人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
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令和3年(2021年)2月(第154号)
新型コロナウイルス感染症が国内で拡がり始めてから、1年が経過します。コロナ禍と呼ばれる状況は、当初私たちが思っていたよりも長引き、感染者や医療従事者、その家族等への差別や、医療現場のひっ迫、経済の停滞等、社会の疲弊を実感している方も多いのではないでしょうか。
しかし、先の見えない不安な状況の中でも、できる形で新型コロナウイルス感染症と向き合い、各方面へ支援を行っている方もいらっしゃいます。
令和2年(2020年)5月号・6月号では、新型コロナウイルス感染症に関連する人権問題を取り上げましたが、今月号では、予防のための基本情報や最新の状況、コロナ禍で広がる前向きな取組をご紹介しますので、コロナ禍を乗り越えていくヒントとしていただけると幸いです。
新型コロナウイルス感染症が拡大し、感染者や濃厚接触者、医療従事者、その家族、海外からの帰国者、外国人に対する差別や誹謗中傷が問題となる中で、本県では、新型コロナウイルス感染症に関連する人権侵害を防止するために、昨年から様々な啓発活動を行ってきました。(詳しくはこちらをご覧ください。)
これらの啓発に触れた方からよくご意見としていただいたのが、「差別や誹謗中傷をしてはならないのは理解できるが、それよりも医学的に正しい知識を発信することが大切ではないのか。どの情報を信じたら良いかわからず不安だから、感染を避けようとする心理が働き、差別が起きてしまうのではないか」というものです。
令和2年6月号でも触れましたが、私たちは、不安や恐れを解消するため、目に見えないウイルスから目に見える人や物事へと敵をすり替え、それを排除することで安心感を得ようとします。また、不安や恐れから、何が差別にあたるのかを判断する感覚が鈍り、無意識のうちに差別的な言動やデマの拡散をしてしまうと考えられます。
長引くコロナ禍において、私たちの中にある種の「慣れ」が生じているかもしれません。しかし、先を見通せない閉塞感からくる漠然とした不安や、何が正しい情報なのか分からないという状況は、依然として続いているのではないでしょうか。
感染防止対策のため、そして不安からくる差別や誹謗中傷の加害者にならないためにも、科学的知見に基づいた最新の情報を一人ひとりが知り、ウイルスを「正しく怖がる」のはとても大切なことです。
そこで皆さんには、厚生労働省がとりまとめている「新型コロナウイルス感染症の“いま”についての10の知識」を是非ご覧いただきたいと思います。この「10の知識」は、新型コロナウイルス感染症に関する現在の状況とこれまでに得られた科学的知見について、「患者数・病原性」、「感染性」、「検査・治療」に関する10項目にまとめたもので、月に1回程度更新されます。
特に、感染を予防するため、また、もし自分が感染した場合にそれ以上拡大させないために、「感染性」に関する3項目にはよく目を通しておくと良いでしょう。
併せて、厚生労働省により、一般の方向け、企業(労務)の方向け、労働者の方向け等対象者別の「新型コロナウイルス感染症に関するQ&A」が作成されていますので、こちらも是非ご覧ください。コロナ禍の中、実生活を送るにあたって必要な情報や、労働面の義務・権利等が詳細にまとめられています。
インターネット上には、真偽不明なものも含めて、新型コロナウイルス感染症に関する様々な情報が溢れています。つい身近なSNSの情報を信じてしまうかもしれませんが、中には発信者が事実確認をしないまま無責任に投稿したものや、拡散されるうちに内容がゆがんでしまった投稿もあります。情報収集の際には、厚生労働省や自治体等公的機関の発信する一次情報を選ぶことや、真偽を確認することを意識しましょう。
日々の感染者数ばかりに目が向きがちですが、ウイルスを「正しく怖がり」、対策していくためにも、その時々の状況に応じてどのように感染予防をすべきか、実生活で起こる問題にどのように対処したらよいかということにアンテナを張り、自分や周囲の人を守りたいですね。
先の見えない不安な状況が長引く中でも、自らの置かれた立場で新型コロナウイルス感染症と向き合い、医療従事者等へ支援を行っている方々もいらっしゃいます。
今月号では、地元の病院でコロナ感染者の対応にあたる医師へ取材し、新型コロナウイルス感染症に関する特集記事を組まれた、彦根東高校新聞部を訪問し、編集長の村木さんにお話をお伺いしました。
Q.医療従事者へ取材をしようと考えたきっかけは?
A. 私の父が救急救命士をしており、病院の大変な様子を父から聞いていました。
「彦根東高校新聞」の10月号の企画を考えているときに、「医療従事者の方々のことや、医療の現場の様子をみんな知りたいと思うだろうから、取り上げてみてもいいんじゃないか」、と私が提案したことがきっかけです。6人で医療班を組んで、8月の半ばに取材を行いました。
Q. 医療従事者の方々へ、どのようなことを尋ねましたか?
A. 病院で行われている感染症対策や、高校生ができる感染症対策等を聞きました。
高校生ができる感染症対策として、手洗い・うがいや消毒、マスクの着用を自分ができているかだけではなく、友だちもちゃんとできているか、お互いに声を掛け合おうということを仰っていました。
Q.取材をする中で、印象的だった言葉等はありますか?
A. 患者の数が非常に多くて普段のように患者に接することができず、「新型コロナは災害」だと仰っていたことです。
自分たちにとって、新型コロナは感染症であって、災害は地震や洪水といったことを想像していたのですが、「新型コロナは災害」という考え方に対してはっとなりました。
Q.取材を通して、部員の皆さんはどのようなことを感じましたか?
A.医療従事者の方へのインタビューを通してものことですが、病院内がものすごくピリピリしていて緊張感があり、物々しい雰囲気を肌で感じたので、「ほんまに大変なんやというのがすごく伝わってきた」という話を、部員の間でしていました。
Q. 医療従事者や患者への差別や誹謗中傷が問題となっていますが、取材の際に、そういった差別を受けたという話は聞かれましたか?
A. 医療従事者に対する差別については聞きませんでしたが、患者の方が差別や誹謗中傷を受けているという話は、取材の際に聞きました。退院したのに、差別や誹謗中傷で精神的にダメージを受けている方もいるようです。
Q. 取材のお礼に、医療従事者の方々へ応援メッセージを届けられたそうですね。届けた先の反応はいかがでしたか。
A. すごく喜んでいただけて、「これからも地域のために頑張ります」と仰っていたので、やって良かった、とこちらも嬉しくなりました。
夏から秋にかけては各部活の代替わりの時期で、10月号では新しいキャプテンや部長を紹介するコーナーがあるのですが、その取材に合わせて各部活から応援メッセージを集め、彦根市立病院と県立総合病院へ届けました。
Q. 生徒の皆さんの中には、医師や看護師を目指す方もいるかと思いますが、コロナ禍を経験したことで、進路を考え直した方もいるのでしょうか。
A. 新聞の10月号で、医療系を志望する34人の生徒に、気持ちの変化についてアンケートを取ったのですが、医療系を志望する気持ちが「一層強くなった」「やや強くなった」人が92%という結果でした。
Q. 新型コロナウイルス感染症が拡がってから1年程経った今なお、医療従事者等への差別・誹謗中傷は続いています。差別や誹謗中傷をなくすためにどうしたら良いか、高校生の視点での考えをお聞きしても良いでしょうか。
A. 日々頑張ってくれている医療従事者等に心無い言葉を投げかける人の気持ちが私には分からないのですが、差別をする人たちは、医療従事者の方々がどれほど大変かということを知らないから、そのようなことをしてしまうのではないかと思います。
新聞やテレビ等のメディアが、医療従事者の方がどんな風に大変で、どのようなことを思いながら働いているのかをもっと発信したら、差別や誹謗中傷が減るのではないでしょうか。
ぼんやりと医療従事者は大変、ということは誰もがずっと聞いているとは思いますが、具体的にどのように大変なのか、何を思っているのかを、私たちも含め、伝えていけたら良いなと思います。
Q. 新型コロナウイルス感染症の対応に当たる医療従事者の生の声を聞かれた経験をもとに、「じんけん通信」読者に特に知ってもらいたいこと、届けたいこと等はありますか。
A. 医療従事者の方々への応援の方法はいろいろあると思いますが、一番の方法は、感染予防を一人ひとりがしっかりとして、かからないようにし、医療現場のこれ以上の負担を減らすことだと思います。「密にならない」等に気を付けて、感染予防をしっかりとすることを伝えたいです。
―村木さん、ありがとうございました。
彦根東高校新聞部は、10月号の特集記事以外にも、コロナ禍に柔軟に対応しながら次のような取組をされています。
・昨年春の休校期間中に、教育支援アプリを活用し、在校生へコロナ禍の生活に関するアンケートを行い、「速報新聞キマグレ」で結果を配信
・従来から行ってきた東日本大震災に関する企画を踏まえ、避難所における新型コロナ対策について他県の高校と意見交換 等
速報新聞を読んでも、休校中の過ごし方や、9月入学案の賛否等、単なる感染者の数だけではない多面的な見方で、新型コロナウイルス感染症や社会の変化と向き合っていることが伝わります。
修学旅行の中止や部活の大会の縮小等、これまでの高校生が当たり前にできていたことができずに悲しい思いや不満を抱くこともあるかとは思いますが、高校生の皆さんは、そのような状況にも柔軟に対応し、できることを精一杯されています。
インタビューに答えていただいた村木さんの言葉で印象的だったのは、「医療従事者に対してできる一番の応援の方法は、一人ひとりが感染予防をしっかりと行い、医療現場の負担を増やさないこと」でした。
読者の皆さんの中には、気の緩みから不特定多数での会食に出かけたり、手洗いやマスクの着用がおろそかになってしまっている人もいるかもしれません。日々の行動に注意していて感染してしまうのは仕方のないことですが、感染予防をすることでリスクを下げることはできますし、できる限り感染しないことが望ましいのは確かです。
誰にでもできる手洗いや3密の回避が、医療に携わる方々へのエールにつながるということを認識し、気を引き締め直して過ごしましょう。それと同時に、基本的な感染予防を各々がしっかり行うことで、自分や周囲の人の不安を和らげることもでき、結果的に差別をなくしていくことにつながるのではないでしょうか。
感染者等への差別は絶対に許されないものであることから、本県では、公益財団法人滋賀県人権センターの協力のもと、新型コロナウイルス感染症人権侵害専門相談窓口「新型コロナ人権相談ほっとライン」を開設し、相談を受け付けています。
もし、新型コロナウイルス感染症を原因とした人権侵害を受け、お困りの場合は、下記窓口へご相談ください。
・2月1日~3月18日 サイバーセキュリティ月間
昨今、サイバー空間において国民の個人情報や財産をはじめ、実生活に悪影響を及ぼすサイバー攻撃による被害が深刻化しています。安全・安心な社会の実現のために、サイバー空間の利用者である国民一人ひとりが、意識・理解を醸成し、対策を進めていく必要があります。期間中、政府機関が各種啓発主体と連携し、サイバーセキュリティに関する普及啓発活動を集中的に実施します。
・4日~10日 滋賀県がんと向き合う週間
2月4日の世界がんデーに世界各国でがんに関する啓発行事が行われることから、滋賀県は、2月4日から10日を滋賀県がん対策の推進に関する条例で「滋賀県がんと向き合う週間」と定め、「県民および事業者の間に広くがんに関する理解と関心を深めるとともに、がんの予防、早期発見等に関する自主的な取組への意欲を高める」こととしています。期間中、がんに関心を持っていただけるよう広報等を行います。
滋賀県ホームページ「がん情報しが」
・20日 世界社会正義の日
国際連合は平成19年(2007年)の決議で、この日を制定しました。平成7年(1995年)の「世界社会開発サミット」で採択された宣言の内容である貧困の撲滅や、男女同権、労働者の権利について目標達成に向けた取組の促進を加盟国に働きかけるもので、啓発活動等が行われます。
・21日 国際母語デー
言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的とし、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が平成11年(1999年)に制定しました。
感染予防をしっかりし、思いやりとやさしさの心で
自分や周りの人を守りながら、コロナ禍を乗り越え
いきたいのだー!