「比良の里山の風景がなんだか変わってきたな」と感じ、「故郷の里山の原風景を守っていくために何かしたい」というのが活動を始めたきっかけという、一般社団法人比良里山クラブの代表理事三浦美香さん。
2003年11月に市民団体として立ち上げ、2009年10月に一般社団法人化した同クラブの活動は、里山の整備から、みんなでこだわって栽培した赤シソからつくるシソジュースの販売「Hira Perilla」(ヒラペリラ)にまで及びます。
市民団体立ち上げ一年目には、まず「現場を見ること」が大切だと考え、滋賀県内外のさまざまな森づくり団体の活動に参加して、多くの人々に「出会い」、「つながり」を築いてきたことが現在の法人の礎になっているという、三浦さん。森づくり活動の継続のヒントについておうかがいしました。
Q現在は、どのような活動をされていますか?
A大きく分けると5つの事業を実施しています。1つめは、里山の整備やその資源である薪等を活用する「里山事業」。2つめは、小学生以下の子どもを対象とした自然体験イベントを行うキッズクラブや中学生への出前授業などの「体験学習事業」。3つめは、「農園事業」で比良の農地に元気を取り戻すために里山付き菜園セミナー(貸し農園)を行っています。4つめは、地域の方たちと手をつなぐ事業で、里山イベントの実施などです。5つめはシソ事業で、地元でシソを栽培しそのシソを使ったジュース、ヒラペリラを販売しています。
Q参加者を増やすための広報はどのように行われていますか?
Aウエブサイトはかなり重要な役割を果たすと思っていますので、数年前にがんばって今のウエブサイトを作成しました。ここに何を載せるかもとても重要で、特に企業や学校、そして自治体などはここに定款等が載っているかどうかで、「しっかりした法人」と思っていただけるようですね。うちの法人は、企業や自治体から助成を受けたり、学校から体験学習の依頼もあったりしますので、ここの部分はさらにしっかりしなければと思っているところです。
また、「キッズクラブ」や、里山付き菜園セミナーでは、若いファミリー層が多く、そういった若い方々が森林整備にも参加してくださっています。こういった森林整備事業は年配の方が多い傾向がありますので、「若い層を森へ」ということでは、間接的な誘因になっていますね。もちろんそれぞれの事業を始めた目的は別にきちんとあるんですけどね(笑)。
これまでもたくさんの参加者に来ていただいていますが、もちろん今後も1人でも多く参加していただきたいと思っています。そのためには、一旦参加していただいた方をどうつなぐのかということが重要ですので、「比良のファンづくり」を意識して活動をしています。
Q団体運営に係わる人材はどのように確保されていますか?
A事務局は基本的に、私、三浦がほぼ1人で作業しています。ただ、会計などはもう1人に任せており、ウエブの更新もプロの方にお願いしてはいますが、事務作業としてのボリュームは多く、ここの部分は課題ですね。また、ヒラペリラの生産シーズンは猫の手も借りたいほど忙しく、この時期には大学生のインターンを数名受け入れて、手伝っていただいています。
会員(社員)については、会費の支払いもありますしハードルが高いので特に集めるという意識はありません。ただ、ありがたいことに、それ以外の協力者が当法人にはたくさんいてくださっています。地元の団体さんや、立ち上げ当初に私が参加させていただいた他の団体の方々が、イベントに協力していただいたり、情報交換したり、講師のお願いをしたり、など助けていただいています。やはり、この方々の力は大きいですね。これからも、このつながりを大事にしていきたいと思いますし、このネットワークをもっともっとつないでいくのがうちの役割のひとつではないかと思っています。
Q団体運営の資金に関してはどのような工夫をされていますか?
A当法人は、当初任意団体でしたが、2009年10月に社会的信用等も考えて、一般社団法人にしました。一般社団法人には、収益事業と非営利事業があり、収益事業はシソジュースの販売で、この売り上げが主な運営資金になっています。それぞれのイベントからの参加費や、里山付き菜園セミナーの受講料等の収入もありますが、だいたいそれぞれのイベント等の備品購入等でなくなってしまいます。
これら以外には、森づくり関連で企業からの助成金や自治体からの補助金もいくつか受けていて、これも運営に役だっています。特に、2009年に受けた「大津市パワーアップ事業」は、法人の基盤づくりに大変役立ちました。また、ウエブサイト等に「大津市パワーアップ事業」と書いてあると、「行政と一緒にタイアップしているしっかりした団体」と見ていただけるという利点もありますね。
Q今後の展望についてお聞かせください
Aいま、比良を全国、世界にアピールする構想を立てています。その名も、「比良山系まるごと地域ブランド化」。比良はすばらしいロケーションに恵まれており、山も、里地も湖も、全てそろっています。この比良の空気をまるごとブランド化して、もっと多くの方々に楽しんでいただけるような仕組みづくりを考えています。
最初に5〜6人のメンバーから始めた比良里山クラブですが、拠点の「まほろばの里」づくりから、石窯をつくり、セミナーを行い、キッズクラブを始めてファミリーに来ていただき、獣害に遭わない作物をと「元気なシソをつくる会」を立ち上げ、シソジュースの販売・・・・・・と年ごとに活動を広げてきました。これらの活動の集大成として、全てを包括した比良の里山を楽しんでいただくグリーンツーリズムを立ち上げ、そしてその結果、この里山の風景を維持していけるという活動を継続していくのが夢です。