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乳幼児聴力検査

滋賀県立小児保健医療センター耳鼻いんこう科で行っている乳幼児に対する聴力検査です。

通常、これらの検査をいくつか組み合わせて聴力の正確な把握に努めます。

聴性行動反応検査(Behavioral Observation Audiometry;BOA)

概要

聴性行動反応検査は音刺激に対する乳幼児の全身的な反射や反応の様子を観察して行う検査です。

目的

新生児聴覚スクリーニング検査で精密聴力検査が必要となったり、難聴の疑いを主訴とする乳幼児に対し、難聴の有無やおおよその聴力を推定します。

方法

乳幼児の背後または側方から右図のような太鼓や鈴などの楽器音、音の出る玩具を音刺激として提示します。その時の乳幼児の行動を観察し、難聴の有無や程度を推定します。音刺激に対する乳幼児の行動としてよく観察される反射・反応を列挙すると、モロー反射、耳性眼瞼反射(瞬目反射)、驚愕反射、音源を探す探索反応、音源を見つける定位反応等です。

検査結果の判定

BOAに精通した耳鼻科専門医や言語聴覚士は音刺激の種類や大きさ、その時の乳幼児の反応の仕方を観察すると、難聴の有無や程度、あるいは聴力型も推定することができます。

条件詮索反応聴力検査(Conditional Orientation Audiometry;COR)

概要

条件詮索反応聴力検査は音刺激に対する探索反応や定位反応を、光刺激を伴った玩具によって強化・条件付けし聴力を測定します。乳幼児の聴力検査のうち、精度が高く最も多用されている検査です。

対象年齢

6カ月から2歳頃までの乳幼児

方法

上写真図のように、上部左右のスピーカーから子どもが十分に聞こえると思われる音を提示します。それと同時に、スピーカーと同側の動く玩具が入った光刺激窓を光らせます。この手続きを数回繰り返すと子どもは音が聞こえると光刺激を探したり、定位したりするようになります。このような条件反応を利用し、音を小さくしたり大きくしたり、さらに周波数を変えて周波数毎の聴力を測定します。

結果の見方

CORを行った症例の検査結果(=聴力図)を示します。この検査は左右どちらか聴力の良い方で聞いた時の反応をみているので例外を除いて左右別々の聴力の測定は基本的には困難です。

COR検査結果

遊戯聴力検査(play audiometry)

概要

遊戯聴力検査は主にbarr法とピープショウテスト(peep-show-test)の2種類があります。当科ではCORで使用しているプレイボックスを利用します。この検査で左右別々の気導聴力のみならず骨導聴力も測定可能な症例もあります。

目的

左右別々の聴力を測定すること

適用年齢

3歳以上

方法

子どもにオージオメータ用の受話器(レシーバー)を装着します。その状態で音が聞こえたらプレイボックス下部の白いボタンを押すように教示します。白いボタンを押すとプレイボックスの中が明るくなり、かつミニチュアの電車が走るように細工されています。子どもの注意力や興味が持続するため繰り返し検査が可能です。十分な大きさの音で何度か練習を重ね周波数毎の左右別々の聴力を測定します。

標準純音聴力検査(pure tone audiometry)

概要

一般的な聴力検査です。左右別々の気導聴力、骨導聴力等が測定できます。聴力型、気骨導差等により原因の鑑別診断にも役立ちます。

目的

左右それぞれの気導聴力や骨導聴力を測定します。

対象年齢

4歳以降

その他

当科の診断用オージオメータは標準純音聴力検査の他に、語音聴力検査、域値上検査、自記オージオメータ等の聴力検査も可能です。

聴性定常反応(ASSR)を利用した聴力検査

ASSR

概要

聴性定常反応を利用した聴力検査は耳から入る音刺激に反応した脳からの電位を特殊な方法で観察・記録し、難聴の有無や程度を判定する最新の検査機器です。新生児期より適応可能な検査法であるため、難聴の疑いがある乳幼児・学童のみならず新生児聴覚スクリーニングで精密聴力検査が必要となった乳児にも対応可能です。

対象

新生児期以降、乳幼児のみならず成人に至るまで

必要測定時間

睡眠状態になって30分から1時間

特徴

従来1つの周波数しか測定できない聴性脳幹反応検査(ABR)と異なる音刺激を用いることで、話しことばの聞き取りに必要な周波数(500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz)についてより詳細な他覚的聴力検査が可能です。また、両耳同時に測定できるため必要検査時間が短いなどの利点があります。聴性定常反応聴力検査で得られた結果は本当の聴力よりも少し悪く出ます。従って、多くの症例からのデータを理解している専門医の判定・診断が必要となります。

検査方法

乳幼児に対するASSR検査は原則として睡眠導入剤を使用し睡眠状態で行います。耳栓に似た特殊なイヤーチップを耳に挿入し高度な機器で合成された音を聞かせます。それに対する脳からの電位を頭部に貼り付けられた3個の皿電極を通して観察し分析します。

聴性脳幹反応聴力検査(Auditory Brainstem Response;ABR)

概要

聴性脳幹反応聴力検査は、内耳蝸牛から出た聴こえの神経が脳へいたるまでの経路の電位活動を、特殊な方法で観察・記録し、難聴の有無や程度を判定する検査です。ABRは検出される波形の安定性が高いことから、乳幼児の他覚的聴力検査として広く利用されています。しかし限られた周波数しか測定できないという短所があり、言葉の聞き取りに重要な周波数すべての聴力を詳しく反映しているわけではありません。

対象

乳幼児から成人

必要測定時間

30分~1時間程度

検査方法

乳幼児に対するABR検査は、原則として睡眠導入剤を使用し睡眠状態で行います。ヘッドホンを装着し、そこから特殊な音を左右別々に聞かせます。その音の刺激に対する脳からの電位を分析します。

検査結果の判定

ABRで得られた<聴力正常と判定された症例>と<最重度難聴と判定された症例>の波形を示します。

歪成分耳音響放射(DPOAE)検査

DPOAE

概要

DPOAEは音に対する蝸牛内の有毛細胞の反応を記録し難聴のスクリーニングを行う機器です。検査結果は写真のとおりです。

DPOAE検査結果

対象

新生児から成人まで

方法

上写真の機器を使用します。10秒間程度、外耳に細いプローブを挿入すると自動的に反応が記録されます。

特徴

新生児から行うことができるという利点がありますが、聴力に異常がなくても外耳道が狭かったり、中耳腔に貯留液が存在すると反応なしと判定されてしまいます。

ティンパノメトリー(Tympanometry)

概要

ティンパノメトリーは中耳の状態を調べる検査です。この検査で分かることは、中耳の圧力、中耳貯留液の有無、中耳伝音系の動きです。小児疾患との関連で述べると、滲出性中耳炎や、耳小骨の離断や固着などの疾患の検出に役立ちます。

対象

乳幼児から成人まで

必要測定時間

1分程度

検査方法

プローベと呼ばれれる細いチューブを外耳道に挿入すると、自動的に測定が開始されます。この際、プローベと外耳道に隙間ができると測定できません。従って、可能な限り頭部を固定した状態で側定します。

検査結果の判定

代表的な波形と、その症状を示します。

検査結果

「新生児・幼小児の耳音響放射とABR」編集・加我君孝/出版・診療と治療社より

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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