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先天性内反足の治療後に、足の内反、内転あるいは踵がわずかに浮くなどの変形が残る事があります。このように遺残した変形をどのように考えるか、ということははっきりさせておかなくてはなりません。実際にはわずかな変形であれば少なくとも6才頃までは歩行に不自由はなく、スポーツも可能です。したがって多少の内反や内転などの変形は残っていてもよいのではないか?とばくぜんと考える御両親もおられるかもしれません。ここで私達がまとめた成績を報告してこの問題を検討したいと思います。
本センターの前身である小児整形外科センターで先天性内反足の治療をおこない現在20才を過ぎた患者様は15人おられます。年令は20才から22才までです。この15人中、変形が残存した方は6人おられます。いまから約30年前のことですので治療内容は詳しくわかりません。しかし、少なくともまだ距骨下全周解離などはおこなっていない時代ですので、この成績はやむをえないかもしれません。
この変形の遺残した6人中5人の調査が可能でした。この5人中、現在までに遺残変形により持続的痛みを経験しているのは3人です。
痛みを経験している3人中、2人は小学生の頃からスポーツを熱心にしており、足底や足首の痛みを経験しています。他の1人は18才で社会人となり毎日10kgの荷物を運ぶ仕事をはじめてから足の激痛を経験するようになりました。
痛みを経験していない人は2人で、いずれも現在大学生で特別のスポーツや重労働はしていません。
以上、少数例の結果ではありますが、これを簡単にまとめると、内反足治療後の変形が軽ければ、無理なスポーツ・労働を控えれば、すくなくとも20才頃までは痛みは発生しないかもしれません。しかし、変形が強かったり、スポーツ・労働を激しくおこなえば6-10才のころから痛みが発生する可能性が充分にある、ということができます。
典型的な例をお示しします。
先天性内反足で保存療法後、後方解離などの手術を受けましたが、軽度の変形が残存していました。小学校入学時より野球を始めましたが、その頃から足が腫れたりしています。9才時には足底のしつこい痛みが生じています。写真は14才時のものです。一目では分かりにくいのですが、両側の踵がわずかに内反しています。歩行時体重が足の外側に多くかかっているため足底には有痛性のタコができています。14才時にイリザロフ法により矯正をおこないました。