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第9回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手日東電工(株)の皆さん

日東電工(株)の皆さん

今回は、日東電工(株)の皆さんと対話を行いました。

同社は1918年(大正7年)に設立され、1986年(昭和61年)に草津市で滋賀事業所を操業されています。主な事業内容として、液晶用光学フィルム、自動車用部品、海水淡水化膜、経皮吸収型テープ製剤(医薬品)などの製造をされており、滋賀事業所での主な事業として海水から真水を造る逆浸透膜、限外ろ過膜の製造、液晶画面機器の製造工程に必要な表面保護フィルムの製造などをされています。

今回は、法人県民税・法人事業税の適正な申告と確実な納税により、県税収入の確保に貢献いただいている企業に知事が感謝の意を表するため、納税顕功法人知事感謝状を贈呈するとともに、企業の取組やそこに携わる皆さんの仕事や暮らしの中での想いなどについて、知事と語り合っていただきました。

知事から

今回の対話について

  • 県庁の中だけでなく、できるだけ皆さんのもとへ出向き、一緒に関わりを持って、みんなで滋賀県を盛り上げていく役割を果たしたいと考えている。滋賀でつくっていただいているものや滋賀の良いものを日本だけでなく世界に売り出し、PRして、世界から来てもらうセールスマンになっていきたいという思いで、いろいろな現場を回らせていただいている。
  • 平成27年度からの新しい県の基本構想をつくっている。新しい豊かさを追求しませんかと提唱している。今だけ、物だけ、お金だけ、自分だけの豊かさではなく、すべての人が実感できる、みんなで支え合い将来も持続的に享受できる、心で実感できる豊かさというものを滋賀からつくろうと申し上げている。例えば、環境に配慮したものづくり、健康のことも考えた食べ物づくり、エネルギーの制約の中での暮らしといったもの。そうしたものを製造業の皆さんとも連携しながらつくっていくための基本構想をつくろうということで、今、皆さんとの対話活動をさせていただいている。
  • 事業の中でのこと、地域の中でのこと、暮らしのことなど、いろいろなご意見をいただければ、それを県政に活かしていきたいと思うので、よろしくお願い申し上げる。

日東電工(株)の皆さんから

(1) 主な業務内容や担当されているお仕事など

  • 昨年8月に滋賀事業所へ来た。事業所全体、特に環境、安全に関する管理をしている。他府県出身で、家族は残してあちこちに一人で赴任している。愛知県、三重県、広島県と赴任し、滋賀県で4県目。老後のことはいろいろ心配。老後に安心して暮らせるところに最後は住みたいと思っている。
  • 品質保証の部署にいる。今、栗東市に住んでおり、職場に近くてよい。車で通勤している。
  • 開発を担当している。入社してまだ2年目。草津市に住んでいる。
  • 開発部に所属している。今は組合の支部長もしている。住んでいるのは栗東市。自転車で通っている。住んでいる所はいい所と感じている。
  • 製造を担当している。栗東市に住んでいる。大学では山口県に行っていた。
  • 総務を担当。他府県出身で、今は近江八幡市に住んでいる。家を建ててずっと住むつもりでいる。
  • 管理部に所属。他府県出身。国内に生産拠点が6事業所あるが、赴任先は今の滋賀事業所が5ヶ所目。宮城県、埼玉県、愛知県、広島県と赴任して滋賀県に来た。残りは三重県の事業所だけ。家族は他府県におり単身でこちらに来ている。

 

(2) 仕事や暮らしの中での想い

  • 発展するところは交通網がしっかりしている。企業側から言うと、輸送関係でトラックなどをよく使うので、高速道路が近いなど交通が便利でないと困る。他の企業も進出しにくいと思う。
  • 滋賀県は全国学力テストの正答率が低かったと聞いたが、学力はテストの点数だけではないと思う。しかし保護者は心配になるのだろう。
  • 我々企業はグローバル化で海外を相手に仕事をする。今日はアメリカ、明日は中国へと行くことになる。海外でも通用する人材を育てていただきたい。これからの若い人たちは特にそうなっていく。
  • この事業部のトップはアメリカの方。会議は英語でやる。我々は同時通訳の機械を付けているが。
  • 開発の人はほとんど英語を使う。そういうことがこれからはもっと多くなる。
  • これからは中小企業も語学は重要だろう。相手、お客様がグローバル、海外になる。
  • 日本でものを作ったとしても市場は海外になっていく。
  • 円高の影響などで外国人が日本に来られる。来てもらい買ってもらわないといけないので、こちらもプレゼンテーションをしなければならない。売る相手も海外の方、来てくれるお客様も海外の方。だからどうしても英語は必要。
  • 中国に4年ほど赴任していた。中国の方が日本に来られたら、まず、大阪のドラッグストアに連れて行く。そうすると、友人や親戚のために化粧品などをカゴ一杯に買っていく。製品として日本の商品がすごくいい。それをどのようにうまく売るかということになる。
  • 小さい時から英語に馴染んでいくと入りやすいのではないか。
  • 京都観光でも、今までは京都だけで賄えるだけの観光客数だった。昨今は、大津、草津あたりまで広げて、こちらで宿を取り、ここから京都に観光に行く外国人の方も非常に多い。これはビジネスチャンスだと思う。
  • 草津駅前の本陣あたりを見ていても外国人の方は非常に喜ぶ。京都に来る人も、滋賀に足を伸ばして、ホテルに泊まり、県内を見て、また京都に戻っていくようにしても喜ばれるのではないか。
  • 電車などの公共交通機関は、外国語でわかるように表記をしてあげないと外国人の方は乗れない。関西国際空港を使う外国人向けに特急「はるか」などでは英語などで表記があるが、在来線に入ると少なくなるのでわからないだろう。山口県では、韓国からフェリーが来るのでハングル表記が多い。
  • 大阪出身で滋賀県に来て2年目になる。大阪では梅田が近いので便利だった。滋賀は小さい良い所はたくさんあるが、その魅力を海外の人に伝えられていない。日本人の中でもまだまだ知られていない。私もまだ滋賀県のどこがいいところかわからないので、滋賀を通り越して大阪や京都に行ったりしてしまう。
  • 琵琶湖一周のサイクリングを勧めているとのことだがサイクリングロードは整備されているのか。例えば「瀬戸内しまなみ海道」は自転車が通れるように全て整備してある。そうした整備も必要ではないか。
  • 比叡山は滋賀の坂本側にあるケーブルカーで上がると琵琶湖が見えて非常に綺麗。比叡山周辺は見所がたくさんある。日本人でもおそらく行ったことがない所がたくさんあると聞く。京都の三千院側から上がる人が多い。滋賀から上がると綺麗だということをPRした方がよい。
  • 神奈川県から滋賀に来た。滋賀は信号が少ないと感じる。交通量に対して信号が少ない。当社がある工業団地からは、T字路の交差点で大通りに入る。大通りは車がスピードを出して通り過ぎていくが、そこに信号がなく、先日も従業員がもらい事故にあった。
  • 滋賀をウォーターバレーにして水環境ビジネスを進めていると聞くが、県内のもう一社と当社も製造している逆浸透膜では、世界シェアの半分くらいをこの2社で占めている。ここを産業的にアピールしていただけるとよいのではないか。大きな湖もあり、こうしたことができるのは日本の中では滋賀県だけ。
  • 当社も含めてそういう人達が集まり、いきなり決めるのではなく、自由にフリートーキングでヒントを出し合って、どこかで区切ってやってみるなどすれば、いい話になると思う。ライバル企業同士だが、目的がある種の起業というところにあるので、それは一歩越えられるのではないかと思う。
  • 子育てについて、滋賀県は子どもが増えていると思うが、私の子どもが通う小学校の場合、子ども達の人数があふれており、校舎もボロボロで昔からある建物そのままの状態。教室が足りないので、子ども達を無理やり一クラスに集めて教室に入れている。耐震も心配。市の財政の関係で一校ずつしか建て替えしていけないと聞いた。地震などの確率が滋賀県も高いので、親としては建物が地震で壊れるのは困る。子ども達の学校は綺麗な建物がいい。
  • 親が共働きということで子どもは保育園に入れたが、第一希望のところではなかった。保育園は夜8時まで預かってもらえるが、学童保育は預かり時間の終わりが早い。保育園は朝早くから預かってもらえるので助かっている。学童保育は夏休みに入ると朝8時からの始まりになる。会社も午前8時から始まるので、8時からしか子どもを預かってもらえないと会社に間に合わない。育休は1年取得した。
  • 会社の方でも育児を応援しており、朝9時から勤務してもらっている。短時間勤務の育児フレックス制度という。法律の壁はあるだろうが、老人ホームと保育園をくっつけて高齢者が子どもの面倒を見るとよいのでは。最近は保育園をつくろうとすると騒音がうるさいなどと言われると聞く。自分が子どもだったことを忘れている。
  • そのようにならないためにも小さい頃からの教育が大事。
  • 交通のマナーが良くないと感じる。赤信号になる直前ぎりぎりまで車が走っていく。朝の通勤時によく見る。何故なのかよくわからないが改善できないかと日々思っている。
  • 最近は自転車の事故が多いと聞いた。道が狭いし自転車が通れるような整備がされていない。歩道を自転車が走り歩行者とぶつかる。道を広くするなど考えていかないと事故は減らない。
  • 開発を担当しているので、ウォーターバレーのお話があったが、それができればいいと思っていた。滋賀と言えば琵琶湖、琵琶湖と言えば水。私たちは水に関係することをやっている。
  • 工場には地下水を上げている。災害があればすぐ使えるように、草津・大津と協定を結んでいる。
  • ライバル企業同士は、普段はよく知らないのでライバル視してしまうが、知り合えるとウォーターバレーに向けていい形でできるのではないかと思う。
  • ウォーターバレーをつくることで各方面から様々な人材も集まり、活性化するのではないか。そこまで持って行くのにかなりパワーがいるだろうが。
  • 先程の見学で知事に水のろ過装置を取り付けた自転車を漕いでもらった。あの自転車でろ過した水は、災害時の緊急的な場合だけならば飲むことができる水。いざという時にはそうしたこともできる。環境だけではなく災害に備えてもいろいろとできる。
  • 従業員はグループ全体で、グローバルには3万3千人。国内では6千人。国内で一番多いのは広島の事業所で約3千人。次は愛知県の事業所で約2千人。滋賀事業所は4百人。

 

知事から

対話を振り返って

  • 私は元々JR社員だったので、鉄道交通、道路交通など交通を良くしたいと思っている。高速道路があるので、これを活かしてもっと県内で乗り降りできるようにしたい。湖東三山と蒲生にスマートインターチェンジができたが、長浜と大津にもつくってもらっている。これから先10年間で、あと二ヶ所はつくれないかと考えている。サービスエリアから入る形のもので、菩提寺、多賀、伊吹のパーキングエリアなどを考えている。県内の通過交通量は多いので、それらができると県内で高速道路からもう少し乗り降りしてもらえるのではないか。
  • 米原駅と京都駅の間の新幹線新駅の建設に関しては、建設予定の地域にしか恩恵が見えにくいものに県の税金を半分出すというところに理解が得られなかったので、もう一度、米原と京都の間に何かできないか慎重に検討したいと思っている。それよりも、今ある新幹線米原駅の駅前が栄えていない感じがあるので、もっと便利な、賑わいのある駅にしたいと思っている。米原駅にのぞみを停めてもらうことも考えている。
  • 国道についても、国道1号、8号、161号が渋滞するので、そのバイパス道路の整備事業を考えている。この近くでは8号線の栗東市内の済生会滋賀県病院のあたりが混雑するので、そのバイパス道路整備をする。その他に1号線バイパスが湖南市から栗東市を抜けて整備される予定で、来年度に名神高速道路と接続して、もう一つ栗東東インターチェンジができる。それを草津市山寺の方につないできて、立命館大学の前に流れるようにする事業をしっかり進める。滋賀県が発展してきたのは自然もあり交通も便利ということがあるので、その力を高めていきたいと考えている。
  • 滋賀県は中部、阪神、敦賀にある港とは、ほぼ等距離にある。北向きの高速道路も、敦賀を経由する北陸自動車道がある。この3月14日に北陸新幹線が金沢まで開通する。その後、福井県を通って敦賀までつくることは決められている。その先をどこへ持って行くか、小浜へ抜けて行くのか、米原に持ってくるのか、湖西線を通すのか決まっていない。湖西線は風でよく止まる。運行の基準は風速25mで徐行、30mで停止と決まっており、どの地域でも同じなのだが、比良山があり強風が多く、この時期は季節風がよく吹く。
  • 一番聞かれ問われているのは学力問題。全国学力テストで滋賀県は正答率が低かった。テストの点数は低いより高い方がいいが、テストの点数だけではないと思っている。「学力」の漢字二文字の間にひらがなの「ぶ」を入れて「学ぶ力」を高めませんかと申し上げており、子どもたちの意欲を引き出そうと思っている。もちろん学校にも頑張ってもらうが、家庭でも頑張って支えていただいて子ども達の力を伸ばしていきたい。
  • 子どものころから英語を、小学校でも英語をというご意見もある。大津市ではやっている。小さい間に馴染ませておくと入りやすい。
  • これからは観光、とりわけ世界から来られる方の観光需要は大きなビジネスチャンスだと思う。
  • 先日、広島の宮島に観光に行ったところ観光客の数が非常に多かった。一緒に船に乗った人の約半分は外国人の方。とりわけアジアの方が多かった。お土産販売店には日本語、中国語、ハングル、英語で表記されている。
  • 最近お勧めして大変喜ばれるのは琵琶湖一周のサイクリングなど。距離は200km少しある。サイクリングロードはない。サイクリング車やウェア、ヘルメットを買うのは大変なので、借りられるようにできないかと思っている。
  • もう一つ喜ばれるのは湖北の観音様。おそらく比叡山延暦寺があり天台宗のお寺もたくさんあって、浄土真宗のお寺もあり、戦国時代から賤ヶ岳や姉川などで合戦があった地域なので、地域の人が我が村の観音様を非常に大事に守ってこられた。焼け焦げたものが祀られていたり、国宝の十一面観音像が村の中に安置されていたりする。昨年、東京芸術大大学美術館の仏像展のために、これらの観音様を東京に持って行かれた。非常にたくさんの人が来られており、観音様に感動して長浜に移住した方もあると聞いた。海外の方はこうした日本の精神文化に非常に興味を持たれる。それをこのように間近に見られるということで人気が出てきている。そうしたこともうまく発信できればよいと考えている。
  • 信号機設置の要望は多く数百件ある。しかし予算としては年間に付けられるのは10機程度。一度設置すると維持管理費も必要。
  • 大学をもう一つ、県内に来てもらえないかと考えている。大学の水産学部に内水でやってみないか提案してみたい。ウォーターバレーはいろいろな形でアピールしていきたい。これだけ様々な企業があるので、皆さんと一緒にどのように連携して、どのようなセールス、アピールができるのか考えてみたい。
  • できるだけ綺麗な学校にして耐震化も進めなければならない。もう一つ最近問題になることが小中学校の空調設備。草津市では小中学校、幼稚園全部に空調が入っているが市ごとに違う。小中学校に空調設備があっても、県立高校は設備がないところが多い。設備がある高校もいくつかあるが、それは同窓会やPTAがお金を出し合って整備したもの。こうした環境も改善していかなければならない。
  • 学童保育については他の企業の方との対話でもお話があった。企業のご協力も得ながら行政としてもサービスを充実させるようにしていきたい。
  • 交通マナーに関しては、取締りや罰則だけ厳しくすればよいかというと、そういう問題ではないところもある。交通事故は昨年はだいぶ減った。しかし高齢者の事故が多くなっている。
  • シンガポールで水関連の展示会を見た時に、ほとんどが日本企業で、その大半を滋賀で製造していただいてるので、これは滋賀がやらなければいけないと思った。
  • これをご縁に、ウォーターバレー構想に向けた協議会や意見交換の場もつくっていきたいと思う。