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ロボット支援下手術について

腹式手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下腹腔鏡手術の特徴

 子宮全摘術ではどうやっておなかの中の操作を行うか、手術の方法には腹式(開腹)、腹腔鏡下、ロボット支援下腹腔鏡下手術の3種類があり、いずれも保険適応です。それぞれの方法には、利点と問題点があり、どの方法が適しているかは、一人ひとりの患者さんの病状、術式、既往歴、合併症、手術中のリスクの低減などを検討して、提案いたします。

(1) 腹式手術(開腹手術)

 下腹部を縦にあるいは横に切開し、お腹を開いて手術をします。
 子宮が大きい、病変が尿管や主要な血管と近接している、腹腔内の癒着が強いと予想される、などの場合、手術による合併症のリスクが増加するため、開腹手術の適応となります。

◯利点:

直接手で触れるため、出血や他臓器損傷などの合併症が生じた時に迅速に対応しやすい。

▼問題点:

創部が大きくなるため、術後の回復に時間がかかります。術後癒着の頻度が高くなります。

(2) 腹腔鏡下手術

◇具体的な手順:

 臍、左右下腹部(腰骨の突起の部分)のやや内側2ヶ所、下腹部中央に5〜12mmの切開をし、そこにトロッカーという筒状の装置を腹腔内に通し、炭酸ガスで腹腔内を膨らませます(気腹といいます)。内視鏡カメラ、鉗子をトロッカーに通して、腹腔内で手術操作をします。通常、切除した臓器は創部あるいは膣を通して摘出します。

◯利点:

 出血量が少なく、輸血の可能性が少なくなる、傷が小さく術後の痛みが少ない、腹腔内の癒着が開腹術よりも少ない、術後の入院日数が少なく、早期に退院できる、合併症が少なく身体の負担が小さい、術後の日常生活への復帰が早いなどです。

▼問題点:

 子宮が大きい場合、強度の癒着がある場合は、腹腔鏡下での操作に難渋することがあり、尿管、膀胱、血管などの他臓器損傷のリスクが高くなります。
 気腹に伴う合併症が起こる可能性があります(皮下気腫形成、炭酸ガス塞栓など)。
*腹腔鏡下手術を選択した場合でも、手術中の出血、お腹の中の癒着の程度、病変の摘出が困難、他臓器損傷の発生などの理由により、術者の判断で開腹手術に切り替えることがあります。

(3) ロボット支援下腹腔鏡手術

 ロボットを介して、腹腔鏡手術をする方法です。婦人科疾患に対するロボット支援下腹腔鏡手術は2018年に保険適応となりました。この手術のメリットは腹腔鏡下手術と同様ですが、コンピューターに制御されたロボットを介することで、腹腔鏡手術よりも術者の疲労が少なく、より安定した手術操作ができることです。

◇具体的な方法:

 お腹の皮膚切開創は、臍の高さに約1cmの切開が5ヶ所横一列に並びます。これらの切開創にトロッカーという筒状の装置を腹腔内に通し、炭酸ガスで腹腔内を膨らませます(気腹)。内視鏡カメラ、鉗子をトロッカーに通して、手術のロボットアームに接続します。患者さんから数メートル離れた場所にある器械を術者が操作し、ロボットに接続した機器を腹腔内で操作して、手術をおこないます。

◯利点:

 ロボット手術の鉗子には関節があるため、動きがスムーズとなり、緻密な操作が可能です。手振れ防止機能があること、画像が立体的で、最大10倍に拡大して見ることができるため、安定した繊細な手術操作ができます。

▼問題点:

 腹腔鏡の問題点と同様でさらに以下の点に注意します。
 ロボットアームが体に強く接触した場合、打撲などが起きる可能性があります。
*ロボット支援下腹腔鏡手術を選択した場合でも、手術中の出血、お腹の中の癒着の程度、病変の摘出が困難、他臓器損傷の発生、器械の故障などの理由により、術者の判断で開腹手術に切り替えることがあります。

ロボット手術のメリット