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R-25-12-1T細胞、B細胞の耐性獲得破綻を通じて、多彩な食物アレルギーフェノタイプを説明する➡即時型食物アレルギーと好酸球性胃腸炎、起源は同じ?Hill DA et al. Explaining divergent food allergy phenotypes through failures in T- and B-cell tolerance. J Allergy Clin Immunol 2025; 156: 1511-1513. ★
筆者らはIgE依存性食物アレルギー(IgE-FA)と食物抗原駆動性好酸球性食道炎(EoE)が、共通の免疫学的起点を持ちながら、T細胞およびB細胞の免疫寛容の成立・破綻の違いによって枝分かれするというモデルを提唱。両者は同一抗原を認識し得るが、B細胞寛容が破綻するとIgE-FA、維持されるとT細胞主導のEoEが生じると説明されている。この理論は、経口免疫療法中にEoEが発症することの説明にもつながる。
R-25-12-2アナフィラキシーに対するエピネフリン使用の利益は、潜在的リスクを上回る安全性に関する総説➡ベネフィットはリスクを上回るBernstein DI et al. Benefits of epinephrine for anaphylaxis outweigh potential harm – a safety review. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 3188-94. ★
筆者らはアナフィラキシー治療におけるエピネフリン筋注の安全性を検討し、その利益が潜在的リスクを大きく上回ることを示している。重篤な心血管系副作用は主に誤った静脈内投与や過量投与で生じ、適切量の筋肉内投与では稀である。絶対的禁忌はなく、逆に投与の遅れや未使用は重症化や死亡リスクを高める。恐怖や誤解による使用忌避を是正し、早期投与を徹底すべきであると結論づけている。
R-25-12-3緊急時用のエピネフリンを公共の場に準備すべきか?➡利益とリスクを天秤にかけてCox AL et al. Should emergency-use epinephrine be available in public spaces? J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 3218-20. ★
筆者らは、公共の場における緊急用エピネフリン常備の是非について考察。学校での実績から、個人用がない場合でも迅速治療を可能にし、転帰改善に寄与する可能性が示される。一方、致死的アナフィラキシーは稀であり、費用対効果や実装可能性は場所により異なる。コスト、法的責任、教育体制などの課題を整理し、レストランや空港など高リスク施設での導入検討と、引き続き自己携帯の重要性を提言している。
R-25-12-4アレルギーにおける議論:エピネフリン使用後は必ず救急車を呼ぶべきか?➡低リスクなら不要?Wong LSY et al. Controversies in allergy: Does using epinephrine always mean calling 911? J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 3210^7. ★
アナフィラキシー時にエピネフリン使用後、常に911通報が必要かを考察。多くの症例は早期エピネフリンで軽快し、二相性反応や重篤転帰は低頻度であるため、低リスク患者では自宅観察も選択肢となり得る。一方、重症既往や複数回投与が必要な例、自己管理能力が不十分な場合は即時EMS要請が必須とし、リスク層別化と共有意思決定、教育強化の重要性を提唱している。
R-25-12-5エピネフリン点鼻:アナフィラキシー管理ガイドラインのどこに当てはまるか?➡実臨床での評価はこれからLeeds S et al. Intranasal epinephrine: where might it fit in guidelines for managing anaphylaxis. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 3221-4. ★★
アナフィラキシー治療における新たな選択肢として承認された経鼻エピネフリンの位置づけを概説。健常者を対象とした薬物動態・薬力学データでは、経鼻投与は筋肉内注射と同等の血中濃度や循環動態変化を示し、針を用いない利点から使用頻度の向上が期待される。一方、実臨床や地域での有効性データは限られ、重症例では筋肉内投与が依然重要である。著者らは、患者特性や反応歴を踏まえた共有意思決定に基づく処方と、今後の臨床研究の必要性を強調している。
R-25-12-6FPIESの進展:国際的傾向、新たな発生要因、自然経過➡早期摂取の推進と関連して増加?Anvari S et al. The evolution of food protein-induced enterocolitis syndrome. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 616-625. ★★
IgE非依存性食物アレルギーである食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)の疫学、原因食物、自然経過の変遷を概説。FPIESは乳児期に多いが成人発症もあり、原因食物は地域差が大きい。近年、早期食物導入指針と時期を同じくして卵やピーナッツによる小児FPIESが増加している点が注目される。多くは成長とともに寛解するが、魚介類や成人発症例では遷延しやすい。病態機序やバイオマーカー解明の必要性が強調されている。
R-25-12-7食物アレルギー診療の中へ心のケアの取り込み:AAAAI統合医療委員会のワーキンググループ報告➡心のケアを大切にHerbert LJ et al. Integration of mental health care into food allergy practices: a work group report of the AAAAI integrative medicine committee. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 3227-36. ★
IgE介在性食物アレルギー診療におけるメンタルヘルス支援の重要性を踏まえ、心理職を診療体制に統合するための実践的指針を示したAAAAI作業部会報告。食物アレルギー患者や家族は不安や生活の質低下を抱えやすく、CBTやACTなどのエビデンスに基づく心理介入が有効とされる。外来併診、学際的チーム、専門紹介といった統合モデルや、教育・研究への貢献も含め、包括的ケアの実装方法を提案している。
R-25-12-8食物依存性アナフィラキシーの世界的傾向:アップデート➡変化する世界のアナフィラキシーLeung ASY et al. Global trend of food-induced anaphylaxis: up to date. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70246. ★★
食物誘発アナフィラキシー(FIA)の世界的動向を解説し、地域・年齢・時代による原因食物の変化と新規アレルゲンの出現を整理している。非優先表示の豆類、ソバ、種子、食用昆虫、ガラクトオリゴ糖など新興アレルゲンや、LTP症候群、α-Gal症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシーといった複雑な病態が診断・管理上の課題となっている。さらに、監視体制やアドレナリン自己注射薬へのアクセス、表示制度の地域格差を指摘し、国際的監視強化と公平な対策の必要性を提言している。
R-25-12-9食べることで食物アレルギーを克服しよう➡食物アレルギー治療は運動トレーニングと同じ?Du YJ et al. Eating away at food allergy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70251. ★★
本総説は、増加する食物アレルギー(FA)の予防と治療において、アレルゲン食品を「食べること」自体が免疫を鍛える介入であるとする考え方を提示している。皮膚からの曝露は感作を促す一方、乳児期早期からの経口摂取と継続的摂取は免疫寛容を誘導する(二重抗原曝露仮説)。治療では、加熱食品の摂取や免疫療法により反応閾値を高めることが可能である。これらは運動トレーニングの比喩で説明され、少量から継続的に負荷をかけることで耐容能が向上し、中断すれば効果が低下する点が共通する。特に若年期の介入は、より持続的な効果が期待されると論じている。
R-25-12-10アトピー性皮膚炎における皮膚と腸の細菌叢:病態と治療応用の可能性➡皮膚と腸の細菌が関与Hou B et al. Skin and gut microbiome in atopic dermatitis: mechanisms and therapeutic opportunities. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70265. ★
アトピー性皮膚炎(AD)の発症や重症化における皮膚および腸内マイクロバイオームの役割を概説。ADでは、皮膚の微生物多様性低下と黄色ブドウ球菌の増殖、腸内細菌叢の乱れがバリア機能障害と免疫異常を引き起こし、両者は「腸―皮膚軸」を介して相互に影響し合う。さらに、マイクロバイオームは発症予測バイオマーカーや治療反応指標となり得るほか、プロバイオティクスや皮膚・腸内細菌移植など新規治療標的としての可能性が示されている。
R-25-11-1食物アレルギー:皮膚で始まり、マスト細胞で終わる?Lukacs NW et al. Food allergy: begin at the skin, end at the mast cell? Nat Rev Immunol 2025; 25: 783-797. ★★★
食物アレルギーの感作から発症までの免疫学的機序を体系的に解説。従来、食物アレルギーは腸管内での経口抗原曝露による免疫寛容の破綻が原因と考えられてきたが、近年、皮膚バリア障害を介した抗原曝露が感作の主要経路であることが明らかになった。アトピー性皮膚炎などで皮膚バリアが損なわれると、食物抗原や黄色ブドウ球菌由来毒素が角化細胞からTSLP、IL-25、IL-33などのアラーミンを誘導し、樹状細胞を介してTh2細胞とIgE応答が誘発される。これにより皮膚由来のサイトカインが腸管免疫環境を再構築し、腸管マスト細胞の増殖と感作抗原特異的IgE反応性を高める。再度の経口抗原曝露により、IgE結合マスト細胞が脱顆粒してヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどを放出し、血管透過性亢進、腸上皮バリア障害、下痢やアナフィラキシーを引き起こす。すなわち、皮膚感作が腸管マスト細胞活性化を媒介して食物アレルギー発症を導くという、新たな病態連関モデルを提示している。
R-25-11-2点鼻のエピネフリン:有効性の確認が必要➡アドレナリン点鼻に慎重論Dribin TE et al. Intranasal epinephrine: the need to have confidence in efficacy. J Allergy Clin Immunol 2025; 156: 1435-1436. ★★
経鼻投与型エピネフリン neffy は、健康成人で自己注射製剤と同等の血中濃度を示すが、アナフィラキシー発症時の薬物動態・薬力学は大きく異なるため、その成績のみで有効性を判断できないと指摘する。実臨床での効果を示すエビデンスは乏しく、既報の臨床試験も症例数が限られる。経鼻製剤の普及は望ましいが、安全性と有効性を確立するため、食物負荷試験などを用いた無作為化比較試験と実使用下での検証が不可欠であると強調している。
R-25-11-3乳児期のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの予測、予防、治療のために皮膚バリアが標的となる➡皮膚バリアがカギを握るKim J et al. Skin barrier as a target for the prediction, prevention, and treatment of atopic dermatitis and food allergy in infancy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70238. ★★
乳児期発症のアトピー性皮膚炎(AD)と食物アレルギー(FA)が、いずれも皮膚バリア障害を初期病態として共有することを述べた総説。フィラグリン遺伝子変異、セラミド組成異常、細菌叢の乱れ、Th2サイトカインによる炎症が、経皮感作と疾患発症に関係する。出生コホート研究により、脂質プロファイルやTSLP・IL-13・IL-33などのサイトカインが予測バイオマーカーとなり得ることが示されている。予防としては、ハイリスク乳児への早期スキンケアや環境曝露の回避が検討されているが、効果は限定的である。FA予防では皮膚ケアに加え、食物アレルゲンの早期導入による経口免疫寛容誘導が重要である。将来的には、バリア機能を標的とした個別化された予測・予防・治療戦略の確立が求められる。
R-25-11-4アトピー性皮膚炎に対する新しい局所および全身療法➡新たな治療を紹介Mirali S et al. New topical and systemic treatments for atopic dermatitis. Clin Exp Allergy 2025; 55: 1057-69. ★
アトピー性皮膚炎に対する新規外用薬および全身治療薬の有効性と安全性を概説する総説。従来治療が広範な免疫抑制を伴ったのに対し、最近ではPDE4阻害薬、アリール炭化水素受容体作動薬、JAK阻害薬、生物学的製剤など、より標的を絞った治療が登場している。それぞれの作用機序、臨床効果、安全性について最新エビデンスが整理されている。
R-25-11-5アトピー性皮膚炎に対する新たな治療法アップデート➡個別化治療へ向けてGallagher K et al. New treatments in atopic dermatitis update. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 498-510. ★
本総説では、アトピー性皮膚炎に対する新規外用薬・全身治療薬の最新動向を整理し、有効性・安全性をレビューしている。PDE4阻害薬ロフルミラストやAHR作動薬タピナロフ、外用JAK阻害薬など非ステロイド外用薬の選択肢が拡大し、IL-4/13経路を標的とするデュピルマブ、トラロキヌマブ、レブリキズマブ、IL-31受容体阻害薬ネモリズマブなど生物学的製剤も適応が広がった。さらにOX40/OX40L経路を標的とする新規抗体や多機能抗体など開発中の治療も紹介され、個別化治療の進展を強調している。
R-25-10-1 Siglecsの探索:食物アレルギーにおける免疫細胞の調整役となる可能性とその治療への応用➡食物アレルギー治療にSiglecsという選択肢Schaapherder JSH et al. Exploring Siglecs: potential modulators of immune cells in food allergy and therapeutic applications. Clin Exp Allergy 2025; 55: 889-900. ★
食物アレルギーにおける免疫細胞の抑制性受容体「シア酸結合型免疫グロブリン様レクチン(Siglecs)」の役割と治療標的としての可能性を概説。Siglecsは免疫細胞上に広く発現し、細胞活性化を抑制することでアレルギー反応の制御に関与する。特にB細胞上のSiglec-2、肥満細胞や好塩基球上のSiglec-6、-8の標的化は有望であり、アレルゲン誘発反応の抑制が報告されている。感作相における樹状細胞やT細胞のSiglec(特にSiglec-9)の制御も予防的治療戦略として注目される。多細胞型Siglecを同時に標的化することで、安全性と有効性の向上が期待される。
R-25-10-2咀嚼による離乳食の前処理 ― 乳児の摂食習慣に関するレビューとアレルギーおよびマイクロバイオーム発達への潜在的影響➡リスクとベネフィットありSteinberg A et al. Premastication – review of an infant feeding practice and its potential impact on allergy and microbiome development. Allergy 2025; 80: 2726-2737. ★
離乳期に保護者が食物を咀嚼して与える「プリマスティケーション(前咀嚼)」の文化的背景、リスク、そして潜在的な利点を検討した総説。感染症伝播の危険性が指摘される一方、唾液を介した多様な微生物や免疫因子の伝達が乳児の免疫成熟や腸内・口腔マイクロバイオームの発達を促し、アレルギー予防や経口免疫寛容の形成に寄与する可能性が示唆される。安全に実施すれば、昔からのこの摂食法は現代の食物アレルギー予防に有益な手段となり得るかもしれない、と論じている。
R-25-10-3食物アレルゲンに対する耐性の誘導―若いほど有効➡早期介入の重要性を考察Smeekens JM et al. Induction of tolerance to food allergens – younger is better. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70193. ★★
食物アレルギーに対する「免疫寛容誘導」において、若年期の介入が最も効果的であることを臨床試験と免疫学的機序の両面から総括している。ピーナッツをはじめとする早期食物導入試験(LEAP、EATなど)では、乳児期の摂取が長期的耐性獲得をもたらすことが示され、免疫療法(経口・舌下・経皮)でも若年児ほど持続的寛容(SU)達成率が高い。これは、幼児期の免疫系が可塑性に富み、アレルゲン特異的IgEの多様化が進む前に中和抗体(IgG4)が誘導されやすいためと考えられる。特にIgG4抗体は複数のIgEエピトープを遮断し、長期的耐性維持に寄与する。今後は、IgE多様化の進行を抑えつつIgG4による中和応答を強化することで、食物アレルギーの根本的免疫再構築をめざす新たな治療戦略の確立が期待される。
R-25-10-4 母親の妊娠中食事パターンと児のアレルギーに関する体系的レビュー➡妊娠中に児のアレルギー予防?Tan W et al. Systemic review of maternal dietary patterns during pregnancy and offspring allergy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70217. ★
妊娠中の母親の食事パターンと子どものアレルギー発症リスクとの関連を体系的に検討したレビュー。PubMedなどから2024年11月までの文献を解析し、28報を対象とした。健康的・不健康的な食事パターンや多様性指数を検討した結果、食事多様性の高さは子どもの食物アレルギーリスク低下と関連し(OR=0.95)、炎症性食事パターンは5歳未満での喘息・喘鳴リスク上昇と関連した(OR≈1.17)。一方、他の食事パターンとアトピー性皮膚炎や鼻炎との明確な関連は認められなかった。全体として、妊娠期の食事の質と多様性が児のアレルギー発症に一定の影響を及ぼす可能性が示唆された。
R-25-10-5食物アレルギーにおける心の持ち方➡“副作用”より”前向きのサイン“と捉えようZhou DF et al. Mindset in food immunotherapy. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36:e70218. ★★★
食物経口免疫療法(OIT)における「マインドセット(心構え・心理的態度)」の重要性を論じた総説。ストレスや不安などの心理的要因は免疫反応を増幅し、治療経験や症状の捉え方を通じてOITの効果や継続率に影響を及ぼす。特に症状を「副作用」ではなく「治療が進んでいる兆候」と前向きに捉えることで、治療への遵守や心理的回復力が向上することが示されている。また、若年児では高い順守率と脱感作達成がみられる一方、思春期以降では不安や味覚嫌悪が治療中断の要因となる。親の不安も子どもの心理反応に影響するため、教育と心理的支援の統合が重要である。著者らは、OITの成功には心理学的介入と行動科学の知見を組み合わせ、患者と家族の心的準備を支援することが不可欠であると結論づけている。
R-25-10-6アレルギーまたはアレルギーの思い込み―いつペニシリンアレルギーのテストをするか?Marwah H et al. Allergy or assumption of allergy – when to test for a penicillin allergy. New Engl J Med 2025; 393: 1340-342. ★
具体的症例をもとに、ペニシリンアレルギーの診断と対応方針をめぐる臨床的判断を提示。多くの患者が「アレルギーあり」と誤って記録されているが、実際にIgE依存性の真のアレルギーを有するのは約2%にすぎない。専門医による直接経口負荷試験が安全かつ有効である一方、一般診療での無計画な実施はリスクを伴う。低リスク症例では皮膚試験を省き、監督下での経口投与による再評価が推奨される。不要なアレルギーとの診断は抗菌薬選択を制限し、耐性菌や治療成績の悪化を招くため、誤診を是正し適切な除外評価を行うことが重要である。
R-25-10-7 ピーナッツアレルギーの経口免疫療法:腸管免疫の重要な役割➡腸の免疫が鍵を握るKuehn A et al. Oral immunotherapy of peanut allergy: a critical role for gut-associated immunity. Allergy 2025; 80: 2705-2709. ★★
ピーナッツアレルギーに対する経口免疫療法(OIT)の免疫学的基盤、とくに腸関連免疫の役割に焦点を当てた総説。OITはアレルゲン摂取により免疫寛容を誘導する治療法であり、脱感作効果は高いが、完全な耐性獲得は約1〜2割にとどまる。従来の研究では、Th2細胞やサイトカインの減少、IgG4や粘膜IgAの上昇が治療効果と関連してきた。Arnau-Solerらの研究(2025)では、OIT中の小児患者の末梢血単核球を対象にトランスクリプトームおよびメチローム解析を行い、腸ホーミング性T細胞やILC3、CD8ααT細胞、γδT細胞など腸局所免疫に特徴的な変化を報告した。さらに、腸局所でのIgE産生や腸管バリア破綻、腸内細菌との相互作用が食物アレルギー病態に関与することが示唆された。これらの知見は、OIT成功の鍵として腸粘膜免疫応答とその制御機構を重視する必要性を示しており、今後は単細胞解析などを組み合わせた多層的研究が求められる。
R-25-9-1学校における食物アレルギーの管理:臨床報告➡小児科医がやるべきことSicherer SH et al. Management of food allergy in schools: clinical report. Pediatrics 2025; 156: e2025073168. ★★
米国小児科学会(AAP)が2010年版を改訂し、学校における食物アレルギー管理の最新指針を示した。食物アレルギーは児童の最大10%にみられ、毎年約15校に1校でアナフィラキシーが発生する。報告では、正確な診断、学校との情報共有、個別緊急対応計画の作成、エピネフリン常備の推進、職員研修、アレルゲン曝露の回避、心理的支援の重要性を強調。小児科医は診断・治療計画・教育・法的支援を通じて安全な学校環境づくりに中心的役割を担う必要がある。
R-25-8-1どのアトピー性皮膚炎患者に生物学的製剤やJAK阻害剤を優先投与するべきかを決める➡アトピー性皮膚炎のテイラーメイド治療Kamada M et al. Deciding which patients with atopic dermatitis to prioritize for biologics and Janus kinase inhibitors. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1901-10. ★★
最近の知見をもとに、生物学的製剤とJAK阻害剤の多くの治療選択肢の中からどの患者に何を投与すべきかを提言している。
R-25-8-2最善の食物アレルギー予防、診断および管理の戦略に対する障壁と解決方法➡最善のやり方をいかに普及させるかTilles SA et al. Barriers and solutions to optimal food allergy prevention, diagnostic, and management strategies. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1928-34. ★★
2023年にFARE(Food Allergy Research & Education)が開催したClinical Development Dayで、臨床医、研究者、行政、産業界が食物アレルギー(FA)の予防・診断・治療における課題と解決策を協議した。主な課題は、乳児への早期食物導入の普及率の低さ、経口食物負荷試験へのアクセス不足、診断ツールの限界、経口免疫療法(OIT)の臨床実装の困難さ、臨床試験の多様性不足など。解決策としては、保護者と医療者への啓発強化、グループ負荷試験やOIT導入の効率化、規制の柔軟化、患者中心の意思決定支援、多様な集団を対象とした臨床試験推進が提案されている。総じて、多領域の協力によりFAの負担軽減と患者生活の質向上を目指す必要性が強調されている。
R-25-8-3アレルギー疾患における皮膚‐消化管‐呼吸器細菌叢の役割➡異なる場所の細菌が影響しあうYang L et al. The role of skin-gut-lung microbiome in allergic diseases. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1935-42. ★★
皮膚・腸管・肺における微生物叢の相互作用と、その免疫応答やアレルギー疾患への関与を概説。皮膚や腸管、肺はバリア機能を共有しつつ、常在菌や真菌、ウイルスなどの多様な微生物と共生しており、そのバランスの乱れ(ディスバイオシス)がアトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギーといった疾患の発症や重症化に関与する。さらに、これらの微生物叢は臓器間で相互に影響し合う「皮膚–腸–肺軸」として機能し、宿主免疫の恒常性維持に重要な役割を果たす。近年の研究は、プロバイオティクス、プレバイオティクス、バクテリオファージ療法などの介入により微生物叢を修飾し、疾患予防や治療に応用できる可能性を示している。本総説は、臨床応用に向けた課題と展望を整理し、微生物叢を標的とした新規治療の可能性を強調している。
R-25-8-4鶏卵アレルギー寛解を評価するための段階的アプローチ➡ある3歳女児の場合Agyemang A et al. Stepwise approach to evaluating egg-allergy resolution. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 2206-7. ★
中等度のアトピー性皮膚炎と多項目の食物抗原感作のある3歳女児を取り上げ、鶏卵アレルギーが段階的に寛解していく経過を解説。
R-25-8-5Sharlin CS et al. Food allergy and eosinophilic esophagitis. Oral immunotherapy reveals a disease in flux. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 127-128. ★
食物アレルギーに対する経口免疫療法(OIT)の副作用として発症する好酸球性食道炎(EoE)に焦点を当てた総説。OITはIgE依存性即時型反応を抑制する一方で、消化管有害事象をしばしば伴い、一部でEoEを誘発する。OIT関連EoEは多くが中止で改善するが、持続例もあり薬物療法が必要である。発症には上皮バリア障害と免疫応答の不均衡が関与し、リスク因子の解明とバイオマーカー開発が重要とされる。OIT実施時は倫理的配慮と患者との共有意思決定が求められる。
R-25-7-1IgE依存性食物アレルギー管理における生物学的製剤新しい知見は?➡食物アレルギー治療のこれからGurel DI et al. Biologics in the management of IgE-mediated food allergy. What is new? Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70146. ★★★
オマリズマブを始め、近年IgE依存性食物アレルギーに対して使用が認められた、または使用が検討されている様々な生物学的製剤について解説。近い将来、より個別化された効果的な治療に結びつく可能性も。
R-25-7-2先進国におけるアレルギー予防のための健康的な補完食実施に関するガイダンス:EAACIの検討班からの報告➡離乳食の大切さを再認識Vlieg-Boerstra B et al. Guidance for healthy complementary feeding practices for allergy prevention in developed countries: an EAACI interest group report. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36:e7-150. ★★
乳児期におけるアレルギー予防と栄養を両立させる補完食導入の実践的指針を提示している。生後4〜6か月の間に母乳育児を継続しつつ、ピーナッツや鶏卵などの主要アレルゲンを早期に導入することで、アレルギー感作のリスクを低減できると報告されている。また、多様な食品群の導入は免疫寛容の促進だけでなく、腸内細菌の多様性を高めることが明らかになっており、これはアレルギー疾患の予防および全身的健康に重要な役割を果たす。特に、繊維質や発酵食品の摂取は有益な腸内細菌の定着を助け、バリア機能や免疫調節機能の成熟を促進する。さらに、鉄・亜鉛・ビタミンDなどの微量栄養素の適切な摂取も考慮されるべきである。本ガイドラインは、最新の科学的根拠と専門家の合意に基づき、臨床現場および保護者への実践的な助言を提供している。
R-25-7-3小児におけるアレルギー疾患の経過:行きつく先はわからない?➡アレルギーの経過は思っていたより複雑Kalb B et al. Trajectories of allergic diseases in children: destination unknown? Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70131. ★★
アレルギー疾患の経過は従来言われていた“アレルギーマーチ”よりも複雑で多様である。そこには遺伝的要因と環境因子が関与している。特に上皮バリア障害と細菌叢の乱れが重要である。疾患経過の多様性の理解と、エンドタイプの把握が個別化された治療介入のために必要であり、その取り組みが今始まっている。
R-25-7-4食物アレルギー管理における倫理的配慮乳幼児に注目して➡治療を始める前に考えるべきことBuckey TM et al. Ethical considerations in food allergy management. A focus on infants and toddlers. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 135: 9-10. ★
食物アレルギーについて経口免疫療法やバイオ製剤など新たな治療法が導入されているが、本記事では、1長期にわたる治療の影響が不明、2自然経過で改善が期待できる食品もある、3バイオ製剤の長期投与の安全性が不明、など治療方針を決める前に考えるべき倫理的問題について解説している。
R-25-6-1食事はヒトの免疫システムをコントロールできるか?➡栄養の効果を分子レベルで解明するFleming N. Can your diet control your immune system? Nature 2024; 634: 529-531. ★★
近年、食事と免疫機能の相互作用に関する研究が進展し、従来の曖昧な食事パターン分析から、特定の栄養素が免疫応答に与える影響を分子レベルで明らかにする手法へと進化している。このNature誌の記事では、キチンや高脂肪・低繊維食、絶食、ケトジェニック食やヴィーガン食などが免疫細胞の活性や構成、遺伝子発現に及ぼす影響を動物およびヒト研究に基づき報告して研究の成果をまとめている。例えば、キチン摂取が代謝改善に寄与する免疫経路を活性化する一方、過度な絶食は免疫抑制や感染リスク増加を引き起こす可能性も示唆された。また、短期間の食事変化が免疫細胞に顕著な影響を与えることも明らかとなった。著者らは、こうした知見が将来的に個別化栄養療法として臨床応用される可能性について言及している。
R-25-6-2早期抗原曝露とそのアレルギー疾患リスクへの影響➡食物アレルギーと喘息では違う?Huiwen Them E et al. Early-life allergen exposure and its influence on risk of atopic disease. J Allergy Clin Immunol Pract 2025; 13: 1243-53. ★★
生後早期のアレルゲン曝露がその後のアレルゲン感作の進展に与える影響につき考察。食物抗原については感作や発症の予防になるとのエビデンスが蓄積しているが、吸入抗原については早期曝露の影響は様々な条件によって異なる可能性があり、複雑である。
R-25-6-3母乳中の食物抗原濃度と母体側因子との関連‐系統的なレビュー➡ばらつきが大きいHughes SA et al. Concentration of food allergens in breastmilk and association with maternal factors – a systemic review. Pediatr Allergy Immunol 2025; 36: e70117. ★
17報の過去文献を抽出して、母乳中の食物アレルゲン量と関連する母親の条件を検討。ばらつきが大きく、一定の結論は得られなかった。
R-25-5-1アトピー性皮膚炎:皮膚管理のアップデート:臨床報告➡最新の治療戦略を学ぶSchoch JJ et al. Atopic dermatitis: update on skin-directed management: clinical report. Pediatrics 2025; 155: e2025071812. ★★
小児の20~25%が罹患するアトピー性皮膚炎についての最新の治療戦略について解説。
R-25-5-2腸内微生物臓器の健康状態を評価する:なぜ、そしてどのようにして?➔taxonomyよりもmetabolomics DeLeon O et al. Assessing the health of the gut microbial organ: why and how? J Clin Invest 2025; 135: e184313. ★★
腸内マイクロバイオームを「微生物臓器」として捉え、その健康状態を評価する必要性と方法論について論じている。腸内細菌叢は宿主の免疫・代謝・バリア機能に必須であり、その乱れ(dysbiosis)は多くの疾患と関連するが、臨床で有効な健康指標や診断ツールは未整備である。著者らは、腸内代謝物に着目したメタボロミクス的手法が有望であり、機能的かつ定量的な評価基準の確立がマイクロバイオーム医療の飛躍的進展に寄与すると主張する。
R-25-5-3食物アレルギーで不安の強い患者さんを助けたいですか?近接負荷をしましょう!➡食物アレルギーに伴う不安に認知行動療法のアプローチDahlsgaard KK et al. Want to help your patients with food allergy anxiety? Do proximity challenges! Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 525-582. ★
食物アレルギーの不安が強い患者に対して、認知行動療法の理論に基づいた近接負荷の試みを提案。
R-25-5-4補足的オミックス手法を用いて、アジアとヨーロッパの一般コホートにおけるアトピー性皮膚炎を理解する➡オミックスでアトピー性皮膚炎を理解するYew YW et al. Understanding atopic dermatitis in Asian and European population cohorts using complementary omics techniques. J Invest Dermatol 2025; 145: 1283-93. ★
アジア系とヨーロッパ系という異なる人種間でオミックスデータを比較して、アトピー性皮膚炎の病態や治療ターゲットに迫るアプローチについて解説。
R-25-5-5あなたの食物アレルギー管理を改善する10の方法➡実践できている?Anagnostou A et al. 10 ways to improve your management of food allergy. Ann Allergy Asthma Immunol 2025; 134: 615-618. ★
食物アレルギー管理を改善する10の方法を提示。「エピペン使用後の救急受診は必須ではない」、「学校全体で特定の食品を禁止しても意味がない」など、意外な記載も。