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食肉による食中毒

食肉は、腸管出血性大腸菌O157、サルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒菌のほか、肝炎ウイルス、寄生虫に汚染されている場合があり、たとえ新鮮な食肉であっても生で(もしくは加熱不十分で)食べるととても危険です。食肉の生食には危険性が伴うことを十分にご理解いただき、特に幼児や高齢者など抵抗力の弱い人については生肉等を食べないようにしてください。また健康な人であっても、食中毒症状を起こす可能性が高いことをご理解ください。

食肉による食中毒の主な原因菌

腸管出血性大腸菌O157

腸管出血性大腸菌O157とは

いわゆる大腸菌は、家畜や人の腸管内にも存在し、ほとんどのものは無害です。しかし、いくつかのものは人に下痢などの症状を起こすことがあり、病原性大腸菌と呼ばれています。腸管出血性大腸菌はこの病原性大腸菌の一種で、毒素を産生し、出血を伴う腸炎を起こします。
腸管出血性大腸菌O157は、牛などの家畜や人の糞便中に時々見つかります。世界的に牛が最も頻度が高いことが知られており、2ヶ月齢未満39.4%、2-8ヶ月齢78.9%、2歳以上40.8%の検出例が報告されています(出典:Shinagawa et al. Vet Microbiol.76:305-309,2000)。家畜では症状を出さないことが多く、外から見ただけでは、菌を保有する家畜かどうかの判別は困難です。
※「O157」とは、大腸菌の分類方法(血清型分類)による名称で、他には「O26」、「O111」等があります。なお、食中毒の原因となっているものはO157がほとんどです。

症状

腸管出血性大腸菌O157の感染では、全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終わるもの、さらには水様便、激しい腹痛、著しい血便とともに重篤な合併症状を起こし、時には死に至るものまで様々な症状を呈します。多くの場合は、おおよそ3〜8日の潜伏期をおいて頻回の水様便で発病します。さらに激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う血便となることがありますが、これが出血性大腸炎です。発熱はあっても、多くは一過性です。

原因食品等

腸管出血性大腸菌O157食中毒の原因としては牛肉(特に牛挽肉)、チーズ、牛乳(特に未殺菌乳)、牛レバーなど牛に関係する食品で非加熱または加熱不十分なものが多く見られます。また、牛に関係する食品以外では、井戸水、サラダ、貝割れ大根、シーフードソース、鹿肉、キャベツ、白菜漬け、日本そば、メロンなど様々な食品、食材から見つかっています。

カンピロバクター

カンピロバクターとは

カンピロバクターは、家畜の流産あるいは腸炎の原因菌として注目されていた菌で、鶏、牛等の家禽や家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物などあらゆる動物が保菌しています。低温に強いので冷蔵庫内でも長時間生存しますが、乾燥に弱く、また、十分な加熱(65℃以上、数分)で食中毒を予防できます。

症状

おおよそ1〜7日(平均3日)の潜伏期をおいて、下痢(1日4回~12回にも及ぶ)、腹痛、発熱、頭痛、倦怠感、時に嘔吐や血便などの症状を呈し、多くは一週間程度で回復します。通常、死亡例や重篤例は稀ですが、幼児、高齢者など抵抗力の弱い人は重症化の可能性が高いことに注意が必要です。

原因食品等

カンピロバクター食中毒の原因としては、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のタタキ、鶏わさなどの半生製品、加熱不足の調理品、牛生レバーなどが見られます。鶏肉関係によるものでは、加熱不足の鶏肉の直接摂食による場合に加え、汚染生鶏肉から調理者の手指や包丁、まな板などの調理器具を介して、他の食品が二次汚染されたことによる場合も多くあります。
市販の鶏肉についてカンピロバクター汚染調査を行ったところ、鶏レバー56検体中37検体(66.1%)、砂肝9検体中6検体(66.7%)、鶏肉9検体中9検体(100%)の検出例が報告されています。また、健康な牛の肝臓および胆汁中のカンピロバクター汚染調査を行ったところ、胆嚢内胆汁236検体中60検体(25.4%)、胆管内胆汁142検体中31検体(21.8%)、肝臓では236検体中27検体(11.4%)が陽性であることが示されています(出典:厚生労働科学研究「食品製造の高度衛生管理に関する研究」主任研究者:品川邦汎)。

E型肝炎ウイルス

E型肝炎とは

E型肝炎はE型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる急性肝炎(稀に劇症肝炎)で、慢性化することはありません。開発途上国に常在し散発的に発生している疾患ですが、時として汚染された飲料水などを介し大規模な流行を引き起こす場合もあることが知られています。一方、先進国においては、開発途上国への旅行等の際に感染する「輸入感染症」と考えられていました。しかし、海外渡航歴のない人での発症も散見されるようになり、国内の猪肉、鹿肉、豚肉を食べた人への感染事例が報告されていることから、今では人獣共通感染症として捉えられています。

症状

E型肝炎ウイルスに感染した場合、不顕性感染が多いとされています。平均6週間の潜伏期をおいて、悪心、食欲不振、腹痛等の消化器症状を伴う急性肝炎を発症する。褐色尿を伴った強い黄疸が急激に出現し、これが12〜15日間続いた後、通常発症から1ヶ月で回復しますが、稀に劇症化するケースもあります。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦が妊娠晩期に感染すると劇症化しやすいという報告があります。また、インド等の流行地での経験から本症は「若年層の病気」といわれてきましたが、日本やフランスでの調査によれば、むしろ「中高年男性の病気」といえます。また、高齢者ほど重症化しやすいとされています。

原因食品等

従来、国内でも海外でも、特定の食品の摂食とE型肝炎の発症との関係が直接的に確認された事例の報告はありませんでした。しかし、2003年4月に兵庫県で冷凍鹿肉を摂食した2家族7名中4名が発症し、食品の摂食とE型肝炎の発症との直接的な関係が確認された世界初の事例になりました。更に、2005年3月に福岡県で野生猪肉を摂食した11名中1名が発症した事例もあります。また、豚レバーを摂食して感染したと推定される事例も北海道から報告されています。

食肉の食中毒の予防方法

生や加熱不十分で食べることは避ける

  • 新鮮な食肉を衛生的に扱った場合でも食中毒を起こす可能性があるとお考え下さい。腸管出血性大腸菌やカンピロバクター等は少量の菌でも感染します。

中心部まで十分に加熱する(75℃、1分間)

  • 特に牛レバーは細菌が内部まで入り込んでいる可能性があります。

食肉に触れた後の十分な手洗い&食肉を切った包丁、まな板等の洗浄消毒の徹底

  • 生の肉、卵を取り扱った後には、手を洗いましょう。
  • 肉汁などが他の食品にかからないようにしましょう。
  • 肉を切った包丁やまな板は、洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。
  • 包丁やまな板は、肉用、野菜用と別々に使い分けるとさらに安全です。

焼肉やバーベキューの際は、箸の使い分け

  • 生肉用の箸と口に運ぶ箸は別にしましょう。

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