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2013年6月厚生労働省の発表によると、65歳以上の高齢者のうち、認知症の方は推計15%で、2012年時点で約462万人と推計されています。また、認知症になる可能性がある軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計されます。これは、65歳以上の4人に1人が認知症とその“予備軍”となる計算です。有病率を年代別にみると、74歳までは10%以下ですが、85歳以上で40%超となります。また、ほとんどの年代で女性の方に高率に見られます。
認知症は特別の疾患を指すのではなく、脳が変性することによって記憶や知能などに障害が現れる症状一般を指します。認知症を引き起こす原因はさまざまですが、大きく「脳血管性認知症」と「アルツハイマー型認知症」の二つのパターンがあります。
「脳血管性認知症」を引き起こす原因は動脈硬化です。動脈硬化は老化現象ですが、高脂血症や高血圧、糖尿病があるとさらに悪化します。
一方、「アルツハイマー病」は、老人斑と呼ばれる、神経細胞の表面に蓄積するβアミロイドという異常なたんぱく質の固まりが原因となります。βアミロイドは神経のシナプスに悪影響を及ぼし、情報伝達の効率を下げて、脳全体として認知症を引き起こします。進行すると、神経細胞を死滅させます。βアミロイドは健康な脳にも存在しますが、これを取り去ることができず、長年にわたり蓄積すると、認知症の症状が現れます。何十年という長い期間をかけて徐々に疾病が進んでいきます。高齢者に「アルツハイマー病」が多いのはそのためです。
現在のところ、認知症を治す薬は見つかっていません。運動や脳トレなどで、できるだけ発症を抑える、あるいは、早く見つけて症状の緩和に努めることが大切です。(政府インターネットテレビ認知症家族で知っておきたい初期サイン(外部サイトへリンク))早く見つけるために、脳のPET検査やバイオマーカー測定などの特殊検査の実用化が期待されています。
運動では、歩くことや有酸素運動が認知症予防に非常に高い効果を持つことが発表されています。脳血管障害を引き起こさないためには、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を予防することが大切です。こうした生活習慣病の予防により、「アルツハイマー病」の発症も遅くなることが最近わかってきました。
認知症予防には、頭を使う習慣、適度な運動、よく噛んで食事をすること、他者や社会とのコミュニケーションをとること、ストレスを上手に解消することなどが効果的といわれています。