○滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例
平成4年3月30日
滋賀県条例第17号
滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例をここに公布する。
滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 ヨシ群落保全区域(第8条―第17条)
第3章 援助等(第18条・第19条)
第4章 滋賀県ヨシ群落保全審議会(第20条―第22条)
第5章 雑則(第23条―第28条)
第6章 罰則(第29条―第32条)
付則
琵琶湖は、その営々とした自然の営みの中で、様々な人間活動を支え、私たちに限りない恩恵をもたらしてきたかけがえのない資産である。
この琵琶湖が、近年、集水域の都市化の進行などにより水質の改善が進まず、その保全と利用が危惧される事態にあり、私たちとのかかわりも、新しい段階を迎えている。
県民すべての願いである碧い琵琶湖を取り戻すためには、今日までの湖に流入する汚濁の原因となる物質を削減する努力に加えて、湖自身の健全な自然の営みを重視し、その維持と回復に努めることが求められる。今一度、私たちも自然界の一員であるとの認識に立ち返り、県民一人ひとりが、自然にやさしい暮らしを心がけ、自然の生態系の仕組みに目を向けていかなければならない。
その第一歩として、自然と人との共生を目指していく私たち滋賀県民の琵琶湖の保全活動として、湖辺のヨシ群落の保全を進めるものである。
水辺に広がるヨシ群落は、湖国らしい個性豊かな郷土の原風景であり、水鳥や魚の大切な生息場所である。また、湖岸の浸食を防止し、湖辺の水質保全にも役立つなど優れた自然の働きを有している。
ヨシ群落の保全は、琵琶湖を代表する自然を守り、水辺の生態系の保全を図るのみならず、私たちの心の支えである湖国の風土や文化を守る大きな意義を持っている。
私たちは、今後も、それぞれの役割を一層果たすことに努力し、一体となって琵琶湖を守り、美しい琵琶湖を次代に引き継ぐための新たな取組の出発点として、滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、琵琶湖およびその周辺地域におけるヨシ群落の保全に関し、県、県民および事業者の責務を明らかにするとともに、ヨシ群落を積極的に保全し、その多様な機能を発揮させることにより、琵琶湖の環境保全を図り、もって県民の生活環境の向上に寄与することを目的とする。
(一部改正〔平成12年条例82号〕)
(定義)
第2条 この条例において「ヨシ群落」とは、ヨシ、マコモ等の抽水植物(以下「ヨシ等」という。)の群落およびヨシ等とヤナギ類またはハンノキが一体となって構成する植物群落をいう。
2 この条例において「琵琶湖」とは、河川法(昭和39年法律第167号)第4条第1項の規定に基づき、一級河川に指定された琵琶湖をいう。
(県の責務)
第3条 県は、ヨシ群落の保全に関し、基本的かつ総合的な施策を策定し、およびこれを実施するものとする。
2 県は、地域の開発および整備その他のヨシ群落に影響を及ぼすと認められる施策の策定および実施に当たっては、ヨシ群落の保全に配慮しなければならない。
3 県は、ヨシ群落の保全に関し、市町との連携を図るとともに、市町が行うヨシ群落の保全に関する施策との調整に努めるものとする。
(一部改正〔平成12年条例82号・16年38号〕)
第4条 削除
(削除〔平成12年条例82号〕)
(県民等の責務)
第5条 県民、滞在者および旅行者(以下「県民等」という。)は、ヨシ群落の保全に支障を及ぼす行為をしないよう努めるとともに、県が実施するヨシ群落の保全に関する施策に協力しなければならない。
(一部改正〔平成12年条例82号〕)
(事業者の責務)
第6条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、ヨシ群落の保全に配慮するとともに、県が実施するヨシ群落の保全に関する施策に協力しなければならない。
(一部改正〔平成12年条例82号〕)
(啓発)
第7条 県は、県民等および事業者がヨシ群落の保全についての理解を深めるよう、啓発に努めなければならない。
第2章 ヨシ群落保全区域
(指定)
第8条 知事は、琵琶湖および内湖(捷水路を含む。)ならびにこれらの周辺地域において、次の各号のいずれかに該当する区域をヨシ群落保全区域として指定することができる。
(1) ヨシ群落が存在し、自然景観の保全、魚類および鳥類の生息環境の保全、湖岸の浸食防止ならびに水質の保全のために当該ヨシ群落の保全を図る必要があると認められる区域
(2) 自然的条件からみて、ヨシ等を植栽し、保全することにより、ヨシ等が持つ多様な機能を発揮させることができると認められる区域
2 知事は、ヨシ群落保全区域内において、相当規模のヨシ群落が形成されている区域(ヨシ等が存在し、当該ヨシ等を保全することにより、隣接するヨシ群落と一体化してヨシ群落を形成することが可能である区域を含む。)を保全地域として指定することができる。
3 知事は、保全地域内において、優れた状態のヨシ群落が形成され、その生態系の保全を図ることが、特に重要であると認められる区域を保護地区として指定することができる。
4 知事は、ヨシ群落保全区域、保全地域および保護地区(以下「ヨシ群落保全区域等」という。)の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町の長および滋賀県ヨシ群落保全審議会の意見を聴かなければならない。
5 知事は、ヨシ群落保全区域等の指定をしようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その旨を公告し、その案を当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。
6 知事は、前項の規定による公告を行うときは、あらかじめ、説明会の開催等指定の趣旨および内容の周知に関し必要な措置を講じなければならない。
8 知事は、第5項の縦覧期間満了後、ヨシ群落保全区域等の指定に関し広く県民の意見を聴く必要があると認めるときは、公聴会を開催することができる。
10 知事は、ヨシ群落保全区域等を指定するときは、その旨および区域を告示し、その関係図書を公衆の縦覧に供しなければならない。
11 ヨシ群落保全区域等の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。
(ヨシ群落保全基本計画)
第9条 知事は、ヨシ群落保全区域等を指定したときは、当該区域におけるヨシ群落の保全に関する基本計画(以下「ヨシ群落保全基本計画」という。)を決定しなければならない。
2 ヨシ群落保全基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) ヨシ群落の保全のための基本的かつ総合的な方針に関する事項
(2) ヨシ群落の保全のための造成事業および維持管理事業(以下「保全事業」という。)に関する事項
(3) ヨシ群落を活用した環境学習および自然観察に関する事項
(4) ヨシの有効な利用に関する事項
(5) 保全事業の執行体制に関する事項
(6) その他ヨシ群落の保全に関する重要事項
3 知事は、ヨシ群落保全基本計画の決定に当たっては、法令に基づいて策定された国の計画で規則で定めるものとの調和を図るよう努めるものとする。
4 前条第4項から第10項までの規定は、ヨシ群落保全基本計画の決定および変更について準用する。
(一部改正〔平成14年条例60号〕)
(保全事業)
第10条 県は、ヨシ群落保全基本計画に基づき、保全事業を実施するものとする。
2 県以外のものがヨシ群落保全基本計画に基づく保全事業を実施しようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その内容を知事に通知しなければならない。
(行為の制限)
第11条 保全地域(保護地区を除く。以下この条において同じ。)内において、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、知事の許可を受けなければならない。ただし、当該保全地域が指定され、またはその区域が拡張された際既に着手している行為については、この限りでない。
(1) 建築物その他の工作物の新築、改築または増築
(2) 鉱物の掘採または土石の類の採取
(3) 水面の埋立てまたは干拓
(4) 宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更
(5) 立木の伐採
(6) ヨシ等の採取または損傷
(7) 前各号に掲げるもののほか、ヨシ群落の保全に支障を及ぼすおそれのある行為で規則で定めるもの
2 知事は、前項の許可には、当該保全地域におけるヨシ群落を保全するために必要な限度において、条件を付することができる。
3 保全地域が指定され、またはその区域が拡張された際当該保全地域内において、第1項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定または区域の拡張の日から起算して3月以内に、規則で定めるところにより、知事にその旨を届け出なければならない。
4 前3項の規定は、次に掲げる行為については、適用しない。
(1) 非常災害のために必要な応急措置として行う行為
(2) 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で規則で定めるもの
(3) ヨシ群落保全基本計画に基づく保全事業として行う行為
(4) 前3号に掲げるもののほか、ヨシ群落の保全に支障を及ぼすおそれがないと認められる行為で規則で定めるもの
(一部改正〔平成14年条例60号〕)
第12条 保護地区内において、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、知事の許可を受けなければならない。ただし、当該保護地区が指定され、またはその区域が拡張された際既に着手している行為については、この限りでない。
(1) 前条第1項各号に掲げる行為
(2) 木竹の植栽
(3) 動力船または車両(道路交通法(昭和35年法律第105号)による車両(軽車両を除く。)をいう。)の使用
(4) 屋外における物品の集積または貯蔵
4 保護地区が指定され、またはその区域が拡張された際当該保護地区内において、第1項各号に掲げる行為に着手している者は、その指定または区域の拡張の日から起算して3月以内に、規則で定めるところにより、知事にその旨を届け出なければならない。
(普通地域)
第14条 ヨシ群落保全区域のうち保全地域に含まれない区域(以下「普通地域」という。)内において、第11条第1項各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、知事にその内容を届け出なければならない。
2 知事は、前項の規定による届出があった場合において、当該届出をした者に対し、その地域のヨシ等の保全に関し、必要な措置を講ずるよう指導し、または助言することができる。
3 第1項の規定は、次に掲げる行為については、適用しない。
(1) 第11条第4項各号に掲げる行為
(2) ヨシ群落保全区域が指定され、またはその区域が拡張された際普通地域内において既に着手している行為
(中止命令等)
第15条 知事は、保全地域におけるヨシ群落を保全するために必要があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する者に対して、その行為の中止を命じ、または相当の期限を定めて、原状回復を命じ、もしくは原状回復が著しく困難である場合に、これに代わるべき必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。
(3) 偽りその他不正な手段により許可を受けた者
3 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
4 第2項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(一部改正〔平成12年条例82号〕)
第3章 援助等
(削除〔平成12年条例82号〕)
(助言)
第18条 知事は、市町が行う当該市町におけるヨシ群落の保全に関する基本的な方針の策定および当該市町の地域の特性に応じたヨシ群落の保全に関する施策の実施について、必要な技術的助言を行うよう努めるものとする。
2 市町長は、当該市町におけるヨシ群落の保全に関する基本的な方針の策定および当該市町の地域の特性に応じたヨシ群落の保全に関する施策の実施について、知事に対し、必要な助言を求めることができる。
(一部改正〔平成12年条例82号・16年38号〕)
(援助)
第19条 県は、ヨシ群落保全基本計画に基づく保全事業を県以外のものが実施する場合は、予算の範囲内において、当該保全事業に要する経費の一部を補助することができる。
第4章 滋賀県ヨシ群落保全審議会
(設置)
第20条 知事の附属機関として滋賀県ヨシ群落保全審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、この条例の規定により定められた事項を調査審議するほか、知事の諮問に応じ、ヨシ群落の保全に関する事項を調査審議する。
3 審議会は、ヨシ群落の保全に関する事項について、知事に意見を述べることができる。
(組織)
第21条 審議会は、委員15人以内で組織する。
2 審議会の委員は、ヨシ群落の保全に関し学識経験を有する者その他知事が適当と認める者のうちから知事が任命し、または委嘱する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、再任されることを妨げない。
4 補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(委任)
第22条 審議会の組織および運営に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 雑則
(国の関係機関との協議)
第23条 知事は、ヨシ群落保全区域等を指定し、または当該区域を変更しようとする場合において、当該区域内に国またはその機関が管理する公共用物が在するときは、あらかじめ、当該指定または変更について、当該公共用物を管理する国の関係機関と協議するものとする。
2 前項の規定は、ヨシ群落保全基本計画を決定し、または変更しようとする場合について準用する。
(調査研究)
第24条 知事は、ヨシ群落の保全に関する施策の策定および実施に必要な調査および研究を行うものとする。
2 知事は、ヨシの有効活用を図るために必要な調査および研究を行うものとする。
(標識の設置)
第25条 知事は、ヨシ群落保全区域等を指定したときは、当該区域の見やすい場所にその旨を表示する標識を設置するものとする。
(土地の買取り)
第26条 保全地域内に土地を所有する者は、当該土地を県において買い取るよう申し出ることができる。
2 県は、前項の申出があった場合においてヨシ群落を保全するために必要があると認めるときは、当該土地を買い取るよう努めるものとする。
2 県は、第16条第2項の規定による当該職員の行為によって損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償する。
3 前2項の損失の補償に関し必要な事項は、規則で定める。
(規則への委任)
第28条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第6章 罰則
(罰則)
第29条 第15条の規定による命令に違反した者は、30万円以下の罰金に処する。
第30条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
第31条 第14条第1項の規定による届出をせず、または虚偽の届出をした者は、5万円以下の罰金に処する。
付則
1 この条例は、平成4年7月1日から施行する。
2 滋賀県特別職の職員の給与等に関する条例(昭和28年滋賀県条例第10号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
付則(平成12年条例第82号)
1 この条例は、平成12年4月1日から施行する。
2 この条例の施行前に改正前の第17条第1項後段の規定による知事との協議を行った国、地方公共団体その他同項の規則で定める公共団体は、改正後の第17条第1項後段の規定による知事への届出を行ったものとみなす。
3 この条例の施行の際現に改正前の第17条第1項後段の規定によりされている協議は、改正後の第17条第1項後段の規定によりされた届出とみなす。
付則(平成14年条例第60号)
1 この条例は、平成15年4月1日から施行する。
2 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
付則(平成16年条例第38号抄)
1 この条例は、規則で定める日から施行する。
(平成16年規則第66号で平成17年1月1日から施行)