STEP4 琵琶湖の生きもの・農水産物・食文化と祭礼

琵琶湖は400万年を超える歴史を有する世界でも有数の古い湖です。
その悠久の歴史の中で、琵琶湖には豊かな生物多様性が育まれており、60種を超える固有種を含め、2,400種以上の生物が記録されています。

1 両生類など

ナゴヤダルマガエル写真
ナゴヤダルマガエル

湖魚を育む水田など、昔ながらの環境に優しい農業により、湖辺域だけでなく中流域の里山に近い水田地帯でもヤマトサンショウウオやナゴヤダルマガエル、ハッタミミズなどの希少種が生息しています。

2 昆虫

ナツアカネ写真
ナツアカネ

琵琶湖岸には、多様な昆虫が生息しています。そこにはヨシを食べるウンカ、ヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類に加え、それを捕食するトンボ類、テントウムシ類が生息しており独自の生態系ができあがっています。

中でも、トンボの種類は豊富で、滋賀県内で約100種のトンボが記録されています。日本で記録されている約200種の半数が棲んでいることになり、県単位で見ると日本の中でトップクラスです。トンボの多さは、良好で豊かな水環境によるものといえます。

3 鳥類

ダイサギ写真
ダイサギ

滋賀県内では約350種の鳥が記録されており、昆虫と同様、日本の鳥類(約600種)の半分以上が記録されていることになります。

特に、冬の琵琶湖は、ガン・カモ類をはじめとして10万羽を超える水鳥が採食・休息の場として利用しており、水鳥の貴重な生息地として、ラムサール条約湿地にも登録されています。

琵琶湖のめぐみ

琵琶湖の漁業は、琵琶湖固有種を含む多様な湖魚を漁獲対象として発展し、これらの湖魚を利用した独自の食文化が育まれてきています。
主な漁獲対象魚を紹介します。

ビワマス
  • ビワマス
  • サケ科
  • 旬:初夏~夏

琵琶湖の固有種。体長は30~60cm、体重は300g~2kg。琵琶湖に注ぐ河川で産卵・ふ化した後、稚魚は琵琶湖へ下って成長し、およそ2~3年で成魚となると、再び生まれた川へと戻って産卵します。琵琶湖の沖合の深みに生息し、コアユやエビ類を食べています。コアユを多く食べる個体の身は脂が乗って色が薄くなり、エビ類を多く食べているものは朱色が濃くなります。主な漁期は6月~9月で、この頃に脂が乗って旬を迎えます。

ニゴロブナ
  • ニゴロブナ
  • コイ科
  • 旬:冬・春

琵琶湖の固有種。体長20~40cm、体重100g~1kg。春に水田やヨシ帯にやってきて産卵します。発酵食品である「ふなずし」の原料として利用されています。「ふなずし」の原料としては、卵を抱えたメスが重宝されていますが、オスの身は旨味が多く、刺身や煮付けに向いています。一時期は漁獲量が激減していましたが、稚魚の放流事業などにより資源そのものの量は増加の兆しが見えてきています。

ホンモロコ
  • ホンモロコ
  • コイ科
  • 旬:秋・冬・春

琵琶湖の固有種。体長7~15cm、体重4~20g。コイ科の魚では最もおいしいと言われ、特に春先に獲れるホンモロコは子持ちであるため、高い人気を誇ります。一方、夏から秋頃の時期には、沿岸から沖合へ向かって移動するホンモロコが刺網などで漁獲されます。この秋に獲れるホンモロコは脂が非常に多く乗っておいしく、七輪などで焼くと滴る脂に火が付くほどです。

イサザ
  • イサザ
  • ハゼ科
  • 旬:冬・春

琵琶湖の固有種。体長3~8cm、体重1~4g。琵琶湖北部の沖合に生息するハゼの仲間です。非常に出汁がでる魚で、濃い味付けにも負けない強い旨味が特徴です。大型のものは頭の骨が硬い場合がありますが、揚げ物などに調理すると骨を気にせず食べることができます。資源量の年変動が大きく、多く獲れる年と非常に少ない年があります。

ゴリ (ウロリ・ヨシノボリ)
  • ゴリ (ウロリ・ヨシノボリ)
  • ハゼ科
  • 旬:夏

体長1~3cm、体重1g以下。 琵琶湖では夏に沖曳網(底曳網)でシラス様の稚魚が漁獲されます。この稚魚は、一般に河川で獲れるゴリとは別に扱われています。しょう油と砂糖で甘辛く炊いた佃煮がポピュラーですが、獲れて直ぐのものを釜揚げにするとほんのりとした甘みが楽しめます。

コアユ
  • コアユ
  • アユ科
  • 旬:春・夏

体長10cm前後で体重はおよそ5~20g。琵琶湖のコアユは、春に成長の良いものが河川へ遡上しますが、大部分の個体は琵琶湖で成長し、小型のまま成魚となります。海産のアユに比べて鱗が細かく滑らかで、口当たりが良いと言われています。冬季に獲れる稚魚は、ウロコが生えそろわず透き通った体をしているため氷魚(ひうお)と呼ばれています。冬の僅かな時期にしか獲れない氷魚をさっと塩ゆでにした釜揚げは、琵琶湖ならではの贅沢な味覚です

スジエビ
  • スジエビ
  • テナガエビ科
  • 旬:冬・春

体長2~4cm、体重1~2g。 主に琵琶湖北部の沖合で沖曳網(底曳網)によって漁獲されます。5~7月までの沖曳網が禁漁となる時期には、「えびたつべ」と言われるカゴで漁獲することもあります。生きている時は透き通った飴色をしていますが、熱を加えて調理するとエビらしい赤色になります。まれに体の表面に3mm程度の甲殻類(エビノコバン)が付着していることがありますが、流水で強く洗うかボイルすると容易に取り除くことができます。

ハス
  • ハス
  • コイ科
  • 旬:(小型)冬・春、(大型)春・夏

体長10~30cm、体重5~500g。 体長10cm程度の小型のものはハスゴと呼ばれています。コイ科の中では珍しく魚食性の強い性質を持ち、琵琶湖では主にコアユを捕食しています。小型のものと大型のものでは獲れる時期が異なります。湖東地域では夏に獲れる大型のハスを塩焼きにしたものが好まれています。

セタシジミ
  • セタシジミ
  • シジミ科
  • 旬:冬・春

琵琶湖の固有種。殻長2cm程度。琵琶湖の浅瀬から水深数m~10数mの砂地に主に生息しています。「寒シジミ」と呼ばれる冬季には身が肥え、最もおいしくなります。セタシジミを材料としたみそ汁、しぐれ煮、シジミ飯等は、家庭の味として古くから親しまれてきました。

お米と伝統野菜

環境こだわり農産物は、琵琶湖の環境と人の健康を守る、より安全で安心な農法により生産された農産物です。

1 環境こだわり米・オーガニック近江米

環境こだわり米・オーガニック近江米

「環境こだわり米」は、琵琶湖の水質や生態系を保全するため、農薬や化学肥料の使用量を通常の半分以下に減らす、泥水を流さない、などの基準を守って栽培され、県の認証を受けたお米です。

また、農薬や化学肥料に頼らず太陽、水、土、多様な生き物の恵みを活かして育てたお米を「オーガニック近江米」として、広く発信しています。

リンク:滋賀のおいしいコレクション 滋賀県産オーガニック

環境こだわり米・オーガニック米
環境こだわり農産物

2 魚のゆりかご水田米

魚のゆりかご水田米
魚のゆりかご水田米

「環境こだわり米」のうち、琵琶湖から産卵のために遡上してきた湖魚の赤ちゃんとともに育ったお米を「魚のゆりかご水田米」として県が認証しています。

県内の一部の農協直売所や、生協などで販売されるとともに、学校給食でも一部提供されています。

「琵琶湖から田んぼに遡上した魚たちと共にい育まれたお米」魚のゆりかご水田米

3 近江の伝統野菜

滋賀は伝統野菜の宝庫。山水がもたらす肥沃な土地を生かし、江戸・明治以前からこの地で守り育てられてきた歴史があります。地域になくてはならない野菜として、郷土料理や保存食となり滋賀の食生活をしっかり支えてきました。

独自の味わい、多彩な色・形など、それぞれに豊かな個性を持つ伝統野菜があり、それぞれの地で継承に取り組まれています。

リンク:近江の伝統野菜

山田(やまだ)ねずみ大根

山田(やまだ)ねずみ大根

草津市北山田地区に古くから伝わる野菜です。真っ白でキメが細かく、よく締まったやわらかな肉質が特徴です。「漬物はコレでなければ」と、地元以外にも根強いファンが大勢います。もちろん煮炊きをしても味がよくしみ込んでやわらかく、大変おいしくいただけます。

下田(しもだ)なす

下田(しもだ)なす

下田なすは、滋賀県湖南市の下田地区で明治以前から栽培されている伝統野菜です。水分たっぷりのやわらかな実と薄い皮。特に実はリンゴのような甘味があり、とてもジューシーです。アクが少なく、浅漬けなどの漬物にすると、そのおいしさが際立ちます。

杉谷(すぎたに)なすび

杉谷(すぎたに)なすび

杉谷なすびは、滋賀県の南東、忍者で知られる甲賀市甲南町の杉谷地区で江戸時代から栽培されていた伝統野菜で、丸なす系(巾着型)に属します。古来、なぜか杉谷地区でしか育たないといわれており、事実、近隣では同じものは存在していません。皮が薄く柔らかく、肉質は緻密で甘みがあります。

杉谷(すぎたに)とうがらし

杉谷(すぎたに)とうがらし

滋賀県の南東、忍者で知られる甲賀市甲南町の杉谷地区で江戸時代から栽培されていた伝統野菜です。形はシシトウに似ていますが、先が曲がり、一つひとつとても個性的な形をしています。この杉谷とうがらしは苦みもアクもなく、ほのかに甘いのが特徴で小さな子どももおいしくいただけます。

水口(みなくち)かんぴょう

水口(みなくち)かんぴょう

水口かんぴょうは、甲賀市水口町で江戸時代から栽培されてきた歴史ある伝統野菜です。昔ながらの手剥き・天日乾燥による手間暇をかけた製法で、「ふんわりと柔らかい」、「煮えやすい」、「だしをよく含む」などの特徴があります。巻き寿司のほか色々な野菜との炊き合わせ、酢の物や和え物、若い世代にはサラダなど、幅広く利用されています。

鮎河菜(あいがな)

鮎河菜(あいがな)

鮎河菜は、甲賀市土山町鮎河集落だけで栽培されている伝統野菜で、その栽培の歴史は古く、平安時代にまでさかのぼると言われています。姿形は菜の花のようですが、蕾、茎、葉のすべての部分を食べることができ、中でも茎の部分はブロッコリーのようにやわらかく甘い味です。

日野菜(ひのな)

日野菜(ひのな)

日野菜はかぶの仲間で、滋賀を代表する伝統野菜です。歴史も古く、約500年前、時の領主蒲生貞秀が日野町鎌掛(かいがけ)で発見した、と伝わっています。昔から甘酢漬けやぬか漬けなどの漬物として利用され、漬けたときに淡いピンクの色を出すことから「桜漬け」と呼ばれて親しまれてきました。

北之庄菜(きたのしょうな)

北之庄菜(きたのしょうな)

水郷で有名な近江八幡市の北之庄地区で江戸末期から生産されてきた伝統野菜です。肉質は緻密で、適度な甘みや辛味があり、サラダなどの生食はもちろん煮込み料理にも適しています。

豊浦(といら)ねぎ

豊浦(といら)ねぎ

近江八幡市安土町下豊浦地区で昔から栽培されてきた伝統野菜です。糖度が高く、風味、味ともよく、すじがなく、繊維が柔らかいですが、歯ごたえもよく、炊いても煮くずれしないのが特徴です。九条系の葉ねぎで、根元が少しまがっています。青ねぎでありながら、白ねぎの良いところも取り入れた豊浦ねぎは、すき焼きや水炊きなどに適しています。

秦荘(はたしょう)のやまいも

秦荘(はたしょう)のやまいも

滋賀県愛知郡愛荘町で、約300年前から栽培されている伝統野菜です。特徴は、なんといってもその粘りの強さと上品な甘み。旧秦荘町内でも、安孫子、北八木、東出という限られた地域でしか生産できず、他の地域では同じような粘りがでないと言われています。

赤丸(あかまる)かぶ

赤丸(あかまる)かぶ

米原市内では、冬になると地域の伝統野菜「赤丸かぶ」の収穫が始まります。赤丸かぶは、つやつやと宝石のように輝く紅色が美しい楕円形のかぶらです。非常に固く、よく締まった肉質とシャキシャキした歯ごたえが特徴です。昔からぬか漬けや酢漬けなどの漬物用として利用されています。

伊吹(いぶき)大根

伊吹(いぶき)大根

伊吹山のふもとで古くから栽培されてきた伝統野菜です。最大の特徴は、普通の青首大根の2倍ともいわれる辛味の強さです。伊吹山周辺はそばの産地としても知られ、すりおろすとピリリとシャープな辛味がある伊吹大根はそばの薬味として江戸時代から評判になっていたほどです。

万木(ゆるぎ)かぶ

万木(ゆるぎ)かぶ

高島市安曇川町万木(ゆるぎ)地区在来の赤かぶで、滋賀県を代表する赤かぶの1種です。根部は9~10cmの球形で、肉質は柔らかすぎず堅すぎず、表面のつやのある紅色と中の白色が綺麗なコントラストを醸し出します。漬け込むと中の白い部分まで紅色に染まり、色鮮やかなお漬物に仕上がります。

守山矢島(もりやまやじま)かぶら

守山矢島(もりやまやじま)かぶら

守山市矢島付近で栽培されてきた有色カブです。扁球系をしており、地面に出ている部分と茎が紫、地面より下の部分が白のツートンカラーが特徴です。

近江(おうみ)かぶら

近江(おうみ)かぶら

江戸時代から大津市尾花川を中心に栽培が始まったとされ、約400年の歴史を持つ白カブです。京の伝統野菜・聖護院かぶらのルーツとも言われています。大きさは、根茎17~18cmの白カブで、水分が少なく肉質が固いので、奈良漬けに加工されています。

大藪(おおやぶ)かぶら

大藪(おおやぶ)かぶら

大藪かぶらは、一般的な形状のカブを上下から押しつぶしたような形と首の紫色が特徴です。肉質は適度な硬さで、一般的な白カブよりも風味があります。彦根市大藪町を中心に栽培されており、地元の有志が採種・保全活動に取り組み、地元の小学校の給食などでも使用されるなど、親しまれています。

弥平(やへい)とうがらし

弥平(やへい)とうがらし

湖南市に古くから伝わる伝統野菜です。長さ5cmほどのオレンジ色で光沢のあるかわいい見た目とは裏腹に、タバスコの2倍強、タカノツメ(唐辛子)の約3倍と言われる強烈な辛さが特徴です。

食文化と祭礼

琵琶湖周辺では、漁業と農業が結びつき、「魚と米」など、湖魚と農産物を組み合わせた多彩で個性的な食文化が形成されてきました。

湖魚のなれずし

湖魚のなれずし

食文化の中心は、湖魚を米に漬けこんで発酵させる保存食で、近年、健康面での価値も見直されている「なれずし」です。

フナズシをはじめ、ハスズシ、モロコズシ、コアユズシ、オイカワのめずし、ウグイズシ、ビワマスのこけらずしなど、様々な「なれずし」が漬けられています。

「なれずし」は、贈答品や祭礼の供え物としても用いられ、こうした食文化や祭礼は、人々の絆の醸成にもつながってきました。

現代では、こうして醸成された地域の信頼や協力の輪が、多様な主体の参画による「琵琶湖システム」の保全にもつながっています。

えび豆
えび豆(琵琶湖産スジエビと大豆の煮物)
「すし切り祭」下新川神社(守山市)写真
「すし切り祭」下新川神社(守山市)

こうした様々な食材に加え、滋賀県には、近江米や近江牛など、全国的に知られているブランド品があります。
以下のサイトでは、産地に関する情報や販売している店舗、飲食店を探すこともできます。是非、実際に味わってみてください。

リンク:滋賀のおいしいコレクション