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第34回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手NPO法人しが盲ろう者友の会の皆さん

NPO法人しが盲ろう者友の会の皆さん

今回は、NPO法人しが盲ろう者友の会の皆さんと対話を行いました。

滋賀県内には視覚と聴覚の両方に重複して障害がある「盲ろう者」が約130人おられます。盲ろう者は、「光」と「音」が失われた状態で生活しているため、独力でのコミュニケーションや情報入手、移動が極めて困難な状態に置かれています。多くの盲ろう者が孤立し「引きこもり」状態と推測される一方で、社会的な認知は進んでいない現状にあります。

平成13年に任意団体として発足した「NPO法人しが盲ろう者友の会」は、盲ろう者への通訳・移動介助・生活訓練や、通訳・介助者の養成・派遣・研修を行うほか、盲ろう者や家族への相談・援助などをを行い、盲ろう者の社会参加と自立を目指して活動しています。

今回は、友の会の活動や、支援者の方々の思いをお聞きして、滋賀県の目指す「すべての人に居場所と出番のある共生社会」の実現に向けて、盲ろう者を取り巻く現状や課題について語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 盲ろうの方は、生まれつきの方、そして段々そうなられた方など、さまざまであると思うが、いずれの方々も、いろんな不自由を抱えて生活をされていると思う。
  • 今日は、不自由なことやお困りのこと、こういう支援や助けがあれば、よりよく暮らせるのにということを伺って、皆さまと一緒に滋賀県が住みよくなるように努力をしていきたい。

NPO法人しが盲ろう者友の会の皆さんから

しが盲ろう者友の会について

  • 県委託事業の一環で、盲ろう者通訳・介助者の養成・登録・派遣・現任研修、盲ろう者やその家族の相談業務を行うほか、支援、生活訓練を行っている。
  • 生活訓練は月水金の11時~15時で活動している。季節に応じて活動し、例えば1月は書き初めやもちつきなどを行う。今年はノロウイルスの関係で中止したが、昨年は盲ろう者が杵で餅をついた。
  • 地域のお祭りや行事にも参加し、他県の友の会とも交流している。避難訓練や消防署からのお話を聞くなど防災研修も行うほか、機関紙「ほたる」を年3回発行している。

盲ろう者について

  • 見えない、聞こえない二つの障害の重複の人たちを盲ろう者と言う。生まれたときから見えなかった方、聞こえなかった方、途中から見えなくなった方、聞こえなくなった方、見えなくて途中で聞こえなくなった方、見えるが視野が狭い方など様々な方がいる。
  • 自分の周りにどのような人がいるのか、どのような場所なのか等を説明することで不安を取り除き、盲ろう者に安心いただくことができるので、状況説明が大切である。
  • コミュニケーション方法としては、「触手話」や「指点字」等がある。見える範囲が狭い視野狭窄(きょうさく)の場合、盲ろう者が見える大きさで文字を書いて筆談をする方法もある。他には、接近手話といって、盲ろう者の見える範囲を確認し手話を行うものもある。全盲難聴(見えなくて少し聞こえる)弱視難聴(少し見えて少し聞こえる)の方には音声通訳という方法もある。
  • 手話は動きのあるコミュニケーションなので、中途失明者にはハードルが高い。手話を手で感じるのは、非常に難しい作業なので、点字を指に書くとか、あるいは指で書くことが一つの方法になる。
  • 私自身は元々健常者で生まれたが、1歳ぐらいのときに高熱のために聞こえなくなった。そのころは目が少し見えたが、小学3年生ぐらいから視力も低下し、見えにくくなった。明るい、暗いくらいは分かるが、顔は判別しにくい。
  • 見えない方で途中で聞こえなくなった方、見えなくなって後で聞こえなくなった方は、手話を身に付けていないので、途中でコミュニケーションを取るのが大変だと聞く。もともと聞こえなくて後で見えなくなった方は、手話が身に付いているので、「触手話」は身に付けやすいが、点字は身に付けにくい。
  • 小学校の時に通っていた聾話学校では手話が禁じられており、口話を読み取ってコミュニケーションをしていたが、小学3年ぐらいから見えにくくなり、手のひらや肩や背中など体中の色々なところに文字を書いてもらうという方法でコミュニケーションを取っていた。触手話は基本的には手話が身に付いていないと使えない。
  • 盲ろう者によっていろいろな情報の取り方がある。インターネットから情報を取る方法や字幕を拡大する拡大鏡もある。パソコンとつないで入力すると、点字が出てくる機械もある。メールのやり取りもこの機械を使うと点字にできる。

普段困っていることや懸案事項について

  • バスの便数が少なく、出掛けるのが不便である。バスの本数が1時間に1本もしくは2本の不便な地域に住んでいる。バスの本数を増やしてほしい。また、通訳介助については、1カ月間に20時間という利用制限があるが、20時間では少なくて困っている。他県に出ると、移動だけでも時間がかかってしまう。1カ月20時間では、活動時間が狭まってしまうので、時間数を増やしてほしい。
  • 介助者は女性が多いが、男性の場合、トイレに行くときに不便なので、男性が増えるとよい。
  • 滋賀県は真ん中に琵琶湖があるので、移動に時間がかかる。長浜と今津の2カ所に生活訓練をする場を作っているが、盲ろう者が住んでいる地域で訓練や交流ができる場があるとより良いと思う。
  • 「手話言語条例」を制定する動きが全国で広がってきているが、「手話点字言語条例」として進めてほしいと思っている。共生社会においては、合理的配慮が具体的なことがとても大切である。昨年度、七つの学校で福祉授業を行い、目の不自由な人や点字について話した。子どもたちは「今度、目の不自由な子に出会ったら『何かお手伝いしようか』と声を掛けます」と言ってくれて、お礼の手紙もたくさんもらった。また、4年前に授業を受けたことを覚えてくれていた女性に声をかけられ感激したということもあった。そこで、県立大学の教養科目の中に、選択科目でいいので手話と点字の授業を入れてほしいと思っている。共生社会の実現にもつながるし、講師に聴覚障害者や視覚障害者が採用されると雇用の拡大にもなると思う。
  • 盲ろう者は、親御さんが亡くなった後、一人きりになると生活に困難をきたす。安定した生活をするために、滋賀県にグループホームを建ててほしい。
  • 盲ろう通訳介助者養成講座を開いている。実習も含めて約半年間ぐらい勉強する。通訳・介助者養成講座を修了した登録者は約120名だが、積極的に動いているのは70名ほどである。手話通訳と同じく登録で動くため、身分保障がなく、若い人や男性が少なく先細りになっているのが課題である。
  • 最近の郵便物は薄いピンクや紫色の印字のものなど様々なデザインがあり見にくい。ゴシック体で最低12ポイントの文字の大きさでないと見にくい。そのあたりの合理的配慮も検討いただきたい。
  • 1人の盲ろう者を安心安全にサポートするには、3人必要である。それだけ人手が掛かる。手話通訳も交代でやる必要があるし、移動のサポートも必要。しが盲ろう者友の会の事務局の方は、80%はボランティア精神なので、もう少し経済的なケア、身分保障がほしいと思う。

実態調査について

  • 十数年前に、滋賀県には132人の盲ろう者の方がおられるという実態調査を行った。しが盲ろう者友の会でつながっている方はそのうちの一部なので、多くの人は家で悶々とされていると思われ、考えさせられる結果であった。
  • ほとんどが引きこもり状態になっており、何年か前にテレビ取材などを通して広報活動を行ったが、あまり効果がなく、活動がなかなか広まらない。支援者が増えないということもあるので、ご協力、ご支援いただければありがたい。
  • 引きこもりの問題は滋賀県だけではなく、全国的に同じ状況にある。家族の問題や、ご本人の気持ちの問題もあり、家庭訪問も難しい。
  • 行政の方と一緒だと信頼いただけるのか、家庭訪問を受け入れていただけるケースが多い。親御さんがいなくなった後、施設に入ってコミュニケーションが取れずに大変な思いをされる方がいらっしゃるので、引きこもりの方の把握は早くしなくてはいけないと思っている。
  • 何年かに一度実態調査をしていただいて、県政につなげていただきたい。

知事から

対話を振り返って

  • 目の見えない方、耳の聞こえない方、見えにくい方、聞こえにくい方のための情報提供がもっとスムーズになるように、もっとバリアフリーになるように県も努力する。例えば機器の開発や紹介、また県の広報をお知らせするときなど、盲ろうの方に配慮した対応になるように改めていく。県発行の文書等の文字を大きくして見やすくするという配慮などは県でもすぐにできることだと思うので、できることから改善をしていきたい。
  • バスの本数については盲ろうの方だけではなくて、地域の方にとってもお困りなことだと思うので、バス会社や市町と協力していきたいと思う。
  • 男性の盲ろう者の場合、トイレに行くときなどの介助は男性であってほしいということは大切なことだと思うので、特に男性の介助者、触手話のできる方の育成などにも取り組みたい。
  • 通訳介助の1カ月20時間の制約については、国にも相談しながら対応を考えたい。制約を外して対応したいという方もいらっしゃれば、1割自己負担の関係で、それを望まない方など様々いらっしゃるように聞いているので、どう対応したらいいのか少し考えさせてほしい。
  • 「手話言語条例」制定のご要望もいただているが、手話だけでなく、点字、触手話、音声通訳など、様々な方法でコミュニケーションされている方がいらっしゃるので、コミュニケーションをスムーズにできるルールが必要だと思っている。
  • 県立大学の教養科目の中に手話・点字の講座を入れたらどうかというのは、共生社会をつくるために大変、有効なご提案だと思うので、前向きに検討したい。
  • グループホームが必要だというお話はどこにどのような形でつくるのがいいのかも含め少し考えさせてほしい。
  • 盲ろう者とコミュニケーションをした経験のある人はまだまだ少ないが、実際にコミュニケーションを取って知れば、何かできるかもしれないと考えるきっかけになるかと思う。しが盲ろう者友の会の皆さんが学校などで授業をしていただいていることは、とても意味のあることだと思う。そういう取組を県でも作って、一緒に協力をして、講座や講演をお願いしたいと思う。
  • 実態調査は皆さんと協力して市・町ともお話しして、ぜひやりたいと思う。一回だけではなく、例えば、何年に一度調査を実施するかということも併せて検討しなければならないと思う。
  • 身近な地域に生活訓練の場があればいいというお話はそのとおりだと思う。実態調査を皆さんと一緒にする過程で、それぞれ状況を把握し、市町や友の会の皆さんと一緒にそういう場もつくっていければと思う。
  • 介助者の登録に若い人が少ないというお話は非常に切実なことだと思う。どう増やしていくか、どう確保していくかについても一緒に考えたいと思う。
  • しが盲ろう者友の会の皆さんがいろんな活動をしていただくことが、盲ろう者の活動や生活の範囲を広げていくことになると思う。今日をきっかけにさらに交流を密にして、活動を広げていきたいと思う。
  • 今日は雪の中にもかかわらず、皆さんお集まりいただき、お話しする機会が持てたことをうれしく思う。残念ながら雪で来られない方もいらっしゃったので、今度は暖かいときに、またお会いできればと思う。ありがとうございました。