〇参加者:今日は、ありがとうございます。この4月から「木之本留学サポートの会」がスタートしました。ざっくばらんに皆さんとお話したいと思いますので、よろしくお願いします。
●三日月知事:はい、お願いします。
〇地域としては、「地域と伊香高のミライ創造コンソーシアム」という会ができました。その中にいくつか部会があり、教育関係は学校の先生が担当されています。我々地域側は、受け入れ体制を担う「留学サポートの会」を立ち上げました。
〇現在、大津から通っている生徒が1人いて、慣れてきたら泊まりたいという希望もあり、2階を受け入れ用に用意しています。
〇住まいは何とか形になっていて、食事は地元のお母さん方——というか、お姉さん方(笑)——がボランティアで朝晩担当してくださっています。メンバーは22名です。
●ボランティアで朝晩とも?
〇はい。
●高校生やし、栄養にも気をつけなあかんね。この写真のカウンターみたいな場所は?
〇いま借りている場所です。所有者の方に協力いただいて、しばらく貸してもらっています。ここで食事をつくって、子どもたちが食べに来ています。
●すごいなあ。ありがとうございます。
〇お米などもすべて自分たちで手配しています。
●今住んでいるのは、男子1人、女子1人ですか?
〇そうです。いい子たちが来てくれています。女の子は明るくてかわいらしくて、男子もきちょうめんな性格で、食事も「うまい、うまい」と言って食べてくれて、こちらもありがたいです。
●親御さんも、最初は心配で見に来られたのでは?
〇何回か来られました。
●みなさんが支えてくれていることで、親御さんも安心されるでしょうね。これから3年間お世話になる形ですか?
〇はい。これからも続いていくと思います。次の学年が入ってくるので、継続していきたいです。お母さん方もまだ若いので助かっていますが、次の世代にもしっかりバトンを渡していく必要があります。
●支えてくれる人たちも、代々回していかないとね。一部の人だけがしんどい思いをするのでは続かない。何か課題はありますか?
〇3月に「サポートの会」を立ち上げたばかりで、まだ2カ月です。お米など支援もいただいていてありがたいのですが、今後どう継続していくかが大きな課題です。
●長い目で見て、ということですね。
〇はい。年間の事業計画も見据えていくと、お母さん方も家のことを犠牲にしていたり、時間的な負担があります。北部は雪も降るので、冬場は手伝いに来るのも大変です。
今年は国体の会場を担わせていただいたり、「豊臣兄弟!」の演劇や「森の探究科」など、地元にとってのチャンスが重なっています。そうした機会をどう活かしていくか、出発点から物事を考えていく必要があると思っています。
●ありがとうございます。お食事の用意も大変だと思いていますが、当番制で回していただいているんですね。
〇そうです。最初は「何をするの?」という戸惑いもありましたが、私たちにとっても大切な高校を守っていきたいという思いでご協力させてもらいました。
最初は10人ほどでしたが、子どもたちが楽しそうにしているのを見て、今は22名に。週1回程度の当番で回せるようになってきました。
●週1回とはいえ、継続していくのは大変ですね。
〇そうですね。私たちも年を重ねていきますし、食材の提供など、支援の形も多様になっています。家で採れた野菜などを持ち寄ってくださる方もいて、人数が増えるほど助かっています。
〇木之本は女性が活躍していて、団結力もあります。ただ、安全面での不安もあって、暗い道の電灯を増やして危なくないようにしてほしいという意見もあります。今後、子どもが増えれば負担も増えるので、ボランティア募集の工夫も必要です。
●今は、どうやって募集されていますか?
〇口コミですね。知り合いを頼ってお願いしています。でも続けていくには年齢的にも、下の世代を取り込まないとね。
●お仕事をしながら参加されている方も?
〇はい。夜に出られない方は朝にまわってもらったりして、シフトで対応しています。
●献立も考えないといけないですね。
〇はい。献立チームを6名で編成していて、2週間に1回集まって買い物や計画をしています。メインの食材は事前に用意しておき、あとは自由にアレンジしてもらっています。皆さん料理のプロみたいな方ばかりです。
●心強いけど、大変でもありますね。
〇でも、献立を考えるのも楽しいです。
〇家では「仕方なく」つくっている料理も、ここでは子どもたちが喜んでくれて、全部きれいに食べてくれる。それがうれしくて、コミュニケーションの中でいろいろ教えてもらって、今までにない楽しみになっています。
●それは素晴らしいですね。話している様子からも楽しさが伝わります。
〇ありがとうございます。これからもがんばります。
〇私たちとしては、食事のサポートだけでなく、地域で子どもたちを見守る体制が大切だと思っています。遠方から高校に通わせる保護者や祖父母にとっても不安は大きいと思うので、「安心してください」と地域全体で発信していきたいです。
「ぜひ希望のある生徒さんは来てください」と、お迎えする気持ちでいます。私も娘が3人おりますが、思い出してわが孫のように思って接しています。
●ありがとうございます。まだ1年目ですが、これから全国にも募集して、多くの方が希望を持って参加できるように、私たちも発信していきたいと思います。
〇よろしくお願いします。
〇「森の探究科」をつくっていただいて、本当にありがとうございます。県の活性化にもつながると思います。
●ありがとうございます。山や森のことを学ぶきっかけにしてほしいと考えてつくりましたが、やはり地域との関わりが何より大きいですね。
〇大きいですよね。
●大きい、大事なことだと思います。いろんな協力もいただいていると聞きました。学校裏山の共有林も「使っていいよ」となったそうですね。
〇あれは「入会山(いりあいやま)」といって、江戸時代から木之本区で管理してきた山です。今年が昭和100年の節目にあたり、組織は残しつつも「自由に使ってください」とさせてもらいました。その流れで、伊香高校の生徒さんやこども園の子どもたちにも利用してもらっています。知事にも現地をご覧いただきましたね。
●少し歩きました。碑もありましたね。
〇あれには299名の名前が刻まれています。校長先生にも「自由に使っていい」とお伝えしています。
●ありがとうございます。地域の皆さんは、どのようなサポートをされていますか?
〇見守りをお願いしています。
〇生活面での心配があるときには声をかけてくださいとお伝えし、急な病気で病院に行くなどの対応をしています。通学や夕食の道中を送迎もしたりしました。遠くから来ている子どもたちに、地域で親のような立場で関わっていきたいと思っています。
●ありがたいですね。そういった方は何人くらいおられますか?
〇「相談サポーター」という名称で、現在3名が活動しています。地域全体でも見守りや応援をいただいています。
●すばらしいことですね。
●これから年月が経つにつれて、また新しい子たちも来るでしょうし、学校との連携も大事になりますね。
〇校長先生:はい。学校と地域の連携を取りながら、しっかりやっていきます。
●モデルにしているような地域はあるんですか?
〇正直、こうしたケースはなかなかありません。地域が主体で場所を整え、食事も支え合う「まち全体が寮」というコンセプトでの取組は珍しいと思います。
●なかなかないでしょうね。
〇最前線に立っているという意識を持って、みんなでがんばっています。
〇私が学生だった60年前は、下宿している生徒がたくさんいました。交通の便もよくて、遠方からも通っていたものです。地域ごとに部活動で集まる傾向もありました。
●昔の下宿は個室じゃなかったんですよね?
〇そうです。一間を借りて、「ご飯やで」と呼ばれて食べに行くようなスタイルでした。
●お風呂もみんなで使って、ホームステイのような感じですね。
〇はい。感覚としては理解しているんですが、実際やってみると戸惑うことも多くて…。子どもたちが来る直前に「間に合わさな」と、突貫工事のように進めてきました。
●4月から始まるのに(笑)
〇現在は2〜3名の受け入れですが、今後5名、10名と増やしていくには、まず住まいの確保が必要です。空き家や古民家もありますが、分散すると見守りが難しくなります。
既存の施設を活用するなどして、寮が整備できれば、見守りや食事提供も効率的になります。
〇現在、私たちが食事を作っている場所は徒歩圏内とはいえ、分散すると移動が大変ですので、寮のような場所があれば、と思います。
●ありがとうございます。ほかに何かありますか?
〇私たち自身も高齢化が進んでおり、今後どう継続していくかが課題です。安定的な資金確保と、若い世代の参画が必要です。
●現在の運営体制は?
〇寄付など、皆さんの善意で成り立っています。
〇同窓会としても、協力を呼びかけています。
●同窓生の皆さんの支援も大きいんですね。
最後に
●三日月知事
ありがとうございます。本日初めて見に来させていただきましたが、「森の探究科」という意義あるプログラムを、地域の皆さんが温かく支えておられることがよく分かりました。
ただ、まだ始まったばかりです。人数が増えた際の住まいや資金、支援のネットワークなど、持続可能性をどう確保するかが今後の課題であり、可能性でもあると実感しました。この点については、私も持ち帰って関係者と相談し、今後を一緒に考えていきます。今後も関わり続けてまいります。
私自身、かつて杉野に移住し、伊香高校にも関心を持ってきました。一緒に通った生徒のことも、今も心に残っています。地域に学校があり、地域とともに学べることは非常に大切です。これからも応援していきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。