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輸血検査は安全な輸血を行うための重要な検査です。
輸血検査室では血液製剤の管理から検査までの一元管理を24時間体制で行っています。
輸血療法とは血液中の成分(赤血球、血小板、血液凝固因子など)が、少なくなったり、 働きが悪くなったりした時に、その成分を補うことを目的とする治療の方法(補充療法)です。
輸血療法は一定のリスクを伴うことから、リスクを上回る効果が期待されるかどうかを十分に考慮し適応を決めます。 輸血を行う前には必ず血液型と適合性を検査し、輸血副作用の予防に努めます。安全な輸血のために、輸血検査では次のような検査を行っています。
血液型ごとにラベルの色が異なります。
最もよく知られているABOとRhを調べる検査です。
ABO血液型検査は、赤血球と血清(または血漿)を別々に検査し、両方の結果から総合的に判定します。Rh血液型検査は、赤血球の表面のD抗原の有無を調べます。
抗原と抗体の両面から検査し、ABO血液型を確定します。
今日、Rh抗原は非常に複雑ですが、一般には C ・ c ・ D ・ E ・ e などの抗原がよく知られています。Rh陽性やRh陰性という表現は、これらのうちD抗原がある場合をRh陽性、ない場合をRh陰性としています。ABO血液型とは異なり、D抗原が無くても最初から抗Dは存在しません。 抗Dは妊娠や輸血でD抗原が体内に入ってきたときに作られる場合があります。
日本人のRh陰性の頻度は0.5%で、白人の頻度15%に比べると相当低い率となっています。
日本人では Rh 陰性は200人に1人、AB型は10人に1人ですから、例えば AB型で Rh 陰性の人は2000人に1人となります。
血液型 | A型 | O型 | B型 | AB型 | 計 |
---|---|---|---|---|---|
出現頻度 | 4/10 | 3/10 | 2/10 | 1/10 | 10/10 |
Rh(-)を加味した出現頻度 | 4/2000 | 3/2000 | 2/2000 | 1/2000 | 1/200 |
赤血球製剤を輸血をする際に、必ず受血者(患者)の血液と供血者の血液(主に血液センターより供給を受けたもの)が適合しているかを調べる検査です。受血者(患者)の血清と供血者の赤血球を数種類の方法で混ぜ合わせて、凝集や溶血がなければ適合血として輸血されます。同じ血液型でもABO式やRh式以外の血液型の不一致や、不規則抗体が存在することで不適合になる場合があります。
赤血球には ABO 血液型や RhD 血液型以外にも多くの血液型抗原が存在します。
ABO 血液型以外の抗原に対する抗体を不規則抗体といいます。抗 D 抗体も不規則抗体のひとつです。不規則抗体の中には反応する抗原を持つ赤血球を輸血すると副作用(赤血球の寿命が短くなる、赤血球が破壊され発熱や黄疸になるなど)を
起こすものがあります。
妊娠や輸血経験などで受血者(患者)の血液中に不規則抗体が産生されることもあります(妊娠や輸血歴がなくても産生される場合もあります)。
特に輸血の際に問題となる不規則抗体が存在する場合、事前に適合血を用意することになります。この問題となる不規則抗体の有無、種類を検出する検査です。
* 同種血輸血による感染などの問題を避けるため、予め受血者(患者)の血液を採っておき、輸血時に戻す自己血輸血という方法もありますが、全身状態等一定の適応基準を満たす場合に限られます。
手術までに時間があり、重篤な合併症を有しておらず全身状態が良好な場合に、 予め自分の血液を貯めておき、輸血が必要になった際に使用します。
自分の血液を使用することにより、献血由来の血液製剤使用に伴う有害事象(アレルギーや感染症など)を回避することができます。
血液製剤は血液センターにおいて、できる限りの感染症検査を実施していますが、輸血による感染症の伝播を完全に防ぐことはできません。そのため、輸血前の患者さんの血液を2年以上-20℃以下で保存しておき、患者さんに輸血による感染症の発生が疑われた際、確認検査に使用します。また、患者さんが使用した血液製剤の記録を20年間保管しておき、献血者や医療機関からの情報提供による遡及調査に対応しています。