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最新の文献から【基礎的研究】

B-25-11-1共刺激をブロックした条件で経口抗原を投与するとTregが誘導されて免疫寛容が成立する➡CD28阻害で耐性誘導が効率的にArai M et al. Oral antigen exposure under costimulation blockade induces Treg cells to establish immune tolerance. J Exp Med 2026; 223: e20251635. ★★★

著者らは、抗原を含む食事をマウスに与えることで、末梢誘導性制御性T細胞(pTreg)が誘導され、これが全身的な抗原特異的免疫寛容を形成することを示した。これらのpTregは、Foxp3などの制御性T細胞特有のエピゲノム変化を獲得し、安定した抑制機能を示す。また、CD101を高発現する特徴的なサブセットであった。抗原摂取を中止するとpTregが減少し、寛容も失われた。さらに、CD28共刺激シグナルを遮断(CTLA4-IgによるCD80/CD86ブロック)すると、抗原感作済みマウスでも新たにCD101⁺pTregが誘導され、経口抗原による免疫寛容が成立することが判明した。つまり、継続的な抗原摂取と共刺激遮断の組み合わせにより、抗原特異的で機能的に安定したpTregが誘導され、既存の免疫応答を抑える治療的寛容誘導法となり得ることが示された。

 

B-25-11-2マウスにおける実験的アレルギーの予防と治療のための抗原特異的mRNA‐脂質ナノ粒子治療➡予防にも治療にも有効その機序は?Rochman Y et al. Allergen-specific mRNA-lipid nanoparticle therapy for prevention and treatment of experimental allergy in mice. J Clin Invest 2025; 135: e194080. ★★

アレルゲンをコードした修飾mRNAを脂質ナノ粒子(LNP)に封入して投与することで、アレルギー反応を予防・治療できる可能性を示した。マウスの実験的喘息モデル(卵白アルブミンやダニ抗原Der p1)において、アレルゲン特異的mRNA-LNPワクチンはTh2およびTh17型T細胞分化を抑制し、Th1および細胞傷害性CD8⁺T細胞の誘導を促した。その結果、気道の好酸球浸潤、粘液産生、気道過敏性が著しく減少し、IgE産生が低下する一方で、アレルゲン特異的IgG1、IgG2抗体が増加した。単一細胞RNA解析では、肺組織における免疫環境がTh2炎症からIFN-γ優位のTh1型に再プログラムされていることが確認された。さらに、mTOR阻害薬との併用によりCD8⁺T細胞活性を抑制しても抗アレルギー効果は維持された。既存アレルギーに対する治療モデルでも同様の抑制効果と安全性が示され、アナフィラキシー反応は認められなかった。以上より、アレルゲン特異的mRNA-LNP療法は、T細胞分化と抗体応答を制御することでアレルギー性炎症を抑える新規かつ有望な治療戦略である。

 

B-25-11-3 脾臓に存在する長寿命IgE産生形質細胞がIgE応答の持続に寄与する➡IgE産生細胞は脾臓で生き残るMiranda-Waldetario MCG et al. Long-lived IgE plasma cells that reside in the spleen contribute to the persistence of the IgE response. Immunity 2025; 58: 2717-2733. ★★★

著者らは、アレルゲン曝露がなくても IgE 反応が持続する仕組みを明らかにするため、マウスアレルギーモデルを用いて IgE 産生形質細胞(IgE PC)の成熟、局在、寿命を解析した。IgE PC は脾臓とリンパ節で急速に成熟し、BCR 発現低下・高いタンパク合成能・ERストレス応答・抗アポトーシス遺伝子の発現増強など、長寿命化に適応した特徴を獲得する。また IgG1 PC と比較して新規形成が著しく少なく、骨髄への移行も限定的で、脾臓と骨髄の双方に長期間存在することが示された。タイムスタンプ解析では、成熟 IgE PC が数カ月以上存続し IgE 抗体産生を維持してアレルギー持続に寄与することが確認された。

 

B-25-11-4長寿命IgE産生形質細胞はnavitoclax感受性生存プログラムを利用して二次リンパ組織に存在する➡IgE産生細胞は二次リンパ組織で生き残るDing Z et al. Long-lived IgE plasma cells persist in secondary lymphoid tissues using a navitoclax-sensitive survival program. Immunity 2025; 58: 2704-2716. ★★★

著者らは、アレルギーを持続させる IgE 産生形質細胞(IgE ASCs)の寿命構造と生存機構を明らかにした。マウスアレルギーモデルで、IgE ASCsは肺・縦隔リンパ節・脾臓・骨髄に分布し、抗原曝露終了後も新生が数カ月続く一方、多くは半減期3日の短命細胞であった。しかし一部は半減期49日超の長寿命細胞として主に二次リンパ組織に残存し、成熟化しつつもCXCR4発現が低く骨髄への移行が乏しい特徴を示した。また、長寿命IgE ASCsはMCL1よりもBCL2/BCLXL/BCLWに依存し、navitoclaxに高感受性であった。これら短命細胞の継続的産生と長寿命細胞の維持がIgE反応の持続に寄与することが示された。

 

B-25-11-5経皮感作時に黄色ブドウ球菌に曝露することで、好塩基球及びIL-4依存性の食物誘発アナフィラキシーの増悪が起こる➡皮膚のブ菌が食物アレルギーを悪化させる?Das M et al. S.aureus exposure during cutaneous antigen sensitization causes basophil- and interleukin-4-dependent exaggerated food anaphylaxis. Immunity 2025; 58: 2769-2784. ★★★

アトピー性皮膚炎でみられる黄色ブドウ球菌(S. aureus)皮膚定着が食物アレルギーを悪化させる仕組みを解明。患者データでは、S. aureus 定着例で血清IL-4上昇と食物アレルギーの有意な関連が確認された。マウスモデルでは、抗原と同時にS. aureusまたはそのスーパー抗原SEBを皮膚に曝露すると、Th2応答とIL-4産生が増強し、腸管上皮細胞へのIL-4作用により腸管透過性が上昇し、食物経口曝露時のアナフィラキシーが著明に悪化した。また、SEBはCD40依存的にケラチノサイトを刺激してIL-33を誘導し、T細胞のIL-3産生を介して皮膚リンパ節への好塩基球集積を促進し、好塩基球由来IL-4がTh2分極とアナフィラキシーをさらに増強した。これらの結果から、S. aureus–IL-33–IL-3–好塩基球–IL-4軸が食物アレルギー悪化の中心的経路であり、治療標的となり得ることが示唆された。

 

B-25-11-6ピーナッツ経口免疫療法は、持続的脱感作の誘導に伴ってピーナッツ反応性T細胞に単一細胞マルチオミックス変化を誘導する➡持続的脱感作のとき細胞で起こっていることHan X et al. Peanut allergy oral immunotherapy drives single-cell multi-omic changes in peanut-reactive T cells associated with sustained unresponsiveness. Nat Immunol 2025; 26: 2328^2342. ★★★

筆者らは、ピーナッツアレルギー経口免疫療法(OIT)が、ピーナッツ反応性CD4⁺T細胞にどのような変化を誘導し、特に治療中断後の持続的脱感作(SU)と関連する免疫機序を明らかにすることを目的とし、単一細胞RNA・タンパク質発現解析とTCRレパトア解析を行った。OITによりTH2関連表現型とクローン拡大は抑制され、代わってTH1細胞傷害性(CTL)様表現型の増加とクローン拡大が認められた。SU達成者は、治療前のTH2性が低く、OIT後に細胞傷害関連遺伝子シグネチャーの増強およびCD39高発現Tregの増加を示した。これらの所見は、OITによる脱感作誘導において、TH2抑制とTH1細胞傷害性経路の活性化が重要であることを示唆している。

 

B-25-11-7免疫プロテアソームがミトコンドリアの機能を修飾することでILC2反応性を制御する➡ミトコンドリアを介してTh2反応を抑制Lauren P et al. The immunoproteasome regulates ILC2 responses by modulating mitochondrial capacity. PNAS 2025; 122: e2518190122. ★★

著者らは、免疫プロテアソーム(i-20S)がILC2の代謝と機能をどのように制御するかを検討した。ヒトILC2ではβ5i(LMP7)がプロテアソームの大部分を占め、選択的阻害により細胞死を起こすことなくATP枯渇と活性化阻害が生じた。阻害はROS産生を誘導し、TCA回路の要酵素アコニターゼを不活化してミトコンドリア機能を低下させ、IL-5/IL-13産生や増殖を抑制した。これらの変化はROS除去により回復可能であった。マウスのIL-33誘導炎症モデルおよびダニ喘息モデルでも、i-20S阻害はILC2活性化と好酸球浸潤、気道炎症を著しく抑制した。以上より、i-20SはILC2のミトコンドリア代謝を介して2型炎症を制御する中核因子であり、喘息など炎症性疾患に対する治療標的となる可能性が示された。

 

B-25-10-1血小板はマスト細胞と共同でIL-33依存性にアレルギー反応を前に進める➡血小板とマスト細胞が共同作業Nishida A et al. Platelets engage mast cells in a bilateral IL-33-driven feed-forward loop. PNAS 2025; 122: e2512193122. ★

著者らは、IL-33刺激によりマスト細胞がロイコトリエンLTC4を放出し、それが血小板のCysLT2受容体を介して活性化を誘導することを示した。活性化した血小板はATP/ADPを放出し、マスト細胞のP2Y1受容体を介して再びLTC4やPGD2、ヒスタミン産生を増強する「双方向性フィードフォワードループ」を形成する。この経路の遮断はマウスAERDモデルで炎症反応を抑制し、重症喘息治療の新たな標的となる可能性を示された。

B-25-8-1上皮細胞膜の穿孔がアレルギー性気道炎症を誘導する➡アレルゲンに共通の特徴か?Shi K et al. Epithelial cell membrane perforation induces allergic airway inflammation. Nature 645; 475-483. ★★★

特定のタンパク質のみがアレルゲンとなる理由を解明するために、真菌 Alternaria alternata の抽出物を用い、気道上皮細胞におけるIL-33放出機構を解析。小型・大型のアエゲロリシンというタンパク質が細胞膜に大規模な孔を形成し、カルシウム流入とアラーミン放出を誘発し、2型炎症を惹起することを明らかにした。マウスに吸入させると典型的なアレルギー性喘息様反応が生じ、遺伝子改変により孔形成が阻害されると免疫応答も消失した。さらに他種生物由来の孔形成毒素も同様の作用を示し、孔形成がアレルゲンに共通する特性である可能性が示された。これにより、多様な構造をもつアレルゲンの共通基盤が「細胞膜孔形成」にあることが提唱され、新たな治療標的の探索につながると期待される。

B-25-7-1マウス実験において、システイニルロイコトリエンは食物アレルゲンの腸管からの吸収を促進してアナフィラキシーを引き起こす➡腸のロイコトリエンが食物アレルゲンの吸収を促進してアナフィラキシーを誘導Laura R Hoyt et al. Science 2025; 389: eadp0240. ★★★

食物経口摂取を起こしにくいC57BL/6マウスについてforward genetic screenの手法を用いて腸管上皮に発現するDpep1という遺伝子を同定。この遺伝子はシステイニルロイコトリエンを分解する酵素であり、腸管のLTC4、LTD4を分解することで、それらが杯細胞(goblet cell)に作用して食物アレルゲンの細胞内輸送を抑制する働きをしていた。Dpep1の働きを抑制することでマウスは食物経口摂取によるアナフィラキシーを起こしやすくなった。ロイコトリエン合成を抑えることが食物アレルギー治療につながる可能性。

 

B-25-7-2腸管のマスト細胞に由来するロイコトリエンが経口摂取した抗原に対するアナフィラキシー反応を引き起こす➡マスト細胞とロイコトリエンの相乗効果がアナフィラキシーにつながるBachtel ND et al. Intestinal mast cell-derived leukotrienes mediate the anaphylactic response to ingested antigens. Science 2025; 389: eadp0246. ★★★

食物アレルギーマウスモデルにおいて、経口感作と経口チャレンジを繰り返すと、小腸上皮内に局在するマスト細胞がIgE依存性に増加し、ヒスタミン産生能は低い一方でシステイニルロイコトリエン(CysLT)産生が亢進した。CysLT合成酵素(aLOX5、LTC4S)や受容体(CysLTR1、CysLTR2)欠損マウス、またはaLOX5阻害剤投与では、経口抗原によるアナフィラキシー症状が抑制されたが、静脈投与アナフィラキシーには影響しなかった。CysLTはマスト細胞増殖促進と急性反応の両方に関与し、上皮細胞・神経・ILC2細胞などを介して腸局所で反応を増幅させると考えられる。腸局所のロイコトリエン経路が経口アナフィラキシーの鍵であり、その抑制が治療戦略となる可能性を示した。

 

B-25-7-3細胞ネットワークによる共同作業が食物への耐性を制御する➡2種類の抗原提示細胞の共同作業Rudnitsky A et al. A coordinated cellular network regulates tolerance to food. Nature 2025; 644: 231-240. ★★★

食物抗原に対する免疫寛容の成立機構を再検討し、主要な抗原提示細胞が従来考えられていた樹状細胞(cDC1)ではなく、RORγt発現抗原提示細胞であることを明らかにした。これらの細胞はTGFβ活性化を介して食物特異的末梢制御性T細胞(pTreg)を誘導し、炎症性反応を抑制する。一方でcDC1は食物抗原特異的CD8αβT細胞を誘導するが、平常時にはpTregによって増殖が制限される。感染や食中毒の状況下では一時的にCD8 T細胞が拡大し、防御的な効果を発揮するが、その後は再び寛容状態に戻る。これにより宿主は、普段は安全な食物摂取を維持しつつ、感染時には柔軟に防御応答を展開できることが示された。

 

B-25-7-4母乳IgGがマウス新生児免疫システムに関与して腸管内の抗原に対する応答を調整する➡母乳中IgGに食物アレルギー予防効果Shenoy MK et al. Breast milk IgG engages the mouse neonatal immune system to instruct responses to gut antigens. Science 2025; 389: eado5294. ★★★

マウス実験を通じて、母乳中IgGが新生児の免疫調整に重要な役割を果たすことを示した。新生児期に母乳中IgGが腸内細菌と結合して免疫複合体を形成し、補体なども巻き込んで腸内リンパ節の濾胞性T細胞やB細胞の働きを調整。その結果、腸内細菌や食物抗原への免疫反応を抑制し、食物アレルギーや腸炎の発生を抑制していた。

 

B-25-7-5線毛細胞由来のIL-17Dが単球の導入を管理することでアレルギー性喘息を抑制する➡線毛細胞が喘息を予防Yuan L et al. Ciliated cell-derived IL-17D restrains allergic asthma through controlling monocyte recruitment. J Exp Med 2025; 222: e20242328. ★★

マウス喘息モデルを用いた検討により、気道上皮の線毛細胞がIL-17Dを発現していることを確認。IL-17Dは単球のCD93に結合して病的な肺胞マクロファージへの分化をブロックすることにより、喘息のアレルギー性炎症を抑制していることを示した。

 

B-25-6-1T細胞のDOCK8がTh17やTregの機能を促進して、粘膜マスト細胞を抑制し、経口アナフィラキシーに対する感受性を低下させる➡DOCK8が食物アレルギーによるアナフィラキシーを抑える鍵になるJanssen E et al. DOCK8 in T cells promotes Th17 and Treg cell functionality to restrain mucosal mast cells and limit susceptibility to oral anaphylaxis. Immunity 2025; 58: 1794-1810. ★★★

細胞内蛋白であるDOCK8の欠損患者では食物アレルギーを起こすことが知られていた。本研究では、DOCK8欠損がTh17やTregの機能を傷害し、粘膜マスト細胞の増殖や腸内細菌の乱れを引き起こすことを示した。腸内細菌、粘膜上のT細胞、マスト細胞などが協同して食物アレルギーによるアナフィラキシーを制御していることが分かった。

B-25-5-1気道壁の単一細胞空間マップにより、健康および喘息における炎症性細胞エコシステムとその相互作用が明らかに➡細胞の空間配置に違いがJoulia R et al. A single-cell spatial chart of the airway wall reveals proinflammatory cellular ecosystems and their interactions in health and asthma. Nat Immunol 2025; 26: 920-933. ★★

健常者および喘息患者の気道壁における細胞の空間配置と遺伝子発現を、単一細胞空間トランスクリプトーム解析により包括的に可視化した。上皮および粘液腺領域には、アラーミンやケモカインを高発現する細胞群(炎症性ハブ)が存在し、特定の構造細胞と免疫細胞が密接に相互作用していることが示された。とくにACKR1などの受容体が炎症メディエーターの局在保持に関与し、AREG発現肥満細胞がこれらのハブ内で顕著に観察された。抗炎症治療を受けていても、喘息患者の気道粘膜では細胞間距離の減少など組織リモデリングが継続しており、炎症性エコシステムの異常な構築が示唆される。

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滋賀県立総合病院
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