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山本 秀和
米丸 隼平
岩佐 葉子
病理診断科の業務は、文字通り病理診断を行うことですが、具体的には主に組織診、細胞診、この両者の手段を使った術中迅速診断および病理解剖があります。したがって、時に病理診断の説明を聞きに来られる方以外直接患者さんに接する機会はありません。しかし、組織や細胞を通して患者さんを診、その病態を理解するなど間接的に接することになります。得られた病理情報は主治医を通して治療に反映されます。言い換えると、組織診および細胞診は患者さんの病変部から採取した検体を顕微鏡下に観察することにより下す診断であり、そのうち生検と細胞診は病変の推定ないし確定を行い、治療法の選択、治療効果の判定などに寄与するのです。
術中迅速診断は、手術中の一時点で診断の確定や摘出範囲など治療方針を決定するためになされます。標本を凍らせ薄切したり、標本割面をスライドガラスに押し当て細胞を貼り付けたものを染色して観察しますので、10-20分で診断をつけることが出来ます。このため術者は安心して手術を終えることができます。摘出手術症例における組織診断は病変の性状、組織型の確定、病変の程度、病変の広がり、進行状況などを詳細に検索することによってなされる総合的な診断です。これにより病変の全体像がわかり、治療(手術)効果の判定、予後評価に役立ちます。病理診断は、病変部を肉眼的に、さらにその組織・細胞の形態的変化を直接観察して行う診断ですので、多くの場合”最終診断”となります。また、摘出し病理検査をするという行為自体が、病気の終焉をもたらすこともあるのです。このように、少ない組織という材料から効率よく病理診断するなどによって診断効率、医療効率を高めることができます。
病理解剖は不幸にも病気で亡くなられた方のご遺体を解剖し、各臓器を肉眼的、顕微鏡的に観察することにより、死因を解明し、病気が全身臓器におよぼした影響などを把握することにより、生前治療の適否・効果の判定などの医療評価や卒後医師教育などに大きな役割を果たしています。
このように、病理診断科は高度医療の遂行になくてはならない極めて重要な業務を担っていますし、常に患者さんや医療全体を考えています。
当病理診断科では、ここ数年、年間6500件弱の外科病理材料と約4500件の細胞診、10体程度の病理解剖を取り扱っています。