病理診断とは

患者さんが病院を受診する際、正確な診断が適切な治療に欠かせません。その中で「病理診断」は大きな役割を果たしています。

患者さんの体から採取された組織や細胞から、顕微鏡用のガラス標本がつくられます。この標本を顕微鏡で観察し診断するのが病理診断です。この病理診断を専門とする医師を病理医と呼びます。

病理診断は主治医に報告され、治療に役立てられます。病理医は病理診断を通してチーム医療の一翼を担っています。

痰や尿を顕微鏡で調べてがん細胞がいるかどうかを判断するのが細胞診断（細胞診）です。
肺がんや膀胱（ぼうこう）がんでは、痰（たん）や 尿の中にがん細胞が混じることがあります。子宮がん検診では、子宮頸部から細胞をこすりとって調べます。のどや乳房などにしこりがあると、細い針を刺して吸引して細胞を採取し、その中にがん細胞がいるかどうかを調べる場合もあります。

胃・大腸や肺の内視鏡検査の際に病変の一部をつまみ採ったり、皮膚などの”できもの”から一部をメスで切りとって病変の一部の組織を標本にします。この検査を「生検（せいけん）」といい、その診断を生検組織診断とよびます。

また手術で摘出された臓器や組織は、病理医が肉眼で病変の部位、大きさ、性状、広がりを評価し、診断に必要な部分を標本作製します。標本は顕微鏡で観察され、病変の性状や広がりを観察し、手術でとりきれたのか、追加治療が必要かどうか、がんの場合、タチの悪さや転移の有無などを評価したうえで臨床医に報告し今後の治療方針に役立ててもらいます。

手術中に病理診断が必要とされる場合、行うのが術中迅速診断です。手術前に病理診断がつかなかった場合などに行われます。術中迅速診断では、手術中に採取された組織から20〜30分程度で病理診断を行います。診断結果は手術中の執刀医に連絡され、手術方針の決定に役立たれます。

亡くなられた患者さんのご遺体を解剖させていただくのが「病理解剖」で、剖検（ぼうけん）ともよばれます。生前の診断は正しかったのか、どのくらい病気が進行していたのか、治療の効果はどれくらいあったのか、死因は何か、といったことを評価します。解剖の際にはご遺族の承諾が必要です。

医療従事者は、質の高い医療の提供を第一の目的として、努力を重ねています。新しい検査法や治療法を開発するための医学研究・医療技術者を育てるための教育も同時に行われています。
病理診断を行ったあとの残った組織や細胞は、病院の規程に従って一定期間保存された後、適切に処理されます。これらの検体が医学研究・教育・診断の精度管理に用いられる場合もあります。この場合、個人の特定ができないよう、個人情報の保護に細心の注意を払って行いますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。