートル下)
→石田川ダム:標高295.1メートル(平常時最高貯水位より4.1メートル下)
なお、宇曽川ダム、青土ダム、姉川ダムは洪水貯留準備水位を必要としないダムで、低い水位に保つために必要な専用の貯水位維持放流設備は装備していません。(低水放流設備は装備しています。)
洪水貯留準備水位(制限水位)または平常時最高貯水位(常時満水位)に水位を保持していた場合でも、洪水調節容量に不足のあるダムでは、洪水を受ける前に、一時的に水位を下げる計画を持っており、この目標水位を予備放流水位といいます。この操作(予備放流)により確保できる容量は予備放流容量といいます。
所管のダムでは、余呉湖ダム、日野川ダム、石田川ダムが目標限度としての予備放流水位を持っています。
→余呉湖ダム:標高132.1メートル(平常時最高貯水位より0.7メートル下:非洪水期)
→日野川ダム:標高204.0メートル(平常時最高貯水位より3.0メートル下)
→石田川ダム:標高287.0メートル(平常時最高貯水位より12.2メートル下)
ダム設計洪水流量が満水状態のダムを定常流として流下すると仮定した厳しい条件の場合の貯水池での想定される最高水位です。また、設計最高水位(設計洪水位)は、ダムの保安上定義された洪水に関する最大の基本量で、ダム堤体の安定計算に使用されるとともに、ダム堤体の高さや 非常用洪水吐きの構造を検討するためにも使用されます。略称はDWLまたはHWLです。ちなみに満水状態でないときは一時的に想定より大きなダム設計洪水流量となっても設計最高水位を超えない限りはダムの安全上、支障とはなりません。
貯水池流域の地形、地質、気象、水文、その他の流域特性および貯水池特性などにより、貯水池の比堆砂量(ダム上流からダムに入ってくる土砂の量を上流域面積 1平方キロメートルあたり 1年間に何立方メートルかと表したもの)を推定し、これを基にして想定した長期間(例:100年)の堆砂量が仮に水平に堆砂するとして設定した堆砂標高です。死水容量のない一般的なダムでは堆砂位=最低水位となります。
ダム堤体と基礎岩盤、基礎地盤が接するところから、ダム上部面(業界用語では天端[てんば])までの高さをいいます。
外からながめた見かけのダムの高さに地下に隠れているダム堤体(またはフィルダムのコア部)の深さを足したものともいえます。
堤頂とは、ダムなどの最上部をいいます。標高はE.L.とも書かれていることもありますが、海面(通常は東京湾平均海面T.P.)からの高さをいいます。地図の山頂に書かれている数字と同じ意味です。
青土ダムの堤頂標高は約305mですが、東京湾の海面から305mの高さ位置であるということです。ちなみに琵琶湖の基準水面は、標高84.371mとなっています。したがって青土ダムの堤頂標高は琵琶湖基準水面より約220.6m高いところにあるということになります。
堤体そのものの体積です。コンクリートダムであればダムに使用しているコンクリート量に近い数字です。
日野川ダム(22.8万m3)
石田川ダム(26.8万m3)
宇曽川ダム(98万m3)
青土ダム(66万m3)
姉川ダム(30.7万m3)
ダム軸は、河川を横断する方向でのダム位置を示すダムの構造設計上の仮想的な線をいいます。
重力式コンクリートダムにおいては、基本三角形の頂点を連ねた線、アーチ式コンクリートダムおよびフィルダムにおいては、堤頂(堤体の最上部)の中心を連ねた線とします。また、表面遮水壁型フィルダムにあってはダム上部面の上流端を連ねた線とします。
重力式コンクリートダム堤体断面の基本三角形に対してダム軸より上流側に増厚された直角三角形のコンクリート部分をフィレットと呼びます。
基礎岩盤のせん断強度が堤高に比較して比較的小さい場合は、ダム安定上の条件から定めた断面形状では、岩盤とダムの境界付近のせん断に対する安全性を設計上では満足できないことがあり、その場合に、基本三角形の上流側にコンクリート増厚部(フィレット)を設けて岩盤との接触面を広くし、必要なせん断抵抗力を確保します。
貯水池の水がダムの下の地盤岩盤を通って漏れてくることを防ぎ、併せて堤体にかかる浮力(揚圧力)を減らす為に、ダム基礎や左右岸地山に対して地下に長いカーテン状(curtain)の難透水部分を作るため、液状のセメントをポンプ圧力により地下に注入すること(grouting)をいいます。関係者間では略して「カーテン」といっています
写真は青土ダムの監査廊でカーテングラウチングのため、ボーリングマシンにて地下岩盤を穿孔(せんこう)中のものです。
ダム堤体を作る前の掘削による岩盤のゆるみに対して、コンクリート堤体等の基礎として強固にする(consolidation:地固め)とともに漏水の防止の為、堤体が乗る箇所全体の岩盤へ液状のセメントを注入することです。(grouting)
関係者間では略して「コンソリ」といっています。
フィルダム遮水壁(しゃすいへき)の基礎岩盤に対して、漏水防止や遮水材料の流出防止を目的とした基礎浸透流の均一化、低速化などを図るため、コア敷きの岩盤全域へ(blanket)液状のセメントを注入することです。(grouting)
堤体の両側の地山の部分に作るカーテングラウチングを特にリムグラウチングと呼んでいます。
ダム完成後に貯水がダムの両袖部を迂回して下流方向に漏れ出すのを防ぎます。
前記のリムグラウチングの作業のため、堤体上面横の山に掘った小型トンネルをリムトンネルと呼んでいます。
幅は 2メートル、高さ 2.5メートル程度の断面積です。
奥行きは一般に数十メートル程度です。