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最新の文献から【基礎的研究】

B-25-1-3 引っ掻きが神経によるマスト細胞活性化を通じてアレルギー性炎症や生体防御を促進する➔引っ掻くことの功罪Liu AW et al. Scratching promotes allergic inflammation and host defence via neurogenic mast cell activation. Science 2025; 387,489. ★★★

アレルゲンで刺激されたマスト細胞がpruritogen(掻痒促進因子)を放出することで神経を刺激してサブスタンスPを産生させ、さらにサブスタンスPがマスト細胞を刺激することでTNF産生が亢進し、アレルギー性皮膚炎症を引き起こす一方で、黄色ブ菌に対する生体防御機構を活性化することを示した。

 

 

B-25-1-1 実験的アレルギー性腸炎における代謝物及び細菌叢に及ぼす高IgEレベルの影響➡IgEが何らかの影響を及ぼすZubeldia-Varela E et al. The impact of high-IgE levels on metabolome and microbiome in experimental allergic enteritis. Allergy 2024; 79: 3430-3447.

実験的にアレルギー性腸炎を起こすマウスモデルを用いて、高IgE産生を起こすIgEノックインマウスと通常マウスで血清中及び便中の代謝物や腸内細菌叢を比較。IgE高値であることはこれらの結果に影響を及ぼすことを示した。アレルギー疾患の診断治療戦略のヒントになる可能性。

 

B-25-1-2 マウスによって受け継がれる共生真菌が2型免疫反応を促進する➡腸内にいる真菌の役割解明に向けてLiao Y et al. Fungal symbiont transmitted by free-living mice promotes type 2 immunity. Nature 2024; 636: 697-704.

マウス腸内の共生真菌 Kazachstania pintolopesii (K. pintolopesii) は野生および実験室マウスで腸内に優勢に存在し、細菌に依存せず安定して定着する。粘膜環境が変化すると、この真菌はIL-33を介してタイプ2免疫応答を引き起こし、寄生虫感染に対する防御を強化する一方、食物アレルギーの悪化を招く可能性も示された。この特性は、真菌共生体が宿主免疫とどのように相互作用し、健康や疾患に影響を与えるかを理解する上で重要である。本研究は、腸内免疫と真菌共生の進化的適応を解明する一助となる。

 

B-25-1-3 IgEによるFcε受容体I活性化の分子的メカニズム➡アレルゲンと出会う前にマスト細胞で起こっていることChen M et al. Molecular mechanism of IgE-mediated FcεRI activation. Nature 2025; 637:453-460.

マスト細胞上のFcε受容体IにIgEモノマーが結合することにより、マスト細胞の分化、成熟が制御される。本研究では、IgE結合後の各コンポーネントの動態を詳細に分析し、抗原非依存性のIgEモノマー結合による受容体活性化の機序を明らかにした。

 

 

B-24-11-1 IL-33で活性化された好塩基球がTh2細胞の肺への進入を調節することにより喘息を促進する⇒好塩基球がゲートキーパーにSchuijs MJ et al. Interleukin-33-activated basophils promote asthma by regulating Th2 cell entry into lung tissue. J Exp Med 2024; 221: e20240103.

マウス喘息モデルを用いた解析により、IL-33で活性化された好塩基球がアレルゲン刺激によるTh2細胞の肺への移動を制御することにより、アレルギー性気道炎症を促進することを示した。

 

B-24-11-2 アレルギー性気道炎症においてアンドロゲンは、グルタミン分解を制限することで、性依存性Th17代謝を抑制する⇒女性で喘息が悪化する理由Chowdhury NU et al. Androgen signaling restricts glutaminolysis to drive sex-specific Th17 metabolism in allergic airway inflammation. J Clin Invest 2024; 134: e177242.

Th17誘導性の喘息は女性に多いことが知られているが、その理由は不明であった。本研究では、女性におけるTh17活性化はグルタミン代謝に依存しており、男性ホルモンであるアンドロゲンはグルタミントランスポーター発現を抑制することによりグルタミン代謝を低下させることで、Th17活性化を抑えていた。女性においてTh17依存性喘息が悪化する説明となる。

 

B-24-11-3 ヒト化マウスにおいて、Lactobacilli、bifidobacteria、及び酪酸によるアレルギー性気道及び消化管炎症の予防⇒腸内細菌の効果をマウス実験で示すKhatri R et al. Prevention of allergic airway and gut inflammation in humanized mice by lactobacilli, bifidobacteria, and butyrate. Allergy 2024; 3150-53. ★★

ヒト化マウスモデルを用いて、プロバイオティクス(BactoFlor® 10/20)や短鎖脂肪酸(酪酸)がアレルギー性炎症を予防する効果を検討。免疫不全マウスに重度のアレルギー患者由来の免疫細胞を移植し、アレルゲンを投与後、これらを経口的に投与した。その結果、腸および肺の炎症が顕著に抑制され、特に腸のバリア機能の回復や炎症関連細胞の減少が観察された。さらに、制御性T細胞の移動が促進され、これが効果の重要な要因であることが示唆された。この研究は、プロバイオティクスやその代謝産物がアレルギー治療の補助として有望であることを示すもので、他の炎症性疾患への応用可能性も示唆される。

 

B-24-11-4 腸内細菌叢の乱れは、ILC2-B1細胞-内因性IgE産生の枢軸形成を通じて、長期にわたるアレルギー素因を促す⇒生直後の乱れが一生涯影響Kabil A et al. Microbial intestinal dysbiosis drives long-term allergic susceptibility by sculpting an ILC2-B1 cell-innate IgE axis. J Allergy Clin Immunol 2024; 154: 1260-76. ★★

正常マウスに生後早期からバンコマイシンを投与して短鎖脂肪酸(SCFA)産生性腸内細菌を減少させると、ILC2、Th2サイトカイン、B1細胞などが上昇し、IgE産生亢進が起こった。このマウスにSCFA(特に酪酸)を補充すると、これらのアレルギー性のフェノタイプは正常化した。

B-24-10-1 γδT細胞‐IL-3枢軸が感覚神経を介してアレルギー反応を制御する⇒痒みがアレルギー反応を亢進させる仕組みFlayer CH et al. Nature 2024; 634: 440-446. ★★★

δ T細胞とIL-3のシグナル伝達経路が、感覚神経を通じてアレルギー反応を制御する仕組みを明らかにした。皮膚のGD3細胞と呼ばれるγδ T細胞のサブセットが、IL-3を産生してアレルギーで誘発される痒みを促進し、アレルギー免疫応答を開始させることが示された。IL-3は、感覚神経のIL-3受容体を介してJAK2およびSTAT5経路を活性化し、神経のアレルゲン応答を高める。この機構により、感覚神経はアレルゲンの検出閾値を低下させ、初期アレルギー免疫応答が誘導される。GD3細胞とIL-3経路の解明により、アレルギー疾患の治療やアレルギー感受性の個人差の理解が深まることが期待される。

 

B-24-10-2 局所的に産生されるIL-2がIL-10と共同で吸入アレルゲンに反応した肺でのTh2細胞の遊走を促進する⇒肺でのTh2分化誘導のメカニズムに迫るHe K et al. Spatial microniches of IL-2 combine with IL-10 to drive lung migratory Th2 cells in response to inhaled allergen. Nat Immunol 2024; 25: 2124-39. ★★★

吸入アレルゲンに対する免疫反応において、肺へ移動するTH2細胞を誘導する分子的メカニズムは不明であった。著者らは、家ダニアレルゲン特異的T細胞に対する時空間的な単一細胞トランスクリプトミクス解析を用いて、TH2細胞の分化と肺への移動における重要な因子を明らかにした。TH2細胞の早期分化には転写抑制因子Blimp-1の発現が必要であり、Blimp-1が欠損すると肺内でのTH2細胞が生成されないこと、またIL-2/STAT5シグナルとアレルゲン特異的T細胞からのIL-10がBlimp-1とGATA3の発現を促進し、TH2細胞の肺への移行を助けることが示された。さらに、リンパ節内のIL-2の局所的マイクロニッチがBlimp-1陽性TH2細胞の形成に重要であることが示唆され、これがアレルギー性喘息の初期段階でのTH2細胞誘導に寄与していると考えられた。

B-24-9-1 IL-33によって活性化された好塩基球が肺組織へのTh2細胞流入を調節することで喘息を促進する⇒IL-33で刺激された好塩基球の新たな役割Schuijs MJ et al. Interleukin-33-activated basophils promote asthma by regulating Th2 cell entry into lung tissue. J Exp Med 2024; 221: e20240103. ★★

マウスモデルを用いて、IgEではなくIL-33で刺激された好塩基球がIL-4産生を通じてTh2反応を増強し、気道炎症を引き起こすことを示した。

 

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滋賀県立総合病院
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