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B-24-10-1 γδT細胞‐IL-3枢軸が感覚神経を介してアレルギー反応を制御する⇒痒みがアレルギー反応を亢進させる仕組みFlayer CH et al. Nature 2024; 634: 440-446. ★★★
δ T細胞とIL-3のシグナル伝達経路が、感覚神経を通じてアレルギー反応を制御する仕組みを明らかにした。皮膚のGD3細胞と呼ばれるγδ T細胞のサブセットが、IL-3を産生してアレルギーで誘発される痒みを促進し、アレルギー免疫応答を開始させることが示された。IL-3は、感覚神経のIL-3受容体を介してJAK2およびSTAT5経路を活性化し、神経のアレルゲン応答を高める。この機構により、感覚神経はアレルゲンの検出閾値を低下させ、初期アレルギー免疫応答が誘導される。GD3細胞とIL-3経路の解明により、アレルギー疾患の治療やアレルギー感受性の個人差の理解が深まることが期待される。
B-24-10-2 局所的に産生されるIL-2がIL-10と共同で吸入アレルゲンに反応した肺でのTh2細胞の遊走を促進する⇒肺でのTh2分化誘導のメカニズムに迫るHe K et al. Spatial microniches of IL-2 combine with IL-10 to drive lung migratory Th2 cells in response to inhaled allergen. Nat Immunol 2024; 25: 2124-39. ★★★
吸入アレルゲンに対する免疫反応において、肺へ移動するTH2細胞を誘導する分子的メカニズムは不明であった。著者らは、家ダニアレルゲン特異的T細胞に対する時空間的な単一細胞トランスクリプトミクス解析を用いて、TH2細胞の分化と肺への移動における重要な因子を明らかにした。TH2細胞の早期分化には転写抑制因子Blimp-1の発現が必要であり、Blimp-1が欠損すると肺内でのTH2細胞が生成されないこと、またIL-2/STAT5シグナルとアレルゲン特異的T細胞からのIL-10がBlimp-1とGATA3の発現を促進し、TH2細胞の肺への移行を助けることが示された。さらに、リンパ節内のIL-2の局所的マイクロニッチがBlimp-1陽性TH2細胞の形成に重要であることが示唆され、これがアレルギー性喘息の初期段階でのTH2細胞誘導に寄与していると考えられた。
B-24-9-1 IL-33によって活性化された好塩基球が肺組織へのTh2細胞流入を調節することで喘息を促進する⇒IL-33で刺激された好塩基球の新たな役割Schuijs MJ et al. Interleukin-33-activated basophils promote asthma by regulating Th2 cell entry into lung tissue. J Exp Med 2024; 221: e20240103. ★★
マウスモデルを用いて、IgEではなくIL-33で刺激された好塩基球がIL-4産生を通じてTh2反応を増強し、気道炎症を引き起こすことを示した。
B-24-7-1 脳幹部のDbh陽性ニューロンがアレルゲンによる気道過敏性を調整する⇒気道過敏性への道筋Su Y et al. Brainstem Dbh+ neurons control allergen-induced airway hyperreactivity. Nature 2024; 631: 601-609. ★★★
マウス喘息モデルの解析を通じて、気道へのアレルゲン曝露がマスト細胞、IL-4、迷走神経などを通じて孤束ニューロンを刺激することを示した。さらに、Dbh陽性孤束ニューロンがノルアドレナリンを介して疑核ニューロンを刺激することで気道過敏性が亢進することを示した。気道過敏性を抑制するための神経調節機構の治療ターゲットとなる可能性。
B-24-6-1 マスト細胞はプロスタグランジンE2によって誘導される可溶性ST2を通じて肺の2型炎症を制御する⇒マスト細胞は2つの顔を持つAlhallak K et al. Mast cells control lung type 2 inflammation via prostaglandin E2-driven soluble ST2. Immunity 2024: 57: 1274-1288. ★★★
マスト細胞はアレルギー反応の要となる細胞と思われているが、本研究では逆の側面を持つことが示された。マウス実験の解析から、アレルギー性気道炎症で上皮細胞から分泌されるプロスタグランジンE2が特定のマスト細胞を刺激して可溶性ST2(デコイIL33受容体)の分泌を亢進させ、IL-33の効果を抑えることでTh2反応を抑制した。
B-24-6-2 GATA3遺伝子の離れたエンハンサー領域がTh2分化とアレルギー性炎症を制御している⇒喘息関連SNPの機能が明らかにKumagai T et al. A distal enhancer of GATA3 regulates Th2 differentiation and allergic inflammation. PNAS 2024; 121: e2320727121. ★★
喘息関連のSNPとして知られるGATA3遺伝子から926~970kb下流にある領域(hG900)の機能を、ヒト検体やマウス実験で検討。本領域がTh2分化やアレルギー性気道炎症にとって重要な役割をしていることを示した。
B-24-5-1 アトピー性皮膚炎における細胞外マトリックスのリモデリングが喘息発症の素地となり、アレルギーマーチに貢献する可能性がある⇒皮膚と肺上皮のクロストークGraff P et al. Extracellular matrix remodeling in atopic dermatitis harnesses the onset of an asthmatic phenotype and is a potential contributor to the atopic march. J Invest Dermatol 2024; 144: 1010-1021. ★★
乳児期のアトピー性皮膚炎からその後の喘息発症に至るアレルギーマーチの機序はまだ充分に解明されていない。本研究では、アトピー性皮膚炎様皮膚疾患モデルと三次元肺上皮モデルの間接的共培養実験を通じて、アトピー性皮膚炎様皮膚から分泌される5つの因子が肺上皮において喘息発症に至るプロセスを示した。
B-24-5-2 PDE4阻害剤の局所塗布が好塩基球からのIL-4産生抑制を通じてアトピー性皮膚炎を改善させる⇒好塩基球が標的Takahashi K et al. Topical application of a PDE4 inhibitor ameliorates atopic dermatitis through inhibition of basophil IL-4 production. J Invest Dermatol 2024; 144: 1048-57. ★★
アトピー性皮膚炎の新たな塗布薬であるジファミラスト(PDE4阻害剤)の作用機序につき、マウスアトピー性皮膚炎モデルを用いて解析。皮膚局所における好塩基球のIL-4産生抑制を通じてその作用を発揮することがわかった。
B-24-5-3 TXA2はTh2、Th9や制御性T細胞分化の調整を通じてアレルギー性肺炎症を制御する⇒TXA2が持つ抗アレルギー作用Li H et al. TXA2 attenuates allergic lung inflammation through regulation of Th2, Th9, and Treg differentiation. J Clin Invest 2024; 134(9): e165689. ★★
トロンボキサンA2(TXA2)は炎症惹起、気道収縮作用を持つため、従来その作用を阻害する薬剤が喘息治療に試みられてきた。しかしながら、本研究では、マウスを用いたin vitro、及びin vivoの実験により、TXA2がTh9やTh2の分化を抑制したり、制御性T細胞分化を促進することにより、喘息抑制効果を持つことを示した。これらのデータは、なぜ今までTXA2阻害薬が充分な効果を得られなかったのかを説明することになるかもしれない。
B-24-5-4 好塩基球はアレルギー性皮膚炎症の進展にとって重要である⇒少ないけど重要Leyva-Castillo JM et al. Basophils are important for development of allergic skin inflammation. J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 1344-54. ★★
好塩基球を欠損するマウスにおけるアレルギー性皮膚炎症モデルを用いた実験により好塩基球が角質過形成、細胞浸潤、経皮感作などに重要な役割を果たすことを示した。
B-24-5-5 長期生存し多機能を持つように遺伝子操作されたT細胞の単回投与によって喘息モデルマウスを長期にわたり寛解導入できる⇒CAR-T細胞の喘息治療への応用Jin G et al. A single infusion of engineered long-lived and multifunctional T cells confers durable remission of asthma in mice. Nat Immunol 2024; 25: 1059-72. ★★★
喘息モデルマウスを用いた実験において、IL-5を標的とし、またIL-4ムテインを産生してIL-4やIL-13シグナルをブロックするように操作されたT細胞(CAR-T細胞)を単回投与することで、マウスを長期間にわたって寛解導入することに成功した。
B-24-5-6 IL1AはIL-33と共同でアレルギー性気道炎症を引き起こす上皮由来のアラーミンである⇒新たなアラーミンを同定Schmitt P et al. TL1A is an epithelial alarmin that cooperates with IL-33 for initiation of allergic airway inflammation. J Exp Med 2024; 221: e20231236. ★★
TNF様リガンド1A (TL1A)が、マウスおよびヒトの気道上皮に恒常的に発現しており、IL-33と共同で気道アレルギー性炎症を引き起こすアラーミンであることを示した。
B-24-5-7 JAL1遺伝子変異を持つ患者が自己免疫、アトピー、腸炎、皮膚炎などの症候群を発症する⇒JAK1遺伝子変異による新たな症候群の同定Horesh ME et al. Individuals with JAK1 variants are affected by syndromic features encompassing autoimmunity, atopy, colitis, and dermatitis. J Exp Med 2024; 221: e20232387. ★
JAK1遺伝子の機能獲得型変異をもつ59名の患者において自己免疫、アトピー、腸炎、そして皮膚炎などで特徴づけられる症候群を発症することを報告。重症アトピー性皮膚炎を発症した1名の患者において、JAK1/JAAL2阻害薬であるバリシチニブ投与が有効であった。