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平成30年(2018年)6月(第122号)
今回のテーマは、「多様な性」です。
「性とは『男』と『女』の2つだけであって、どちらかにはっきり分類できるもの。そして、恋愛対象は異性である。」と、多くの人は思っておられるかもしれません。しかし、姿、価値観、感情などが人によって異なるように、「性」も多様で、簡単に「男」と「女」だけで区別できるものではありません。そして、「性」は個人の尊厳にかかわる大切な問題です。
そこで、今回のじんけん通信では、滋賀県人権相談ネットワーク協議会の講座(2018年3月2日開催)において、明治大学文学部心理社会学科 准教授(※1)で臨床心理士でもある佐々木掌子先生より、
「“多様な性(セクシュアリティ)”の理解と対応」をテーマに講義いただいた内容(※2)を紹介します。
誰もが自分の性のあり方を尊重され、自分らしく生きることのできる社会の実現に向け、まずは、「多様な性とは何か」について考えます。
※1 講座開催当時は、立教女学院短期大学 現代コミュニケーション学科 専任講師。
※2 「平成29年度滋賀県人権相談ネットワーク協議会 第3回講座」の講義内容を基に記事を作成しています。
参考:「滋賀県人権相談ネットワーク協議会」について
県では、さまざまな人権に関する悩みに対して解決のお手伝いができるよう、国、県、市町などの51の関係機関で滋賀県人権相談ネットワーク協議会を組織し、連携を図っています。
◆「LGBT」とは?
知っておくと安心できることも。だけど、これで全てではありません。
人の「性」については、さまざまなとらえ方があります。
まずは、「LGBT」という言葉について、考えてみたいと思います。
LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとって組み合わせたものです。「女性で女性を好きになる人はレズビアン」というように、区分けして、性をとらえます。
なお、表の通り、LGBとTは分けて考える必要があります。なぜなら、LGBは好きになる相手の性が、Tは自分の性が、テーマとなるからです。そのため、「トランスジェンダーでレズビアン」というように2つの区分けにあてはまる人もいます。
また、LGBTは病気・病名ではありません。なお、トランスジェンダーに関して、日本では「性同一性障害」という言葉の方が広まっているため、「トランスジェンダー= 性同一性障害」といった説明がなされることがあります。しかし、「性同一性障害」は診断名であるため、この説明は誤りです。
さらに、LGBT以外にも様々な区分けがあります。例えば、「Asexual(エイセクシュアル:他者へ恋愛感情を抱かない)」や「Xgender(エックスジェンダー:男性・女性どちらかを選択しない)」といった区分けもあります。こうした区分けによって性をとらえる方法は、「自分は何だろう?」と自分自身の性について考えたときに、判断や理解がしやすく、また、自分にぴったりの区分けを見つけることができれば安心感も得られる、というメリットがあります。
でも、これは「大雑把な区分け」であるため、すべてを正確にとらえるのはとても難しいです。自分に合う区分けがないこともあります。LGBT以外のものも加えて、LGBTTIQQ2SA(カナダ トロント)やLGBTQQIAAP(アメリカ)と表現する地域もありますが、これでも全てではありません。
つまり、「性」はとても多様で、区分けして名前をつけて、すべてをとらえることはできないのです。
◆「性の構成要素」とは?
「男性か女性かの二者択一」ではなく、「性」の要素一つひとつに「濃淡」がある。
LGBTという言葉だけではとらえきれない「性」も、「性の構成要素」から見てみると、理解しやすくなります。今回は4つの「性の構成要素」についてご紹介します。
★性の構成要素★
1 身体的な性別生物学的な性別のことです。身体のつくりやホルモン等、生物学的なデータをもとに性別を判断します。
人の身体は、最初から男と女に分かれているわけではありません。初めは同じ組織であったものが少しずつ分化して、形づくられていきます。そのため、分化する過程で、典型的な男女の身体とは一部異なる状態になることがあります。
2 性同一性「性別に対するアイデンティティ」、「自分が自分らしくいることができる性別」のことです。「身体の性別と心の性別が同一であること」という意味ではありません。
例えば、子どもの頃から現在、そして未来に向けて「男」として生きたい、周りから「男」として認識してほしい、という気持ちが強ければ強いほど、「男としての性同一性が強い」ということになります。
3 性役割性別によって与えられた役割のことです。
例えば、日本では「男性はズボン、女性はスカート」といった性役割が一般的かもしれませんが、スカートのような布を巻きつけるタイプの衣服が男性の性役割だとする文化(スコットランドのキルト)もあります。
社会や文化、時代によってはもちろんですが、個人によっても考え方が異なります。
4 性的指向恋愛や性愛の対象となる性別のことです。
好きになる相手の性別は、「女性だけ」「ほぼ女性」「女性の方が多い」「女性・男性同じくらい」、またはその逆や、「わからない」「恋愛・性愛の感情を抱かない」など、人によってさまざまです。また、そもそも「好きになる」ということをどうとらえるか?これも人によってさまざまではないでしょうか。
大切なことは、「性」には、「身体的な性別」「性同一性」「性役割」「性的指向」といった「性の構成要素」があり、それぞれが全く違う概念であることをしっかり理解しておくことです。「身体的な性別が女性ならば、性同一性が女性」「性同一性が男性 ならば、性役割が男性」といった決まった組合せはありません。
この「性の構成要素」を知っていれば、LGBTといった大雑把な区分けでは説明ができない「性」についても、「身体的な性別はこうで、性同一性はこうで、性役割はこうで、性的指向はこうである」とそれぞれの要素の濃淡でとらえることができます。
◆まとめ:「性は多様」ということについて
性はすべての人、一人ひとりで違う。だから、多様なのです。
最近、「性は多様」「性はグラデーション」とよく聞くようになったと思いますが、それは、「性的マイノリティの人がいるから、性は多様である」という意味ではありません。
「性の構成要素」についてご紹介したように、それぞれの要素についてどれくらいの濃淡があるかが、その人の性の個性であって、二人として同じ人はいないのです。
まずは、「すべての人、一人ひとりが違う性を持っているから、性は多様である」ということを理解することが大切です。
以上、今月は「多様な性とは何か」について考えました。
次回7月号では、誰もが自分の性のあり方を尊重され、自分らしく生きることのできる社会の実現に向けて、具体的に、私たち一人ひとりに何ができるのか、考えていきたいと思います。
◆内閣府のページもご覧ください。→「男女共同参画週間について」
「性は、多様」ということを
まずは、正しく理解してほしいのダー!
「性の構成要素」で学んだように、一言で「性」と言っても、そのあり方は人により、さまざまです。
「一方的に決めつけてしまうのではなく、一人ひとりの違いを受け入れる。」そのことが、誰もが自分の性のあり方を尊重され、自分らしく生きることができる社会の実現への第一歩になるのではないでしょうか。
「多様な性」をテーマにしたテレビスポット広告を県ホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。→ 滋賀県人権啓発テレビスポット広告「多様な性と人権編」(2018年12月制作)