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第18回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手広瀬小学校区の皆さん

広瀬小学校区の皆さん

今回は、広瀬小学校区の皆さんと対話を行いました。

高島市立広瀬小学校は、琵琶湖西岸を流れる安曇川の中流域に位置し、自然環境に恵まれた立地にあります。周囲には安曇川の清流を中心にのどかな田園風景が広がり、校区内には戦後に開拓された小高い台地状の平地に広大な農地が広がる泰山寺地域などが含まれます。学校の創立は古く、明治の簡易科小学校まで遡ることができます。

高島市学校規模適正化(学校再編)基本方針に基づき、複式学級解消のため、平成28年4月をもって広瀬小学校は安曇小学校に統合されることとなりました。

今回は、広瀬小学校区の皆さんに、広瀬小学校廃校後の跡地利活用による地域の活性化などについて知事と語り合っていただきました。

知事から

今回の対話について

  • 今週一週間は、高島市内の安曇川町中野の集落で古民家をお借りして生活を送っている。地域に受け入れていただいたことに感謝申し上げたい。
  • 安曇川駅まで自転車で通っているが、道端を蛇が通っていたり、今朝の通勤時には20匹ほどのサルが出てきたりもした。地域の皆さんが普段から経験されている、自然に囲まれた生活の一端を体験している。昨晩の帰宅時は仕事の関係で車を使ったが、湖西線は止まっていたと聞いており、苦労された方も多かったことと思う。土曜日までの短い期間ではあるが、この地域で暮らす中での様々な体験や、皆さんとの対話を通して得たものを、今後の県政に反映していきたい。
  • 日曜日に、広瀬小学校の子どもたちと一緒に、運動会に向けた学校の草刈りに参加した。テレビでも放映されていたが、5年生の子が「僕たちは、この広瀬小学校で卒業したい」「今年の卒業式は、6年生だけでなくて僕たちの卒業式でもある」と話してくれた。その子は、「大人や先生が決めたことであり、上級生でもあるので従うが、割り切れない気持ちがある」という本音を吐露してくれた。学校の統廃合について色々な思いがあることを、あらためて強く感じた。
  • 人口が減少していく中、小中学校の統廃合と学校跡地の活用について県内の各地で議論されている。かねてより、跡地の活用策については、よくよく検討してほしいと指示をしてきたが、今日皆さんから伺ったご意見もしっかりと反映していきたいと考えている。
  • 私は今、「新しい豊かさ」を滋賀からつくろうと呼び掛けている。「新しい豊かさ」とは、今の豊かさ・モノの豊かさ・自分の豊かさ・お金だけの豊かさではなく、「全ての人が将来も持続的に心で実感できる豊かさ」を指している。高島は、自然の中で人と人とのつながりが非常に密な中で生活でき、日本の原風景が残る地域だと感じるが、その良さがなかなか実感していただけていないことや、良さよりも課題の方が注目されてしまって若者が地域に定着しないこと等の課題についても、皆さんから忌憚のないご意見を聞かせていただきたい。

広瀬小学校区の皆さんから

  • 先日は学校の草刈り作業へ参加いただき、感謝している。広瀬小学校のPTA会長という大役を任され、毎日四苦八苦しているが、現在PTAでは、9月の運動会に向けての準備に追われているところ。本日はよろしくお願いしたい。
  • 上古賀地区のPTAの役員をしている。生まれも育ちもこの地域で、広瀬小学校の卒業生でもある。今までまったく危機感を持っていなかったが、このたび学校が統合されることとなり、いろいろと考えさせられている。今後いろいろと自分達で努力して、できることはやっていきたいと考えている。
  • 下古賀地区に居住しており、広瀬小学校のPTAの役員をしている。小学2年生と保育園児の2児の母で、自分自身も広瀬小学校の卒業生。長男より下の学年も同じくらいの人数であり、あまり危機感がなかったので、統合の話を聞いて驚いた。長男自身も卒業する頃までは広瀬小学校があると思っていたために、なぜなくなるのかと言って涙を流したこともある。子どものために統合すると聞いていたが、説明を聞く中では食い違う点もあると感じている。
  • 広瀬小学校に2人の子どもが通っている。私自身もこの地区で育った広瀬小学校の卒業生。統合されると決まったからには、できるだけ統合にみんなで協力し合って、よりよい統合を目指して頑張りたいと思っている。子どもは特別支援学級に通っており、統合後、安曇小学校に通う際に不安のないように、準備をしてあげたいと考えている。
  • 広瀬小学校のPTAの一員で、南古賀地区に在住している。大阪出身で3年前に移住し、金属工芸に取り組んでいる。高島でものづくりに取り組む人との交流イベントである「風と土の工藝」にも出展している。今日は知事に意見をお伝えしたいと考えているので、よろしくお願いしたい。
  • 中野区在住で娘が2人おり、広瀬小学校のPTAの役員をしている。自然環境の豊かな所で子育てをしたいと移住してきた。統合することについては、いろいろな理由もあり、しかたがないことだと思ってはいるが、学校は地域のコミュニティにとって大きな存在であり、単に学校がなくなるというだけではないと感じている。自分はこの地域で生まれ育ったわけではないが、この地域で生まれ育った方には、学校に対する思い入れもあり、地域をつなぐ小学校が、いま一度どういう存在なのかということを、地域の人みんなで考えていきたいという気持ちがある。時間はかかると思うが、跡地利用についても、いろいろな人の意見を聞きながら前に進んでいければと考えている。
  • 40年あまり前に広瀬小学校を卒業した卒業生で、広瀬小学校跡地利用検討委員会の委員を務めている。子どもも広瀬小学校出身だが、子どもが卒業してからも、もう10年以上経った。広瀬小学校は今年で129年の歴史があり、卒業生の方で亡くなられた方も多いなかで、学校が統合されるタイミングに自分が立会うこととなったので、廃校後の跡地を地域住民と協力してうまく活用できるように努力していきたいと考えている。
  • 広瀬小学校跡地利用検討委員会の委員長を務めている。初めは何とかなるだろうと思っていたが、回を重ねるごとに、だんだんどうしたらいいかと一歩を踏み出すことができずにおり、苦労をしている。閉校の記念誌へ寄稿するために小学1年生の時の写真を見たところ、私の学年は57人も生徒がいたと知った。現在の全学年の人数と同じくらいの人数であり、時代の変化を切実に感じている。
  • 跡地活用の取組について、これまでの経過を説明したい。平成26年12月に高島市教育委員会によって広瀬小学校跡地利用検討委員会が立ち上げられ、5回ほど協議を重ねてきた。全国の先進事例を学習するなど14人の委員で検討を進め、まずは住民の思いを知ろうとの考えから、アンケート調査を行った。アンケートでは跡地の利用方法として、非常に多くの意見が出てきたが、その中から関心の高いものや実現性の高いものを選び、配布した資料にある11項目(学童保育、デイサービス、文化資料館、伝統工芸工房、体験宿泊施設、親子農業体験、農産加工所、製造業誘致、地域ふれあい交流施設、スポーツ施設、防災関連施設)に絞り込んだ。
  • 跡地の活用方法の候補について絞り込みして住民へ提示することまではできたが、これらの候補についてどのように実現に向けてアプローチしていくかとなると、なかなか難しく一歩を踏み出せないというのが現状であり、全国に情報発信していく広報についても委員会の中で検討している段階である。
  • 国において地方創生の事業が取り組まれているところなので利用できたらと考えているが、今年度は間に合わなかったので、来年度に向けて高島市へお願いしていきたい。
  • 行政を当てにせず、地域の人間が自分で考えなければうまく行かないという意見も聞くが、この半年間取り組んできて、やはり県と市の支援がないと、なかなか進まないと実感した。アンケートから絞り込んだ11項目を市の教育委員会へ提示して「どうにかしてほしい」と依頼しても、おそらくどうにもならない。行政によって跡地に学童保育所や福祉施設をもってくることは可能かとは思うが、市全体として現在うまく収まっているものの一部を動かすことで他とのバランスが崩れることもあるので簡単に出来るとは考えていない。例えば、行政から調査費を支援する等のきっかけをつくっていただければ、仕事もしやすくなると考えている。
  • 小学校は大きな施設なので、アンケート結果で挙がった候補の中からいくつかを組み合わせて複合的に使うこともできるのではないかという意見も跡地検討委員会で出ている。また、広瀬小学校には、陶芸用の電気窯のような小学校には珍しい設備もあるので有効に使えればと考えており、多様な可能性があると考えている。アート作品の展示スペースとしての使用や、企業のサテライトオフィスや大学の研究交流施設などの誘致なども考えられる。
  • 昨年、高島市朽木にあった「滋賀県立朽木いきものふれあいの里センター」が老朽化等のために廃止になった。いきものふれあいの里センターは、比良山系の山麓に広い敷地を持ち、生物多様性の学習や自然の中の体験ができる施設だったが、廃止後は今津の高島合同庁舎内に新しく設置された「いきものふれあい室」が、その取り組みを引き継いでいると聞いた。この「いきものふれあい室」を、広瀬小学校の跡地に誘致することはできないか。
  • 朽木いきものふれあいの里センターがあった頃は、保育園では季節ごとにセンターへ行って自然観察やパン焼きなどの企画を体験していた。現在の「いきものふれあい室」は自前の野外フィールドはなく、定期的に野外での自然観察会などのイベントを実施している。広瀬小学校周辺には森林や川もあり、田畑も広がっており、今津の合同庁舎に比べて自然環境も豊かで、高島市の中央付近に位置していることもあり、「いきものふれあい室」の活動拠点としてふさわしいと思う。
  • 広瀬小学校の跡地に「いきものふれあい室」のような施設が一つ入ってくれると、それがきっかけとなるので、他の施設を複合的に組み込みやすくなる。そういうきっかけがないと、跡地の活用がなかなか進まない。
  • 学校の跡地を、アーティストや若手作家などの生活拠点の場にしたらどうかという意見もある。私が大阪からの移住先に高島市を選んだ理由の一つに、都会からあまり遠くないにもかかわらず自然が豊かだという魅力がある。大阪で制作活動をしていると、狭くてごちゃごちゃして閉塞感があり、広い所に移住したいと自分も周りの作家も思っていた。若いアーティストが都会で活動拠点を創るのは資金的に厳しく、高島にそうしたアーティストが集まる施設ができればと考えていたので、広瀬小学校の跡地を使えればと思う。
  • 安曇川に限らず高島市には、都会から移住してきた工芸品の作家やアーティストが増えており、先ほど話題に出た「風と土の交藝in琵琶湖高島」の影響もあって、移住してきたアーティスト同士でネットワークが形成されている。
  • 私は扇骨を生業としているが、京扇子の骨の部分は、ほぼ高島でつくっている。扇骨作りには場所も道具も必要なので、小学校の跡地のような場所を借りるという方法もあると思う。扇骨業者は100軒くらいあると思うが、高齢化が進み若手の育成もうまくいっておらず扇骨業界にとって難しい時代になってきている。拠点を作ることで効率化も図れるし後継者の育成にもつながる。
  • 伝統工芸に限らず、色々な職人や作家など色々な人が出入りする施設になれば、雇用も生まれ、地域も潤う。滋賀県はこれまで廃校となる学校は少なかったが、これからは県内でも廃校が増えてくる。その中で、田舎の強みを生かして、モデル的に何かができないかと考えている。小学校は広いので「いきものふれあい室」が入居したとしても全部は埋まらない。先ほどの話にも出たように都会の作家などには広いスペースは魅力的であり、アートやものづくりの拠点として廃校を活用している事例は全国にたくさんある。
  • 小学校の跡地を使いたいと言う潜在的な需要はあると思うので、こういう環境のこういう施設がここにあるという情報を目に見える形にして出していけば、使ってみようという人や企業とうまくマッチングができる。そうした情報を発信する仕組みが作っていければ良いと思う。
  • 移住してきて5年たつが、今回の統合について小学校区の住民が何とかしなければという気持ちになって動きだしたことが、私にとってはうれしい事だった。コミュニティの絆を実感するきっかけになったと思う。廃校というとマイナスのイメージがあるが、これをきっかけとして、いろんな人達と知り合うことができた。
  • 私のように生まれた時からここに住んでいる人間は地域のよさが見えていない。私にとって小学校の廃校がきっかけとなり、移住者の方々と話すことで、この地域の良さに気づかせてもらった。
  • 若いころは何も考えていなかったが、子どもが減りつづけ、人口が減ってきて、今回小学校が廃校ということになった。移住者を増やしたり、若い人が地元で働く場所を作っていくことが、地域のために必要であり、そういったことに力を入れていってほしい。
  • 統合後の小学校について、安心して子ども達が新しい学校に行ける環境を整えてほしい。廃校になる学校の教員を、統合後の学校に配置してもらえれば子ども達も安心できると思う。また、教員の増員もしてほしい。
  • 統合先の安曇小学校は1学年に40~60人くらいの生徒がおり、統合後は、1クラス当たりの広瀬小学校の生徒は、少ない学年では2~3人しかいないことになる。広瀬小学校の子ども達は、転校のような形で統合後の安曇小学校に通うこととなるが、そこでいじめなどの問題が起きてしまうと、なぜ統合などしたのかということになってしまう。そのような事態を未然に防げるような体制を取っていただきたいと思っている。

 

知事から

対話を振り返って

  • 高島に移住して3日間過ごしてみて、昔から住まわれている方々と新しく来た方々とがうまく融合できている地域だと感じた。今朝、軽トラックとすれ違った時にも、知事と気づかずに手を挙げて挨拶していただいた。高島の方々は外から来た人に対して非常に友好的な印象があり、あまり他の地域にはない特徴だと思う。現在は少子化が進んでおり、小学校の統廃合などもあるが、この地域に魅かれて移住する若い人達も増えており、地域の長所が再発見されつつある今の状況には希望があるとも感じた。
  • 広瀬小学校の跡地の活用については、地域の皆さんのお力だけでは困難な部分も多い。行政が利用方法を押し付けるべきものではないので、皆さんに地域の合意形成にご尽力をいただいたうえで、県としても市と連携しながら、皆さんのご意向に沿うかたちで進められるように努力していきたい。
  • 廃止された「滋賀県立朽木いきものふれあいの里センター」を引き継いだ「いきものふれあい室」の広瀬小学校跡地への移転についてご質問いただいた件については、本日初めてご意向を承ったので、これから高島市とも調整しながら、広瀬小学校跡地への移転について研究をして行きたい。
  • 先日「風と土の工藝in高島」のスタッフの方々とお話した際に、高島のように自然が豊かな地域はインスピレーションが湧きやすく、創作活動に向いているとお聞きした。他府県でも廃校をアートの拠点にする取組は耳にしており、広瀬小学校の跡地をアーティストの方々や伝統産業などのモノづくりの拠点として活用する発想は、廃校という悲しくつらいことを、逆にチャンスに変えるというモデルケースにもなると感じる。地域の皆さんから具体的な提案等があれば、県としても市とも協働しながら支援の方法を考えていきたい。
  • 小学校の統廃合に関しては、地域の皆さんにも色々なことを飲み込んで、ご協力をいただいており、県としても皆さんの意見をしっかりとお聞きしていきたい。とくに、いま通学している子ども達へのケアについて、子ども達の環境に支障がないように市とも連携しながら、万全を期していきたい。
  • 統合後の小学校への教員の配置数については、基準に基づいて算定しているが、支援が必要な子ども達や新しい学校に移る子ども達への配慮をしっかりとしていきたい。