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髙尾 由美
日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医
日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
臨床研修指導医
ダ・ヴィンチコンソール技術者
日本医師会認定産業医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
母体保護法指定医
日本ロボット外科学会Robo-Doc Pilot 認定 国内B級
緩和ケア研修会修了
京都大学医学博士
京都大学医学部臨床教授
川村 洋介
日本産科婦人科学会産婦人科専門医
日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本周産期・新生児医学会 専門医(母体・胎児)
緩和ケア研修会修了
平山 貴裕
清重 紗也
緩和ケア研修会修了
野々垣 比路史
日本産科婦人科学会産婦人科指導医・専門医
母体保護法指定医
村上 隆介
当科は滋賀県のがん診療拠点病院として、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌など婦人科悪性腫瘍に対する診断・治療・治療後の管理を総合的に行っています。また卵巣腫瘍、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮脱、更年期障害など婦人科領域の良性疾患をはじめ婦人科疾患全般に対する診療を行っています。
当院では産科や不妊診療は取り扱っていませんが、婦人科に特化した診療に専念しています。特に婦人科悪性腫瘍への根治治療ならび進行例や再発例への遺伝子診療を導入した個別化診療と、腹腔鏡やロボット支援下腹腔鏡手術など低侵襲手術に重点を置いた、最先端の診療内容を充実させています。
治療に際しては、十分な説明・情報提供(インフォームドコンセント)を行い、患者さんの意思決定・同意に基づいて、自覚症状の改善など患者さんの満足を得られる医療を目指しています。さらに適応をよく見定めて疾患の根治性を保ちながらも機能温存および低侵襲手術を提供し、術後の早期回復と入院期間の短縮にも努めています。
地域の医療機関と連携して、紹介や逆紹介を積極的に行い、円滑で質の高い診療を心がけています。
令和元年6月よりロボット支援下手術を開始し、良性疾患に対する子宮全摘手術、子宮体癌に対する骨盤リンパ節郭清を要するロボット支援下腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を保険診療で行っています(子宮体癌に対する保険適応のロボット支援下手術は滋賀県で初めての施設となります)。ロボット支援下腹腔鏡手術の導入で、より繊細で安定した手術を行うことが可能となりました。
BRCA遺伝子検査
令和元年6月より進行卵巣癌患者さんに対する初回治療でのBRCA遺伝子検査が保険適応になりました。この遺伝子検査が陽性の場合には新薬であるPARP阻害剤のオラパリブ(リムパーザ)を維持療法として選択することが可能となります。一方でこの検査が陽性であれば家族性乳癌卵巣癌症候群を診断することを意味します。当院では遺伝カウンセラーと連携しながら患者さんとご家族の将来の卵巣癌・乳癌の予防にも配慮した医療を心がけています。
詳しくは遺伝子診療センターのページをごらんください。
令和元年12月より子宮頸癌予防のためのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を開始いたしました。世界保健機構(WHO)は2030年までに9割の女性にHPVワクチンを接種し、定期的に子宮頸癌検診を行うことで、2060年には子宮頸癌をほぼ撲滅できると、HPVワクチンの積極的接種を推奨しています。特に若年女性に対する子宮頸癌の予防の啓蒙にも力を入れています。
[施設認定]
・日本産科婦人科学会専門医制度専攻医指導施設
・日本婦人科腫瘍学会専門医制度指定修練施設
・日本産科婦人科学会ロボット支援下婦人科良性疾患手術実施施設
・日本産科婦人科学会ロボット支援下婦人科悪性腫瘍手術実施施設
産科婦人科専門医・指導医、婦人科腫瘍専門医、産科婦人科内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医、細胞診専門医、癌治療認定医が在籍し、さらに手術支援ロボット da Vinci 認定資格を取得した医師による婦人科疾患に対する高度な治療の提供に努めています。
1.婦人科悪性腫瘍
(1) 子宮頸癌
【子宮頸部上皮内腫瘍】
妊娠を希望する症例に対しては子宮頸部円錐切除術を施行します。その際コルポスコピー(子宮膣部拡大鏡)下に病変を事前に評価し、切除範囲を最小限にとどめる術式を採用することにより、早産など周産期合併症の予防に努めています。一方根治的手術として子宮全摘術を行う場合は、腹腔鏡やロボット支援下腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。また子宮頸部上皮内腫瘍の方針決定に、ハイリスクヒトパピローマウイルス(HPV)検査を取り入れ、病変の進展リスクを評価し、治療方針や治療後の管理に役立てています。
【子宮頸癌】
IA1期の挙児希望症例に対しては、円錐切除術による子宮温存を考慮しています。IB期〜IIB期には広汎子宮全摘術あるいは術前化学療法により腫瘍縮小後に広汎子宮全摘術を考慮し腫瘍の完全摘出を目指します。術後リスク評価を行い全身化学療法あるいは同時化学放射線療法など集学的治療を行っています。広汎子宮全摘術に際して、2cm未満の腫瘍サイズでIB1期以下の早期症例に対しては腹腔鏡手術も考慮していただけます。また早期症例に対しては神経温存術式を積極的に適応することにより術後の排尿・排便障害の予防に努めています。手術リスクの高いIIB期やIIIA期以上の症例に対しては同時化学放射線療法を当院の放射線治療科と連携して施行しています。また根治的放射線療法に必須の腔内照射(RALS)装置を配備している施設は県下でも稀であり、当院はRALSを用いて積極的に放射線治療専門医と協働して腔内照射を行っています。IVB期や再発例には血管新生阻害剤ベバシツマブ(アバスチン)を併用した化学療法や維持療法を行い、予後の改善と生活の質(Quality of Life : QOL)の向上を目指しています。
(2) 子宮体癌
近年増加が指摘されている子宮体癌は子宮頸癌とは異なり細胞診の精度が低いため、不正子宮出血を認める症例には子宮内膜組織診を積極的に行い、早期発見を目指しています。
【子宮内膜異型増殖症】
子宮体癌の前癌病変とされる異型子宮内膜増殖症には根治治療として低侵襲術式を用いた子宮摘出術を施行していますが、妊娠希望症例には、高容量黄体ホルモン療法を行っています。
【子宮体癌】
子宮体癌IA期(特殊型、類内膜癌グレード3)、IB期、II期が想定される場合には、開腹手術で筋膜外術式による子宮全摘術、両側付属器切除術・骨盤〜傍大動脈リンパ節郭清術を標準術式として治療を行っています。リンパ節郭清術においては術式の工夫により術後のリンパ浮腫・リンパ漏の軽減を図っています。また組織型で類内膜癌グレード1あるいはグレード2と術前に診断され、術前画像検査で進行期IA期と推定される症例には、骨盤リンパ節郭清までの低侵襲手術を腹腔鏡あるいはロボット支援下腹腔鏡手術で行っています。術後は再発リスクに応じて全身化学療法を行っています。また子宮体癌はミスマッチ修復遺伝子の異常が検出される頻度が高く、再発・治療抵抗性症例には遺伝子不安定(MSI)検査を行い、抗PD-1抗体ペンブロリズマブ(キートルーダ)の適応を考慮しています。同時に陽性例にはリンチ症候群(家族性腫瘍)の遺伝子学的検査や遺伝カウンセリングを専門家と連携して情報提供します。
(3) 卵巣癌(卵巣・卵管・腹膜癌)
卵巣癌は診断時に腹膜播種を呈する進行例が多く、可及的な腫瘍切除と術後化学療法を行います。完全切除が見込まれないIIIC期やIV期症例には試験腹腔鏡下の生検で組織型を確定し、術前化学療法後に、腹腔内病変の肉眼的完全切除を目指した腫瘍減量手術を行います。術式は開腹手術で、単純子宮全摘術、両側付属器切除術、大網切除術、骨盤~傍大動脈リンパ節郭清術を標準術式として行っています。外科、泌尿器科、麻酔科と密接に連携をとることにより、他臓器合併切除を適切に行い、初発・再発においても腫瘍の完全摘出を目指した集学的治療を行っています。術後化学療法には従来のパクリタキセル・カルボプラチンに加え、血管新生阻害剤ベバシツマブあるいはBRCA遺伝子検査の結果陽性であればPARP阻害剤オラパリブを維持療法として選択するといった個別化治療を行っています。また再発や難治症例に対しても、化学療法と分子標的治療を組み合わせ、患者さんの予後の改善と生活の質QOLの向上を目指しています。
(4) 再発がん
手術・化学療法・放射線療法の組み合わせや新規分子標的治療薬の導入により婦人科がんの治療成績は以前より改善しましたが、進行がんは残念ながら再発してしまうことが少なくありません。再発がんの多くは完治が難しいのが現状ですが、当院では再発病巣に対して適応があれば積極的に摘出手術を行うことにより予後の改善を目指しています。画像を含めた評価により摘出が適応とならない場合は化学療法・放射線治療の適用を考慮しています。
再発治療の効果が認められないことも残念ながらあります。この様な場合、がんの根治的な治療は難しくても、ご自身の生活をできるだけご本人らしい時間を生き生きとすごしていただけるよう、単剤化学療法や分子標的治療薬を組み合わせた治療を提供しています。
またがんによる生活に支障を来す痛みなどの症状改善は可能です。私たちは、当院緩和ケア科と連携しながら治療の難しい再発がんに対しても、症状緩和を行いながら、出来るだけの診療を提供したいと考えています。
2.婦人科良性疾患の低侵襲・機能温存治療
(1) 子宮筋腫
若年者および妊孕能温存症例に対しては原則的に子宮筋腫核出術を行っています。一方根治的手術として子宮摘出を施行する際は、開腹手術の他に筋腫のサイズによっては薬物療法(偽閉経療法)で筋腫を縮小させ、侵襲の少ない腹腔鏡下やロボット支援下腹腔鏡下子宮全摘術が選択肢になります。
(2) 骨盤臓器脱
高齢の患者さんが多く、ペッサリーリングや骨盤底筋群体操や便秘の予防など生活指導も行いながら、個々の症例に応じて治療を行っています。膣式子宮全摘術、前後膣壁形成術、肛門挙筋縫合術を組み合わせた子宮脱根治手術を標準術式としています。
(3) 卵巣腫瘍
原則として全例MRI検査による評価を行い、悪性所見が否定的な症例では腹腔鏡下手術を適応しています。若年者には正常卵巣を温存する腫瘍摘出術を、閉経前後の年齢であれば付属器(卵巣・卵管)切除術を考慮しています。
(4) 子宮内膜症
若年者に対しては低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(保険の通った低用量ピル)や黄体ホルモン製剤など薬物療法を考慮し、妊娠希望症例には不妊治療歴や病変の局在と程度を考慮して、手術を行うか、あるいは治療を行わず積極的に妊孕性治療に専念していただくかを考慮します。閉経前後の症例に対しては悪性化のリスクを踏まえ根治手術を考慮するなど、症例に応じて適切な治療選択肢の提供を心がけています。
産婦人科カンファレンス:毎週水曜日17:00~ | 手術予定症例を中心に症例検討会を行っています。 |
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放射線治療カンファレンス:隔週月曜日17:00~ | 放射線治療科と合同で放射線治療症例の検討を行っています。 |
病理カンファレンス:毎週金曜日8:30~ | 病理診断科と合同で病理組織診断の検討を行っています。 |
外来担当医表をご覧ください。