-夫の出征一週間後に生まれた“待望の愛娘”-
安藤なおさん(大正7年生まれ)安藤良枝さん(昭和18年生まれ)高島市[新旭町]
昭和16年、なおさんは農業を営む太良さんと結婚しました。次々と二人の子を身ごもりますが、どちらもこの世に生を受けることはできませんでした。そんな二人に待望の赤ちゃんが誕生したのは、昭和18年9月19日、太良さん 出征1週間後の事でした。出征する際、太良さんは、まだ見ぬ我が子に良枝と名付け、敦賀連隊に入営したのでした。
良枝さんが生まれて13日目、なおさんは「お金がかかるから」と止める姑さんの言葉を振り切り、良枝さんの写真を撮りました。そして、良枝さんの写真は太良さんの元へと送られたのです。しかし、写真が届いたのは、太良さんが戦地ニューギニアへと旅だった次の日。むなしく写真はなおさんの元に戻ってきました。その後、太良さんは移動の途中で九州に宿泊、その民宿のご主人から「写真を送ってあげてほしい」という知らせが入り、再度、送られましたが、またしても間に合わず、写真は再びなおさんの元に戻ってきたのです。
翌年、太良さんから「今日は元旦だ、ニューギニアに到着した。写真送れ」という手紙が来ました。なおさんは、すぐさま写真を送りました。けれども、写真を太良さんが見ることはありませんでした。