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第15回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手滋賀プラス・サイクル推進協議会の皆さん

滋賀プラス・サイクル推進協議会の皆さん

今回は、「滋賀プラス・サイクル推進協議会」の皆さんと対話を行いました。

これまで個人の私的な移動手段としての役割に限定されていた自転車に対して、単なる公共交通との連携だけでなく、その役割を見直し、新しい価値と公共性を付与していくことで、自転車を地域における公共交通体系のひとつとして位置づけていく「+cycle(プラス・サイクル)」構想を実施していくことを目的とし、「環境のため、健康のため、人にやさしいまちづくり」を目指して、平成24年8月23日に設立された団体が「滋賀プラス・サイクル推進協議会」です。学識経験者の方々や自転車関連のNPOをはじめ、運輸・観光などの事業者や自治体など多彩な構成員からなっています。

今回は、滋賀プラス・サイクル推進協議会の構成員であるNPO法人五環生活から自転車をお借りして、約30分間「ビワイチ(琵琶湖を一周するサイクリング)」のルートの一部を知事が体験サイクリングさせていただき、その後、滋賀プラス・サイクル推進協議会の皆さんに知事と語り合っていただきました。

知事から

今回の対話について

  • 皆さんのご協力のもとに、短い時間ではあったが、「ビワイチ」のルートの一部を体験サイクリングさせていただいて、楽しみの一端を感じることができた。ビワイチを始めとする自転車での移動、自転車での観光には、可能性を大いに感じている。
  • 県としても、サイクルステーションの設置を始めとして、様々な形でサイクルツーリズム等の振興に取り組んでいきたいと考えている。今日は、サイクルツーリズムを始めとして自転車の利活用促進に早くから取り組んでおられる皆さんから、多くのことを学ばせていただきたい。
  • 限られた時間ではあるが、しっかりと皆さんのご意見やご提言を承って帰りたいと考えている。

滋賀プラス・サイクル推進協議会の皆さんから

  • なぜ「プラスサイクル」という名前になったのかを説明したい。自転車利用促進協議会という案もあったが、歩道上での歩行者と自転車の事故など、自転車の交通環境については必ずしもプラスのイメージだけではない。自転車利用を促進した結果、危険な自転車が集落の中を高速で走りぬけていくといったことになりかねないと考え、とにかく自転車利用を促進していくというのではなく、今ある我々の生活に自転車を付加して選択肢として常に自転車が意識される社会を目指そうと考え、あえて自転車利用促進ではなく「プラスサイクル」という言葉を作って協議会の名前とした。
  • 滋賀プラス・サイクル推進協議会の特徴として、一つ一つのテーマについてワーキンググループを立ち上げるという体制をとっている。一つのテーマについて何十人もの会議で話して何かするのではなく、プロジェクトごとのワーキンググループで取り組み、ワーキンググループのメンバーには、興味を持った方であれば協議会に参画していない方でも入れるという独特な推進体制をとっている。「安全利用」「情報発信」「自転車ツーリズム」の3つのワーキンググループと、環境整備についての意見交換会を設定しており、自転車ツーリズムワーキンググループにおいては、自転車に乗っている方をサポートする「サイクルステーション」の基準作りや宿泊施設との連携方法などについてメンバーで協議をしている。
  • 滋賀の街を見た時に、自然に自転車を利用したくなるような印象を受ける街づくりを目指している。例えば大津駅で降りて駅前に立った時に、みんなが楽しそうに自転車に乗っていたら、ここは自転車が歓迎されている町なんだなと思ってもらえる。そんなふうにならないと真の意味で自転車にやさしい街づくりにならないと考えている。お客様が降り立った時に、ここは自転車で回らないといけないと思っていただけるような形にしていきたいという思いがある。
  • 滋賀プラス・サイクル推進協議会の特徴として、走行性能の良いスポーツタイプの自転車のレンタサイクルを、公共交通として推進している点がある。全国的にレンタルする自転車はシティサイクルが主流であり、駅前にたくさん用意されている自転車を借りて、乗り捨てるというスタイルが多い。滋賀県では、もっと広く色々な場所を走ってほしいとの考えから、今日の体験サイクリングでも使用した多段変速のクロスバイクやロードバイクなど走行性能の良い自転車のレンタサイクルを推進している。気軽に乗れるシティサイクルには傘のように使い捨てられて放置駐輪の問題につながるなど、自転車を大切にすることに繋がらないという側面がある。自転車の素晴らしさを知ってもらえたら、自転車をもっと大切にしていこうという発想になるのではないかと考えている。
  • 県内のサイクルツーリズムの推進における課題としては、ビワイチのコースの一部でもある湖岸沿いの道路の一部に自転車が通行しにくい狭い部分があることや、他県で走行できる地域が増えているタンデム自転車(二人乗り仕様の自転車)への取組が遅れていることなどもある。
  • 滋賀プラス・サイクル推進協議会の構成団体の一つである「滋賀県バイコロジーをすすめる会」は、今から37年ほど前にできた。バイコロジーは、環境のために自転車利用を促進しようという70年代のアメリカの市民運動の名称で、バイク(自転車)とエコロジーの合成語。主要な活動として、早くから琵琶湖一周サイクリング大会を開催しており、毎年70~80人に全国から参加いただき、今日まで続いている。
  • 琵琶湖一周サイクリング大会には、主に関東、東海圏から沢山の方が来られるが、リピーターが圧倒的に多い。理由をお聞きしていると「琵琶湖はわれわれの憧れであり、それが自転車で回れるというのはすごいことだ」ということで、開始当初から大変な反響があった。昨今、琵琶湖一周は大変なステータスともなっており、大きな魅力を持っているが、ルート周辺に休息所や困った時の連絡所などのインフラが整備されれば、とんでもない観光資源になると感じている。
  • 自転車店を営みながら、サイクルレスキューとして、サイクリング中の故障などに対応して出張修理を行っている。まだまだ告知の手段が限られているが、レスキューの連絡は週に1~2回程度入ってくる。琵琶湖全域を1軒の自転車店ではカバーできないが、私が始めることによって賛同してくれる人が増えればと考えている。他府県からの方が多いので、現在地もわからない方が結構おられるが、近所のコンビニや道路標識の住所などを目印に現場に向かっている。まだ始めて間もないが、観光などにも役立てばと思う。
  • ビワイチは、淡路島一周・しまなみ海道とともに、西日本三大サイクリストの聖地と言われている。地元の自転車好きのお客さんは淡路島やしまなみ海道に沢山行っておられるので、逆に言うと、琵琶湖一周がしたいという方が他府県から沢山お見えになっていると思う。琵琶湖は周辺に飲食店も沢山あって走りやすいところだが、自転車の道の駅のようなものがあればもっといいと以前5から考えていたが、サイクルステーションという構想を知り、事業者として協力できることがあればと考え、滋賀プラス・サイクル推進協議会に参画した。
  • ビワイチをするのに適した自転車を使って、安全に安心に乗っていただくということを考えているが、持ってこられる自転車も整備されていない自転車がまだまだ多い。自転車は軽く扱われている部分がある。高い自転車に乗っている方は意識が高いが、インターネットで買ったり、安い自転車を友達にもらったりしたという方の中には、整備不良の自転車が非常に多いので、そういった点を改善していけたらと考えている。
  • 米原市では今年度、米原駅サイクルステーション検討事業を計画している。首都圏や京阪神からの新幹線利用客が下車後すぐに米原駅を起点としてレンタサイクルによってビワイチを楽しめるという手軽さを提供しつつ、駅からの二次アクセスとしてレンタサイクルのネットワーク化を図ることを検討していく。
  • 米原駅サイクルステーション検討事業では、米原駅前で仮設のレンタサイクル店を設置する社会実験を9月から11月の土日にかけて予定している。そこでスポーツサイクルのレンタサイクルの貸し出しと高島エリアでの乗り継ぎの試行などを行い、利用者アンケートによって人数調査を図っていきたい。また、ガイド付きのビワイチツアーを首都圏の方向けに実施し、ニーズの把握や課題の洗い出しをしながら、広域サイクルネットワークの検討に入っていきたいと考えている。今年度の社会実験を踏まえて、来年度に米原駅前にサイクルステーションを整備し、29年度からビワイチに対応できるような広域レンタサイクルのネットワークの構築をしていきたいと考えている。
  • 輪の国びわ湖推進協議会は、ビワイチのプロモーションをしている団体と見られがちだが、それだけではない。本来の目的は、ビワイチをきっかけにして自転車の良さを知ってもらい、普段の生活でも自転車を使う人を増やして行くことによって、もっと自転車が使いやすい環境が整備された「輪の国」に滋賀県がなっていくこと、さらにそれを全国に広げていくことを活動の目的としている。協議会形式で様々な団体が加入されており、NPOや一般市民、琵琶湖汽船などの事業者、県庁の環境政策課などが一体となって活動している。
  • 輪の国びわ湖推進協議会の事業としては、琵琶湖を一周するルート上に14ヶ所のチェックポイントを設け、そのうち4か所以上の場所でスマートフォンか携帯電話でチェックをしたうえで、申請をしていただいた方に、よし紙で作られた「びわ湖一周サイクリング認定証」を発行し、特製ステッカーと一緒にお送りしている。びわ湖一周サイクリング認定証は、2009年10月に開始してこれまでに累計で、4335枚、年々増えており平成26年度は1096枚発行した。さきほどの体験サイクリングの際に知事にお見せした彦根港のチェックポイントも、14ヶ所あるチェックポイントのうちの一つ。
  • びわ湖一周サイクリング認定証の発行以外に、ガイドブックの制作なども輪の国びわ湖推進協議会では行っている。「琵琶湖を一周して終わり」ではなく、もっといろいろな所を訪れていただきたいとの考えから、このガイドブックには琵琶湖一周コース以外の滋賀県内のコースも掲載しており、京都新聞社から出版して、これまでに1万500部を販売した。なお、来年春に向けてガイドブックの改訂版を制作しており、より良いものにして行こうとしている。また、自転車の方に配慮したお店を増やして行こうと、「輪の国びわ湖協賛ショップ」を募集しており、現時点で宿泊施設27軒を含む43軒に加入いただいている。
  • 知事に一つお願いしたいのは、愛媛県の中村知事のように自ら自転車に乗っていただいて、滋賀県は自転車だという広告塔になっていただきたい。例えば、米原市がサイクルステーションの社会実験をされる時か、2千人の参加者が琵琶湖一周サイクリングする「琵琶湖一周ロングライド」の時などに、知事自らスポーツサイクルに乗って一部でもいいので走っていただけば、「滋賀県は自転車の観光にこれだけ力を入れています」というPRになる。そういうことから、県全体の雰囲気が変わってくるのではないかと思っている。
  • びわこビジターズビューローでは、滋賀県・琵琶湖の代名詞となった「ビワイチ」という言葉をブランド化し、観光ブランド「ビワイチ」として展開している。観光ブランド「ビワイチ」の取組の一つとして、体験型の県内周遊ツアーを「ビワイチ」ツアーとして認定しており、具体的には、全国の旅行会社に対して、体験・体感のできるプログラムを含んだ県内周遊ツアー企画を募り、「ビワイチ」ツアーと認定された旅行企画については専用サイトでの優先的な情報発信などによる支援を行っている。また県内の優れた観光素材を「ビワイチマテリアル」として、市町と一緒に開拓する取り組みを行っており、これまでに41の観光コンテンツを開発し1万人以上の方々にご利用いただくなど、観光ブランド「ビワイチ」として様々な取組を展開している。
  • 今年が4回目となるサイクリングイベント「びわ湖一周ロングライド」については、約148kmのロングライドコース・約30kmのサイクルージングコース・約160kmのセンチュリーライドコースの3コースを設定して、3月に開催された。今年は2167名に参加いただき、そのうち94%が県外からの参加だった。第1回の1200名から右肩上がりで伸びてきているが、しまなみ海道の同様のイベントは8千人の集客をしており、そこにはまだまだ及ばない数字となっている。
  • びわ湖一周ロングライドの参加者の方々にお聞きしたアンケートでは、自転車を使った滋賀県観光について8割以上の方から滋賀県は自転車を使った観光に適しているとの回答をいただいており、周囲の景色などについても高評価をいただいた。全体の感想としては「今度はゆっくり写真を撮りながら一周したい」「トンネルが危ない」「奥琵琶湖の景色が素晴らしい」「滋賀の自然が満喫できた」「自転車が安全に通行できるように自転車専用のレーンを整備してほしい」「達成感がすごい」といったお声をいただいた。
  • NPO法人五環生活では、彦根でベロタクシー(自転車タクシー)を運行するなど自転車に関する町づくりに力を入れて活動をしており、現在はレンタサイクルが非常に好評で多くの方に使っていただいている。また、彦根を中心とした地域において、公共交通としての自転車に関する調査などにも取り組んでいる。
  • 五環生活が提供しているレンタサイクルは200kmを走り切ってもらうということが基本にあり、性能の良い自転車であり、なおかつ安心安全に乗ってもらうために整備の行き届いたパンクしにくい自転車を提供している。また自転車店の所在地などの情報提供を行う一方で、明るいうちに帰っていただくなどのルールを守って楽しんでもらうことを推進しており、とくに琵琶湖一周をされる方々等にご好評をいただいている。女性や海外のお客様が増えている状況もあり、琵琶湖そのものを楽しんでいただきたいことはもちろんだが、レンタルされた方が日常生活に戻った時にも自転車にきちんと乗れるような体験をしていただくということを、私たちの裏テーマとして持って運営している。
  • 観光の促進に関しては、私達の取組だけでは限界がある。やはりサイクルステーションや、サポートのシステムを地域ごとに作り、それらをつなげてサポートしていく仕組みを作っていくことが必要。ホスピタリティについても、しまなみ海道の地元にはお遍路の「お接待」の文化があるが、琵琶湖一周の約200キロは長距離なので、滋賀県も四国88ヶ所に負けない接待、おもてなしができるような県民の運動ができたらと考えている。
  • 滋賀プラス・サイクル推進協議会は、活動団体や事業者、市町や県といった自治体が連携して一つのプラットフォームになっている。ワーキンググループで一緒にやっているメンバーは、とくに普段から深いつながりを持っている。今まではそういう繋がりがなかったが、この協議会ができたことで、お互いに協力し合ってイベントや緊急時などにも連携するプラットフォームとなっている。
  • 知事にも、しまなみ海道のサイクリングコースへ是非行ってみてほしい。確かに素晴らしいが、ビワイチも決してポテンシャルでは負けていない。あちらの方は「ビワイチは一周するという目的と達成感があって良いね」と羨んでいる。また、しまなみ海道は車の通行についても、イベントによっては通行止めにするものもある。
  • 今日知事に体験サイクリングしてもらったコースは、ビワイチの中でも走りやすい所だが、湖西方面は道が狭い所が多く、自転車にとって走りにくい場所もある。国道161号の白髭神社の周辺、高島から北小松にかけては道が国道一本しかないうえに、その国道も歩道は片側に狭いものがあるだけで、路肩もほとんどない。
  • 自転車からの視点で考えると、自転車は車道を走るというのが大原則だが、クルマの側は「自転車が車道を走ると危ない、歩道を走ればいい」という意識がある。自転車に興味のない方には「迷惑だ」という意見もある。生活道路として湖周道路が使われている以上はそういう問題は絶対に出てくる。新しく道路を作るのは大変なので、自転車の走る場所の表示や標識の整備などを進めてほしい。路面標示等わかりやすいものも研究されているので、そういったものを導入していただければ良いと思う。路面に書くことでドライバーから見ても「ここは自転車が走るんだな」と認識される。自転車しか走れないエリアということではなく、車道の中で自転車とクルマが共有のエリアでも良いので、自転車がココを通るとはっきり書くことで車がそれを意識する。それだけでかなり安全度が高まる。県外から来られる方、初めて走られる方でも事故の無いように走ってもらえる整備は必要。

 

知事から

対話を振り返って

  • サイクルツーリズムの振興のための広告塔にと言っていただいた件については、私でよければ喜んで広告塔をさせていただきたい。テレビに出る時にサイクリングの格好をして出演するなど、PRする機会は色々ある。来年3月の「びわ湖一周ロングライド」については、頑張って参加したい。参加することで、また新しくわかってくることもあると思う。
  • ビワイチへの取組については、米原市の取組とも歩調を合わせながら、休憩所などについても、この3年ほどの間に考えていきたい。公共交通としての自転車のあり方については、交通に関する条例の検討を進めているので、その中で自転車についても入れ込む形で考えていきたい。
  • 今日、体験サイクリングで少し走らせていただいた中でも、慣れていないせいもあるかも知れないが、恐怖感もあった。クルマと自転車が共存できる方法について、路面標示などについて考えていきたい。今後も継続的に意見交換をしていきたい。