人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
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令和4年(2022年)9月(第173号)
滋賀県では、毎年9月を「同和問題啓発強調月間」と定め、同和問題についての理解と認識を深め、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消をはかるため、集中的に啓発に取り組んでいます。
そこで、じんけん通信9月号では、令和3年(2021年)に本県が行った「人権に関する県民意識調査」※1(以下、「県調査」といいます。)の内、同和問題(部落差別)に関する調査結果と、国(法務省)が令和元年(2019年)に実施した全国の人権に関する意識調査(以下、「国調査」といいます。)の結果を比較※2・紹介するとともに、同和問題の解決方法についての考え方等について、これまでの県調査結果との比較を行い、同和問題について考えていきます。
※1県では、「県民の人権に関する考え方等を調査し、人権教育・啓発をはじめとする今後の人権施策を推進するうえでの基礎資料とする」ことを目的に、この調査を実施しています。詳しくはこちらをご覧ください(滋賀県ホームページ)。
※2県調査は郵送による調査、国調査は訪問型の調査と調査の方法が異なっています。また、回答の絞り込みの条件等が一部異なっていますのでご留意ください。
(1)「部落差別解消推進法」の認知度
「『部落差別の解消の推進に関する法律(部落差別解消推進法)』についてご存知ですか」、とお聞きしたところ、県調査では下の図1のとおり、「知っている」と答えた人が33.6%、「名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」が40.8%となっています。一方、国調査では下の図2のとおり、「知っている」が8.7%、「名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」が22.8%となっています。
「知っている」と回答した人の割合は、県調査が国調査の約3.8倍となっており、県民の関心の高さが際立っていると考えられます。また、「知っている」と「名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」の合計でも、県調査が74.4%、国調査が31.5%と2倍以上の差があり、行政や関係機関・団体等が同法の周知を推進してきた成果が表れていると考えられます。
(2)インターネット上の部落差別に関連した人権侵害の状況について
続いて「部落差別に関して、インターネット上で人権侵害を見たことがありますか」とお聞きしたところ、県調査では下の図3のとおり、「見たことがある」が9.4%、国調査では下の図4のとおり、「見たことがある」と答えた人が10.8%と大きな差異は見られませんでした。
部落差別解消推進法の制定にあたって、インターネット上での部落差別の書き込み等が問題視されており、本県においても全国と同様に約1割の人が「見たことがある」と回答しています。この問題については、本県に限った問題ではないことから、特に国と連携した啓発等が重要であり、今後も継続した取組が必要と考えています。
また、「見たことがある」と答えた人に、「どのような内容のものを見ましたか(複数回答)」とお聞きしたところ、県調査では下の図5のとおり「同和地区名の公表」と答えた人が62.6%と最も高く、次いで「個人を名指ししない、集団に対する悪口」が27.2%、「個人を名指しした悪口」が16.3%の順でした。国調査では下の図6のとおり、「個人を名指ししない、集団に対する悪口」が45.2%と最も高く、次いで「同和地区名の公表」が41.4%、「個人を名指しした悪口」が27.4%の順でした。
特に「同和地区名の公表」を見た人が、国調査結果に比べて県調査結果では高いことから、同和問題を知らない人や正しく理解していない人が誤った認識を持つことが無いよう、インターネット利用上のルールとマナーも含めた啓発活動を実施する必要があると考えています。
(3)部落差別の存在について
次に「現在でも部落差別があると思いますか」とお聞きしたところ、県調査では下の図7のとおり、「いまだにある」と答えた人が74.5%、国調査では下の図8のとおり、「いまだにある」が73.4%と大きな差異は見られませんでした。
同和問題に対する本県の基本姿勢は、「差別がある限り行政の課題と受け止め、積極的に解決に取り組む」です。今後も粘り強く、継続した取組が重要であると考えています。
また、「部落差別はいまだにある」と答えた人に、「現在でも部落差別が残っているとすれば、その原因はどこにあると思いますか」とお聞きしたところ、県調査では図9のとおり、「昔からある偏見や差別意識を、そのまま受け入れてしまう人が多いから」と答えた人が70.8%と最も高く、次いで「部落差別に関する正しい理解を持っていない人がいるから」、「地域社会や家庭において偏見を植え付けられることがあるから」の順となっており、国調査結果と大きな差異は見られませんでした。
(1)同和問題の解決方法についての考え方
次に「同和問題を解決するための取組や対応に関する次のような考え方についてどう思いますか」とお聞きしたところ、図11のとおり、「そう思う」との回答が多くあった項目は、「同和問題について正しい理解と認識を深め、一人ひとりが差別をしない人権尊重の意識を高めることが必要」、「身元調査をしない、させない取組を進めることが必要」、「教育水準を高め、安定した職に就き、生活力を高めることが必要」、「教育・啓発、相談体制の充実などの施策を推進することが必要」の順となっています。
(2)同和問題関係の前回県調査との比較
次に、アからコの各項目について、前回県調査と比較したところ、ほとんどの項目において大きな変化は見られませんでしたが、「ケ同和問題のことなど口に出さず、そっとしておけば、差別は自然になくなる」の項目については、図12のとおり「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせた“そう思う”と答えた人の割合が5.2ポイント減少しています。
「同和問題のことなど口に出さず、そっとしておけば差別は自然になくなる」といういわゆる「寝た子を起こすな」という考え方は、実際に差別を受けている人に我慢を強いるものであり、あやふやな情報やうわさ話でさらに差別が広がってしまうこともあることから、結果的に差別を温存させるおそれのある誤った考え方であり、正しい知識の普及に努める必要があると考えています。
また、同和問題解決に向けての思いをたずねたところ、図13のとおり、「とくに努力をしたいとは考えていないが、差別しないようにしたい」と答えた人の割合が62.8%で最も高く、次いで「自分のできる限りの努力をしたい」(15.8%)、「自分ではどうにもならないのでなりゆきにまかせる」(7.9%)の順となっており、前回、前々回の調査結果と比べると「とくに努力をしたいとは考えていないが、差別しないようにしたい」と答えた人の割合が増加しています。
差別はあってはならないものであり、一人ひとりの意識をより一層高められるような啓発を行っていく必要があると考えています。
今回のじんけん通信では、同和問題に関して、県と国の意識調査結果の比較を中心に取り上げました。
特徴的なものとしては、「部落差別解消推進法」の認知度や、インターネット上の部落差別に関連した人権侵害にかかる「同和地区名の公表」が国の調査結果に比べて県の調査結果が高いことが挙げられます。
これらの結果も踏まえて、今後も引き続き同和問題の解決、すべての人の人権が尊重される社会の実現に向けた取組を進めていきます。
●同和問題啓発強調月間
滋賀県および県内市町では、県民のみなさんが同和問題についての正しい理解と認識を深め、県民一人ひとりが部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消に向けて主体的に行動できるよう、毎年9月を「同和問題啓発強調月間」として、さまざまな啓発事業を集中的に実施します。
●発達障害福祉月間
日本発達障害福祉連盟が主催する啓発月間であり、月間中は、発達障害への関心と正しい理解を深めることを目的とした啓発活動が行われます。
●障害者雇用支援月間
事業主のみならず、広く国民の皆様に対して障害者雇用の機運を醸成するとともに、障害者の職業的自立を支援するため、厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構をはじめとする関係機関が協力して、様々な啓発活動を行っています。
●8日 国際識字デー
昭和40年(1965年)9月8日からイランで開催された「世界教育相会議(テヘラン会議)」において、当時のパーレビー国王が各国の軍事費1日分を識字基金に拠出することを提案したのがきっかけで、アメリカのジョンソン大統領が米国議会に9月8日を「国際識字デー」に制定するように呼びかけ、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が制定しました。
●10日 世界自殺予防デー、10日~16日 自殺予防週間
10日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界自殺予防デー(World Suicide Prevention Day)」です。我が国では10日から16日までを自殺予防週間としています。悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことで、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指しましょう。
●15日 老人の日 、15日~21日 老人週間
だれもが健康で安心して生きがいをもった生活を送ることのできる長寿社会を築いていくことが求められています。このため、9月15日を「老人の日」、この日から21日までを「老人週間」とし、この期間を中心に、国民の間に広く高齢者の福祉について関心と理解を深めるとともに、高齢者に対して自らの生活の向上に努める意欲を促すための広報・啓発活動が国や関係団体により行われます。
●21日 国際平和デー
国連が「国際平和デー」を最初に宣言したのは昭和56年(1981年)です。従来、「国際平和デー」は毎年9月の国連総会開会日に制定され、開会式では各国代表がこの日を記念して1分間の黙祷を行うことが慣例となっていました。平成14年(2002年)からは、毎年9月21日を「国際平和デー」に定め、以後、世界の停戦と非暴力の日として、すべての国と人々に、この日一日は敵対行為を停止するよう働きかけています。
●21日 世界アルツハイマーデー
平成6年(1994年)「国際アルツハイマー病協会」(ADI)は、世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定しています。アルツハイマー病等に関する認識を高め、世界の患者と家族に援助と希望をもたらす事を目的としています。
●23日 手話言語の国際デー
国連は、平成29年(2017年)12月19日の総会において、この日を「手話言語の国際デー(International Day of Sign Languages)」と宣言する決議を採択しました。決議文では、手話言語が音声言語と対等であることを認め、ろう者の人権が完全に保障されるよう、国連加盟国が社会全体で手話言語についての意識を高めるための手段を講じることを促進するとしています。