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第39回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手地域医療福祉連携「チーム永源寺」の皆さん

地域医療福祉連携「チーム永源寺」の皆さん

今回は、地域医療福祉連携「チーム永源寺」の皆さんと対話を行いました。

高齢化がすすむ永源寺地区において、診療所や薬局から、介護施設、行政や郵便局、ボランティア団体まで様々な人々が協力し、医療や介護を必要とする人が安心して暮らせる地域づくりを行う「チーム永源寺」。

専門職だけでなく、様々な経験をもつ非専門職の人たちも一緒に皆で地域住民を支える「地域まるごとケア」をめざし日々活動されています。

今回の対話では、「チーム永源寺」の活動にかける思いや課題などについて知事と語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 私のテーマは「自然のなかで、人と共に生きる」ということで、「新しい豊かさ」をつくろうとしている。今だけ、ものだけ、お金だけ、自分だけでなく、将来も持続的に、周りの人も一緒に、全ての人が感じられる豊かさをつくっていこうとしている。
  • 「チーム永源寺」の皆さんの活動は、滋賀県のモデルであり、日本のモデルにもなり得る活動だと思っている。
  • 職種を越えて、チームワークで、地域の人たちの暮らしを守っていただいている。その取組や課題について聞かせていただきたい。

地域医療福祉連携「チーム永源寺」の皆さんから

チーム永源寺の活動について

  • 日本では、戦後すぐの時代まで、平均寿命が50歳までであった。例えば、結核で亡くなられることや、産後すぐ子どもやお母さんが亡くなられることが多かった。
  • その対策として、結核の治療を行う、病院で安全なお産をするという単一の治療、病院での医療が中心の時代があった。
  • 今は、日本人の平均寿命が、女性の方では86歳を超え、男性の方でも80歳を超えている。病気の種類も、高血圧や糖尿病、認知症、がん、老化といった複数の疾患を抱えた方がおられる。
  • 一つ一つの病気で入院されている方は少なく、たくさんの病気を抱えながら、通院でがんの治療をしたり、介護のサービスを利用しつつ、家で生活をされたりする方が多くなってきた。
  • 病院での治療が中心という時代から、地域で支えるという時代に変わってきた。
  • 永源寺地域は、現在、人口が5400人ほどで平均高齢化率が34%。集落によってはもっと高く80%近い集落もある。
  • 在宅医療に力を入れており、永源寺診療所で担当している在宅患者さんは80人ほどおられる。年齢は、4歳の女の子から103歳のおばあちゃんまで幅広く、疾患の種類も、内科、外科、整形外科と何でも診ている。そして、最後まで家にいたいと希望されるのであれば、看取りまで行う。
  • チーム永源寺は専門職だけでなく、たくさんの職種の方が関わり、地域で支えるというチームである。最初から、この形ができていたのではなく、いろんな地域の方々と協力しながら、一つ一つ積み重ねていって、約10年以上かけて、今のような形が出来上がった。
  • 地域社会には、さまざまな資源、サポート、支える仕組みがあり、自助・互助・共助・公助と分類できる。自助は、自分のことは自分でやる。医療や介護職の人がやるものが共助で、医療保険、介護保険に当たる部分。これは、制度で決まっている。行政が行う公助も制度で決まっており限界がある。でも、住民さんのニーズとしては、制度以外のことが必要になってくる。それを支えるのが、互助。お互いさんという部分である。お互いさんというのは地域のつながりで、それがチーム永源寺である。
  • 通常、医療と介護の連携というと、「地域包括ケア」という言葉で表されるが、制度で決まっていないことは、地域全体で支えようという意味を込めて、「地域まるごとケア」と言っている。地域のみんなで、地域をまるごと支えようという思いでやっている。
  • 医療や介護の連携を密にするということはもちろんのこと、地域で支える皆さんと共に、地域での生活を支える、病気を診るだけではなくて生活を支えるということを、主な目的としている。

チーム永源寺の特色ある取組について

  • 月例会では研修という名目で、他職種の方や、地域の方お一人にお話をしてもらう時間を設けている。そこで、いろいろな情報交換や、顔合わせができる。地域の事情などをここで聞かせていただいたり、それぞれの活動への意見を心やすく言ってもらったりできる場になっている。月1回集まるのが、ものすごく重要。
  • 今月の月例会の講師は葬儀屋さん。我々にとっては、畑については、畑のおばあちゃんが先生であり師匠。畑の専門職、葬儀屋の専門職、いろんな専門職の方がいる。そういう方々に講師に来ていただく。
  • 看取りの場面より先のことが、正直、分からない。亡くなられた後に、葬儀屋さんが、どういう気持ちで、どういうことをやっておられるのか。うまく引き継ぐために、どういうことをやればいいのかということを学びたいと思っている。
  • 最近はお薬手帳がバージョンアップしている。東近江市がつくっているお薬手帳は、健診受診の有無が一目で分かるようになっているし、薬の飲み忘れや、栄養相談も書けるようになっている。保険証も入れられる。ひっくり返すと災害手帳にもなっている。
  • このお薬手帳を地域のおばあちゃんがつくってくださる袋に入れて、家に掛けておくと、緊急の際に救急隊員が持って行ってくれる。防水加工もしている。
  • サポートする体制を整える前に、本人に最期はどこで過ごしたいか、ご飯が食べられなくなったらどうしたいかということを聞いて、カルテに書いて、みんなで共有をしている。9割以上の方は、地域で最後まで過ごしたいという希望を持っておられる。
  • 生活支援サポーターとして約25人くらいが現在活動している。家から集積所までのゴミだしや独居の方の話し相手をしている。
  • 最近、お昼間だけ独居という方が増えている。朝晩は家族がおられるが、昼間はひとりという方が永源寺地区でも増えてきており、そういった方の話し相手もしている。
  • サポーターの年齢はだいたい50代から80代までの方。元看護婦長から、郵便局の方など多種多様の方が登録しておられる。
  • 最近は、新しい民生委員さんには、日曜日に自治会のなかを歩いて、話し相手をしてもらっている。そこで聞いた話などをチーム永源寺の先生やヘルパーさん方と共有し、つなぐという役割をしている。
  • 民生委員としては、できることはできる限りやるが、あくまでもボランティアなので、一定以上はプロの方へのつなぎ役として徹するようにしている。
  • 医療とか介護は、制度で決まっているが、話し相手やごみ出し、雪かきなどは、まさに制度以外の部分。制度以外のことが、日常の暮らしの中ではなくてはならないことである。

地域との顔が見える関係づくりについて

  • 1年前に退職した時から、自分が安心して暮らせる地域にしたいと思い、自治会の活動を進めている。その中で一番感じたのは、昔から地域のつながりが非常に強い地域だということ。チーム永源寺という皆さんと情報を共有できる場があり、絆が非常に密なご近所さんがいて、心強く感じている。10年後、20年後にも、安心して暮らせる環境づくりができないかといろいろと活動している。
  • 認知症になっても安心して暮らせるような地域をつくりたいと思い、認知症の勉強をしたり、捜索訓練に参加したりしている。皆さんの指導や協力を得ながら進めている。
  • チーム永源寺のありがたいところは、例えば、ヘルパーさんが介護に通っている家に全く外に出ない息子さんがいるというような話が出てくることがある。チームの中で情報がつながってその方の相談に乗ることができ、前を向くきっかけになるということもある。世間体など色々なことがあって、周りに言えず、ずっと家におられる方はなかなか把握できないのでありがたい。
  • チーム永源寺は毎月一回、集まれる人が集まっている。政策というと、高齢者、障害者と縦割りになりがちだが、地域には色んな人がおられる。同じ地域に住んでいるので、同じ地域でどういうふうに支えるか。障害のある方は支えられる側でなくて、地域で働いてもらったら、支える側になることもある。
  • 消防や救急もチームに入っている。永源寺地区は、他の地区に比べて、発見が遅れて救急を呼ばれるということは少ないと感じている。地域の見守りが機能している。お薬手帳の情報もしっかり提供いただけるというのも、非常にいいと思っている。
  • これから2025年にかけて、救急件数はどんどん伸びていくと言われていて、全国的な課題となっている。救急車の数を増やすことなどでカバーできることもあるとは思うが、地域包括の手助けがあれば、救急の件数も抑えられると思う。
  • それぞれの地域の特性があると思うので、永源寺のしくみを都会に持っていっても、なかなか全部がうまくいくわけではないと思う。
  • 地域でいつも顔を合わせているというのが一番強い。民生委員も、一人でできるわけではない。この地域は連携がうまくつくれている。
  • 自分が今までやってきたことを継続して、自分の楽しみを持つ、自分の役割がある、居場所があるということが、本当は必要。薬よりも、地域の皆さんで、その人の居場所や役割を支える仕組みが本当は大切なんだということを、地域の方から教えていただいた。
  • 奥永源寺に引っ越してきた当時は、まだ入れ歯を川で洗う風習があり、先週つくった入れ歯が流されたとか、小動物が入れ歯を持って行ったのを見たとかいうことがあり、最初はびっくりしたが、がぜんこの地域に興味を持った。バイクが好きだったので、バイクで集落を回って、元気にしているか見て回っていた。鹿の角をお土産にくれたりして、本当にいい地域だと感じた。
  • 永源寺は先生が往診に来てくれるので安心ではあるが、やはり家族にとっては最後は家でと決めるのには、かなり勇気も要るし不安もあると思う。だから、ヘルパーとしては、家族の気持ちを少しでも楽にしたい、寄り添っていきたいと思っている。ヘルパーは体のケアなどを行うが、チーム永源寺には他にもいろんな職種の方がおられるので、その連携を第一にしながら、一日でも長く、この住み慣れた永源寺で生活していただけるように、これからも支援していきたいと思う。
  • ベッドやトイレ、手すりなどの設備などについては、ケアマネジャーに間に入ってもらいながら相談に乗り、また、別の専門職につなげるという形をとっている。今年の1月に大雪が降った時には、警報が出て、訪問に行けなかった。そのとき、民生委員さんなど地域の方に助けていただいた。雪かきをしていただいたり、駐車場所を確保していただいたり、地域の人に支えられていると実感した。
  • 地域、地域の特性を見極めて、そこをうまくやっていくというのが大切だと思っている。地域に根ざした人が、そこで一番ふさわしい、いい方法を探しながらやっていくのが一番だと思う。
  • 内科や外科などが専門というのでなく、「専門は永源寺」というのが共通するところである。人材不足ということがあり、医療、介護、行政など専門職が少ないところを、どうやったら地域でカバーできるかということを地域の皆さんと一緒にやっているのが正直なところ。

次世代への継承について

  • 今のところは支援する人、される人のバランスは保たれている。しかし、これから先が未知数。
  • 10年後、20年後に向けて世代をつないでいくことが、心配である。今はまだ、育った地域を大切にすることや、絆づくり、隣近所とのお付き合いができている。これは我々にも責任があるのかもしれないが、今後はそのようなことが非常に希薄になってくる。10年後、20年後の環境づくりをどうしようかと、今考えている。我々ができることをやり、背中を見てもらうのが一番かと思っている。
  • お年寄りの居場所、子どもの居場所、奥さんの居場所など様々な人の居場所が、問われている時代だと思う。東近江市の民生委員は、赤ちゃんが生まれたお母さんのところに行って、民生委員がお手伝いできることや、若いお母さんが話をできる場があることなどを、伝えている。他にも、月1回地域で開かれるふれあいサロンに民生委員が参加し、いつも来ているおばあさんが今日は来ていないなど安否確認も兼ねた見守りをしている。
  • 他県の人で、永源寺地域を見て住みたいと思い、土地を買って、現在家を建てている人がいる。このような方に対しても、今後、チーム永源寺がバックアップできるのではないかと思っている。
  • 永源寺地域の専門職に関しては、研修に来る人がとても多いが、ここに骨をうずめようという人はなかなかいない。次の世代の専門家をつくるのが一番の問題だと思っている。私は、薬屋、かっこよくいうと、コミュニティ・ファーマシストと言われるのだが、この地域で化学者が居るお店が私の薬屋だと思っている。薬と名の付くもの、化学のものは、私のところで扱うのが当たり前であり、夏休みは子どもたちの実験で大にぎわいである。2学期が始まる前の日に、おばあちゃんに連れられて泣きながら、宿題の実験ができてないといって駆け込んで来られることもある。それと同時に、出したお薬を、飲め、飲めと、目を三角にして言うような薬剤師でもあるので、広く深くやっていく必要がある。そうすると、見学にはたくさん来るが、一緒にやろうという人はなかなかいない。
  • 行政がこれをやりましょうと上から言っても、住民の方からはたぶん反対があると思う。地域の方から、声が上がって、それをうまくつないでいくことが必要。
  • 行政の役割としては、全て行政がやるのではなくて、いろんな活動をされている方々を、うまくつないでいっていただきたい。悩んだときに、たくさん頼れる先があった方が、解決する手段も増える。地域のために何かやりたいと思っておられる人たちばかりなので、そういう人をたくさん集めれば、また地域のために働いてくれる人もたくさん出てくると思う。

知事から

対話を振り返って

  • とても心打たれた。私自身も、こういうところに住めたらいいなと思えるような、お話が聞けた。仕事柄、いろんな方にお会いする機会も多いので、ぜひ、チーム永源寺の取組を皆さんにお話ししていきたい。例えば、歯科医師、薬剤師、民生委員、児童委員などをやろうかと考えている人に勧めたい。チーム永源寺のような関わり合いのなかでやると、やりがいがあると伝えたい。
  • 今日、出てきたキーワード「専門は永源寺」はすごく良いと思う。自分の専門職よりも住んでいるところや、働いているところが冠に出る。専門職というと、自分の専門だけということになりがちだが、それを地域のくくりで捉えるという見方は、すごく良い。それを、誰から言わされているでもなく、皆さんがおっしゃるところに、この地域の力を感じた。
  • 今後とも、皆さんには頑張っていただきたい。また、県が施策をつくるときに、お力添えをいただけたらありがたい。