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腹腔鏡手術とは、小型カメラ(内視鏡)と細い鉗子を用いてお腹の中の手術をする方法です。手術の内容は従来からある『開腹手術』と同じですが、腹腔鏡手術では、直径5mmから1cm程度の小さなキズを通して挿入した細いカメラや鉗子を使って手術を行います。このため開腹手術とは違って、腹腔鏡手術では術後のキズが殆ど目立ちません。
現在殆どの婦人科良性疾患に対して、腹腔鏡手術は保険適応されています。
具体的には
などが挙げられます。
婦人科悪性腫瘍に関しては、現在初期の子宮体がんに対する腹腔鏡手術が保険適応されています。一方子宮頸がん、卵巣がんに対しては現在のところ保険適応にはなっておらず、一部の施設で高度先進医療として腹腔鏡手術の導入が進められています。初期子宮体がんに対する腹腔鏡手術に関しては、平成27年10月より当院も施設認定を受け実施可能になりました。子宮頸がん、卵巣がんに対する腹腔鏡手術は現在のところ当院では行っていません。
腹腔鏡手術の特徴は、なんと言っても従来の開腹手術に比べてお腹に残るキズが小さいことです。このため腹腔鏡手術は
という点が大きな利点として挙げられます。
その他には、
といった利点もあるとされています。
それでは腹腔鏡手術はあらゆる点で開腹手術より優れているのでしょうか?
開腹手術では通常2人~3人で手術を行いますが、お腹のキズを通して、全手術スタッフの両手を使って手術を進めることができます。
一方腹腔鏡では通常お腹の3~4カ所の小さなキズを通して手術を行いますが、このうち1カ所は観察用の内視鏡が占拠してしまいます。このため手術操作に使える手(実際は細い鉗子になります)は全部で2~3本しかなく、腹腔鏡手術では手術手技が開腹手術よりかなり制限されます(キズの数を増やせば良いのですが、そうすると腹腔鏡の美容上の利点が損なわれてしまいます)。
その他では、内視鏡で見える範囲は開腹手術に比べて狭いため、見えないところで異変が起こった場合に発見が難しかったり、手術時間が開腹手術より長くなる傾向があると報告されています。
腹腔鏡はこれまでご説明した通り、従来の開腹手術に比べて多くの利点があります。その一方で、腹腔鏡は限られた視野で限られた数の手術器具で手術操作を行うため、開腹手術であれば生じにくい合併症が起こることもあります。つまり腹腔鏡手術は、順調に手術が問題なく終われば「キズも目立たず、楽で、早く退院できた。」すばらしい手術なのですが、いったん合併症が起こると「こんなはずじゃなかったのに・・・。」といった困ったことになる可能性があります(勿論合併症の頻度はそう高いわけではありません)。腹腔鏡手術が「キズの小さい楽な手術である」ことは大半の患者さんにおいて事実であっても、「安全で確実な手術である」とは断言できないことを十分ご理解頂く必要があります。
また、現在当施設には婦人科内視鏡技術認定医は在籍しておりません。このため当施設では、安全性を十分に評価した上で患者さんに腹腔鏡手術をお勧めするように心がけています。治療前の評価で難易度の高い腹腔鏡手術が必要であると判断した場合には、他の医療施設にご紹介することがありますことをご了承ください。