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第16回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手高島市消防団の皆さん

高島市消防団の皆さん

今回は、「高島市消防団」の皆さんと対話を行いました。

高島市消防団は、地元の有志535名で組織され、11分団28部53班体制で高島市内全域における火災・災害等に対し、消防署と協力して消火活動や救助活動等を行っておられます。平常時においても、消火・防災訓練や機材の整備・点検を行い、有事の際に備える他、夜警や防災イベントでの紙芝居等で防火啓発活動にも取り組まれています。

平成26年には火災現場に延べ438名、台風や豪雨時の水防活動および登山者の捜索活動等に延べ647名が出動されました。

平成25年9月の台風18号においては、降り続く豪雨の中、土嚢積み等の水防活動や住民の救助救出活動および避難誘導を行い、被害の軽減に多大な貢献をされました。この功績が認められ、平成26年に防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞されています。

今回は、平成25年の台風18号被災時に破堤した鴨川堤防の現場をご案内いただき、その後に、高島市消防団の皆さんに知事と語り合っていただきました。

知事から

今回の対話について

  • 2月に行った木之本の杉野集落での湖北居住体験に続いて、本日から、高島市内の安曇川町中野の集落で、古民家をお借りして7日間生活する。知事の職務をしっかり果たしつつ、この1週間は高島市民として、一緒に住まわせていただくので、よろしくお願いしたい。
  • 湖北居住体験の際には、2時間半かけてバスとJRで大津へ通勤し、「大変でしょう?」などと取材でも言われたが、今回も中野から自転車で安曇川駅まで行き、安曇川からは湖西線で大津へ通勤する。湖北や湖西からは、多くの方が大津や京都へ通勤されており、通勤という日常の経験からも、皆さんの暮らしの一部を体験したいと考えている。
  • 消防団の皆さんには日頃から地域のために貢献していただき、たいへんありがたく感じている。消防団の皆さんの存在と努力が、地域の安心・安全につながって、ここに住み続けたいと感じてもらえる魅力の源になると考えている。一方で、高齢化に伴って団員の確保についての課題があることも聞いているので、そういった実態等もお聞きしたい。
  • 先ほど、平成25年の台風18号で決壊した鴨川堤防の復旧の状況を案内いただいた。被災の直後にも破堤現場の深刻な状況を確認したが、皆さんのおかげで随分と復旧改善しつつあり、流された田でも稲作が再開されて稲穂が垂れていた。まだまだ田の中には石が沢山残っているとも聞いたが、これから復旧した河川の中流の流下能力の機能回復等についても皆さんと一緒に努力していきたい。
  • 今年から滋賀県も人口減少局面に入り、何らかの手を打たなければ、将来の滋賀県の人口は大幅に減ると予測されている。県では、人口減少を見据えて滋賀の強みを伸ばし、豊かな滋賀をつくっていく戦略づくりを進めている。転入してきてほしい、産み育ててほしいということもあるが、今、この地域に住んでいる方々の住みやすさや共同体としての繋がりについても考えて施策に取り組んでいきたい。様々なプロジェクトが計画中で、まだ途中段階であり、色々意見を聞いて取組を作っていきたいと考えているので、皆さんの忌憚のない意見をいただきたい。

高島市消防団の皆さんから

  • 私は39才で分団長になったが、分団長就任を頼みに来た当時の団長が「火はどれだけ頑張っても一人では消せない。団員皆で力を合わせるから消せる」という話をして下さった。東日本大震災では東北三県で254名もの消防団員が亡くなったが、私は消防団において上に立つ者として、常に団員の命を守ること、団員が危険な目に合わないようにすることが自分の役割だと考えている。
  • 近年の消防団員は昔と違って会社勤めが多く昼間は都会に働きに行っているため、日中の火事では団員の1/3ぐらいしか集まらない。私自身は職人だが、どこの地域でも職人の仕事は減っており、子どもも家業を継がずに若い人が地元に残らずに地域外へ働きに出るという流れになっている。湖東側には工場などの地元で働く場がたくさんあるが、湖西には少ないので、やはり高島にも、もっと働く場所が必要だと感じる。
  • 主要な河川においても管理道路の整備がまだ不十分なので、河川の改修はもちろんだが、河川の管理道路の整備についても進めていってほしい。
  • 高島市役所では、職員の消防団加入を推奨していただき、市の職員が新たに入団してくれている。平成25年の台風の際にも、市職員の消防団員が明け方まで土嚢作りに頑張ってくれた。
  • 消防団に入団して30年以上が経つが、日常の仕事や地元以外の、消防団の活動を通して色々な人とお付き合いする機会ができ、人脈という形で自分の大きな力になっており、この人脈はこれから先もずっと役に立つと考えている。
  • 全国共通の問題ではあるが、人員確保の問題に頭を痛めている。今後もコミュニケーションを重視し、団員との和を大事にしながら人員確保にも取り組んでいきたいと考えている。
  • 女性の私が消防団に入ろうと思ったきっかけは、夫を始めとして地域の男性が働きに出ている昼間に火災が起こった時にどうするかと考えた時に、自分達で守れればと考えたから。消防団の募集広告で女性も募集していると知り入団した。災害時には、男性とは違うソフトな面で活動できたらと考えているが、現時点で女性団員は6名と少ないうえに地域も偏っており、災害時に私たち女性団員が他の地域に行くのは難しい。各地域に女性団員の方がいればと考えているが、なかなか女性の新規加入がない事が現在の悩みの種となっている。
  • 23年前に県外から滋賀に嫁ぎ、子どもを4人育てた。知事の人口減少対策についての話を聞いて感じることは、滋賀県には進学先が少ないために若い人が東京や大阪に出てしまうということ。また、卒業後に就職する際に帰ってこようと考えても、高島市で仕事がないという状況もある。人口減少への対策の中に、教育のことがあまり組み込まれていないことに不安を感じた。
  • 25年ほど前に結婚してから、消防団に入った。私は次男なので地元から出てもよかったが、地元の朽木が好きだったので、朽木に残った。高島市が定住促進のための住宅確保の支援を行っており、その制度を利用して家を建てた。自分自身は好きで朽木に住んでいるが、不便なところも多いので、子ども達には自由にしてもらえばいいと考えている。子どものためにも、高島市が安全・安心に暮らせる地域になっていけばと思っている。
  • 一昨年の台風18号の水害の際には、何から手を付ければよいか全然わからなかった。出動した時に流れてくる濁流を見て危機感を覚えたが、東日本大震災の津波は、その10倍、20倍のものだったのかと思った。東日本大震災の際の地元の消防団員のことを想像すると、どれほどの苦労や苦痛があったのかと感じる。最近は気象状況の変化から集中豪雨が増えており、昔はあふれる事がほとんどなかった河川で未曾有の大水害が起きている。高島の消防団員は台風18号で経験があるために、去年に避難勧告が出た際にもスムーズに対応できていた。
  • 私は一旦県外に出ていたが、結婚を機に高島に戻った際に勧誘を受けて入団した。勧誘の際に出られる時だけで良いと言われて甘い考えで入ったが、多くの災害現場を見るうちに、出られるときだけというような甘い考えではいけないと思うようになった。これから新たに入団する方についても、いい加減な気持ちで入っていただくのはどうかと考えている。
  • 以前に、団員が手薄な地域に都会から家族で移住してきた方があり、消防団へ入団していただくようお願いしたが、残念ながら都会の方には私達の気持ちは伝わらなかったようで、入団していただけなかった。自警団や自主防災組織はこれから徐々に減っていくと思うので、隣接する防災組織や自警団とも連携をしていかなければならないと考えている。また、団員をこれ以上減らさないように、団員とは家族ぐるみの付き合いを心がけている。
  • 山間部はどこの集落でも高齢化が進んでおり、団員確保が非常に難しい問題になっている。一方で住宅街は若い人は多いが、なかなか入ってくれない。また高島市消防団は、団員のうちサラリーマンが73%になっている。先ほども話に出たとおり、昼間の火災時には3割ぐらいが来てくれたらいい方という現状にある。新規入団してもらっても、大阪まで通勤しているので朝は早く夜は遅いので、仕事との両立が難しいという話もよく耳にする。我々としては、昼の捜索や火災のときにどうするかを憂慮している。
  • 私達が30数年前に消防団に入った頃は、消防団は誰でも入れる組織ではなく、入りたくても入れなかった。親に消防団の経験があるか、地域に貢献されている人かなどの基準で、この人なら間違いないという人が、地域の役員の推薦などで入団していた。団員自身も「選ばれた」との責任感を持って入団したので、訓練で怒られても苦ではなかった。団員確保についての意見として、消防団員への優遇制度などを作って、入団するメリットを打ち出していくことなども、これからの課題として考えて行きたい。
  • 野洲市では消防団を応援するお店を募り、加盟店での買い物などの際に消防団員には優待価格が適用されるなどの仕組を導入している。昔と違って今は、誰かがやってくれるという感覚の若い人も多いが、自ら入団しようと考えてもらえる具体的なメリットとして「消防団員ならあの店で割引になる」といったものがあれば、団員の家族も協力しようという気持ちが出てくると思う。企業や商店の協力も必要だが、店の側も社会貢献になるとアピールすれば、協力店も広げていけるのではないか。
  • 団員数の確保が困難な問題となっている一方で、消防本部が子ども向けに行うイベントは、子どもは消防車や制服が好きなので人気が高い。そうしたイベントに併せて、消防団の訓練を見せれば、子どものころから消防団へ親しみを持ってもらえるのではないかと思う。そうしたところから、5年先、10年先の消防団員が出てくればと思う。
  • 子育てする中で、小中学校の教育について、自分で率先してやる力を伸ばす面などが弱いと感じた。高島は三世代同居が多く、子育てにはいい環境だが、そのために自発性が生まれてこないのかとも感じる。そういった積極性が生まれてくると、自分から地域で何か行動しようという気持ちが生まれてくる。
  • 町村合併で高島市が誕生し、消防団も合併して一つになってから10年になる。昨年、行方不明者の捜索の際に、湖岸道路のどこかで目撃したと証言があったため、市内の湖岸道路を北から南まで各地域の団員が分担して徒歩で捜索したが、かなり長い距離があるにもかかわらず2時間もかからなかった。こうしたことができるのは合併したからこそであり、今後も高島市消防団として、より一体感を強めていくよう努力していきたい。

 

知事から

対話を振り返って

  • 地域の若い人に遠距離通勤が多いことが団員確保の難しさにつながっているとのことだが、県としても、地元で働ける場所を作ることの重要性は認識しており、市とも連携して企業誘致に取り組んでいる。また、企業誘致につながるインフラ整備についても、国道161号バイパスの延伸や、JRに協力いただいての湖西線の風対策にも取組を進めている。
  • 都会では子どもの声が騒音扱いされることも多いのに対して、高島には豊かな自然や、人と人との温かい結びつきがあり、子育てするには素晴らしい場所。こういった面をしっかりアピールしながら、滋賀県で子育てすると、こんな教育が受けられるという魅力を作っていきたい。大学については、様々な学部が県内に13大学と昔に比べるとずいぶんと増え、高校卒業後に学び続ける場所が整ってきたので、これからは卒業後に働く場所も、もう少し色々な選択肢が示せればと考えている。
  • 滋賀県の子どもは学力テストの平均点はあまり高くないが、地域行事へ参加するかという問いについては全国よりも数段高い結果となっている。「湖の子」や「山の子」といった体験学習など、地域との結びつきが非常に強い教育環境があり、「生きる力」という面で見ると他府県よりも恵まれていると感じている。これからの教育は大人任せではなく、子ども達自身が自発的に一緒に考えていく仕組みを作っていくことが必要だと考えており、県や市においても取り組んでいるが、地域をよく知っておられる消防団の皆さんにも協力していただきたい。
  • 多くの町村が合併した市ならではの困難もあったと思うが、合併による効果も大きいと思うので、ぜひそれを伸ばしていってほしい。この地域の消防団にとっての一番の課題は団員確保であると思うが、皆さんも様々な積極的な取組をされていることもよくわかったので、今後の施策づくりに生かしていきたい。