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がん患者数は加齢とともに増加し、高齢者では3人に1人ががんで死亡し、2人に1人はがんを発症するといわれています。がんは老化現象のひとつともいえます。
しかし、がんの中には予防できるものや、早期発見で治療できるものもあります。若いうちから、がんを予防できるよう、健康管理に気を配りたいものです。
ウイルスや細菌感染が原因であるものにはそれに対応する、たばこなどの有害物質を極力避ける、食事・運動・睡眠などの生活習慣を改善する、などの対策が有効です。
これらの予防対策においてはがんも他の疾病も同じです。また、近年遺伝子検査を含め個々の疾病発症のリスクが、かなり高い確率で判明するようになっています。今後は、画一的な対策ではなく、個人のリスクに応じて個別の対策をとることが可能な時代になりつつあります。
ピロリ菌は、日本人の半分近くが胃の中に持っている菌で、胃がんの発症リスクを高めることがわかっています。多くの人が幼少時にピロリ菌に感染し、年齢が上がるとともにピロリ菌の陽性率が高まります。ピロリ菌が原因となって萎縮性胃炎を発症し、この中から年率0.4%程度が胃がんへと進みます。
ピロリ菌を保有していない人にはほとんど胃がんの発症はなく、除菌治療を行うと発症リスクが3分の1程度に下がるといわれています。
ピロリ菌の検査は、内視鏡、血液検査、検便、呼気試験などで行われ、ピロリ菌陽性の慢性胃炎に対して、保険適用の除菌治療が認可されています。
また、ピロリ菌が消えても萎縮性胃炎は胃がんのリスク因子なので、定期的な胃内視鏡検査は続けましょう。ピロリ菌感染率は、50代以上では80%近くありますが、29歳以下では30%以下です。今後は胃がんの発症も減少していくものと考えられます。
肝臓がんの9割はB型あるいはC型肝炎ウイルスによるものです。肝炎ウイルスの治療を受けることにより肝臓がんは予防できます。
まず血液検査で肝炎ウイルスの有無を調べましょう。もし陽性であれば、将来肝臓がんになるリスクがありますので、早めに医療機関を受診しましょう。
子宮頸がん患者の90%以上でHPV(ヒトパピローマウイルス)が検出されます。現在のワクチン接種により、70%程度が予防できます。子宮頸がんは、30代の若い方でも多く発症するので、ワクチンによる予防や、定期的検診を心がけましょう。ただし、ワクチン接種は日本では現在副作用問題で勧奨が中断されています。
たとえ予防できないがんでも、できるだけ早期発見、早期治療を行えば完治するものが多くあります。火事に例えますと、炎が上がって消防車が出動してくる前、ボヤのうちに消してしまうということです。若くしてがんで命を落とすことのないように、定期的にがん検診を受けましょう。まだまだがん検診の受診率は高くありません。仕事や家事で忙しい働き盛りの方も、ぜひ積極的にがん検診を受けましょう。