蛇砂川から溢れる水
撮影:滋賀県
9月16日 午前9時20分撮影 提供:県民
ドリームハイツ内の浸水地域 車のヘッドライトの下まで浸水。
ブルーシートは住宅の建築予定地のため、資材を置いてかけてある。
体験者の語り 女性(昭和59年生) 聞き取り日:平成26年6月2日
【聞き取りにおける被害状況】
大型の勢力を保った台風18号は、9月15日から16日にかけ、滋賀県で記録的な大雨をもたらした。16日午前5時5分、初の大雨特別警報が発表された。この台風により、県内各地で河川が氾濫して、浸水被害が多数発生した。
愛知川においても水位が上昇。また、愛知川の支流やその周辺も浸水被害が発生した。
種町ドリームハイツ自治会には16日午前5時18分、東近江市長から避難勧告が出された。住宅浸水は床上9棟床下8棟。
ドリームハイツは、愛知川左岸かすみ堤(ドリームハイツ付近の雨水を愛知川に導くため、昔から堤防の一部に開口部を設けている構造のこと)内に、昭和50年ごろ開発された住宅地。
23年前の平成2年9月の台風19号時には、すぐそばの八幡橋下流左岸と河口近い栗見橋上流左岸で愛知川が決壊した。ドリームハイツ内は、最大深水はおよそ2mで、住宅の床上床下浸水被害に遭っている。
【テレビでしか見たことのない風景】
前日から台風が接近しているということは知っていました。私は県職員として、16日は県庁で水防当番に当たっていたので、どうやってでも出ないといけないという覚悟はできていました。
深夜、何時かわからないけれど永源寺ダム放流のパトロールが回っていました。その後、携帯に、県からの災害メールが届き、種町への避難勧告が出ているのも知っていました。
朝5時半ごろ外の様子を見てみたところ、激しい雨と風で、外には出られなかったけれど、うちのまわりは浸水等はしていませんでした。
水防当番で県庁へ行かないといけないけれど、JRは不通となっており、稲枝の先輩の車に同乗をお願いしました。ところが6時半ごろ、県道大津能登川長浜線から、八幡橋南詰を愛知川堤防沿いにドリームハイツに向かう道の、JR高架下が浸水で通行止めになっているので、こちらに向かえないとの連絡が入り、急きょ、家から少し先の場所で待ち合わせることになりました。
家の周りは通行できる状況だったので、ハイツ内の道を移動しようと家を出ると、数軒先に、東近江市と書かれたバスが止まっていました。その日は敬老の日だったので、思わずそのイベントで迎えに来たのかと思い、横を通り抜けてその先まで行ってみると、そこから見えたのは、ハイツ内に浸水して家が水に浮かんでいるという、テレビでしか見たことのない光景でした。バスは、市が用意して私たちを迎えに来た、避難用のバスだったのです。水深は、1mぐらいはあったと思います。
このあたりでは、バスが止まっていたあたりが高くて、そこから先は下り坂になっているのです。
バスより先の道では、浸水した家の人たちが避難するために、バスへと移動中でした。その辺りには外国人用の寮もあって、10人ぐらいの外国人が市の人の誘導でバスへ移動してましたが、言葉がわからないようで、大変そうでした。
かなり広く浸水していたので本当にびっくりしたけれど、私は急がないといけないので、母とともに引き返して反対方向から約束の場所へ向かいました。途中に見えていた田んぼでは、浸水している様子はなかったように思います。
激しい雨風でしたが、なんとか約束の場所にたどり着き、同乗させてもらって湖周道路を県庁に向かう道中は、すさまじい風と雨で車の揺れがひどく、吹き飛ばされるのではないかと思ったぐらいです。運転している人は、ハンドルを取られて大変そうでした。
途中、何本か川を越えたのですが、どの川も増水していて、すごい勢いで流れていました。道は、水路が溢れそうになっているところも何箇所かあり、怖かったけれど、なんとか通ってきました。
朝6時頃のニュースで、大津の吾妻川が氾濫し、大津駅前・県庁近辺が浸水していると聞いていたので、それを避けようと、国道1号線ではなく湖岸から県庁に行こうと近江大橋を渡ったところ、名神高速道路が通行止めになって下の道に車が流れてきたのと、滋賀県と京都の県境付近逢坂山あたりの国道が、京阪線上への土砂崩れで通行止めになったことから、大津市内湖周道路が大渋滞となっており、そこから県庁までの時間がものすごくかかりました。
同じように早朝出て県庁に来た職員で、近江大橋から1時間かかったという人や、JRが不通で県職員がみな車で来てるため、県庁の駐車場はいっぱいで、止める場所を探すのに時間がかかったという人が何人もいました。
うちの周りは大した被害もなかったので、家族は、午前中は仕事場から待機命令が出ていたけれど、午後からは解除され仕事に行ったそうです。
次の日、近所をまわってみると、浸水したあたりの広場に、ソファや畳などの家財道具が山のように積まれていました。1.5m前後浸水したと聞いているので、1階はほぼ全滅状態だったようです。
平成2年の台風の時も、同じようなところが浸水していたという記憶があります。その時は、私も家族と避難しました。
参考
【東近江市ホームページ「台風18号にともなう本市の対応・被害状況(9月30日現在)」より抜粋】
◆平成25年9月15日
●21時13分・・・大雨洪水警報発表
◆9月16日
●5時05分・・・ 特別警報発表
●5時18分・・・ 種町ドリームハイツ自治会に避難勧告
●11時30分・・・ 特別警報解除
●16時13分・・・大雨洪水警報解除
【県資料―「平成25 年9月15 日台風18 号による被害に関する情報について(第8報)」より】
種町被害状況 床上浸水 9棟 床下浸水 8棟
9月16日早朝 撮影 提供:県民
蛇砂川の氾濫により、大凧通りや手前の田んぼは一面浸水している。浸水深は35cm~40cm。
体験者の語り 聞き取り日:平成26年4月
【聞き取りにおける被害状況】
平成25年9月15日・16日、超大型の台風18号が近畿地方を襲い、記録的な大雨をもたらした。16日午前5時5分、初の大雨特別警報が滋賀・福井・京都に発表された。これまでに体験したことのない猛烈な大雨が降り、各地で河川の氾濫や土砂崩れが起こり、県内全域に未曾有の被害をもたらした。
蛇砂川は鈴鹿山系のふもとを源とし、東近江市(永源寺地区・旧八日市地区)・安土町・近江八幡市を通り、いったん西の湖に流入した後琵琶湖に注ぐ、延長26kmの一級河川。
洪水時に流れる水量に比べ川幅が狭く、また典型的な天井川になっていることから、過去に破堤や溢水・内水による浸水被害等、大災害を引き起こしてきている。
中流域では急激な市街地が進んでいることから、大幅な河川の拡幅が望めず、上流域・中流域の洪水を愛知川に流す新たな放水路を整備中。
体験者の語り1
家の裏の蛇砂川が早朝、氾濫して、少し高いところにある未来ヶ丘(みきがおか)団地から家に向かって、水が流れ落ちてきました。稲刈りの後で、刻まれたワラが多量に流され、あちこちに寄って、水の流れをせき止めていました。
だんだんと上がる水位を、ただ見つめるだけだった。
初めて、災害を、自分の身にも起こることと感じました。昼間だったので外の様子を確認できましたたが、夜だったらどうなっていただろうと思います。
一段低い隠居は、床下浸水でした。
体験者の語り2
近隣の新興住宅地在住。
住宅地のすぐ脇を流れる蛇砂川が溢れ、刈取りの終わった田んぼを飲み込み、道路を水没させ、住宅地に流れ込みました。
幸い我が家は難を逃れましたが、築10年にも満たないお宅が床下浸水に遭われ、胸が痛みました。
後から聞いた話では、何十年も前にも氾濫したことがあるそうですが、新参者の私どもには知る由もありません。普段は存在感の薄い川がもたらした水害に、目の前の光景が信じられませんでした。
今回のことで、災害により、生活道路が寸断されるということも視野に入れた備えが必要だと、考えさせられました。
参考
【東近江市ホームページ「台風18号にともなう本市の対応・被害状況(9月30日現在)」より抜粋】
◆平成25年9月15日
●21時13分・・・大雨洪水警報発表
◆9月16日
●5時05分・・・ 特別警報発表
●5時18分・・・ 種町ドリームハイツ自治会に避難勧告
●11時30分・・・ 特別警報解除
●16時13分・・・大雨洪水警報解除
蛇砂川野田橋地先
9月16日 午前9時51分撮影
提供:県民 蛇砂川野田橋地先
正面の堤防からは大量に、その右側からも水が溢れている。手前の田んぼは一面浸水している状況。
体験者の語り 男性 63歳(昭和26年生) 聞き取り日:平成26年8月
【聞き取りにおける被害状況】
平成25年9月15日・16日、超大型の台風18号が近畿地方を襲い、記録的な大雨をもたらした。16日午前5時5分、初の大雨特別警報が滋賀・福井・京都に発表された。これまでに体験したことのない猛烈な大雨が降り、各地で河川の氾濫や土砂崩れが起こり、県内全域に未曾有の被害をもたらした。
蛇砂川は鈴鹿山系のふもとを源とし、東近江市(永源寺地区・旧八日市地区)・安土町・近江八幡市を通り、いったん西の湖に流入した後琵琶湖に注ぐ、延長26kmの一級河川。
洪水時に流れる水量に比べ川幅が狭く、また典型的な天井川になっていることから、過去に破堤や溢水・内水による浸水被害等、大災害を引き起こしてきている。
中流域では急激な市街地が進んでいることから、大幅な河川の拡幅が望めず、上流域・中流域の洪水を愛知川に流す新たな放水路を整備中。
【蛇砂川が氾濫】
平成25年9月16日早朝、目が覚めてみると、芝原町集落の北側にある蛇砂川の堤防の上に濁流が見え、堤防の低いところから水があふれていた。 道路が堤防になり、溢れた水が集落の方へ押し寄せてきて、堤防と集落の間の田のあたり一面が水浸しになっており、恐怖を感じて、外へ様子を見に行くこともできなかった。
私は、企業を定年退職して農業をしている。9時過ぎに、堤防を越える水の量が少し減ってきたので、農道を通って写真を撮りに行った。
堤防を越えた水は、大凧通り芝原町信号より市街の方向に溢れ、大凧通りは消防・警察により通行止めとなっていた。大凧通りができてから、初めての越水だった。
集落から大凧通りを挟んだ向かい側に、近年新興住宅地が開発されたが、そこの方々は、初めての経験で驚かれたと思う。
このあたりの蛇砂川は、昭和10年代、第2次世界大戦末期に農地を接収して、川の流れを変えて新しく作られたと聞いている。そのため、地元住民は新川と呼んでいる。
川幅が狭いため、大雨になると堤防が決壊したり水が越えてきたりすることがある。毎年、台風シーズンになると地元農家の方々は「雨がたくさん降りませんように」と祈るばかりである。
私の田に流れてきた木や藁・ごみなどは、10日以上かかって自分で取り除いた。他の人も同じで、みな自分で片づけた。
参考
【東近江市ホームページ「台風18号にともなう本市の対応・被害状況(9月30日現在)」より抜粋】
◆平成25年9月15日
●21時13分・・・大雨洪水警報発表
◆9月16日
●5時05分・・・ 特別警報発表
●5時18分・・・ 種町ドリームハイツ自治会に避難勧告
●11時30分・・・ 特別警報解除
●16時13分・・・大雨洪水警報解除