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当科にはアレルギー学会専門医が常勤しており、軽症からアナフィラキシー歴のある最重症例まですべての患者さんの食物アレルギー診療を行い、積極的に食物負荷試験を施行しています。
特に初回負荷や高リスク例を含み、積極的に入院負荷(日帰り)とする事で、より安全に施行しています*1。
当科では食物負荷試験により初期量を確認した上で、その量から開始して数ヶ月毎に少しずつ摂取量を増やしていく、いわゆる段階的解除を行います。この過程で閾値が上昇し、症状が誘発されなくなると期待されます。
なお、この方法は「食物経口負荷試験の手引き」に記載されているほか*2、過去に当施設から発信した総説にも記載されています*3-5。
いわゆる「消化管アレルギー」やFPIES(food protein-induced enterocolitis syndrome)とも呼ばれます。牛乳が原因の場合が多かったのですが、最近では特に加熱卵黄による症例が増加しています*6。
本疾患を正しく診断する、もしくは治ったと診断するためには負荷試験が必要ですが、原因食物を摂取して数時間後に嘔吐が見られる場合が多いため、入院の単回負荷にて5~6時間程度経過を観察します。
FDEIA(food-dependent exercise-induced anaphylaxis)と略されます。この場合は入院負荷にて、原因食物を摂取後にそのまま病室でエアロバイクによる運動を行います。
また最近、経口免疫療法による脱感作(通常量摂取可による解除)後、運動負荷で症状が再燃する症例の報告が増えています(exercise-induced allergic reaction on desensitization:EIARD)*7-11。
当科では前述のように段階的増量による解除を試みますが、その中でも運動誘発歴のある患者や、高リスクであった脱感作例に対して、解除前に積極的に運動誘発試験によるリスク評価をしています。
経過や年齢から完全解除が困難な児に関しても、コンタミによる事故を防ぐ目的で、積極的に少量含有の加工品による負荷試験を行い、可能な限り摂取を継続・漸増しています。
また、当院では龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室と連携して「加工食品のアレルゲン含有量早見表」を参考に、実際の商品の写真や全卵・牛乳・うどんの換算量が一目で分かるパンフレットを作成して摂取可能な市販食品の種類を増やし、食生活の改善に活用しています。
当院には、食物アレルギー分野管理栄養士(日本栄養士会認定)が在籍しており、負荷試験の経過観察時間などを利用して年齢に応じた栄養バランスを考慮した除去食の指導や相談活動を実施しています。
他にも、小児アレルギーエデュケーター(PAE)資格を持つ看護師が3名、アレルギー疾患療養指導士(CAI)資格を持つ看護師が4名在籍しており、日常生活の様々な相談に応じています。
当科では「滋賀県アレルギー疾患医療拠点病院」として、より安全な食物アレルギー診療を心がけています。
軽症例・重症例は問いませんので、患者さんの御紹介をぜひ宜しくお願い致します。
*1食物アレルギー診療の手引き2020
*2食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017
*3楠ら 日小ア誌 2018
*4楠 日本医事新報 2018
*5楠 日本医事新報 2019
*6食物アレルギー診療ガイドライン2021
*7Kusunoki et al. J Investig Allergol Clin Immunol 2014
*8堀野ら アレルギー 2019
*9Furuta et al. Allergy 2020
*10Kubota et al. Pediatr Allergy Immunol 2021
*11Tsuji et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2023