資料 (PDF:9 MB)
<深町先生>
・資料に基づき講演
(知事)
深町先生に来てもらうことになったきっかけは、2月に滋賀県石材組合が創立50周年を迎えるということで、記念式典があり、私も行かせていただいた。そこで深町先生と隣の席になり、その時に衝撃を受けた。先ほど紹介いただいたパンフレットを拝見し、こんなに幅広く奥深い、歴史も長い石の文化が滋賀の地にあったということを先生やここにも一部登場されている石工の皆さんから話を聞いた。近江舞子の平出石材さんという方からも以前から聞いていた。このように体系立てて、歴史や防災、信仰など、いろいろ観点でまとまったということを、ぜひこれから県としても認識し、観光でも、教育でも、防災でも、様々なことに生かせるのではないかと思ったので、それぞれの担当部長が集まるこの経営会議にぜひ深町先生に来ていただき、問題提起をしていただくと同時に我々の想像力や展開力を増やしていけないかと思い招いた。どんなことでも構わないので、感想でも今後の可能性も含めて議論したい。先生は引き出しが広いので、いろいろなことを話していただけると思う。よろしくお願いする。
(北川防災危機管理監)
色々聞かせていただいて思ったのは、一番簡単なところでは、おばあちゃんから山の話で、字で書いて教わってはいなかったが、「留山」(トメヤマ)の話を聞いたことがあった。その時は、「トミヤマ」つまり、「富山」と思って聞いていたが、今日先生のお話をお聞きして、初めて「留山」と書くのだと知れたことは、私にとって大きな収穫だった。
私は土木の人間なので、もちろん土木では昔から、もう大昔の生活から、先生がおっしゃるとおり、石とか木とか、自然にあるもので工夫をして生活の利便性を上げてきたと思う。私が若い頃は、河川事業に携わっており、その頃に多自然型川づくりが始まった。今はもう多自然川づくりという名称になっているが。その時に、巨石張りなど色んな取組をさせていただき、自然との付き合い方を勉強できたと思っている。
先生も色々調べていただき、知事もおっしゃったように、歴史を今あるもので紐解いていくことは非常に興味深い。先人たちが山の中で砂防施設を入れてこられたが、最近、裏山を歩いていると、その砂防施設の少し下流が掘れて、小さい石積みの堰堤の下が崩れてきている。やはり、そういう部分をいかに修復して残していけるかが山の荒廃を防ぐために大事と思うし、コンクリートから人へという話もあったが、硬いもの、柔らかいものではなく、要は頃合いの良いものをいかに使うかも大事。行政の中でも、右とか左とかではなく、真ん中辺の良いところをいかにやっていき、より良くできるかも大事と思う。
(園田観光文化スポーツ部長)
深町先生には文化財保護審議会委員としてお世話になっている。この4月から組織が変わり、観光文化スポーツ部長を拝命したのでよろしくお願いする。
今日お話を聞かせていただき、石の文化は、先ほどの防災の部分だけでなく、地域の暮らしを支えてきたのだと大変関心を持った。この地域だけでなく、琵琶湖の水運を通じて、県内各地の寺社仏閣であるとか、城郭の石積みにも比良山麓の石が使われてきたのだと思い、滋賀ならではの歴史文化ストーリーを感じた。観光という視点でこれを広げることは、先ほど体験型とご案内されたが、地域に住む方々にとっては、暮らしや信仰と結びついているので、「そんな見世物にしてほしくない」という意見もあるかもしれない。一方で、未来につなぎ文化継承していくという関係で期待する声もあると思う。観光という視点でこれを広めようとする時、どのような点に気をつけるべきか、ご指導いただきたい。
(深町先生)
おっしゃるとおり、何でも誰でも見てほしい、来てほしいという地域の方はそれほど多くないと思う。外部から来る方が地域を案内する方が地元の方と信頼関係を持ち、その中でいろんなものを見せてもらったり、地域を歩いたり、一緒に食事をしたりすることもできる。多くの人数は難しいが、少人数やいくつかのグループであれば、そのような形で来ていただき、それが張り合いになることもある。そのような観光や滞在の仕方を今後もっと進めていけると良い。今、地域のことをよく知っている方が、食文化も含め減っており、それらをつなぐ方と、地域の外から来る方でつなぐ方、地域の中で窓口になる方がいて、お互いの気持ちをうまく理解しながら、最適な方法を見つけると非常に良いと思う。恐らく正解は一つではないので、いろんな場に応じた形で臨機応変に対応できると良い。例えば、比良山麓には海外の方が住んでいたり、芸術家もいるので、そのような方にも参加してもらえるような枠組みを考えることもできる。
先ほど、いろんなものが他のところで使われていると話したが、比良の北比良は、非常に大きな石が採れたので、大きな鳥居ができた。日吉大社さんの鳥居は比良の固い石が使われており、鳥居を作る時の石は比良岡さんのところにあったという記録がある。比良地域と近江八幡は船でいろんなものが交流しており、比良からは薪や石材などが、近江八幡からは農作物などが運ばれていた。だから八幡堀を見ると「これは守山石だな」と思うものもある。水路を通って京都のいろんなところにも行っている。石のつながりの中で、巡り方や新しい交流のあり方を考えても良い。
(知事)
この辺りで大きな石が採れたと聞いている。
(深町先生)
大きな石が採れたのは北比良だが、南小松は大きい石というよりは硬くて非常に良い石が採れた。そういった石の価値は、実はあまり認識されていない。近江商人の庭にも立派なものがあるが、価値を感じずに世代交代すると廃棄されることもある。あれだけの技術であれだけの素晴らしい石の構造物を作ることは今後できないかもしれない。旧京都平安ホテルなどにも作品としてあるので、そうした石の文化を巡る企画も考えられるかもしれない。
(知事)
凄い庭にある灯籠を「これは嘉兵衛灯籠ですか」と聞いたら、「知事は教養がありますね」と言われたが、それはここで教えてもらったこと。「嘉兵衛灯籠」は、何気なく見ていても彫りが全く違うらしい。鶴や亀など、物凄い細工を石を削って作ることができる集団がこの地域にはいた。その最たるものが「嘉兵衛灯籠」であり、西村嘉兵衛さんの一族が作られた。
先生からお配りいただいたパンフレット内に志賀駅の近くに「化灯籠」という灯籠があるのがわかる。灯篭の横のサイクリングをしている方とサイズを比べると、この灯籠がとても大きいことがわかる。この大きな灯篭は積んで作られており、さも簡単に積んであるように見える。しかし、石工曰く、バランス一つとっても物凄く難しいらしい。先ほど先生がおっしゃったように、この石はここからきているとか、ナラティブと一緒に紹介すると、またいろいろな楽しみ方があったりするのかなと思う。
(岡田商工労働部長)
石の歴史を見ていくと、当時の暮らしや自治の仕組みが分かり、非常に興味深かった。昨年観光を担当していたので、その視点からすると、他の都道府県にどう紹介すれば良いかと考えてしまう。外部から見に来る人もいるという話もあったが、滋賀県の石の文化は他の都道府県と比べてどのような特徴があるか教えてほしい。
(深町先生)
滋賀県の地質に関しては、地質の先生に聞くのが一番だが、とにかく花崗岩が多い。それ以外にもチャートがあったり、伊吹山に行くと石灰岩、流紋岩などがあり、この比良だけでもチャートから花崗岩に変わり、花崗岩の中でも硬いものや青みがあって加工には向かないが非常に硬いものもある。私が申し上げたいのは、地質学的に分類されるものに加えて、同じ花崗岩の中でも見た目や硬さ、加工のしやすさなど、多様性があるということ。
例えば、伊吹山周辺では質の良い花崗岩が米原市曲谷にだけにあるらしい。このような石の多様性を集落単位で見ていくことが、それぞれの集落の特徴や価値を発見する視点になるのではないかと思う。
(知事)
今の岡田部長の問いに私が答えるなら、「石山」や「岩根」、「石部」など、とにかく滋賀県は石や岩にまつわる地名が多い。皆さんも聞いたことがあると思うが、「滋賀」という県名も「石が良いね」という言葉から来ていると言われるほど、滋賀には良い石、いろんな石が採れた。
石工の技術は、元々いた人が編み出したものか、それとも外来のものなのか先生にお聞きしたい。
(深町先生)
大陸とのつながりは大きいと思う。この辺りは外来の文化も早く伝わった地域である。石の名前も花崗岩だけでなく、比良石だと比良にもあるが、木戸石など、地名がついた形で特徴がわかるものもある。沖島も石の産地であった。比良のあたりの石の文化、技術が、実は滋賀から京都に渡っていたという考え方もある。京都のいろんな庭園で石が重要な要素であり、多様な石材や技術が伝わる中で石の使い方も豊かになったのかもしれない。石の文化という点で、本当に滋賀県は重要な位置にあるのではないか。しかし、その辺りがあまり目立たないというか、認識されていない部分もあるかもしれない。
(村井教育長)
今日は面白い視点をいただいた。石はどこにでもあるのであまり注目されないし、石垣もどこにでもあるので、みんな意識しないのかもしれない。
最初に興味を持ったのは、そもそも先生がなぜ石に興味を持たれたか、という点である。また、石という切り口は、観光、土木、環境など、本当に様々な視点があり得る。高校生くらい(小学生はまだ難しいかもしれないが)が、いろんな物事を探求していく1つのテーマとして石を与えるといろんなものが出てくるかもしれないと思った。そのような接点ができれば良いと思う。
(深町先生)
私は森林総合研究所の研究者となり、森に関心があったので、石には目がいっていなかった。しかし、地域活動で石工さんに会ったり、石がある風景と石がなくなりコンクリート構造になった風景を見たりする中で気持ちの変化があった。石があることで心への伝わり方が違うのではないか、と思った。植物などを調べていくと、生物多様性という観点で石があることの意味を知り、石の構造物を上手く使えば災害もコントロールできることもわかった。様々な視点での石の見方を教えてもらい、現場を訪れる中で、石はすごいなと感じた。石を見ると近くの山のことも分かる。石の文化Mapの中で砂浜がある場所は、上流に花崗岩があるところだ。琵琶湖には砂浜が美しい白砂青松があるが、私の住んでいるところはチャートなので、砂浜にはならず小石の浜だ。下流にいながらも石の姿を見ると、上流の地質がわかり上流から下流に向かう中で、石の角が取れて丸くなるなど、石の姿も変化する。これからの教育プログラムにつながることを期待したい。
(知事)
「いしのこ」を作るもの良いかもしれない。「うみのこ」、「いしのこ」とすると面白い。先生は今、京都大学大学院地球環境学堂だが、滋賀県立大学の先生や学生と共同研究はしておられるのか。
(深町先生)
私が関わっていたEco-DRRプロジェクトには、滋賀県立大学の歴史の先生も参加していた。伝統知・地域知の理解には古文書を読んだり、絵図を読み解く必要がある。琵琶湖博物館の学芸員や砂防の先生など、幅広い分野の専門家が参加する中で取組を行ってきた。
(知事)
琵琶湖博物館に寄贈していただいた展示物がお蔵入りになっていないか、また確認しないといけない。
(中田琵琶湖環境部長)
また確認をしておく。
先生にお聞きしたい。この地図には、たくさんの生き物が描かれており、嬉しく拝見した。お話の中で、石と生物多様性に深い関わりがあるという話があったが、子どもの体験学習にも非常に良いのではないかと思われる。具体的にどのような場所や生き物が石垣の中で見つけられるかなど、良い事例があれば教えてほしい。
(深町先生)
石垣に隙間があることが重要で、非常に硬い石と風化しやすい石があり、そのような違いがまた違った環境を作る。乾いたところと湿ったところでは植物が異なる。私が調査した田んぼの周りでは、石があるところ、草刈りを行なったところ、水たまりがあるところなどでそれぞれに特有の動植物が確認された。こうした場所は道に近くからすぐにも多くあり、子どもでも容易に調査ができる場所だと思う。
また、石と水辺の関係も重要である。江戸時代からの水路にはコケ類も多く、コケの多様性が歴史の長さと環境の多様性を物語っている。そのような場所に湧水が湧いていたり、石の構造物のように逃げ場があったりすると、魚類や水生昆虫の生息環境としての重要な場所となる。例えば比良の中でも、湧水が湧いているところだけに、絶滅危惧種のシマドジョウの仲間などが確認されている。石と同時に、その周りの環境がどのような場所で、どのように管理されているかを見ながら、子どもたちに伝えられると良いと思う。
(岸本副知事)
現在滋賀県では、比叡山延暦寺と琵琶湖文化の連携による世界遺産の取組を進めている。彦根城はその石垣が特徴的で有名なので、価値の説明も石垣に注目した形でできないかと検討している。そのようなものと組み合わせて、様々な石の姿や構造物を見られる場所があるというのを、観光のポイントとして説明できないかと考えている。
最初にこのマップを見た時、石の文化について、一般的に日本は「木の文化」であり、西洋は「石の文化」であると言われる中で、外国人の方に日本の石の文化の良さや魅力をどう説明したら良いか、先生のお考えを伺いたい。
(深町先生)
日本の石の文化を見ると、確かに分かりにくいかもしれないが、場が多様である。西洋では住居を石で作る。石畳あるいは教会に石の構造物があったりする。日本は実際に住む居住地だけでなく、様々な信仰と関わる。信仰に関する石の文化も多様で、神社で使われるものと仏教に関わるもの、自然信仰のものでは特徴が違う。水田稲作があることで水路が多様に展開されている。災害に対応するという点で、例えば湖岸では波除け石があったり、石の堤があったりする。その多様性とスケール、非常にミクロなものから大きなスケールまで、日本の石の文化の深さ、広がりは圧倒的だと思う。先日ポルトガルから帰ってきたが、そう感じる。
(東副知事)
先ほど話の中に近江八幡の話が出たが、私は近江八幡が地元であるが、対岸から石が運ばれてきたというのは初めて知った。石は昔から身近にあったものだと思う。今はコンクリートなどで造成されるが、八幡の旧市街の古い水路なども皆石垣で組まれており、自宅なども埋め立てには石が使われていたので、昔から石が身近にあったのだと改めて感じた。それぞれの地域で、それぞれの特徴、石に根ざした暮らしがあると思う。今回は比良山麓を紹介いただいたが、県内他の地域にそれぞれの違いがあると思うので、そのようなところをまた教えていただければ、様々な発信の仕方もあるのではないかと感じる。
(知事)
ありがとうございました。非常に多岐にわたり、皆がそれぞれの専門や担当の中で、興味をもって感じたり学んだりするところがあったと思う。それを咀嚼し、これから石の文化や豊かな滋賀の学びの発信につなげていきたい。今後ともよろしくご指導をお願いする。
ますますのご活躍を祈り、今日このような貴重な話をしていただいたことに感謝する。
(知事)
栃木県で16歳が加担して、27歳の夫妻が関与したと言われている事件があった。トクリュウと言われる事案。今、警察も様々な捜査に全力を挙げていただいているが、やはりこういうことに手を染めるというのが現実なのか。
(池内警察本部長)
栃木の事件について、私自身は報道レベルでしか承知していないが、闇バイト的なもので、高校生が自分のつながりの中で人を誘い、16歳の子どもたちが集まって、半ば脅されて犯罪に加担している。県内では幸いにして、そのようなタイプの強盗は確認されていないが、トクリュウが中心となり、特殊詐欺のかけ子をカンボジアに送る目的で、誘拐して連れて行った事件は、滋賀県警でも検挙している。このような形の組織犯罪が、いたるところで起こっているのが、全国の警察の主たる課題となっている。