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第13回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手滋賀県障害者働き・暮らし応援センターの皆さん

滋賀県障害者働き・暮らし応援センターの皆さん

今回は、「滋賀県障害者働き・暮らし応援センター」の皆さんと対話を行いました。

滋賀県では、障害のある人の就労を就労面と生活面の両面から一体的に支援する専門機関として、障害者働き・暮らし応援センターを、平成17年から県内の各圏域に順次設置してきました。現在、県下7つの福祉圏域に1か所ずつ設置し、地域の就労ニーズと雇用ニーズの結びつけや就労を継続するうえでの生活支援などに取り組んでいます。

各センターでは、障害のある人やその家族、また企業からの問い合わせや相談に応じ、ハローワークや障害者職業センター、福祉施設、教育機関、医療機関等と連携しながら支援されており、平成25年度には7センター合計で7万件を超える相談に応じられ、400人以上を新規就職に繋げられるなど、障害のある人の自立に向けて大きな役割を果たされています。

また、滋賀県社会就労事業振興センターは、各働き・暮らし応援センターのバックアップ機関として連絡調整の役割を担っておられます。

今回は、障害のある人の就労支援などの取組と現場での想いなどについて、知事と語り合っていただきました。

知事から

今回の対話について

  • 日頃、障害など様々な困難を抱えながら、自分の可能性を生かして働きたいという方々の支援のためにご尽力いただき、心から感謝を申し上げる。また、東近江圏域働き・暮らし応援センター所長様の平成26年度ふるさとづくり大賞総務大臣賞ご受賞についてお祝い申し上げたい。精力的な活動とお人柄が評価されての今回のご受賞を、一県民として、知事として、大変うれしく感じている。
  • 滋賀県では、県政経営の総合的な指針である基本構想の中で、「新しい豊かさ」という基本理念を掲げている。「新しい豊かさ」は、今だけ自分だけの豊かさでなく、全ての人が将来も持続的に実感できる「心」の豊かさを指している。この「新しい豊かさ」を県民の皆さんとともに追求する中で、全ての人に出番のある社会を作っていきたいと考えている。労働・教育・福祉等の各分野が連携して、障害者雇用に取り組むために設置された障害者雇用対策本部についても、本部長を副知事から知事に変更し、私自らが先頭に立って、各部局を束ねて、障害のある方々の就労の支援にさらに力を入れていこうと考えている。
  • 県では、最近になって認知が広がってきた発達障害についても、就労やその後のケアについて、伴走型のサポート体制を様々な立場の方々と協働して構築していく取組に着手した。また、特別支援学校に通う生徒さんについて、地域の学校にも副籍という形で籍を置き、共に学び共に育つ仕組みづくりを今年度から取り組み始めた。
  • 今後の行政の施策改善に反映させるためにも、働き・暮らし応援センターの皆さんが現場で感じている問題意識などを、今日は色々と教えていただきたい。また、今日に限らず、今後もいろいろな機会をとらえて協働を進めていきたい。

働き・暮らし応援センターの皆さんから

(1) 働き・暮らし応援センターの活動状況

  • 2005年に始まった働き・暮らし応援センターも10年目を迎えた。人口減少時代を迎え、障害者の就労支援も従来のような福祉の観点からだけでなく、働き手の確保という観点から、地域の担い手として障害者をとらえる時代となりつつあり、ハローワーク・学校・作業所などの関係機関から、様々な相談が集まるようになってきた。生活保護世帯の増加や高齢化などの背景の中、就労相談だけでなく、働くことを支える土台となる「暮らし」の部分についても課題が複雑化多様化していると感じている。
  • 障害者の就労や職場定着への支援は、働き・暮らし応援センターだけで出来ることではなく、ハローワークや作業所、学校など地域全体で支えていく必要がある。働き・暮らし応援センターの活動は福祉の枠組みを超えている部分も多く、地域の産業や自治会活動など様々な分野に関わっている。
  • 身体障害・知的障害・発達障害・高次脳機能障害・若年性認知症・難病など様々な「働きにくさ」を抱える方々がおられる中で、数多くの、そして多様な相談が未整理なままで働き・暮らし応援センターに寄せられている現状がある。登録者は年々増えており、本人への支援だけでなく、家族ぐるみで支援している事例も多くあるうえに、就職者が増えていく中で、職場定着への支援も多くなってきており、限られた人員の中で手が回らなくなりつつある。
  • 働き・暮らし応援センターは、国と県の事業の2階建てで成り立っているが、事業費は十分でなく、どのセンターも赤字である。常勤職員を雇用する余裕はなく、常に人材難の状態が続いている。障害者が当たり前に働ける時代がきたら、働き・暮らし応援センターは、いずれなくなるべき存在だと思っているが、今はまだまだやることがある。働き・暮らし応援センターで、常勤職員を雇用できるよう支援してほしい。
  • 一般企業に雇用されることが困難な方を対象として最低賃金を保障する雇用型の就労施設であるA型事業所が、他府県では近年かなりの勢いで増加している。県内では、まだそれほど増えていないが、今後に備えて、A型事業所での雇用から普通の雇用に移行できるような仕組なども検討し、国の制度の先を行く「滋賀モデル」を考える場を作っていければよいと思う。県の労働部局と福祉部局や、国の機関も含めて話し合う場所を作ってほしい。

 

(2) 県立特別支援学校・県立高等学校との連携について

  • 甲賀・湖南地域では、在学中からハローワークを中心にした個別の支援会議を持ち、働き・暮らし応援センターが面談を行うなど、支援を必要とする生徒の就労を地域で支える発達支援システムという仕組がある。特別支援学校では、三雲養護学校からこの仕組が広がり、個別支援会議を持つことにより学校から地域への引継ぎを行っているが、高校では取組が進んでいない。高校にも、本来であれば障害者手帳が必要と思われる生徒が6%はいると言われており、計算上、毎年約660人の支援の必要な生徒が就職あるいは進学している。こういった卒業生の中には、1年も持たずに失業して再就職もうまくいかず、働き・暮らし応援センターを訪れるころにはうつ状態になっているケースもある。
  • 支援が必要な生徒については、学校でも在学中から就労相談などの支援を行わないと間に合わない。高校にも「特別支援教育コーディネーター」の教員が置かれているが、コーディネーターの本来の役割についての理解が不十分で、学校の中の「係」にとどまっている場合も多い。一部の熱心な先生方の努力で、働き・暮らし応援センターと生徒をつなぐ役割を担っている学校もあるが、働き・暮らし応援センターと特別支援教育コーディネーターや進路指導の教員が連携し、生徒が卒業後に地域で就労する準備をできる体制を整えていく必要がある。
  • 各学校の特別支援教育コーディネーターや進路指導の先生方と、働き・暮らし応援センターとが、支援の必要な生徒について一緒に協議する支援会議を作らせてほしい。現在は高校の先生方と定期的に話す機会がない。高校にも発達障害の生徒が居るので、日常的に我々との定期的な連携の場を持つことが出来ればと思う。
  • 特別支援学校では、授業のある日でも就職先の実習に先生も同行してもらえるが、高校では特別支援対象に該当する生徒であっても、就職先の実習に参加しても授業は欠席扱いとなり、先生にも同行してもらえない。特別支援学校のような仕組を取り入れる一定のルールが出来れば先生方も動きやすくなり、うまくいく高校が出てくると思う。成功例が出ると、他の高校にも広がっていくと思う。
  • 就労支援のすべてを働き・暮らし応援センターに任すのではなく、関係機関がみんなで一緒にやっていこうとならないといけない。支援が必要な生徒のことを一番よく知っているのは学校の先生なので、先生が、生徒を応援する応援団の団長になって、それを徐々にセンターに引き継いでいければよい。特別支援学校においても、卒業後は働き・暮らし応援センターへ任せますではなく、生徒のことをよく知る先生方が卒業後も2~3年くらいは生徒とつながりを保つ状況が望ましく、そこまでして初めて地域での支援・連携と言える。毎年たくさんの要支援者が社会に出る中で、センターの限られた人員で、障害をもつ卒業生たちの働くステージを守っていくことは到底無理なので、学校を含めた関係機関と協力していくことが必要。

 

知事から

対話を振り返って

  • 特別支援を要する県立学校の生徒や卒業生への支援のための教育委員会との連携強化については、進めていくように検討したい。また、うまくいっている事例を参考にしながら、特別支援教育コーディネーターの機能の改善を考えていきたい。A型作業所についても、対策を考えていきたいので、協力をお願いしたい。