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平成31年(2019年)2月(第130号)
3月は自殺対策強化月間です。
月間中は、「誰もが自殺に追い込まれることのない社会」の実現に向けて国や県、市町、関係団体が連携し、広報啓発活動や相談支援が重点的に行われます。
そこで今回は、滋賀県人権相談ネットワーク協議会の講座(2018年10月19日開催)において、滋賀県自殺対策推進センター(精神保健福祉センター)の精神保健福祉士である池田健太郎さんより、「自殺相談の現状と相談対応(ゲートキーパー)について」をテーマに講義いただいた内容(※)を2月号と3月号の前後編2回に分けて掲載します。
前編では、自殺の現状や自殺に至る原因、自殺を減らすための取組について紹介します。
※「平成30年度滋賀県人権相談ネットワーク協議会 第2回講座」の講義内容を基に記事を作成しています。
参考:「滋賀県人権相談ネットワーク協議会」について
県では、さまざまな人権に関する悩みに対して解決のお手伝いができるよう、国、県、市町などの51の関係機関で滋賀県人権相談ネットワーク協議会を組織し、連携を図っています。
■自殺の現状
1日あたり約60人もの尊い命が失われています
平成29年の1年間の自殺者数は全国で21,321人です。近年減少傾向にありますが、1日あたり約60人もの尊い命が失われています。また、世界の中で、日本は高い自殺率となっています。
滋賀県の平成29年の自殺者数は211人でした。
また、年齢別に死因を見てみると、15~44歳を5歳区切りでみたときの全ての年齢階層で自殺が1位でした。特に25~29歳では、全体の死亡者数のうち半数以上が自殺という状況になっています(「H28人口動態調査」より)。
全国の傾向と同じように、滋賀県の自殺者数も減少傾向ではありますが、10代(学生生徒)の自殺者数は横ばいとなっています。
■自殺の要因
社会的な問題が背景に
自殺の原因は何でしょうか。アルコール依存症やうつ病の人、被虐待歴のある人、自殺未遂経験のある人は自殺のリスクが高いという研究結果がありますが、自殺する人全員にそういう要素があったわけではありません。自殺の背景には、個人が弱いから、頑張っていないからといった個人の問題ではない社会的な問題があります。
昨今、子どもの貧困や高齢化、精神疾患の患者数の増加といったさまざまな社会的な問題がありますが、特に大きな問題は「孤独」だといわれています。
「1日にたばこを15本吸うのと同じくらい健康に害を与える」と言われるほど孤独は健康によくないという調査結果もあります。
一人暮らしだから孤独ということではありません。家族と一緒に暮らしていても孤独を感じるというような、「精神的な孤独感」に苦しんでいる人が増えていることが問題と言われています。
また、自殺の原因として、多くの人がうつ病をイメージするかもしれません。しかし実際は、孤独、高齢化など、さまざまな社会的な背景がある中で、いくつもの要因が重なった結果としてうつ病になり、それが自殺につながるということが多いのです。例えば、失業、生活苦、健康問題、家族関係での悩み、いじめ、DV、育児・介護疲れなどのさまざまな要因が考えられます。自殺者の遺族に聞き取りを行ったある調査でも、いくつかの要因が重なり、自殺に追い込まれてしまったという結果も報告されています。
■国や県の取組
自殺対策の本質は生きることの支援
国では、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、平成29年に自殺総合対策大綱を抜本的に見直し、「子ども・若者の自殺対策」「勤務問題による自殺対策」を更に推進することとするなどの変更が加えられました。
「子ども・若者の自殺対策」としては、社会情勢を踏まえて、SNSを活用した相談対応が行われています。
また、県では、「生きることの促進要因」を増やすことを通じて、社会全体の自殺リスクを低下させるために、自殺対策を総合的に推進すること、自殺を身近な課題と認識し、それぞれの立場で取り組む人のネットワークをさらに広げることを目指して
を策定し、さまざまな取組を行っています。
<滋賀県の取組の概要(「滋賀県自殺対策計画」より一部抜粋>
(1)支える人を増やす取組
ゲートキーパー(※)養成研修を実施し、自殺の現状を伝えたり、相談・支援をしている人につなぐ際にどう対応したらよいかを普及しています。
※ゲートキーパーとは悩んでいる人に声をかけて、話を聞き、適切な機関や支援者につないで見守る人のこと
(2)自殺未遂をした方を支援する取組
自殺未遂で病院に運ばれた人は、治療を終えるとそのまま自宅へ帰ります。しかし、身体が治ったとしても、その人の抱える自殺の原因となった問題はそのままであるため、再び自殺を図る危険性があります。
そこで、自殺未遂で病院に運ばれた人を、保健所や市町などの相談機関につなげて自殺を図った要因を取り除く取組を行っています。
(3)遺された方を支援する取組
自死遺族は、身内が亡くなったときにそれだけで大きなショックを受けるのはもちろんのこと、その上、社会的な偏見にさらされたり、近所の人から指を差されたりと、二重、三重に辛く苦しい思いをする方が多くおられます。
そこで、遺族同士で集まって、辛さや体験を分かち合う場とする「 凪(なぎ)の会 おうみ(外部サイトへリンク) (※)」が発足しました。このような場は全国各都道府県に1箇所以上設置されています。
※凪(なぎ)の会 おうみ
大切な人を自死で亡くした遺族が、今の気持ちや、自責や悲しみ苦しみ、これからのことなど様々な想いを語りあう「わかちあい」を行っています。
■開催日時:毎月第3土曜日(申込不要)
午後1時30分 受付開始
午後2時00分 開会予定
午後3時30分 終了予定
■開催場所:アクティ近江八幡2階会議室(近江八幡市鷹飼町南4丁目4番5号)
■参加費:300円
■問合せ先:滋賀県立精神保健福祉センター 電話077-567-5010
後編では、ゲートキーパーの紹介を通じて、さまざまな問題や悩みを抱えた人が自殺に追い込まれないよう私たちにできることについて考えていきたいと思います。
先日、平成30年の自殺者数の速報値が公表されました。
総数は20,598人で9年連続減となりましたが、依然として多くの方が自殺により亡くなっています。
記事ではSNSで相談できる窓口を紹介しましたが、県にも電話で相談できる窓口があります。
また、いじめや労働、障害、病気に関することなど、具体的な悩みを相談したい場合は、悩み別の相談窓口を一覧にしていますので、ぜひご覧ください。
★人権相談窓口のご案内 / 人権相談窓口案内リーフレット