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第30回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手湖南・甲賀環境協会の皆さん

湖南・甲賀環境協会の皆さん

今回は、湖南・甲賀環境協会の皆さんと対話を行いました。

湖南・甲賀環境協会は県内初の環境保全団体として、1978年に南部・甲賀管内に立地する製造業を中心とする事業所により設立されて以来、長年に亘り企業活動を行ううえでの環境保全に関する会員相互の技術向上や知識の普及啓発に取り組む任意団体です。

平成28年12月15日現在の会員数は事業所175社と個人会員13名で、県と連携した環境担当者研修会を始めとする各種研修会や見学会を開催するほか、県や市との共催により水質事故被害拡大防止訓練を実施するなど、自主的な環境管理体制の確立に取り組んでいます。

また、管内市の各種審議会、びわ湖の日、環境美化活動への参加など、環境保全にかかわる様々な場面で行政との協働を進めています。

今回は、行政と企業が協働する環境保全活動について、南部・甲賀管内に立地する企業の環境担当者の皆さんと、語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 湖南・甲賀環境協会の皆さんには1978年から、公害の未然防止やまちの水路、水質など水の在り方を知る、学ぶことを目的に設立され、県の南部環境事務所や甲賀環境事務所とも連携し、様々な精力的な活動をいただいている。
  • おかげさまで、全国もうらやむ企業が立地し、多くの方が移り住まれる元気な地域になっている。
  • 知事になって、2年半が経過したが、新しい豊かさをつくろうということを基本理念にしている。新しい豊かさとは、ものだけにあらず、お金だけにあらず、いまだけにあらず、自分だけにあらず、全ての人が将来も持続的に、心で実感できる豊かさというものをみんなでつくっていこうということである。そういう意味では、今日お集まりの皆さまが取り組まれてきたことは、まさに先駆的で、模範的な実践活動だと思うので、その活動をしっかりと学んで帰りたい。
  • 琵琶湖の保全再生のための法律が制定され、県では現在、計画づくりを行っている。守ることも大事だが、守るために活かしていく取組に力を入れていきたいと思っている。
  • 県では現在、低炭素社会づくり推進計画の改定に取り組んでいる。パリ協定に基づき、低炭素にとどまらず、脱炭素の社会づくりに大きくかじを切っているほか、当県では原発に依存しない新しいエネルギー社会づくりも表明しており、その二つのテーマを皆さんの知恵と力を結集するかたちでつくりあげ、ローカルイノベーションを起こしていきたいと考えているところである。ぜひ皆さまのお力添えをいただきたい。

湖南・甲賀環境協会の皆さんから

湖南・甲賀環境協会の取組について

  • 協会は5つの部会で構成しており、各企業からボランティアというかたちで運営している。事務局についてはNPOびわ湖環境に支援をいただいている。NPOびわ湖環境は、長年環境に携わってきた人たちが定年を迎えたあと、その知識や経験を活かせる場として発足したためベテランの方が多く、協会全体を支援いただき、活動の幅を広げることができた。
  • 研修部会では環境の担当者研修会を年に3回、南部・甲賀の環境事務所との共催というかたちで開催している。1回目は、会員企業だけを対象に開催しているが、2回目、3回目は会員以外も対象とし、たくさんの人に参加いただいている。また、環境先進企業の見学会ということで、管内管外問わず、先進的なところを見学し、勉強させていただいている。今年はPCB(=ポリ塩化ビフェニル)の処理施設を中心に見せていただいた。他にも先進的な取組をしている管内企業を企業トップの方に見学いただいて、それを各企業の中に活かしていただくトップセミナーをやっている。今年は日本発条の滋賀工場で開催した。
  • 地区懇部会では、水質事故被害拡大防止訓練を座学と実働の2回に分けて実施している。これは県と市も参加している。「環境事故に学ぶ」「漏えい事故の予防と、その対応」などをテーマとして、消防の方にもご支援をいただきながら、研修を行っている。また、実際に起こったことを想定し、消防・県・市、その他への通報訓練等を模擬的に行い、その数日後に会員と行政を対象とした漏えい事故の初動について座学をした後、実際に油が漏れた場合の回収方法、土のうのつくり方、積み方、水路をせき止めて対応するということをやっている。今年は残念ながらできなかったが、実際に川に油が流れたことを想定し、オイルフェンスの展張ということも、県と一緒にやっている。
  • 地区別懇談会では情報交換会を2017年1月から2月に管内の6市、7カ所で地区別に開催している。その中では県の立入の状況報告、法律関係、市の情勢、苦情などについてお話いただいた。日ごろ聞きにくいことをざっくばらんに少人数で言えるということで、お互い情報交換をしながら勉強会をやっている。各企業が持っている資材を、緊急時に融通し合うという協定を結んでおり、実際に何かあれば貸出することになっている。
  • 自分の事業所から漏えいが起こったときに、どういう経路で琵琶湖まで行くのかを、自分たちで歩いて、水路図をつくり、それをみんなで寄せ集めてマップを作った。どこで止めるかを見るときに活用できる。
  • マニュアル部会では、環境保全についてホームページで発信している。また、「環境管理の手引き」を作っており、行政への届出の一覧を掲載している。
  • 広報部会では、ホームページの開設や広報誌発行を通じて、広く情報公開している。
  • 企画部会では、協会全体の運営、計画、スケジュール管理等を行い、全体を進めている。
  • 県や市からの要請を受けて、今年はベトナムの方との交流会や、各種の審議会、協議会等にも参画し、意見を述べさせていただいている。
  • 平成4年に美化で環境庁長官表彰を、平成12年12月には環境省の局長賞もいただいた。
  • 企業同士が連携し、研鑽しながら、行政とともに琵琶湖を守っていく活動を、地域に根差してやっている協会である。

運営について

  • 過去、なかなか会長のなり手がなく長期間の会長職を対応頂いたが、現在は5社で順番に回すという約束事になっており、行政にもバックアップしてもらっている。いまの活動の質を落とさないようにするために、会長を順番に回すなど応分の負担になるよう工夫している。
  • 一方NPOびわ湖環境の構成メンバーについては、企業が65歳まで再雇用になったことなどにより新たな人が加入せず、メンバーが高齢化している。
  • 最近は各企業が活動をだいぶ認知いただいているので、昔に比べ、非常に会合に出やすくなったし、企業に持って帰って話もできている。昔は環境問題についてクローズにされがちであったが、今は逆にオープンな時代になってきており、企業の理解はあるが、個人の負担が大きくなってきている。
  • 会員数は年度内で僅かな増減はあるが、170社くらいで推移している。もう少し増やしていきたいという考えはあるが、会費の件もあり個別に加入依頼に行かないと難しい。

日頃の活動の中で感じること

  • 情報をみんなで開示して、お互いの悪いところを補える。同業、ライバル会社ではあるが、自社で困っているとき相談することもある。事故が起こっても、この協会の中では開示して、研修会とか地区懇部会、情報交換会の中でお互いに話をして、そういうことはどこでも起こり得るから一度点検する方がいいなという話が出たりする。
  • 出身は滋賀ではないが、滋賀県は琵琶湖を抱えているので、水に関する取組がすごく素晴らしい。こちらに来て、こんなたくさんの取組をされているということで、とにかくびっくりした。
  • 自分は主婦であるが、縁があって現在事務局をやっている。事務局に関わるまでは、家庭は家庭から出る排水、台所から出るせっけんや洗濯の時の洗剤くらいしか知らなかったが、企業として漏えい対策に苦労されているというのが分かった。
  • 昔は公害を出さないというスタンスであったが、いまはいかにリスクを減らすかというスタンスに変わってきている。経営トップには、環境への投資をできるだけ抑えたいが、環境経営は不可欠だという思いがある。そういったときに、法令改正などの情報について、企業としては先取りしていきたい。しかし、法令は、ある程度のところまで固まらないと、なかなかオープンにならないので、確定しなくても、方向性などを事前に行政からオープンにしてもらえると早めに取り組める。
  • 経済産業大臣に省エネ大賞をいただいてからは、工場見学の希望が殺到している。滋賀県の基準に基づいて、県の優良企業認証のようなものがいただけると、対外的にアピールもできるし、売上げにも結び付くと思う。これからはそのようなことを基準に消費者が商品を買う時代になると思う。
  • 企業がISOの環境ライセンス審査を受けているときに、審査員には地域との関わり、地域コミュニケーションについてよく聞かれる。滋賀県以外では、このように環境行政や消防が縦割り行政でなく、一緒にやっているというのは、ほかにないと審査員に言われ、ものすごく評価してもらえるので、そういったかたちで発信するのも一つだと思う。
  • 企業ブランドのイメージアップは単に環境だけの問題ではなく、いま深刻化している人材不足、雇用問題にもいい影響になると思う。
  • 中小企業は残念ながら予算や人材がないので、大手ほど自社のPR活動ができにくい。例えば大学生の就職でも、大手の企業はブランドである程度人は集まってくるが、中小は何をしているところかが分かりづらいところが多く、なかなか集まらない。
  • 中小企業を中心にした企業ブランドのイメージをアップするためには、自社の技術力もさることながら、滋賀県特有の琵琶湖を抱えた環境への取組が、他府県に比べると非常に熱心にやっていることがわかるのと同様に、例えば、女性活躍推進企業の表彰制度の環境版みたいなものがもっとあると良い。低炭素のエコエコの表彰はあるが、もっと全般的な滋賀県特有の制度ができると、他府県との差別化も図れるのではないか。さらに、公共調達のときなどに加点されると、より取り組みやすい。

知事から

対話を振り返って

  • どんな取組をやっているか共有できれば、お互いのレベルアップになるという捉え方は大事。他社のエアコンの方が売れてええなとか、そういうのを乗り越えて、共有できているのはすごい。
  • 企業の皆さんが一緒になってやっている協会というのは、全国でも珍しいと思うし、誇るべき取組だと思う。環境省や経産省など様々なところに取組を紹介していけばよいと思う。この取組はいろいろな意味でモデルになる。
  • 生活に身近なものが環境を汚さずにつくられていることを、もう少しトータルでPRできると良い。これからのものづくりは、社会的責任よりも、どういう価値を目指そうとしているかという社会的価値が問われると思う。
  • 行政のクレジットを使って発信することで、こういう取組をされている企業さんから買おうとか、こういう工場に勤めたいというような、何かプラスの効果がつくれたらいいと思う。
  • 高校生や大学生にも、滋賀県の企業や工場がこのような取組を一生懸命行っていることを、教育部局とも連携しながら伝えていきたいと思う。
  • 何か問題があったときだけ対処するとか、公権力を行使するだけじゃなく、日ごろからのネットワークができていると行政としてもありがたい。自分たちのつくった規制や基準がどう運用されているのか、企業さんがどんなことで悩んでいらっしゃるのかということをつかむいい機会であるし、どう発信したらいいのか、どのように応援できるのか考えていきたいと思う。
  • 滋賀県は、単にものづくりでいいものをたくさん作ってくださっているだけではなく、環境のことも考えながら作ってくださっているというのを売りにしている。企業誘致のときも、単に土地があるとか、労働力があるとか、交通が便利とかだけでないところを私もPRするようにしている。
  • 皆さんの長年にわたる取組の一端をお聞かせいただいて、誇りに思うと同時に、心強く思った。ぜひこういう取組を私自身も発信したいと思うし、行政もいろいろな場面に反映して、より連携して取り組んでいけるようにしたい。