6:収蔵品 澤田九郎吉さんから家族へ

拝啓
十五日午後一時夜中入営しました
身体検査も通り只今一装用の冬・軍服を着て居ます
営内はごった返しです 何が何だか今ではさっぱりわかりません
昔の同年兵や初年兵が沢山這入て居ます
令状の甲が出動で乙が補充隊です
私は甲ですから営内に居ます現役も七、八部出るのだそうです
馬と面会人と兵隊とて大混雑です 先は之迄

拝啓
軍装検査は廿二日に決りました 出発は廿二日の晩か廿三日の朝らしいです
皆にもう一度会いたいが大変でしょうし、会っても別段話もありませんがもし電報でも打ったら来て貰ふ所を知らすから誰でもよいから子供を一人程連れて来て下さい 
此の頃は毎日面会人で大混雑です 
午前十一時半から一時迄と四時から七時迄の二回づつ面会出来るのです
米原か京都か大阪の内を知らすから頼みます
もし知らさなかったら来て貰わひでも宜し、随分長い事の様に思われます 
二十五日大阪出帆との話です

拝啓
廿八日午後いよいよ揚子江河口に達しました
上海に上陸するか後方（揚子江岸）の方に上陸するかわかりません 御用船二五隻が我が駆逐艦に護衛されて来ました 玄界灘の荒波には閉口して船底に寝て居ましたが本日は大元気です
新聞が少しも読めないので上海方面の戦況がわかりません 上陸後は何時手紙が書けるかわかりませんので悪しからず皆様にも宜敷