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がんのリハビリテーションについて

がんの治療

がんの3大治療は、手術療法、放射線療法、化学療法が知られています。手術や放射線療法は局所療法、化学療法は全身療法に分類されます。同時に二つ以上の治療を組み合わせることもあります。

リハビリテーションは、障害の予防や緩和、また能力の回復や維持を目的に、あらゆる状況に応じて対応しています。

がんの3大治療

1. がんのリハビリテーションとは?【目的】

がんの療養におけるリハビリテーション(以下、リハビリ)は、患者様の回復力を高め、残っている能力を維持・向上させ、可能な限り今までと変わらない生活を取り戻すことを支援することによって、患者様がその人らしく、満足して生活を送っていただく(生活の質:(QOL)クオリティー・オブ・ライフ)ことを目的に行います。

がんのリハビリは、がんと診断されたときから、障害の予防や緩和、あるいは能力の回復や維持を目的に、あらゆる状況に応じて対応しています。

QOLを大切にする

がんになると、がんそのものや治療に伴う後遺症や副作用などによって、様々な身体的・心理的な障害を受けます。このような状況になったときに「がんになったのだから仕方がない」とあきらめたり、日常生活に支障をきたしたりし、「生活の質」も低下することがあります。これに対して運動などのリハビリをすることで、体力の維持・向上を図り、福祉用具などを取り入れることで、これまでどおりの生活を出来るだけ維持し、自分らしく過ごすことができます。

2. リハビリテーションは、どんながんや障害に対して? 【対象】

リハビリテーションの対象となる障害とがんとの関係

がんに伴う障害は、「がんそのものによる障害を持った方」と「がんの治療過程において起こった障害を持った方」に分かれます。

「がんそのものによる障害」とは

直接的な影響として、例えば脳腫瘍によって手足が動かしにくくなる片麻痺、骨腫瘍による病的骨折、リンパ節腫瘍などによるリンパ浮腫からくる手足のむくみなどがあります。

間接的な影響としては、悪性腫瘍随伴症候群といわれるものがあり、たとえば失調症状といい、ふらつきのため歩きにくくなる状態や筋肉の炎症により筋力低下を引き起こす筋炎などがあります。

社会心理的な影響としては、がんそのものによる症状や治療による副作用が、身体的・心理的な負担をまねくことがあります。

がんそのものによる影響

「がんの治療過程において起こった障害」とは

手術後や化学療法、放射線療法などの際には、状態によっては安静にしなければいけないこともあります。安静に寝ている状態が3日以上続くと筋力は低下し、関節は動かしにくくなってしまいます。この状態から起きようとすると、起立性低血圧といわれるめまいなども起こしやすくなります。こういった安静を保つことによっておこる症状を廃用症候群といいます。

また、化学療法・放射線療法による影響の例としては、末梢神経障害といって手足のしびれがでる。また、嚥下障害といわれる、食べ物や飲み物が飲み込みにくくなる症状があります。

手術による影響としては、胸やお腹の手術後に肺炎などの合併症や、乳がんの手術後に肩が動かしにくくなる肩関節拘縮、頭頸部がん術後に声が出しにくくなる発声障害などがあります。

社会心理的な影響としては、治療のために長期の通院・入院が必要となると、休職など仕事面に影響が出たり、治療費などの経済面での負担を抱えたりすることが考えられます。また、病気自体による症状や、治療による副作用によって、心理的な負担を抱えることがあります。

がん治療過程において起こりうる障害

3. どんなことをするのか? 【リハビリテーションの流れ】

がんのリハビリは、診断された早期からどのような病状や状況、時期でも受けることができます。治療のどの段階においても、それぞれのリハビリの役割があり患者さんが自分らしく生きるためのサポートを行っています。

リハビリテーションの流れ

予防的リハビリテーション

がんと診断された後、早期に開始されるもので、まだ機能障害がない段階からその予防を目的に実施します。治療前や治療後すぐに開始します。

回復期リハビリテーション

起こってしまった機能障害に対して、障害発生を早期より最大限の機能回復を図ります。体力の低下した患者さんでは、離床を援助し、体力を再評価のうえ、適切な運動負荷によるトレーニングを実施します。麻痺や痛み、むくみ、飲み込み・発声困難などに対してそれぞれ専門的な訓練を実施します。必要に応じて、具体的な日常生活動作および仕事・家事に必要な作業を練習します。

治療前にリハビリを受けた人とそうでない人の合併症の発症率や回復力の速さを比較すると、明らかな差があることが証明されています。当院では、手術前に腹式呼吸法や術後の自主練習方法などを事前に指導しています。また、手術前後に筋力や心肺機能の評価を行い、維持・増進を目的にリハビリを進めています。

手術後できるだけ早い時期から離床できるように、痛みがない手術前の時期に十分に説明し、手術後の体がつらい時期も積極的にリハビリに取り組めるような仕組みになっています。

維持期リハビリテーション

がんが増大しつつあり、機能障害や動作能力の低下が進行しつつある患者さんに対して、できるだけ離床と機能維持を図ります。また、動作訓練を継続すると共に、日常生活ですぐに使える便利な道具(福祉用具)類を紹介し、また車椅子移動が必要となった場合は、操作訓練と生活環境の整備を行います。

緩和期リハビリテーション

呼吸苦・疼痛・浮腫の緩和や拘縮・褥瘡の予防を行います。また外泊や一時退院に向けて家族指導や環境整備を行います。

4. 当院でのリハビリパスの流れ 【リハビリテーションの流れ】

開胸開腹術リハビリパスの流れ

開胸開腹術リハビリパスの流れ

5. 参考文献