体験者の語り
昭和9年の室戸台風は、風台風やった。ものすごい風やってん。菩提寺が風で倒れて。
山の木が折れて、白く見えたんや。松の木ばっかりやったから、藪の木が地を這いよったんや、風でビターっと。
これは人に聞いた話やけど、砂利が盛ってますやろ?その砂利が風でボロ、ボロっと飛んだ。
情報が無くてな。瀬田川で汽車が倒れたらしいわ。それも3日も4日もしな聞こえてきいひん。運のええ事に、倒れたのが複線の線路の上やってん、二車線やさかいに。あんなもんこっちに倒れたら琵琶湖の中に落ちとったわ。
とにかくすごかった。戸が一枚ではバーっとなるから、中に戸をはめて。障子一枚では弱いさけ、戸を二枚はめて押してはったらしいわ。親戚のおじさんに来てもろて、押してはったんやって。
おじさんは、昔のモルタルの家やさけ、節穴から外を見てはったらな、隣の塀がバーっと倒れたんやって。ほんでびっくりして、自分の家が気になって帰らはったら、まだ藁仕事したはったって。東側に高い家があってどうもなかったっていう話は、母親から聞いたわ、風の時になったら。ほんで、高いとこの家はかなんって、よう言うとった。見てる前で、バサーって倒れたって。