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不整脈の治療

不整脈とは一般に脈の乱れをさすことが多いのですが、その他にも脈が速くなる場合や反対に遅くなる場合もあります。

脈が乱れる(脈がとぶ)不整脈としては、期外収縮(心室性期収縮、心房性期外収縮)や心房細動があります。期外収縮は無害なことが多いのですが、時として他の心臓病を伴っている場合があり精密検査が必要なことがあります。心房細動も同様に他の心臓病を伴っている場合もあるのですが、その他に脳硬塞の原因になる場合があり治療が必要です。

脈が速くなる不整脈としては、発作性上室頻拍、心房粗動、心室頻拍等があり薬物療法やカテーテルによる治療が必要です。

脈が遅くなる不整脈としては、洞不全症候群、房室ブロックなどがあり人工ペースメーカーによる治療が必要となることがあります。

いずれのタイプの不整脈にしても一度、精密検査の上、治療方針を決定することをお勧めします。

不整脈の検査

  1. 一般的な検査:採血、胸部レントゲン写真

    貧血や電解質異常、ホルモンの異常などが不整脈の原因となっていることがあり採血による検査が必要です。

    また、心臓の病気だけでなく肺の病気などが不整脈の原因となっていることがあり胸部レントゲン写真により心臓の大きさや肺の状態を検査する必要があります。

  2. 心電図検査:12誘導心電図、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図(マスターダブル、トレッドミル検査)
ループ式発作時記録携帯型心電計
植込型ループ式心電計

ループ式発作時記録携帯型心電計(左)と植込型ループ式心電計(右)

検診などでよく行なわれる一般的な心電図検査は12誘導心電図ですが、その検査中に不整脈が生じていなければ不整脈の診断は困難です。それに対し、24時間ホルター心電図は一日ウオークマンのような機械をつけて生活していただくことにより、日常生活においてどれだけ不整脈が出ているかとか症状と不整脈が一致しているかとかを調べることができます。また、運動負荷心電図では活動状態による不整脈の変化や誘発性を知ることができます。

3.心臓超音波検査

超音波により心臓の動きや形、血液の流れを調べることにより、弁膜症や心筋梗塞、心筋症といった不整脈の原因となる心臓病の有無や状態を評価することができます。

4.カテーテル検査(心臓電気生理検査)

心臓電気生理検査:ペーシング刺激にて頻拍を誘発

心臓電気生理検査:ペーシング刺激にて頻拍を誘発

心臓は電気の刺激により動いており、心臓のなかには電気刺激を出す場所とその電気刺激がまんべんなく 伝わるような電気の配線が存在します。体の外からそれらの状態を詳細に把握することは 困難な場合があります。その際には電極カテーテルという細い管を股や首などにある太い血管から心臓に直接挿入し検査することにより詳しく調べることができ治療方針の決定に役立ちます。

不整脈の治療

  1. 薬物療法

    飲み薬により、脈の速さを調節したり不整脈自体を予防したりする治療法です。ただ、人によっては薬が効き過ぎたり薬によって他の不整脈が誘発されたりすることがあり注意が必要です。

  2. カテーテル治療(高周波カテーテルアブレーション)

    カテーテル治療による不整脈の治療は、約20年前より始まりました。器具や技術の進歩、知識の蓄積により最近ではより安全に根治で きる不整脈が増えてきました。対象となる不整脈は、主に脈が速くなる不整脈であり、WPW症候群に伴う頻脈発作や心房頻拍、 房室結節回帰頻拍等の上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍などがあります。

    方法としては、局所麻酔(部分的な痛み止め)で股や首の血管から心臓まで数本の電極カテーテルを挿入し、電気刺激を行ない不整脈の 回路や発生場所を詳細に調べ(心臓電気生理検査)、その回路や発生場所を高周波電流により処置し、根治を図ります。カテーテルによる検査、治療は入院 が必要ですが、簡単なタイプでは、数時間で終了し翌日からは歩行も可能になります。心房細動では、4本の肺静脈の電気的隔離を中心に比較的広範囲の治療が 必要で治療に長時間を要する場合がありますが、心不全や脳塞栓症の予防効果が得られます。最近では治療開始と同時に睡眠剤で寝ていただき、より安楽に受けていただけるようになりました。

CT画像検査の様子
カルトシステム

左房のCT情報を取り込んだアブレーション用3次元カルトシステム(右)

連続性心房電位と同部位通電による心房細動の停止

連続性心房電位と同部位通電による心房細動の停止

通電時

通電時

3.ペースメーカー治療

脈が遅い不整脈に対して、ペースメーカーという器械を体内に植え込むことにより脈の速さを調節する治療です。対象となる不整脈は、洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性心房細動などがあります。

方法としては、入院のうえ手術を受けていただきます。手術は、局所麻酔で胸の皮膚の下にマッチ箱よりも小さいくらいの機械(ペースメーカー)を植え込み、近くの血管を介して心臓まで電気刺激を感知したり伝えたりする電線を留置します。手術自体は1~2時間で済みます。

退院後は、機械の調子をみたり電池の残り具合を観察するために定期的な外来通院が必要です。病態によって異なりますが、電池は5年から10年くらいもちます。

4.植え込み型除細動器

近年、薬や他の治療により予防が困難な致死性不整脈(血圧が下がって意識が無くなったり、そのまま放置したら命に関わる不整脈)に対して、電気刺激や電気ショックでその不整脈を治療する機械を体内に植え込む治療があります。対象となる不整脈は、一部の心室頻拍や心室細動といった命に関わる危険な不整脈です。植え込む方法や、植え込んだ後のアフターケアについてはペースメーカー治療とほぼ同様ですが、ペースメーカーよりも多機能であるため機械はペースメーカーよりも大きくタバコの箱よりもやや小さいくらいの大きさです。ただ し、技術の進歩に伴い小型化が進んでいます。

5.両室ペースメーカー

心筋梗塞や拡張型心筋症など心臓の収縮が低下した方で、心臓内の刺激を伝える繊維の障害(左脚ブロックなど)のためにいっそう心臓の働きが低下し心不全が悪化している場合があります。こうしたケースでは、左心室と右心室を同時に刺激できるペースメーカーを埋め込むことにより、心機能を改善し日常生活の行動範囲が拡大できることがあります。ペースメーカーは従来、脈の遅い方の治療器具でしたが、心不全の治療器具としても応用できるようになりました。

さらに、除細動機能の付いた両室ペースメーカーも登場し、不整脈と心不全の両者が1台の装置で治療できる場合もあります。

当院は平成16年8月より埋込型除細動器、両室ペースメーカー埋め込みの施設基準を取得し、新たな心臓病治療を開始しています。

最近ではペースメーカーやICDなどのデバイスの遠隔モニタリングを開始し、 自宅でのデバイスの作動状況ばかりでなく不整脈や心不全の状況までも在宅のままで情報収集することができるようになりました。

遠隔モニタリング

まとめ

不整脈の治療においては、心臓病以外の病気が原因で不整脈を生じている場合は、不整脈の治療より原因である病気の治療が優先されます。また、不整脈でも全ての不整脈に治療が必要なわけでは無く、治療の必要のない不整脈もあるので医師とよく相談していただく必要があります。