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第51回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「多賀語ろう会」の皆さん

「多賀語ろう会」の皆さん

今回は、「多賀語ろう会」の皆さんと対話を行いました。

多賀語ろう会は新しく建設する多賀町中央公民館をまちづくりの視点で考え、建設準備段階から地域の皆さんとともに学び合い、交流を深めながら開館に備えるための場で、現在中央公民館で活動している団体やサークルをはじめ、生涯学習やまちづくりに関心をお持ちの地域の皆さんと職員他関係者が参加されています。町に詳しい学芸員の方と町内を巡ったり、「多賀の食」をテーマに山菜採りを行ったりと、まちづくりにつながる研修やイベントを実施しておられます。

今回は、活動を通じて気付いた多賀町の魅力や課題、住民の皆さんとの協働による地域づくりなどについて語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 多賀町大杉にある家をお借りし、多賀町に滞在しながら、この地域の勉強をさせていただく「知事短期居住」を今日から始めさせていただく。最初のプログラムが皆さんとの対話ということで楽しみにしてきた。
  • 先日の選挙で、2期目は「健康しが」をつくろうということを皆さんに訴えて当選させていただいた。私たち「人の健康」と、地域を支える「社会の健康」、そしてその土台になる「自然の健康」という、3つの健康を保ち、高め、整えることで、私たちの豊かさや幸福感をもっと広げていけたらということを公約にし、頑張っていこうと思っている。とりわけ「自然の健康」では、山は源流で、山がいろんな産物を産み出す源だという考え方から、山の健康をもっと高められるような施策を充実させていきたいと思っており、山にもっと多くの人の力や心の入る施策を、町長をはじめ、町の皆さんや地域の皆さんと一緒につくっていきたいと思っている。そのためには、現場で取り組んでいただいている皆さんのお声を聞いて施策にしていこうということで、今日は来させていただいた。

「多賀語ろう会」の皆さんから

多賀語ろう会の活動について

  • 2012年度に多賀町の生涯学習の在り方を考える準備会が始まったことがきっかけで、翌年に生涯学習の在り方検討委員会が発足し、多賀町生涯学習推進基本計画が策定された。計画を受け、公民館の整備検討委員会が発足し、多賀町中央公民館建設基本計画が策定された。この計画により、新公民館設計者を選定するコンペが行われ、応募があった167案から最優秀作品として、o+hさんの作品が選ばれた。
  • このような中、有志の社会教育職員により、新中央公民館の建設についての学習会を設ける動きが起こり、既存の社会教育施設と新公民館の関係や、新公民館で行いたい取組といったことについて学びを深めた。当初は職員のみの研修会だったが、そこに設計者や地域の方や専門家の方も入る形で、地域の方と共に学ぶ会へと発展していった。2016年1月から「多賀語ろう会」と名付け、多賀語ろう会の活動が始まった。
  • 公民館建設に関わる「建設委員会」、「運営準備部会」、「林業活性化検討部会」の運営準備部会として公民館に関わる人づくりを担うことになったのが多賀語ろう会である。活動メンバーは職員、設計者、地域の県立大学などの学生さん、子育てサークル、地域の事業者などで、地域住民の方々と共に活動を進めている。
  • 月1回程度のペースで公民館に関わる各種研修会を開催している。前半は講義形式で研修を行い、後半からは、ざっくばらんなワークショップというかたちで考えを深めてきた。
  • 「多賀の食」をテーマとした食のイベントを今年度に開催することを目的に、昨年度は山菜を採りに行くところから活動を始めた。昨年11月には「ふるさと多賀の食まつり」というプレイベントも開催した。また、障害を持った方が働く「杉の子第二作業所」が新しい公民館に入るので、福祉に関する研修も行った。
  • 今年度の活動は大きく分けて四つのテーマを基に活動している。1つ目は、昨年度にプレイベントを行った「ふるさと多賀の食まつり」の本番イベントに向けて活動する食部会。2つ目は、公民館建設をきっかけとして、杉の子作業所の仕事につながるものづくりを考える「ものづくり部会」。3つ目は、滋賀県立大学の学生と協力して公民館の広報を行う広報部会。4つ目が新公民館のルールとなる条例や例規の整備について職員を中心に検討する例規部会。これらの各部会が「多賀語ろう会」に報告するかたちで進めている。
  • 各部会が協力しながら、3月の竣工式や、開館セレモニーとなる「ふるさと多賀の食まつり」の本番、4月のオープンに向けて準備を進めている。

活動を通じて気づいた地域の課題について

  • 多賀町史編纂を考える委員をしているが、今のうちにいろんなことを聞いておかないと、高齢化で昔のことが分からなくなってくると思っている。特に多賀の山の方は限界集落で、住む方が少なくなってきている。山の集落は、住む方がいらっしゃらなくても、お祭りのときには皆さん帰ってこられるなど、きちんとされている。その時はいろんな食事もつくられる。滋賀県立大学の学生さんと、3年くらい前から年に4回ほどの主に食のことについて聞き取り調査に行っており、先日、桃原(もばら)の集落に食の視察に行ったときには、梅が放置されているのを見つけて、もったいないので、梅ジュースなどにした。雨の中、ヒルよけをして梅を拾いに行って、学生さんたちと一緒にこだわって漬けた。山が放置されたままになっているのは、もったいないと思っている。
  • 私は元々、学生仲間とともに、多賀町の魅力を発見して発信するという活動をしていた。「多賀語ろう会」の活動は、私たちの活動と近いと思い、去年から参加させていただいている。現地に行って食について学ぶうちに、面白くなって興味が湧いてきて、最近は料理や料理動画をつくる活動にシフトしてきている。多賀の魅力は風景や、おいしい食べ物、きれいな水など、自然が生きているところだと思う。県外出身だが、実際、多賀に住んでみて良い所だと実感した。
  • 昨年4月から多賀に来て、多賀町職員として働いているが、最初に参加した多賀語ろう会の活動が山菜採りだったので、すごいところに来てしまったと思った。だが、こんなに自然の魅力がたくさんあることにすごく感動した。自然があるだけでなく、その自然を上手く利用し、おいしく食べる工夫をしていることを知り、多賀はすごく面白いところだと思った。
  • 多賀の自然はものすごく豊かで、桃原というところでは、昔ゴボウが採られていたらしく、これを復活させようという動きも起こってきている。
  • 私は多賀町の「森林資源循環システムの構築に関するワーキンググループ」というものに参加している。山林の資源がいま伐期に入っており、山から下りてくる資源をどう循環利用していくかということを川上から川下までの事業者を集めて会議した。その時に、中央公民館を町産材で建設して、実際にそれを運営するための勉強会(のちの多賀語ろう会)をしているという話を聞き、参加したのがきっかけである。初めて参加した時に、森林組合さんや山林組合さん、岡山県で針葉樹の家具づくりをされている方がプレゼンテーションをされていた。私はびわ湖材を使った家具のデザインをしており、他県や県内他市町の森林組合さんの話を聞く機会は多かったが、灯台下暗しで、地元の方の話ほど聞く機会がなかったと気付いた。多賀町にいながら多賀町のことを知らないと思い、そのまま継続して語ろう会に参加している。
  • 新公民館を地域材で建設する以上は、地域材についてしっかり学んでやっていかないといけない。学習ありきでやっていこうという動きから多賀語ろう会の輪が広がっている。その地域材も含めて、活用していくという取組をものづくり部会で始めている。o+hさんと岡山で家具づくりを行う株式会社ようびの大島さんという方のデザインで椅子をつくるなどしている。多賀の建材を使うというこだわりを持って取り組んできたので、みんなが目にする、手に取れるようなところも、多賀の木でという思いで、取り組んでいる。つくった椅子は東京にある滋賀のアンテナショップ「ここ滋賀」にも置いてある。
  • 私が多賀語ろう会に入った理由は、子育てサークルで子どものことに携わっているという点が一番大きかった。自分の子どもは大きくなったが、0歳から4歳児までのお母さんから、こういうふうにしたらいいのになとか、こういうところがいいよなという意見をたくさん聞いているので、それを多賀語ろう会でお話しさせていただいた。子どもが大きくなった方が多いこともあり、最初は、小さい子どもを持っているお母さんたちの目線と懸け離れた児童室になっていたので、ここをこうしてくださいとか、これは子どもが危ないとか、今のお母さんはこれを望まれていますということをお話しさせていただいた。自分の子どもが就職するときに、周りの友達が多賀を出ていくという話をたくさん聞いたので、これは止めなければという思いを持った。多賀語ろう会というものがあって、公民館がある。若い世代の中学生、高校生も使えるような公民館にして、今出ていってもまた帰ってきてねと話せるといい。
  • 子育てサークルの活動の場である児童館が今回、公民館と一緒になる。今までは子どもと親だけだったが、もう少し広がって地域の方と交わる空間というかたちで設計されており、子どもの広場に地域の方が触れ合い、関わっていける場所になっている。
  • 最初に設計されていた児童室が都会のような感じだった。ここは多賀の村なので、設計者に今使っている児童館を見たことがあるかと聞いたら、見ていないと言うので、見てくださいとお願いをした。
  • 今の児童館を見てくださいと言われて、すぐに見に行った。現場を見に行って、どんなふうに普段遊ばせておられるかということを目の当たりにして、家具なども設計者である私たちが想像していたのとはちょっと違うことが分かった。床の仕上げ方や収納の大切さが、見たことですごく良く分かった。そこからは、互いに相談を重ね、つくりあげてきた。
  • 新公民館には杉の子第二作業所が一緒に入るが、県内には公民館に作業所が入っている例がなく、どうやってつくっていくかということが課題で、先進地視察にもたくさん行った。
  • 公民館の中に障害を持っている方が入って、共存共栄し、健常の方と一緒に利用し、月曜日から金曜日には作業所の人がいつもいる。それだけでもすごく活気のある公民館になる。さらに、その子たちは、利用者の交流の場に出ていくなど、いろんなことができると思うので、一般の方と交流がもっと増え、障害者理解が深まっていけば良いと思っている。多賀町に認めていただいて、公民館に入れていただけるということで、すごく感謝している。公民館に入った後も、今とほぼ同じ規模で作業を継続しようと思っている。ビニールハウスを違う場所に移転し、野菜や花の苗をつくる作業を継続するとともに、屋内でやっている作業は同じように作業所の中でやる。段ボールの緩衝材をつくっている工場で施設外就労をしている人たちもいるので、それも継続しようと思っている。たくさんの方が来られ、集まられる場所でお仕事できるというのはいいと思う。
  • ものづくり部会では、杉の子作業所の生活介護が重度の子どもたちが関わるものづくりについて検討している。絵を描いたり、何かをつくったりするようなことが好きな子がいっぱいいるので、絵を描いてもらって、それをデザイン化できないかと考えている。20人くらいで10メートルほどに並んでロール紙に一斉に絵を描いたが、その絵はビビッドな色合いのものが商店街みたいに並んで、個性のぶつかり合うエネルギーのあるものになった。この絵は、缶バッジになっている。また、絵を公民館のどこかのカーテンなどに使えないかという話が持ち上がっているところ。これが公民館の中に作業所が入ることの一つの魅力、つながるメッセージみたいなものになればと思っている。また、商品化して、作業所として価値のついたものを販売できるようになったらありがたいと思っている。作業所も楽しみでわくわくしていて、缶バッジにしようか、コップにしようかなどいろんな話が出ている。
  • 私は3月まで民間企業で働いていた。企業も地域の皆さんと一緒にいろいろなことをやっていかないといけないということで、新公民館建設にあたり、様々な場に顔を出していたら、「企業をやめて、こっちへ来てほしい」という話になり、この4月から生涯学習課の職員になった。多賀町は、人口が8千だが、2千人くらいが昼間は工業団地にいる。そういう人たちともいろいろ連携を取り、企業と一緒にやれば、もっと伸びしろがあるのではないかと思う。
  • 多賀語ろう会には、元地域おこし協力隊ということで参加した。協力隊になる前は大阪でシステムエンジニアとしてインターネット関連の仕事をしていた。協力隊として水谷に入り、そのまま定住している。水谷は山間部になるが、そこで何かできないかということで、畑や田んぼをお借りして、お米や野菜づくりを行っている。今はニワトリを飼って養鶏業をメインでやっている。今は多賀の駅前の方で門前市という野菜市にも参加させていただいているが、新しい公民館にはいろんな施設があるので、例えば公民館で野菜市を行うことによって、町民の方だけではなく、たくさんの方に普段から公民館に来ていただけるのではないかと思っている。野菜を買いに来られた方が料理教室でつくった料理を食べて、料理教室に興味を持って、より公民館を使っていただけたらとも思っている。いろんなことに参加させていただいていると、いろんな方のお話をお聞きすることができるので、そういった要望や意見を新しい公民館で反映させていけたらと思う。
  • 蕎麦の会社や商店にも参加していただいている。多賀は蕎麦がおいしいところで、蕎麦畑を見て、こちらに移ってこられたという方もいらっしゃる。そういう美しい風景とおいしい食材が多賀語ろう会を通じて学習と共にある。そういう学習を基に、学びたくて皆ここに来ている。人と関わり合いながら刺激を受けるので、それがこの試みの面白いところだと思う。

協働でつくる新公民館について

  • 私は新公民館の建物工事などを担当している町職員だが、建築工事をやりつつ、ソフト面を考えるということで、多賀語ろう会にとても関心を持って参加させてもらった。最初は、正直、ここまでの取組になるというのは想像もしていなかった。職員だけで始まった会が、今では地域の方、いろんな業種の方、関係者の方が入ってくださって、本当に驚いている。まだまだ広がっていく可能性もあると思っており、楽しみにしている。
  • この事業は人や思いだけではできず、予算もないとできないが、たまたま支援してくれる事業があったということが、ここまで活動が広がった要因の一つ。それに加え、新公民館設計者のo+hさんが、ただ単にものをつくるだけでなく、そこに命を吹き込むための事業を一緒にまちづくりとしてやっていこうという思いでやっていただけている部分も大きい。また、多賀語ろう会コーディネーターの方の力も素晴らしい。皆さんがそれぞれ主役であると思っている。
  • 行政職員は裏方でいろいろと事務をやってくれている。多賀語ろう会は行政職員との距離が近い。皆さんとの感覚が近いので、人間関係がうまく形成されて、立場は違うけれども、同じ人として認め合ってやっている。
  • 多賀語ろう会は毎回出席というわけでなく、たまに休んだりしても大丈夫で、出たり入ったり人が替わりながら、この場を共有している。それを町が場として認めているというところが、多賀の面白いところだと思う。
  • 2012年にこれからの多賀の生涯学習の在り方を考えるという前段階、準備段階であけぼのパークの職員が勉強会を立ち上げた。多賀町には中央公民館とあけぼのパークの二つの生涯学習施設がある。体育の施設を除くと、町民の皆さんが来ていただく文化的な施設は、この二つである。あけぼのパークには、主に図書館利用で、年間6万5千人の方が来ておられる。これまで中央公民館とあけぼのパークは、うまく融合してできないかと色々試して、考え続けていたが、活動が重複するなど、なかなかうまくいかなかった。そこに新しい公民館がつくられることになり、危機感が芽生えた。あけぼのパークに行っていた人が新中央公民館へ流れてしまうことになっては怖い。どちらも良い点を活かして、町民の皆さんにそれぞれの目的で来ていただけて、学んでいただけるような施設として成り立つようにしていかないといけないと思ったことが勉強会立ち上げのきっかけだった。発展的にこうなるといいなと思っていたのが、とんとん拍子に実現していった。もちろん設計者のo+hさんの力もすごく大きかったと思う。多賀語ろう会は今後どうなっていくか予想がつかないところまで発展してきていると思う。
  • 私は生涯学習の在り方検討委員会の時から関わらせてもらっているが、そこで学びのある場所で、多賀に寄ってくれる場所、あるいは寄り合える場所をつくりたいという意見が出た。公民館は何か用事がないと入ってはいけないというイメージがすごく強いので、用がないときにも一人でぱっと来られるような場所になればいい。新公民館の説明会に参加していた90歳のおじいさんが帰り際に、「この公民館なら一人で自転車でちょっと寄ってもいい」と言っておられた。ふらっと寄って、お茶を飲んで帰れるような場所、関わり合う中で何かが生まれそう、そんな場所に近づいてきていると思う。
  • 新公民館はいろんなことができる要素がすごくよく仕込まれている。部屋が個々別々の動きではなく、有機的につながっており、相乗的な効果を発揮しやすい。また、あけぼのパークとも相乗的に連携している。町の文化財や食材を調べるには、あけぼのパークにある多賀町立博物館に尋ねると早い。町史を編纂するにも連携しやすい。そういったことがあって初めて、公民館が社会教育あるいは生涯学習の施設として生き生きしてくると思う。正直、職員だけでは無理だが、ここにいる多賀語ろう会のメンバーさんや、これから現れてくる新たなメンバーさんが、その一つ一つの活動のリーダーになって、チームをつくって、町全体のプラットフォームで集まっていければ、必ず成り立っていくと思うし、すごく面白い公民館、町になるのではないかと期待している。

知事から

対話を振り返って

  • 多賀語ろう会という場があって、つながりがあることをうらやましいと思ったし、可能性を感じた。きっかけは、生涯学習をどうしようかということだったかもしれないし、あけぼのパークがどうなるか分からないという危機感だったかもしれないが、何より新しい公民館をつくろうというキーとなる事業があって、つくるなら、みんなでより良いものをつくろうというのが良いと思った。
  • 新公民館の名前は「多賀 結いの森」で、いろんな「結い」というか、結び付きが新たに生まれてくるということだとすれば、公民館の中に作業所があるというのは、すごく良いことだと思う。ぜひ今回の「多賀 結いの森」プロジェクトから県内に、いろいろ広めていけたらいいと思った。
  • 企業との関わりも含めて、これからぜひ頑張っていただきたい。私も注目しているし、対話しながらより良いものをつくっていこうという、事業者や事務方の皆さま方の御努力にも敬意を表したいと思う。