文字サイズ

第45回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「社会福祉法人滋賀県視覚障害者福祉協会」の皆さん

「社会福祉法人滋賀県視覚障害者福祉協会」の皆さん

今回は、「社会福祉法人滋賀県視覚障害者福祉協会」の皆さんと対話を行いました。

「社会福祉法人滋賀県視覚障害者福祉協会」の皆さんは、県内の視覚障害者が、個人の尊厳を保持しつつ、自立した生活を地域社会で営むことができるよう支援することを目的として活動されています。

また、県立視覚障害者センターの運営を行うとともに、視覚障害者への点字等広報物の発行、自治体からの広報誌や資料の点訳・音訳などを行っておられます。

今回は、点字投票や音声パソコンの体験をさせていただくとともに、滋賀県視覚障害者福祉協会の皆さんと三日月知事が、暮らしやすい社会の実現に向けて視覚障害者の日常生活における課題等について語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • ここに来る前に盲学校に行ってきた。皆さんが一生懸命勉強されている様子を目の当たりにし、大事な学校だと改めて実感した。私が国会議員になったときに、初めて名刺を渡した方が目の見えない方だったので、それ以来、名刺には肩書、名前の点字を入れている。
  • 現状、目の見えない方、見えづらい方に対する環境は厳しいものがある。先般も県外で視覚障害をお持ちの方が電車で移動される際に、誤って転落し、お亡くなりになるという事故が発生した。このような事故の防止のためにも、皆さんと力を合わせていきたいと思う。県では様々な広報物を音声や点字で皆さんにお届けする取組を、視覚障害者福祉センターにも協力いただきながらやっているが、まだまだ足りないことがあると思うので、皆さんから忌憚のない、率直な御意見をいただきたい。

「社会福祉法人滋賀県視覚障害者福祉協会」の皆さんから

視覚障害者の現状と課題について

  • 視覚障害者には情報障害がある。情報障害は視覚障害の特徴である。情報と言っても、例えば、新聞を読むとか、ネットで情報を得るとかいうことだけではない。例えば、全盲だとこの部屋の様子もわからない。どこに何人いるかといったことも説明してもらわないと分からない。これも情報である。このような基本的な情報がなかなか入らない。
  • 最近は中途視覚障害者が多い。社会に出て活躍していたが、ある時から視力が落ちてきたという方が多い。そういった方は点字に慣れるのに時間がかかる。音訳CDやカセットを聞くのがものすごく楽しみであり、視覚障害者センターの図書館にもたくさん置いている。県広報誌『滋賀プラスワン』の三日月知事のコラムの音訳は知事自らが行っておられるが、知事の声が抜群に良く好評である。より一層身近に感じられる。文字で読むだけでも知事の気持ちは伝わると思うが、声を直接聞くことは一層うれしい。今後も続けてほしい。
  • 私は弱視だったが、60歳を手前にして全盲になってしまったので、普通字から点字に変えた。しかし、60歳になろうというときになって点字を読むのは、なかなか大変。小学校のころから点字をしている人は速くすらすらと読める。
  • 障害者支援は市町によって差がある。県に是正をお願いすると、市町の判断なので、県は立ち入れないとよく言われるが、差を縮めるような指導をしてほしい。
  • 障害の種類によって差別があると思う。障害者が自分の自家用車を所有する場合には自動車税の免税措置があり、障害者が自分の自家用自動車を使用する場合は問題ないが、本人が運転できず家族に運転してもらう場合は通勤・通学に使用もしくは月に4回以上通院に使用することが免税条件になっている。視覚障害者は運転できないので、免税条件を満たさないことが多々ある。同じ障害者でも、例えば内臓障害の方と視覚障害者では、減免が受けられるか、受けられないかという差がはっきりと出ている。色々と理由はあるかと思うが、障害者間の差をもう少し是正してほしい。
  • 昔の盲学校は視覚障害の教育に精通されている先生が多かったが、校種間交流が進み、短いサイクルで先生が変わるようになった。メリットもあるのだろうが、点字が分かるようになるか、ならないかくらいの期間で異動されると、盲教育がどこまでつながっていくのかと危惧する。視覚障害の子どものことを本当に理解するにはすごく時間がかかる。特に盲教育や聾教育など特殊な教育を行う学校では、もう少し長く勤務できるよう特例を認めてほしい。

安全な移動手段の確保について

  • 視覚障害者には移動の障害がある。自分で自由に移動できないが、田舎だと公共交通機関がだんだん廃止されていき、ますます移動しづらくなる。視覚障害者だけでなく、高齢者など交通弱者と言われる人たちは公共交通機関が少なくなり、すごく苦労している。お願いはしているが、「運転手の配置など、色々な都合があるので」と言われて、なかなか改善してもらえない。彦根市ではバスの路線を廃止するときに、予約型乗合タクシー「愛のりタクシー」という制度を設けた。このような制度をもっと普及させてくれると助かる。
  • 大津駅の2階に上がるには、階段しかない。車いすやお年寄りが大変である。JRにもお願いしているが、エレベーターをつけてほしいというのは障害者差別解消について検討している部会でも多く意見が出ている。
  • 湖西線も和邇から北の駅にエレベーターがない。ホームが高い位置にあるので、階段を上がらないといけない。近江舞子あたりに1か所でいいので、エレベーターをつけてもらったら、そこまで車で行って電車に乗れるので、今、要望を出しているところ。乗降人員の関係もあり難しいかもしれないが、今は車いすの人が上まで上がれない状態である。視覚障害者が階段で高いところに上がると危険もある。
  • 私は50歳頃から段々と視野が狭くなり、今は真ん中だけが見えている状態である。駅などの階段を上がるとき、階段の側面を見て段を確認しながら上がっていくが、同色のコンクリートやタイルの階段は境目が見えず、一面に見えてしまって怖い。ちょっと上の方や、前の方を見ると下が見えないので、ぐっと力を入れて絶対離さないという思いで階段の手すりを持って、白杖をぽんぽんと当てながら、階段を上り下りする。上がるのはまだマシだが、下りるときは更に何分の1か減速しないと下りられない。階段の端は赤や黄色のテープで色分けするようにしてほしい。それでも、人がたくさん階段を利用しているとぶつかったりしてしまうので、一番後ろになるまで待つようにしている。エスカレーターも同じ。降りる時はいいが、電車に乗るときは発車時間があるので人が多くても上らないといけないのが大変である。
  • 点字ブロックに立って話をしている方がおられるので、啓発してほしい。大きな声で「すみません」と声をかけると、はっと気付いてどいてくださるが、案外点字ブロックに気付かず、立ち話されている方は多い。改札口の前は特にそういう方が多い。「すみません」と声をかけるのも気兼ねする。
  • 無いところが多いが、階段のタイルと異なる滑り止めの金具や、色分けのタイルが貼ってあると、そこへスポットを当てて見ることができるので、安心感が違う。
  • エスカレーターでも縁に黄色いラインが入っていると、上りか下りか分かるようになる。本当にちょっとしたことで変わる。
  • 私は盲導犬と外出するが、上りと下りのエスカレーターが並んでいると、盲導犬にはどちらが上りか下りかまではわからないので自分の好きな方に行ってしまう。音声で「こちら上り」などと言ってくれると分かりやすい。
  • 「点字ブロックの上に荷物を置かないで」という放送はほどんどの駅で流れているが、すべての駅で流れるよう統一してほしい。
  • JRは点字ブロックだけでなく音声案内をつけるところも多くなってきたので、増やしていってほしい。
  • 長浜の木之本に住んでいるが、電車が1時間に1本しかない。電車もバスも本数がないが、車だとガソリン代が高くなる。
  • 障害者で収入が年金だけになると生活もかなり苦しくなる。都会と田舎は違う。制度にしても、何にしても、都会中心に考える傾向があると思う。不便なところを便利にしたら、住みやすくなって多少なりとも人口が増えるかもしれない。田舎でも動きやすいように何か考えてほしい。
  • 先日、知事とタンデム自転車に乗った。風を切って走るのはとても嬉しかった。ぜひともビワイチでやってほしい。知事がブレーキをかける前に「減速します」と言ってくれたので、一周して出発地点に戻ってきたことがよく分かって良かった。
  • タンデム自転車で途中2、3泊しながら琵琶湖を1周したいと思った。
  • タンデム自転車を公道で乗ってもいいことになれば、生活のなかにも活きてくる可能性があると思う。例えば、近くのスーパーに行くのに、誰かに運転してもらえれば、買い物にすぐに行ける。運動不足解消にもなる。ぜひ公道で走らせてほしい。

視覚障害者の就職および社会復帰について

  • 盲学校には、重度の障害者も多い。できる限り一貫した教育の場ができるとよい。生まれつきの人、中途の人も一貫してサポートしてもらえるような場があるとよい。例えば眼科で診てもらって目の治療が終わったら、今度は歩く訓練や生活の訓練ができるリハビリの場があり、リハビリを終えたら次は運動をするというようなもの。運動をしていると社会に出やすい。前に野球をしたが、走ることがこんなに嬉しいことだとは思わなかった。久しぶりに走れたと喜んでくれた。そのような場をつくりながら、社会に出ていくことを目指せると良いと思っている。
  • 医者から視力が落ちていくと診断されてから、社会復帰までに5年以上かかったという人が全国的にもたくさんおられる。そういうことではいけないと思っている。
  • 見えないと何もできないというふうに思われているが、そうではなく、少しの工夫や声かけでできることもあるということを皆さんに知ってもらいたい。料理も編み物もできる。
  • 滋賀県視覚障害者福祉協会では、視覚障害者の就労問題に取り組んでいる。6月1日からJR稲枝駅のすぐ近くに、県内初の視覚障害者のための作業所を開設した。今月やっと利用登録者数が10人になるくらいで、軌道に乗るところまではいっていないが、そこでは色々な作業をしている。作業をする楽しさもあるし、みんなが寄って話せるというコミュニケーションの楽しさもある。
  • 視覚障害者の就労は、マッサージ、鍼、灸が多い。しかし最近はマッサージ、鍼、灸の業界も視覚障害者でない方が増えてきた。また、無資格の人も増えてきたが、国の方でなかなか取り締まりができていない。そのため、私たちの仕事がどんどん減ってきている。一般就労となると本当に困難であるので、私たちの協会としては就労問題に取り組み、一般就労ができなければ作業所に来てもらえるようにしている。
  • 京都、大阪、神戸に住んでいる方は公共交通機関が発達しているので、一人で通っている人が多い。しかし、田舎では、公共交通機関が発達していないので、通える人が少ないというのが作業所を運営する上での悩みの種である。

知事から

対話を振り返って

  • 今日ここに来て、いろいろと新たに分かったことがある。やはりこのように来て、見て、話して、一緒に取り組むことで、それぞれの理解が深まるということを改めて実感した。
  • 盲学校では、最近生徒さんが減ってきたことによる盲学校の存続・統廃合の問題を心配されているお声を聞いた。私は、数ではなく、この学校がなくてはならないと思っていらっしゃる方々のために、しっかりと学校を充実させていきたいということをお伝えした。専門で指導いただく先生方の異動の課題についてもまた確かめたいと思う。
  • 盲学校の卒業式のメッセージは私が声で吹き込んだ。他の学校の皆さんには書いて送っているが、盲学校の皆さんには声でも届けようということでお届けしたら、喜んでくださったみたいで、そういう届け方も大事だと感じた。
  • まだまだ点字も音声も足りないところがあるので、ぜひ皆さんと一緒に改善していきたい。また、皆さん方への状況の説明は大事だと思うので、これからも努めて行うようにしたい。会議などでも気を付けたい。
  • 移動の制約の問題、特に公共交通、駅のエレベーター、バリアフリーなどの問題が皆さんの生活にとって、とても重要で、ある意味では死活問題にもなるということを今日改めて認識した。すぐに全てを改善できないかもしれないが、JRや色々な事業者と話をして、要望を届け、自治体も何ができるかを一緒に考えていきたいと思う。
  • 移動手段が公共交通しかないのに、公共交通を利用しようとして大切な命を失う方がいらっしゃるのは、とても心苦しいので、そういう状況にならないようにしたい。特に湖西線は高架の駅が多い。長浜もそうだし、実は草津線もそうである。また、乗る人が少ないと、どうしても本数が減ってしまう。目の見える方であれば車でカバーができるが、目の見えない、見えづらい方は自ら車を運転してカバーすることができないので、われわれもしっかり配慮できるようにしたい。
  • 階段の点字ブロック、シールや音声案内など、ちょっとしたことで改善できることがあると思うので、ぜひ協会の皆さんで「こういうところがちょっと怖い」、「こうしてくれたらものすごく助かる」というアイデアを出していただき、我々と皆さんとでコミュニケーションをとってそのアイデアを届けたり、変えたりしたいと思う。
  • 滋賀県ではまだ公道でタンデム自転車は走れないので、なんとか走れるように今考えている。皆さんと一緒にタンデム自転車に乗らせていただいた時に、そろそろ段差が来るとか、あと何秒で左に曲がるとかいうことを前の人と後ろの人で共有することでずいぶん安全になるということが分かった。違った楽しみ、違った安全行動ができると思うので、ぜひ前向きに検討したい。自分一人での運転が難しい方でも楽しんでいただけるような環境づくりをしたい。また、ビワイチ用だけでなく、移動手段の助けとしての利用も踏まえて検討したい。
  • タンデム自転車が走っている時にクラクション鳴らすのではなく、自転車や歩行者、タンデム自転車などに優しい交通、お互いに配慮し合う滋賀県の道をめざすことを呼び掛けていくこととセットでやりたい。
  • 盲学校に行ったときに、中途で目が見えなくなった方が勉強しておられた。その方は資格を取るために勉強されていたが、同時に音楽に目覚められて、歌を一生懸命歌われるようになり違う楽しみを見いだしたと話されていた。運動、スポーツ、音楽を含めた文化活動をきちんと紹介したり、目が見えなくても、見えにくくても、楽しめる機会や場所をつくったりするのは大事だと思った。視覚障害者センターを中心に、もしくはセンターに間を取り持ってもらって、そういう情報を医療機関や学校に提供できるようにしたら良いと思った。
  • 大切なお話をいただいたので、すぐにできることはすぐに取り組み、少し時間がかかるものも、どうしたらできるのかを一緒に考えながら取り組んでいきたい。