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第25回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手滋賀県立農業大学校で学ぶ学生の皆さん

滋賀県立農業大学校で学ぶ学生の皆さん

今回は、滋賀県立農業大学校で学ぶ学生の皆さんと対話を行いました。

滋賀県立農業大学校は、滋賀の次代の農業を担う優れた人材や、地域の農業振興に指導的役割を果たす人材の育成をめざした学校で、農林水産省の農業者研修教育施設に位置付けられ、養成科は学校教育法に基づく専修学校です。

農業を基礎から学ぶ2年課程の養成科と、就農を条件とした1年課程の就農科があり、約60人の学生が農業に関する専門科目の講義や実習に取り組んでいます。

今回は、農業大学校の実習を見学して、トマトやメロンの収穫や検品を三日月知事が体験させていただき、その後に、10代~20代が中心の若い学生の皆さんの、これからの夢について語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 妻が熊本の専業農家の出身でもあり、私自身も将来の夢として、農業をやりたいと考えており、現在の住居である知事公舎内の空き地や荒れ地を耕して、畑を作っています。今は夏なので、トウモロコシ・トマト・キュウリや、ゴーヤ、シソ、オクラ等を栽培しています。収穫直前にカラスや虫に食われたりしたので、今はトマトとキュウリにはネットを掛けて取られないようにしたりと、素人なりに苦心しています。
  • 他の県になくて、滋賀県にだけあるものと言えば、琵琶湖であり、琵琶湖のことを思うと、農業排水も汚れた水を流さないようにして、水路や川や湖の魚の産卵場所なども守っていきたいですし、琵琶湖中心の環境保全型農業というものを大事にしていきたいと考えています。しかし、環境保全で肥料や農薬を使わないと、形が悪くなったり、収量が落ちたりするので、それを逆にブランドにして売っていけないかと考えており、滋賀県産の農畜産物の価値を上げていくために、県では「世界農業遺産」の認定に向けて取組を進めています。
  • 現在、滋賀県では「みずかがみ」というブランドを、大事に育てていきたいと思っています。現在、みずかがみは5キロで2千円ぐらいかと思いますが、環境こだわりで栽培していただいて、農家の皆さんにご苦労いただいているのだから、もう少し値を上げていきたいと考えており、「みずかがみスーパー」あるいは「みずかがみプレミアム」といったものを作っていけたらとも考えています。一方で、コメ離れも進んでいるので、野菜や花などで高収益のものや、果樹のように観光などの展開が可能な農業もつくっていければと考えており、取組を進めています。
  • 私の場合は仕事の片手間に農業に取り組んでいるに過ぎないが、皆さんはこれから各々が、様々なかたちで農業に取り組んでいかれる中で、一人ひとり夢をお持ちだと思います。龍谷大学が農学部を新設され、立命館大学も食科学部を2018年に設置を予定されるなど、食と農は、これから先ますます注目を浴びる分野です。滋賀県は農業県でもあり、農業大学校で学ぶ皆さんがどんな夢をお持ちなのか、そして、これから農業に携わろうとする皆さんにとって、どんな課題があるのかといったことを学生の皆さんから直接伺って、これからの県政に反映させていきたいと考えていますので、今日は皆さんの持っている農業への夢を聞かせてください。

滋賀県立農業大学校で学ぶ学生の皆さんから

養成科・就農科の説明

  • 養成科について説明します。実践学習が基本とされており、教室で理論を学ぶ座学の時間と、実際に栽培管理や、種苗管理を行う、農業実習の時間が同じぐらいあり、農業全般の専門知識や技術について実践的に学んでいます。
    2年生の秋に2カ月間行われる先進農家での体験学習は、実際の農業経営と、農家の技術、作業体系について学べる機会となっています。
    学生は作物、茶、野菜、花、果樹、畜産の六つの専攻コースに分かれて専門学習を受けており、2年生ではさらに課題解決手法を身に付けるプロジェクト学習として、学生各自が課題を持って栽培試験に取り組んでいます。
    昭和44年度に開校し、平成27年度の卒業生で1,116名の先輩方が育ち、滋賀県農業を支える人材となっておられます。卒業された先輩方は県内各地で新規就農された方や、家の後継者として就農された方、そして、最近は農業法人に就職をして、農業に従事している人も増えてきています。さらに、農協や農業関連企業に就職するなど、地域農業のリーダーとして活躍されています。
    在学中に取得できる資格としては、大型トラクターが運転できる大型特殊免許のほか、危険物取扱者、毒物劇物取扱者等の資格や、免許を取得する機会もあります。以上が養成科の概要です。
  • 就農科について説明します。就農科は平成19年に設置され、今年で10年目を迎えます。就農を目指す者が1年間の研修を通じて、就農に必要な栽培管理技術および経営管理手法を身に付け、就農します。
    野菜、花き、果樹の3専攻コースに分かれていますが、毎年ほとんどの学生が野菜専攻を選択しています。研修は栽培管理実習が中心で、各自が就農時に取り組む品目を栽培し、栽培のポイントを身に付けます。今年はハウスでトマト、ナス、キュウリ、メロン、イチゴの栽培に取り組んでいます。
    現在、1作目の栽培が終わろうとしており、栽培した品目の特徴が分かってきました。また、販売管理実習では、収穫後の選別やパック詰めの方法を習得することにより、買ってもらえる品物にする方法を学びます。さらに市場出荷や学校での直売により、どのような品目が売れるかを実感し、各自の経営に採り入れようとしています。
    このように実践的な研修を通じ、私たちを含めると、10年間で100名の者が就農しています。私たちは現在、未来の就農を目指してハウスの準備を進めている段階です。就農科の概要は以上です。

養成科の学生の自己紹介

  • 養成科2年生で、作物を専攻しています。主にいま、コメ、ムギ、ダイズを栽培しているところです。
  • 養成科2年で、野菜専攻です。もともと家は兼業農家ですが、卒業後は専業農家となり、トマトを栽培したいと考えています。
  • 養成科の2年生です。休日に琵琶湖を眺めることが好きです。大津の伊香立に住んでおり、将来は地元にハウスを建てて、トマトを栽培したいと思っています。
  • 養成科2年で畜産を専攻しています。農業大学校のある大中町の出身で、家も繁殖肥育一貫の畜産農家をしており、それを継ぐことが将来の夢です。僕で3代目になるので、誇りを持って、近江牛の代表のような存在になりたいと思っています。牛は、この学校では飼育していないので、実習の時は日野町にある畜産技術振興センターまで行っています。
  • 養成科2年生で、作物を専攻しています。いまは主にコメを中心にプロジェクト(卒業研究)に取り組んでいます。大津市の膳所に住んでいて、周囲に田畑もなく、家は非農家です。私は、大学に進学して研究職に進むか、実際に農業に携わるかを悩んでいましたが、実際に農業大学校に入ってみて、今はすごく楽しくて、充実しています。
  • 養成科1年で野菜専攻です。先ほど自己紹介した同じ女子の先輩とすぐ近所に住んでいて、大津市の膳所から通っています。私の家も非農家で、1年生でまだ何もできていない状態ですが、これから勉強して、少量多品目の農業をやっていきたいと思っています。農業に興味を持ったきっかけは、小学校5年生の時に、学校の先生が小さな畑をつくってくださって、そこから少しずつ興味が湧いてきました。その後、湖南農業高校に進学して、農業大学校に進みました。
  • 養成科1年で、野菜専攻に入っています。僕の家は兼業農家で、主に水稲をやっていますが、これからは水稲だけでは少し厳しいので、野菜も手がけていこうと考えています。
  • 養成科1年で野菜専攻です。祖父母が大中で農業を始め、今は伯父が継いでいますが、伯父の跡を継ぐ人がいないので、僕が跡を継いで規模を拡大してやっていけたらと思っています。
  • 養成科の1年生です。高島市の安曇川出身で、果樹を専攻しています。高島市には、カキやクリは、マキノや今津にありますが、安曇川は果樹が盛んではないので、イチジクで名前を売っていきたいと思っています。
  • 養成科1年で野菜専攻です。大津市堅田の水稲の兼業農家出身です。将来は、いま田となっている土地を使って、ハウスでイチゴを中心とした施設栽培に取り組みたいと思っています。

就農科の学生の自己紹介

  • 両親が専業農家なので、その跡を継いで果樹と水稲と、イチゴの観光農園をしていきたいと考えています。
  • 家は兼業農家をやっています。去年までは会社で働いていましたが、農業を目指そうと思い立って退職し、この学校にお世話になりました。施設栽培の野菜を学んで、トマトとキュウリの栽培をしていきたいと思っています。
  • 去年まで市役所に勤めていたのですが、周囲に内緒でこの学校を受験して、今年入学しました。日野町在住で、地元では集落営農の法人化も進めているのですが、私個人はイチゴやトマト、ナスをしていきたいと思っています。市役所では農業関係の部署にも一時期は籍を置いていましたが、それは直接のきっかけではなく、農業は、化学や数学などの色々な知識を実践に活かせ、成果がすぐに表れるところに魅力を感じています。自己完結でき、自分にとって一番やりがいを感じることができる仕事が農業だと感じています。
  • 甲良町在住です。田にハウスを建てて、ミニトマトの栽培を冬越しでやっていきたいと考え、この学校で勉強させてもらっています。
  • 自分の家は非農家ですが、地元が守山なので、守山メロンを作っていきたいと考えています。農業大学校に通いながら、JAおうみ冨士の「トレーニングハウス」という実習用のハウスに参加させていただいて、実際に守山メロンの栽培にも取り組んでおり、ちょうど今が出荷の時期になっています。

学生の皆さんのこれからの夢と課題について

  • 実家は非農家なのですが、ハウスを一から建てて、トマトに取り組もうと考えています。新規就農者としては、土地をどうするのかという問題と、ハウスを建てるためにかかる経費に躊躇しています。トマトで生活しようと思うと、1反(1,000平方メートル)程度のハウスが必要ですが、良いハウスであれば一千万円近く掛かってしまい、無利子の融資制度などもあるものの、補助金という形のものはあまりないので、新規就農者はなかなか最初の一歩を踏み出せない状況があります。
  • 新規就農者の中には、使われていないハウスを借りて始めた先輩もいるが、自分が大津市で育って、僕自身が農業と疎遠な中で育ったと感じているので、自分の畑で地元の若い方に農業を体験する機会を提供できればと考えています。地元の大津市伊香立で、小学生などに農業に触れ合う機会を提供していきたいと考えているので、地元にハウスを建てたいと考えていますが、資金面が難関となっています。
  • 単にトマトを栽培するだけでなく、ジュースへの加工なども手掛けて、6次産業化(農業と2次・3次産業を一体的に手掛けることにより地域を活性化し新たな業態を創出する取組)にも取り組んでいきたいと考えています。来夏から始めて、3年後には近隣の養護学校などにも声をかけて、一緒に色々な取組ができればと考えています。
  • 補助金などの支援の話が出ましたが、静岡でハウス栽培に取り組んでいる知人に聞くと、知人の地元では、農協や市が一体となってハウス栽培に取り組み、10町(10万平方メートル)ほどの広い土地に鉄骨のハウスを建てており、スケールメリットによって、面積当たりのハウスの値段が、こちらの半値ぐらいで済むと聞きました。
  • こうしたスケールメリットは、個人で取り組んでいては、絶対にできないので、どこかまとめてくれる組織があればと思っています。
  • たとえば、守山でメロンを作ると言えば、モデル施設として整備するなど、色々な支援制度もあるが、メロンを作ることが前提となっています。
  • 僕が高島でイチジクに取り組もうと考えている理由も、イチジクは高島市が推進している作物の中の一種なので、始める際に補助金がもらえることに魅力を感じているからです。
  • この学校の生徒は、卒業後ハウスに取り組みたいと考えている生徒が多いが、その理由として、水稲で生活していこうと思うと、10町(10万平方メートル)規模の広い面積が必要となり、土地が確保できないという理由があります。
  • 作った野菜を市場に出荷すると、直売する場合の半額ぐらいの値段しかつかない。しかし、自分の家で売るのはお客さんが付くまでが難しいので、出荷先として、各地の直売所と平和堂内のJAのインショップ(大型店等の売場内に設けられた独立した売場・ここではスーパーの売場内に設置された直売コーナーを指す)等が主体となっています。平和堂以外のスーパーで滋賀県内に多くの店舗を出店している店でも、地元産の野菜の直売コーナーが、もっと設置してもらえればと考えています。
  • 学校から市場の見学に行くなど売り方の勉強もしているが、どうやって売るかは非常に重要なので、露地栽培の農家がその時期に作れない野菜をハウスで少しだけ作って売るなどの戦略が、ハウス栽培農家には必要となってきます。
  • 直売所を何軒も掛け持ちして直売されている方もいるが、毎朝売り場に行くために数時間かけていると、農業をする時間がなくってしまう。
  • 知事にはテレビなどで滋賀の農産物をアピールして、滋賀の農業の注目度を上げて、農業全体を盛り上げていってほしいです。「農業、盛り上がっているな」と感じて、農業をやりたいという人が増えてくれれば良いと思います。
  • 「近江野菜」は、「京野菜」のような知名度がなく、あまり知られていないので、もっと知られるようにPRしてほしい。
  • 盛り上げるために、たとえば、T.M.Revolutionの西川貴教さんなどの芸能人を呼んでほしい。以前に、タボくん(西川さんをモデルとした、ゆるキャラ風の「イナズマロックフェス」の公式キャラクター)が、湖南農業高校に来て一緒に田植えなどをしていたので、私たちが在学している今年度中に、タボくんに農業大学校へも来てほしいです。

知事から

対話を振り返って

  • 新規就農でハウスに取り組む際の補助金の話題が出ましたが、市や県に、どうすれば補助金がもらえるのか相談に乗ってもらうなど積極的に動いてみてほしい。また、福祉や地域おこし、教育等の要素も入れていけば、いろいろな応援がもらえるとも思います。
    色々と深く考えていることが、良くわかりましたので、ぜひ地元にこだわって、がんばってほしい。
  • 滋賀県の農産物のPRについては、私は宮崎県の東国原元知事のような有名人ではないですが、様々なメディアの取材で、法被を着てコメや野菜や肉など滋賀県の農畜産物を試食して「おいしい」とコメントするなど色々とやっていますので、これからも頑張りますね。
    タボくんを農業大学校に呼ぶ件については、来てもらうだけではなく、タボくんとどんなことをするか、農業大学校ならではの要素を盛り込んだ企画を考えてみてほしいと思います。