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第79回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手県北部で活躍されている企業家の皆さん

知事から

  • 滋賀県の北部を振興したい、元気にしたい。もっともっと可能性を伸ばせるようにできればとの思いがある。
  • 様々な取り組みをされている方とお話をする機会ということですので、いまの時点で、こうしたらいいというものを持ち合わせているわけではないが、一緒に考えていきたいと思っている。

参加者の皆さんからの自己紹介

Aさん

  • グランスノー奥伊吹、またGLAMP ELEMENTというグランピング施設等、湖北で観光施設の運営をしておりまして、現在「2070年、地域の子どもたちにスキーを」というタイトルを企業理念に掲げ、住み続けられる地域づくり、温暖化防止、そして人を中心とした企業運営ということを3本柱で取り組みを始めているところ。

Bさん

  • 湖北町青名のコンビニ跡を利用して、私のアトリエ兼ショップ、複合施設としてmacu macuを運営しており、今月末でちょうど1年になる。

Cさん

  • 湖北市民会議と髙橋金属の代表として出席している。
  • 湖北市民会議は、昔はこの地域にドーム誘致などで湖北を再生させようということで、長浜、湖北の未来を自らの手でつくり上げていこうと集まった団体。
  • この地域の新しい求心力をつくって人口減少にあらがおうということから、環境経済をテーマに、環境と経済、環境と子ども、環境と暮らしということで、環境経済協議会をつくり、活動している。
  • 髙橋金属では、ものづくり中心ですけれども、製造と観光と環境という三つの事業をいくつかの会社を分けて取り組んでいるところ。

Dさん

  • 合同会社kei-fu(けいふう)に所属し、地域に何か新しい活動を芽吹かせるような活動・事業をしていきたいと、この名前をつけている。
  • 具体的には、日用品とカフェのお店、新しい商品開発をする事業。また、いま長浜の駅前に新しく「長浜カイコー」という、デザインをテーマにした新しい施設を長浜市と一緒に企画運営しているところ。
  • 伊香高校の魅力化のコーディネーターも今年度から拝命し、地域との協働というテーマで、地域の方と高校生が話をする時間を企画や活動に参加をしている。
  • 今後、伊香高校が地域にとって欠かせない高校であり続けるために、どのようなことができるのか先生や市の方々と一緒に企画しているところ

Eさん

  • 土・日・月曜日に賤ヶ岳リフトから歩いて1、2分のところで丘峰喫茶店を経営している。
  • 私が移住者ということもあり、移住者の女性8人で立ち上げた「イカハッチンプロダクション」というチームで『サバイブユートピア』という雑誌の発刊や、この地域の『星と祭』という小説の復刊運動を展開する等、地域の魅力を出版社という活動を通じて全国に広げる活動をしている。
  • もともとは『朝日新聞』の記者で、現在は生活者の目で気が付いたこと、思ったことをコラムで県版に書かせていただいている。

Fさん

  • 合同会社LOCO、代表として長浜の駅前で、子どもを連れたお母さんとかシニアさんが来やすい飲食店の運営をしている。
  • 居場所になるためにつくったのですが、そこに集まるだけではなく、子育てが落ち着いたから働こうと考えるお母さんたちの支援も、いますごく力を入れている。
  • 介護や子育てをしていて、1日2時間、夜中だったら働けるとか、子どもが寝ている間の2時間なら働けるとか、そうした外的な要因でなかなか自由に働けない人たちにお仕事を提供するというようなこと等、全体として「働く」ことのサポートをしている。

Gさん

  • 弊社の山室木材工業では、木材を通じて循環型社会に貢献できるような企業を目指し、グループ会社でいろいろな事業をしているところ。知事にもまだお話しさせてもらっていない事業もあるので、また今日お話しできればと思っている。

伊香高校の魅力化について

Dさん

  • 今年度、伊香高校は地域協働のモデル校ということで、地域の事業者さんに協力いただきながら、まき割りをして羽釜でお米を炊くとか、地域の事業者さんに写真を撮らせていただき、その活動内容を発信している。
  • 高校教育で地域と協働する必要があるのかと、たまに聞かれることもあるが、事後アンケートでも参考になったという声が多く、また参加したいというコメントをもらっている。
  • このような機会がもっと増えることで、高校生が学校と家、場合によっては塾など、その中で活動を終えることがなく、刺激を入れることができると思っている。
  • 高校の魅力化について、中長期のビジョンを持って活動していくことが重要であると考え、検討し始めたところ。伊香高校と地域が共に未来をつくるということを目標にし、そのためには、生徒が生き生きとしていること、先生も生き生きとしていること、地域が生き生きとしていること。この三つの柱が非常に大事と考えている。
  • 伊香高校は、やはり定員割れが続いているということもあり、「森の研究科」の設置など新たな魅力をつくる必要性を議論しているところ。単にヘルメットとチェーンソーで木の整備をするというだけではなく、森林資源の活用というのは、まさに観光にも関わってくると思い、アウトドアなど自然を楽しめる生徒を増やしたい。
  • 自然を楽しめるという人が増えたら、地域に残る人や外に出ていってもまた戻ってくれると思う。

森林資源の活用について

Gさん

  • 弊社は、まさに森で育った木を使い、製品をつくっているが、実は使っている木材は、滋賀県材が1%もない。およそ80%は国内材ですが、大部分を九州と北海道の木が占めているというような状況。
  • 輸送用のパレットの製造をしていることもあって、その物を使うお客さんは、できたらそんなものにお金をかけたくない。必然的に、われわれつくる側も、いかに安くつくるかと考えたときに、滋賀県材を使っていると、よそに勝てなくなってしまうということで、いまはそのような森林資源を使っている。
  • ウッドショックという大きな問題がある中、実は2年ぐらい前から、県産材を自分のところで加工して自社で使えないかというプロジェクトをスタートさせていただき、前向きに取り組んでいこうと思っている。
  • ただ、一方で滋賀県の山に従事されている林業者が260人前後ということを伺っており、卸せる木を増やすのにも、いまのところかなり無理がある。われわれが大きな設備投資をして、これだけ滋賀県の木を欲しいと言っても、すぐそれだけ出てこないというところで、その投資になかなか踏み切れないというところもあり、いろんなことがうまくいかない。
  • ただ弊社は、出口は自分のところで持っているため、川上の方が頑張って仕事をしてくだされば、何とかそれを受け入れたいなというところ。県の森林政策課をはじめ、長浜市、米原市の森林組合を含め、様々な林業者とお話をさせていただいているところ。

環境と学びについて

Cさん

  • 湖北市民会議では、環境と学びとして、市民会議で長浜の中学校等に出前授業のような形で行っている。これは、ただ単に学びの機会というよりは、いまの大人が子どもたちに、いまの環境の難しい問題を先送りしてはいけない、という危機感を我々も持ってやっているところ。
  • 子どもたちも受け手として、環境とは広く向き合わなければいけないということが分かっている社会なので、それを義務教育の中に、学ぶべきこととして加えていきたい。
  • 環境のことは誰かがどこかでやってくれることではなく、自分たちが当事者にならなければいけない。大人も、そういう当事者意識はまだ薄い。早い段階でそのような意識を持ってもらい、いずれは大人になって取り組んでもらいたい。
  • まずは、いろんな話をディスカッションして考え、いまからできることを一人一人見つけていくような活動をしているところ。結果的に電気を消すことなのか、森に対して何ができることは分からないが、そうした啓発活動をしている。

居場所づくりについて

Bさん

  • 長浜は何もないし、お買い物をするところもないというのが、20代、30代の若い女の人と、小さい子を抱えたママさん世代の正直なところ。
  • 私は京都のデザイン科に行っていた。本当にもう田舎で何もない、田舎からとにかく出たいしかなくて、とにかく都会に出ることしか考えていなかったが、結局、ずっと地元で活動はしていた。
  • そうした考え方を何とかしたいと思い、私から居場所をつくればいいと考え、いまのmacu macuをつくった。ママさんの作家が、たくさんおられて全国で活躍されているので、その方のための居場所をつくりました。
  • 作家は地元の方がほとんどで、琵琶湖のビワパールをアクセサリーにされたり、滋賀帆布を使ってカバンをつくられたりされている。

出産に関する支援について

Eさん

  • 長浜ではどんどん分娩施設が減っていて、子どもを産みたくても産む場所がどんどん少なくなっている。妊婦さんたちを手厚く、ここで産んでよかったな、もう一人産みたいなと思えるような支え方、応援というのも、少ないからこそできることなのではないかと思っている。
  • 施設は少なくても産前と産後のケアがすごく手厚いとか、一人ひとりにケアマネジャーがついているぐらい妊産婦さんをすごく大事にできるまちみたいなものも、イメージとしてはいいし、振興にはつながるのではないかと思う。
  • 分娩費も値上がりしているため、お母さんたちは、働いていたら休みになってお給料が無くなる。女性も現実的に経済のことを考えるから、お財布を見ずに誰でもが産めたりするといい。
  • 移住者政策等で、知人をこっちに呼び寄せたりしているのだが、できれば「ここは産み育てやすいまちだから、おいでよ」と声を掛けられたら、この世代の女の人たちにとってはすごく魅力的な言葉で、移住を決断する一つにはなるのではないかと思う。

Fさん

  • LOCOに来られる方は、1人目を産んで働きたい方や、1人目の後に起業するのだけれども、順調に事業が伸びている時に、どのタイミングで2人目をつくっていいか分からない方、再就職もタイミングが分からない方等の相談がある。
  • 2人目をつくるタイミングや仕事との兼ね合い等、ロールモデルを見ながら行政のいろんなサポートを受けることができれば、すごく安心ができるし、そうした状況であれば、その地域へ行ってもいいかなって、すごい安心材料の一つになると思う。

地元の人と移住者との交流について

Eさん

  • 「オカンのツボ」というのを木之本のお母さんたちがやっている。移住してきた女性たちも仲間に入れてもらい、みんなで『歳時記』のように季節に合わせて漬物を漬け、食文化の伝承の機会をもらっている。
  • そのときに初めて食べるものがあったり、つくり方を教えてもらったりしながら、世代を超えてのつながり、女同士のつながりみたいなものも木之本にはたくさんある。

Cさん

  • 長年この地域に住んでいる高齢者のおじいさんや子どもたちと移住してきた方とかとの接点というのはないのでしょうか。

知事

  • 木之本は移住してくれる人は多いのだけど、その移住してきた人と地元の人とのつながりをつくりたいということは、先の意見交換でも話に挙がっていた。
  • せっかく来てもらった人たちとどう交流したらいいのかとか、どう住んでもらったらいいのかというのがやっぱりまだまだ。

移住者としての“嫁”に関する支援について

Eさん

  • 昔から一番多い移住者というのはお嫁さんで、お嫁さんたちは全然違う土地からこちらに来て、一生懸命、食文化を乗り越えて定着しようとしている。その人たちに対し、私たちみたいな手厚い移住政策はなく、移住者の支援はない。
  • お嫁さんたちが心地よく定着してくれるためにも、お嫁さんも移住者として支援できる仕組みというのがある方がよいのではないか。

Fさん

  • 私も岐阜から嫁に来たので、移住者と呼ばれることはないが、ここに来たくて来た人たちのことは移住者と呼ばれている。だから嫌と思ったことはないが、いつも取り残されているという気はすごくしている。

Eさん

  • 男性は仕事という名目で移ってくるが、そこについてくる女性は、何のつながりもなく、孤立してしまう。そこでデザインが好きといって友達をつくるかもしれないし、仕事につながりを求めると思う。2時間でも働きたいというのはお金のためではなく、社会や人とつながりたいのだと思う。
  • FさんがLOCOでやっている仕事というのは、実は場づくりで、孤立してしまう女性たちのつながりづくりをされているのだと思う。

知事

  • さっきからよく出てくる「家の女」と書く嫁とか、嫁ぐとか、家の中にいる家内という言い方ってあんまり好きじゃなくて、極力使わないようにしようとしている。
  • しかし、そういう雰囲気が滋賀にはまだまだ強くあり、そこに何か疎外感とか、何かつながりを求める女性たち、居づらさを感じる人たちは多いのかもしれない。

観光による地域の活性化について

Aさん

  • 地域に人が住んで活性化してくれていることが自分の生きがいだと思うので、やっていきたいけどこれを隣の家にも、隣の家にもみんな残った方がいいよとはやっぱりいま、言える状態ではなく、すごく難しいなと思いながらやっている。
  • 仕事が観光業なので、この甲津原に住んでいて子どもたちが何かメリットを感じられるかというと、せめて雪が降るところでスキーだけは無料で、いつでもできるよねということを残していきたいなと思い、いま甲津原は大人も子どもも全員シーズン券を無料にしている。
  • 同じように長浜と米原市内の全小中学校にも、冬休みに1万4000枚、春休みに1万4000枚のリフトの無料券を教育委員会から配ってもらっている。この地域に住んでいる子たちが、将来、スキーも好きだから地元に残ろうかと、一学年で1人でも2人でも残るきっかけがつくれたら、僕たちが仕事をやっている意味があるのかなと思っている。
  • 生まれてから、そして高校に行くまでの間は、この地域で子どもたちが多感な時期を過ごすことになる。自分たちの地域を知って好きになってくれることが将来、住むにはどうしようというときの選択肢に、ちょっとでもなってくれたらいいなと思う。

移住者の暮らしについて

Aさん

  • 長男が中学1年生なのですが、生まれたとき、14歳以下の子どもの数がゼロだった。地域おこし協力隊で来てくださった方とかにも、冬にそのまま仕事してもらえないかとか、うちで就職してもらえませんかとかってやってきて、いま12歳以下が12人に増えた。
  • 30数年前、僕が小中学生のころに全校7人とか8人しかいなかったんですけど、実はそのころよりも12人いるので結構にぎやか。

Eさん

  • 移住して来る人として、目立ってちょっと変わった人に来てほしいみたいなことを時々、直接言われる。「君たちみたいにちょっと変わった人に来てほしい」みたいなことを投げ掛けられてしまう。
  • 実際に定着すれば、私もただ生活しているだけなので、子どもは山でも遊ぶけど、もちろん滑り台でも遊ぶし、ただ生活がしたい。
  • 振興というのが目立つこと、ちょっと変わったことをすることではなく、安心してみんなが豊かに生活できることを続けていくことが、Aさんの地域のように子どもが12人になることにつながっていくのだと思う。

移住者視点の活用について

Cさん

  • 移住してこられた方は長浜を調べて、長浜の個性が何かを探してこられたというケースも多い。住んでいる人は、意外と長浜のいいところや問題を知らない。

Bさん

  • 私も湖北町生まれの長浜育ちでずっとここにいますけど、たぶん外部から来られた人の方が詳しいと思う。

Cさん

  • 長浜というだけでも、いい意味で北と南とで全然風合いが違ったり、暮らし方が違ったりする。それも長浜の色々な顔や楽しみ方、暮らし方や文化があっていいことだと思うが、知ろうという意識があまりないのかもしれない。

Eさん

  • 長浜の土地の人たちに私たち移住者の視点をうまく活用してもらえたらいいと思う。

観光の広域化について

Aさん

  • コロナで観光は苦しみ、海外からのインバウンドも含めて取り込んでいこうという中で、大きくなることがいいとは思わないけれども、食文化や方言、生活風習がこのようなエリアである、というものを海外に対して売り込んでいかないといけない。日帰りで奥伊吹スキー場だけで1日楽しめます、だけでは全然魅力にならない。彦根城、黒壁、時にはローザンベリーでイルミネーションも見られる、ということで2泊、3泊というツアーがつくっていけるので、観光の広域化していくことは必須だと思う。

米原駅東口の活用について

Aさん

  • 長浜駅前の再生も必要ですけど、米原もいま東口がなかなかうまく活用いただけていないと思う。
  • 十数年前から県有地と市有地、県であれだけの面積で開発をしていただいたにもかかわらず、いまなかなか動かない。もちろん県の財産、県民の財産なので一概に誰かにというわけにはいかないでしょうが、何かいま売却の想定されている金額もしくは貸し付けをされようとされている金額を大幅に減らしていただいてでも、地域の活性化につながるような提案をもらったところには、例えば10分の1でもいい、極論を言えば、ただでもいいので、全国からこの新幹線の駅前の有効活用案みたいなものを、プロポーザルで出していただくようなことで何か面白い動きができないのか。
  • 例えば、長浜も米原もこれ以上人口が減少し、新幹線の駅前としての価値がなくなった30年後、50年後に活用案を出しても使えないのであれば、今のうちに駅前をぜひ活性化していただくようなことを。

湖北の病院について

Eさん

  • 国からも重点支援指定を受けている湖北の病院問題も心配だと思う。これから湖東、湖北ブロックで米原も一緒になって考えていかないといけない。米原市民の方にも彦根市民の方にも長浜市民にもすごく重大な問題であり、これがずっと進んでいないというのは、生活の安心というところにすごく関わってくると思う。

意思決定に関する女性参画について

Dさん

  • 何かの意思決定や決めてものを動かしていくところに女性の姿があまりにも少ないんじゃないかと思う。
  • 特に湖北はそういう状況が多いのではないか。結局いろいろな意見とか声を上げたところで、意思決定される方々が、例えば、考え方次第で結局振り落とされるというところは多いのではないか。
  • 長浜市とか湖北地域、いろいろな会議体があるが、これから20年とか30年とかを考え、何か意見を出して進めていくときにもっと女性も入りやすく、ちゃんと意思決定に参加することを考えていく必要がある。

知事から

  • たくさんのお話を聞くことができたので、もう一回、自分なりに整理してみたいと思っている。
  • 高校や中学校は可能性があると思うので、ここをもっと元気にしたい。
  • 地域の資源を使った観光、林業や環境に配慮したものづくり等、地域に根ざした産業をいかにつくっていけるのか。また、地域に暮らす人が持っている感情や悩みのようなものに寄り添える、分かってあげられる湖北をつくれるといいと思った。
  • 私たちも移住者と言い過ぎていたところもあり、男性中心で男性側に偏っていて、ややもすると結婚してこっちに来たのだから地域の行事に従ってほしい、みたいなところがあり過ぎたのかもしれない。それをよしとしてきた文化もあったのかもしれない。
  • いま育っている子どもたちは大人の姿を見ていると思う。それを見て、結婚して滋賀にいるのはやめようとか、滋賀で子育てってちょっとしにくいなとか、もう子どもを持つこと自体が大変そうだからやめておこう、というようなことをつくり出しているのでは、とお話を聞きながらすごく思った。
  • 何をすればいいのか、何を言えばいいのかというのは今すぐ思いつかないところもあるが、本日は本当にたくさんのヒントをいただくことができた。感謝申し上げる。