STEP3 琵琶湖と共に歩む農林水産業

魚のゆりかご水田
生き物観察会

ニゴロブナは琵琶湖の固有種で、その産卵・成育には、湖辺の水田が大きな役割を担っています。この湖魚は、繁殖期を迎える5月頃、湖辺のヨシ帯や水路を通って水田までやってきて産卵します。
この時期の水田は、水が温かく、プランクトンなどの餌が豊富で、外敵が少ないことから、稚魚の成育に適しています。

水路との間で水位差が生じた水田では、地域の皆さんが水路に堰(魚道)を設置し、水田に魚が遡上する昔ながらの「魚のゆりかご水田」の継承に取り組んでいます。

こうした水田は、豊富な生きものを育むなど、生物多様性の保全に貢献しています。

リンク:魚のゆりかご水田プロジェクト

エリ漁をはじめとする琵琶湖漁業

エリ漁をはじめとする琵琶湖漁業
エリ漁をはじめとする琵琶湖漁業

琵琶湖漁業を代表するエリ漁は、平安時代の和歌に詠まれるなど、千年以上の伝統を有する漁法です。

エリ漁は、琵琶湖を回遊する湖魚の生態や湖の水流を巧みに利用し、ツボと呼ばれる部分で捕獲する待ち受け型の漁法です。この漁法は、必要な量だけ漁獲でき、漁業者は限りある水産資源に配慮した漁を続けています。

他にもヤナ漁や刺網漁、追いさで漁などが昔ながらの姿で現代に受け継がれています。

リンク:琵琶湖の漁法

環境にやさしい農業

「環境こだわり農産物」の栽培面積の推移
機械除草作業

琵琶湖の水質や生態系保全のために、多くの農業者が「環境こだわり農業」「世代をつなぐ農村まるごと保全向上対策」などに取り組んでいます。その結果、水田等の農地は多様な生きものを育む場にもなっています。

また、窒素やリンを含む農業排水が琵琶湖へ流出することを抑制するために、排水の再利用などに取り組んでいます。

中でも「環境こだわり農産物」は、農薬や化学肥料の使用を控え、農業排水対策にも取り組みながら生産されたものです。主食用水稲の作付減少に伴い、栽培面積は近年やや減少傾向ですが、2022年度には約1万3千ヘクタールに達しています。また、取組を開始する前と比べ、化学合成農薬の使用量は約4割減少しています。

リンク:滋賀のおいしいコレクション環境こだわり農産物

琵琶湖の水源となる森林の保全

琵琶湖の水源となる森林の保全

琵琶湖を取り巻く山々では、明治時代以降、森林緑化が進められました。これにより、洪水防止や河川の渇水防止が図られ、河川を遡って産卵する湖魚の繁殖環境の保全にもつながっています。

琵琶湖の水源となる森林の保全

琵琶湖の漁業者や林業者、地域住民が協働で植林を行う「漁民の森」や企業の森づくりなどにより、水源林の保全が図られてきています。

水を大切にする農村の工夫やヨシの活用

水を大切にする農村の工夫やヨシの活用カバタ
水を大切にする農村の工夫やヨシの活用カバタ

琵琶湖のまわりでは、水を大切にする文化があり、庭先や台所の一角に湧水を溜める池をつくり、日常生活に利用している地域もあります。 高島市針江地区では、これを「カバタ」と呼び、地元の人々が語るように「水をみんなで守っていく」中で、水路や川にアユやビワマスなどの遡上も見られます。

ヨシの利用

また、湖岸に茂るヨシは、漁具から建材まで、様々な生活資材として用いられてきました。現在でも屋根や簾(すだれ)に使われているほか、近年は紙の原料としても注目されています。

琵琶湖システム