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がんの治療

このページには、「がんの治療」についてのQ&Aを掲載しています。

(1)標準治療とは何ですか。

 治療を受けられる時点で、最も効果が高いことが科学的に証明された治療法のことです。

 治療法は、患者さん個々の考え方や人生観などに基づいて決められるものですが、標準治療を知っていれば、他の治療法と比べてどういうメリットがあるのか判断できたり、あるいは、科学的根拠に乏しい治療法を避けたりできます。

(2)【手術療法】 手術を受けることになりました。手術の日まで、どのようなことに気をつけて生活するのがよいですか。

 手術の日まで、とても心配で長く感じられると思いますが、普段通りの生活を心がけましょう。

 体力増進のためにも食べたいものを食べ、適度な運動をして気分転換を図るのがよいでしょう。風邪の予防と禁煙は今まで以上に注意して行いましょう。糖尿病や虫歯の治療はすませておくことをお勧めします。

(3)【化学療法】 抗がん剤治療はどのような効果がありますか。

 抗がん剤を使用してがん細胞を死滅させる方法を、一般的に化学療法といいます。

 飲み薬や注射薬によって全身へくまなく抗がん剤を行き渡らせることにより、全身に広がっていると考えられるがん細胞の死滅を促します。
 抗がん剤の副作用等により化学療法が中断することがないように副作用症状を和らげる支持療法を併せて行います。

 なお、薬の副作用等については、抗がん剤Q&Aをご参照ください。

(4.1)【放射線療法】1. 放射線治療とはどういうものなのでしょうか。

 放射線治療はがんの治療で重要な役割を果たしており、手術(外科療法)、抗がん剤(化学療法)と並びがん治療の3本柱となっています。
 放射線には細胞の遺伝子情報を持つDNAを切断することにより、細胞を障害し死に至らせる作用があります。放射線治療はこの放射線の作用をがんに引き起こしてがん細胞を殺して治すという治療です。
 放射線治療は体の外から放射線を照射する外部照射と放射線を出す小さな腺源を病巣付近に入れて体の中から照射する内部照射がありますが、その多くはリニアック(直線加速器)装置に代表される外部放射腺治療装置を使った外部照射で治療されます。
 放射線治療は手術と同じく、がんとその周辺のみを治療する局所がん治療ですが、手術のように腫瘍といっしょに臓器を摘出する必要がなく、身体の形や機能を損なうことなくがんを治療することが可能です。がんの種類や状態ですべての方に有効というわけではありませんが、うまく用いれば「切らずに治すがん治療」と言っても過言ではありません。
 このように、体への負担が少ない優しい治療ですので、ご高齢の方や合併症があって手術が受けられない方でも治療できることが多いのです。

(4.2)【放射線療法】2. どんな時に放射線による治療は行われるのですか。

 放射線治療が行われる場合および治療目的は、大きく分けてがんを治癒させることが目的の治療(根治的放射線治療)とがんによって起こっていいる症状を和らげるための治療(緩和的放射線治療)の2つに分けられます。
 根治的放射線治療は放射線治療単独で行われる場合もありますが、しばしば抗がん剤を併用して行う化学放射線治療として行われます。
 また、手術と併用する場合もあります。手術との併用には、手術前にがんを小さくし、手術を最小限にすることを目的とする術前放射線治療や手術後に再発予防を目的として行われる術後放射線治療があります。再発や転移が起きてしまった場合でも放射線治療で根治ができる場合もあります。

 緩和的放射線治療は、骨転移による痛み、脳転移による神経症状、がん組織による気管、血管、神経などの圧迫による症状を和らげる目的で行われます。根治効果や延命効果は大きくなくても、がんによる症状を緩和してQOL(生活の質)を向上させることができる有効な手段ですので、がんの緩和ケアでも重要な役割を果たしています。

(4.3)【放射線療法】3. 放射線治療を受けると副作用で頭髪の脱毛が起こると聞きますが大丈夫でしょうか。

 一般に放射線治療は、がんの病変部を中心に治療する局所療法ですので放射線があたらない離れた部分には大きな影響はありません。
 頭髪の脱毛も脳腫瘍に対する放射線治療の時のように頭皮に直接放射線が照射されない限りは起こりません。放射線治療による脱毛も抗がん剤投与後の脱毛と同様で放射線治療開始後3週間目くらいになると急に起こってきます。抗がん剤による脱毛との違いは放射線の当たっていないうなじの部分には生じません。脱毛からの回復は3~6か月程度かかりますが、照射線量・年齢・性別や抗がん剤の併用の有無などで個人差があります。

(4.4)【放射線療法】4. 放射線治療を受けると別のがんになるとも聞きますが大丈夫でしょうか。

 放射線は、照射された正常の細胞にも障害を与えますので、がんを治す効果ばかりではなく、がんをつくり出してしまうこともあります。放射線が照射されたところからがんができたり、白血病になることがあります。抗がん剤(化学療法)も含めて、治療の影響によるがんを二次発がんといいます。二次発がんが起こる確率は非常に低いものです。放射線でがんを治す効果は、二次発がんを起こす危険を遙かに上回っていますので必要な場合は心配せずに放射線治療を受けることをお勧めします。

(4.5)【放射線療法】5. 放射線治療の副作用とはどのようなものでしょうか。

 放射線は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えます。そのダメージが正常組織や臓器のいろいろな副作用となって現れます。
 副作用が出てくる時期によって、放射線治療中または終了直後に起こる急性反応(急性期障害)と、終了してから半年から数年経ってから生じる晩期反応(晩期障害)があります。一般に急性反応は一時的で、放射線治療終了後しばらくすると回復して症状は消失します。一方、晩期反応は起こると治りにくく長くく場合があります。

(4.6)【放射線療法】6. よく起こる急性反応は具体的にはどのようなものですか。また、その治療法は?

 放射線治療は、通常、局所的に行われますので、急性反応は治療される腫瘍の周辺に起こります。照射される部位によって起こる症状は異なります。

 頭頚部がんの治療では、炎症が口やのどの粘膜に生じて口内炎や咽頭炎が生じます。肺がんや食道がんの治療では食道炎が生じて、嚥下時に強い痛みを伴うことがあります。腹部の治療では、食欲低下や吐き気、下痢や便秘が起こったりします。 また、照射された部位の皮膚に皮膚炎が起こって色素沈着や赤み、かゆみが生じたり、衣服でこすれて擦り傷のようになったりすることもあります。

これらの急性障害は、放射線治療を開始してすぐには起こらず、粘膜炎や食道炎は2週間目くらいから、皮膚炎は4週間目くらいからというように症状が現れる時期が決まっています。また、これらの症状には個人差はありますが、一般には広い範囲に治療するほどその程度は強くなります。急性障害の治療の原則は、局所を安静にし、のみ薬、塗り薬を使いながら適切な対症療法を行うことです。
 これらの急性期障害に伴う症状は、通常、放射線治療が終了すると2~4週間で改善してくるものがほとんどです。

(4.7)【放射線療法】7. 新聞などで粒子線治療というものが紹介されていました。どういうものでしょうか。

 放射線治療施設の多くはリニアック(直線加速器)から出るX線や電子線を用いて治療を行っていますが、X線や電子線は、体の奥に行くほど放射線線量は減少する性質を持っています。一方、陽子線や重粒子線は、X線や電子線とは異なり、体の中のある深さにおいて急激に線量が増加し、狭い範囲にピーク状の高い線量を与える性質を持っています。それを利用してがん病巣にのみ高エネルギーを与えることで多くの放射線を病巣に集中し、その周辺にある正常臓器への影響を少なくすることができます。
 粒子線治療の対象部位は、頭頚部、肺、肝臓、前立腺、骨盤部、骨軟部などですが、照射範囲に制限があり、原則としてがんの大きさが最大15センチ以下で、遠隔転移などそれ以上の病気の広がりがないことが治療条件となります。現在、日本には粒子線がん治療施設が数カ所(関西では、兵庫県立粒子線医療センターの1カ所)あります。
 なお、粒子線治療は先進医療の認定を受けていますが、健康保険の適用とはならず、約300万円の治療費は自己負担となります。
 一方、X線を用いた放射線治療においても近年の照射技術の発展により、多方向から病巣に限局して照射する方法が可能となってきております。その代表的なものに、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療などがあり、これらは保険適用を受けており、滋賀県内でも受けることができます。

(4.8)【放射線療法】8. 放射線治療で治療を受けることができるか、また、受けても有効かどうかの判断は専門的で難しいと聞きますが、どこで相談すればいいでしょうか。

放射線治療は、がんの種類や病期、進行度によって、有効で良い適応になる場合とならない場合があり、専門的な判断が必要です。
現在、日本では放射線治療を専門とする医師の大半は、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)という学会に所属しており、同学会の認定医(放射線治療専門医として日本医学放射線学会と共同認定)がその中でも最も専門的な知識経験を持っています。JASTROの認定医は、まだ全国でも700人弱しかいませんので十分足りてはいません。滋賀県でも、現在、主な4つのがん診療連携拠点病院には6名のJASTROの認定医が常勤していますし、他の拠点病院や放射線治療装置のある病院にも非常勤で大学病院などから認定医が派遣されて診療していますので各施設の認定医にご相談いただければ専門的な判断が受けられます。
また、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)では学会のホームページで認定施設の住所および勤務する認定医の氏名や一般の方向けの放射線治療Q&Aなどの判りやすい情報を提供していますので、ご覧になることをお勧めします。

(5)【ホルモン療法】 ホルモン療法は、どのようながんに効果がありますか。

 乳がん、前立腺がん、子宮体がんでは、有効な治療法としてもちいられています。

 がん細胞のタイプによっては、ホルモンを取り込むことで癌を増殖させる、ホルモン受容体陽性のがんがあります。

 例えば、乳がんでは、がん細胞の増殖にエストロゲンという女性ホルモンを必要とするものがあり、乳がん全体の6~7割を占めています。これらには、エストロゲンの働きを抑えるホルモン療法の効果が期待できます。

 詳しくは、ホルモン療法を行っている医療機関または、お近くのがん相談支援センターへお尋ねください。

(6)【免疫療法】 免疫療法を考えたいのですが、どのような治療ですか。

 身体が自然に有している、疾患への防御機構に働きかける治療法です。通常は局所あるいは全身の免疫系を賦活させることで治療します。

 方法は、樹状細胞療法、がんワクチン療法、NKT細胞療法など様々ありますので、詳しくは、免疫療法を行っている医療機関または、お近くのがん相談支援センターへお尋ねください。

(7)【支持療法】 支持療法とは何ですか。

 がん治療が副作用等の不利益反応により中止となることを防止するため、治療による苦痛を和らげるために行われるものを支持療法といいます。

(8)外来に行ったときに薬剤師さんに質問できるシステムはありますか。

 多くの病院は院内薬局にお薬相談コーナーを設けており、服薬指導も含め相談にのっています。
 また、各がん診療連携拠点病院に設置されている、がん相談支援センターにおいて個々の相談に併せて薬剤師に相談できるような場を設けることは可能です。

(9)家から離れた病院で手術をしてもらったのですが、退院後の通院も遠いし、待ち時間もかかります。どうにかならないでしょうか。

 県内のがん診療連携拠点病院とがん診療連携支援病院では、病院で手術を受けた患者さんを対象に病院の医師と地域の診療所の医師等が連携し、あなたの治療経過を共有することができる県内統一の診療計画書(「滋賀県5大がん地域連携クリニカルパス(私のカルテ)」を運用しています。

 「私のカルテ」の目的は、手術担当病院と患者さんの地域のかかりつけ医の二人が主治医になって、検査の内容や治療について情報交換を行い、患者さんと一緒にがん治療を続けていくことにあります。「私のカルテ」を利用することで患者さんは日頃の健康管理や定期的な管理は、お近くのかかりつけ医で診ていただくことが可能となり、病院までの通院や待ち時間の問題は解消できることになります。

滋賀県5大がん地域連携クリニカルパス

【滋賀県がん診療連携協議会・がん相談支援部会事務局】

滋賀県立総合病院 地域医療推進室

TEL:077-582-5031