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第77回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手伊庭内湖の自然を守る会の皆さん

知事から

今日はこういう機会をいただきましてありがとうございます。

 この伊庭内湖をはじめ、琵琶湖をお預かりする県にとっては、この内湖の存在というのはものすごく大事でして。生き物のためにも、また水のためにも、ここでワンクッション置けるかどうかというのがとても重要。

 ただ、一方で、この内湖を、後でお話を伺うんでしょうけど、いろんな課題、問題等も出ているようでして、お守りいただく皆さんにいろんなご苦労もお掛けしているんじゃないかなと思います。今日はそのお話をしっかりとお聞きして帰って、今後の対策に生かしていきたいと思います。限られた時間ですけどどうぞよろしくお願いいたします。

 

参加者の皆さんからの自己紹介

Aさん

 会長を仰せつかっています。琵琶湖の水質汚染を測定する機械メーカーで仕事していた関係上、環境に対して非常に興味があり、入らせていただきました。この中では若い方で、まだまだよく分かっておらず指導していただいている最中でございます。

Bさん

 この会に入ったのは、もう10年ぐらいになるんです。知り合いの方に誘われて、そしてこの伊庭内湖の昔のありようを覚えていますので、できればそれを継続していきたいなと。そんなふうに思っております。

Cさん

私もこの会に入らせていただいて13年です。伊庭の里湖(さとうみ)づくり協議会の会長もやらせてい ただいています。

 私が生まれたのは、乙女浜というとこですけど、子どものときから伊庭でシジミ採りしてたり、いろいろしていましたので、こういった昔の伊庭内湖を取り戻したいなということでやっています。

Dさん

 私は46年間勤務した会社では、滋賀県では3番目に水の使用量が多く、その当時から水を何とか処理せよということで対応していました。退職後は地元の内湖がもっと美しくならないかという思いの中で、幸いこの会がありまして、入らせてもらいました。

Eさん

 僕が一番新参者で2年前に入会させてもらいました。今、自治会の会長をさせてもらっています。その関係で伊庭の湖のことについてもできるだけ知っておかないと、と思い、今日は寄せてもらいました。

Fさん

 私は京都から転居して来た人間ですけれども、伊庭内湖周辺で鳥などの写真を撮っていたところ、会長さんに誘われまして、入会しました。

Gさん

 当年とって82歳になります。伊庭の小中之湖の干拓から大中の干拓まで見て、今日に至っています。子どもの頃は魚を捕るのが毎日の仕事で、米のないときはモロコを食べて生活していました。

Hさん

 私は、当会を立ち上げた一人でございます。ちょっと時間をいただいて、会の説明をいたします。

「伊庭内湖の自然を守る会」について

Hさん

 平成16年10月、主立った者7人が構想を練り始めまして、平成17年2月19日に、構想、何をやるのか、目的、会員の募集をどうするのかといったことを、この場所でいろいろ相談しました。

 当初は19名ほど集まったんですが、それでは少ないということで、1人で3人ぐらいの会員獲得の目標を立てて、5月には31名まで増えました。

 目的は、伊庭内湖をこよなく愛し、その自然環境を守ろうとする仲間を増やし、ラムサール条約登録湿地である琵琶湖、ひいては能登川町の自然環境の保全に寄与することとして、活動を進めてきたわけでございます。

 この守る会を立ち上げたのはいいのですが、財源がないんです。会費だけなんです、当初は。いろんなものが必要なのですが、例えば出張するにしてもそれを賄う財源がないことから、当時の中村東近江市長にちょっとお願いしたんです。そうしたら、中村功一さんから「里山づくりがあるんやから里湖づくりも考えてみるべしやな」と言われました。

 里山があるんやから里湖も当然やと。山も大事やけど湖も大事やと。鈴鹿山系から琵琶湖までが東近江市ですからね。この東近江市にも東近江市環境基本計画というのがございますので、それを基に伊庭の里湖づくり協議会というのを発足していただきました。

 市の環境政策課を窓口に、この伊庭内湖を囲む自治会、小中、大中、能登川、土地改良区、そういう人たちに声を掛けて、企業は環境関係に従事されている、また協力されている、共存されている、そういう方にも声を掛けながら形をつくっていって、いろいろご援助を受けました。「お~いお茶」の伊藤園さんからは、何かやるときにお茶をもらったり、コクヨさんにもヨシでつくったノートをもらったり、当初はそういうなんで活動を進めておったんです。

 そういう中でどんどん活動も大きくなってきました。この活動については現役の皆さんに進めてもらっていますので、その人たちに話してもらいます。

 去年新しく会長、また事務局もつくっていただいた。そのときに知事が来ていただいた。大変嬉しく思いました。ちょっと激励していただいて、より発展するように頑張っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

知事

 里湖っていいですよね。里山があるんやから里湖があっていいやろうというのは、そのとおりだと思います。また、立ち上げからずっと続ける中で、広げて、充実させようと思ったら並大抵の努力では済まないのもよくわかります。

 

活動の内容や課題など

Aさん

 とにかく環境維持が一番大事と思っております。この辺りは、ヨシがものすごく茂っておりまして、なかなか景色もいいところなんですけれども、逆に災いするところも一部あって、湖岸のヨシの生えているところや、そこら辺にたまってくるゴミなんです。清掃は月に1回やらせていただいております。

 今はだいたい27名で運営しているんですけれども、出ていただける方はかなりの参加率でやっています。まずそれが一つ。あと、これもまた最近なんですけど、内湖に生えている藻の回収というのがございます。

 本来、日本固有の藻というのは、ここまで茂らなかったんでしょうけど、外来種というのは、たちが悪くて、ここの湖の水から土手を通って田んぼの中まで入り、農業をやっておられる方は非常に困っておられます。撲滅のためには、そこら辺の小さい芽まで摘まないといけない状態で、石垣のちょっとしたところに付着した芽も除去しております。それもほぼ月に1回、やっております。

 その外来植物の駆除につきましては、年間契約で伊庭の里湖づくり協議会の委託事業という形で行っており、これが当会の経済的、財政的な基盤の一番大きな柱になっているところです。

 その他、東近江市が行っている環境キャラバン隊に参加して、幼稚園とか保育園に皆さんと一緒に、環境ってこんなもんよ、こうしたら悪いよと教えていくような活動にも取り組んでいます。

 野鳥もすっかり数が減っております。そういう野鳥を観察する会の皆さんの中で、興味のある方にも参加いただいている状況です。

 また来週は、東近江市主催の釣り大会にも参加し、外来魚のブラックバス、ブルーギルの撲滅運動も一緒に進めています。

大量の水草の繁茂、湖底の汚泥化

知事

これがその写真ですか、ナガエツルノゲイトウとか、オオバナミズキンバイとか。

Aさん

はい。それが実際に生えている写真でございます。

 もう一つ、これからの季節にきれいな花が咲くホテイアオイや実がとげとげの、いがぐりみたいなヒシが、びしっと水面を覆い、係留している舟の周囲も埋まります。去年はタイワンドジョウが酸欠でかなり浮いていましたので、水草を除去することもやっております。なお、ホテイアオイは外来ですが、ヒシは在来種です。

 また、内湖の底がかなり汚泥化していますので、なかなか水中に入って取るというわけにはいかず、田舟に乗船して除去しています。

Gさん

 湖底には1メートルから2メートルぐらいの間で泥が埋まっているんですよ。上から見ていると浅いですが、中に入ると背の立たない所もあります。以前に、一度泥上げをしたのですが、年月が経過しており、また相当堆積していると思います。

知事

回収した水草の処分はどのようにしておられますか。

Aさん

回収して東近江市が焼却してくれますが、何百キロというときもあります。

知事

国体では、ここは何の会場に当たっていましたか。

Aさん

カヌー会場です。

ただ、この地域は地形的な特徴がございまして、常に風が比良山の方から吹くため、浮遊しているごみが、淵に全部たまってくるんです。

Gさん

当初は、相当なゴミがありましたが、かなり減りました。ただ、今でもペットボトルなどは多いです。

Bさん

プラスチックと缶も。

知事

 でも、ここでそうやって頑張って除去していただいているお陰で琵琶湖に流入せずに済んでいるともいえますね。

Eさん

 ヒシとホテイアオイは、北風に乗って全部伊庭の方に流れ着いて来る。それと同時に、コウチュウという虫が湧き、それが伊庭の田んぼや畑の方に飛んでいき、ビニールハウスに張り付いてしまいます。

 ちょうど水草が11月に腐ってきたら、そこで卵を産んで、それが飛んでいきます。葉を食ったりするので、ヒシの葉をかいつまんでしまうんです。それから大きくなって伊庭の方に来るんです。

 

渡り鳥(オオバン)による食害

知事

鳥なんかも減ってますか。

Gさん

オオバンは多いですね。麦畑が苗のときに半分以上食い荒らしていますね。

Bさん

 京都では駆除してもいいのですが、滋賀県では駆除できないみたいで。絶滅危惧種に近い渡り鳥で、越冬のため中国から飛来し、5月のゴールデンウィークの前後くらいに帰ります。11月の初めに麦を播種すると、12月の中旬頃から芽が出てきますが、その青い新芽を食べてしまいます。

知事

それは大変ですね。

Bさん

 今の水際作戦で網を張っておいても、それを飛び越えたり、また、農業組合でも対策したんですけど、何の効果もないです。2、3日は様子を見てますが、慣れてきたら、もう全然ダメです。

Gさん

麦の芽は、田んぼの一反の半分まで、ざあっとなくなっているんです。

Hさん

要は草の若葉を食い尽くしてしまうんです。そのうちの一つが、いま話に出た麦の芽です。

知事

水草は食べないのですか。

Hさん

食います。若芽は食います。

Gさん

ホテイアオイとかは食べています。

Fさん

ホテイアオイに沢山止まっていたかと思うと、芽がなくなったら、陸へ上がって麦を食べとる。

Hさん

雑草も若芽もみんな食べてしまうのです。

知事

オオバンを滋賀では駆除できないのかについては、ちょっと調べてみます。

Bさん

 今年は、この伊庭で、特にオオバンの被害が大きいです。この伊庭内湖際のところに、今年は、3年に1回の麦の作付けをやっていますので。オオバンは夜中なんかにぱたぱたと歩いて。200メートルぐらいまで近づいてみると足音で分かりますが、もっと近づくと逃げて、行きすぎると、また、戻ってくる。

Hさん

他のカモ類がほとんどいない。もうオオバンばっかり。

 

 

 

 

ゴミの漂着

Dさん

 先ほどからも出てますが、発泡スチロール、ビニール類、空き缶、ペットボトルといった廃棄物や、今国際的に問題になっているマイクロプラスチックが、琵琶湖や内湖にどんどん入ってきている。一部のゴミは減ってはいますが、掃除をしてもしてもなくならない。

 やっぱり今一度、不法投棄というものの取締とか、ゴミの意識の啓発とかということも、これから大事になってくると思います。我々も、もっと活動して、それが成果として見えるようにしていかないと。

知事

どうですか、10数年やってもらって、ごみは増えましたか、減ってきましたか。

Dさん

以前と比べると、減ってきたとは思いますが。

知事

 以前よりも減ってきたということは、それは、もう皆さまの活動のおかげですね。それをもっと多くの人に知ってもらうための、啓発なり呼び掛けをしていく必要がある。

Aさん

 ここは閉鎖水域なんですよね。琵琶湖から直接入ってくるというよりも、川から流れてきます。やはり東近江市としても、滋賀県にもバックアップしていただきたいと思うんですが、法令の整備までは大変なので、やはり啓発をやらない限り、ゴミは減らない。

 最近は、魚を結構捕りに来られるんですよ、3月、4月は、モロコつかみで。数が多いので、釣りじゃなくて、掬うんです

Dさん

 モロコは帰ってきましたね。あとは、この4月1日から5月31日までは休漁期間になっていて、その成果が十分出ているのではないかなと。

Aさん

 地域としての取組をうまくやらないと。学校教育の中とかでも啓発活動をやっていただきたいなと思っております。

Dさん

 ペットボトル、ビールの缶なんかは、1缶持ってきたら10円とかね。少しお金が高くついても、こういう形で回収しないと。

知事

仕組としてどうするかですね。

Dさん

 缶でもリサイクル、リサイクルと言っていますけども、リサイクルする方がかえってコストが高くつくということもあるし。

知事

なるほど。そういうゴミの調査なんかも、一回やってみてもいいのかもしれない。

 守山の赤野井湾は、こちらと同じように閉鎖性水域で、大量の水草が繁茂し、ゴミも滞留していたため、どのようなゴミが多いのか調査に入りました。それをメディアで取り上げてもらい、もう少しきれいにしないといけないという機運を高める、そういう活動もやっています。

Bさん

 この伊庭内湖は、閉鎖水域であることと、農業用水という用途のために琵琶湖との間の樋門で水位を調整し、一定の深さに保っています。しかし、梅雨になりますと、樋門を開けるため、やっぱり琵琶湖の方からもごみが入ってきます。

 それとさっき浚渫の話がありましたけども、この大中の方へ今は用水で取った水を入れているのですが、それがもう真夏の3時ぐらいになったら、水温が27、28度になるんです。当然、流れて入りますので、水温は下がりますけど、稲のためには、やっぱり夜間と昼間の温度が10度以上の差がないとよくないんですね。

 なぜ、水温が下がらないかというと、水深が浅いためです。やっぱりちょっと浚渫してもらって、水深を深くしてほしい。

 子どもの頃は、伊庭のところから泳いでここまで来て、シジミを採って、それで帰ったんです。ここら辺は元々砂地で、すごくきれいで、シジミもいっぱい採れたんです。今はもうどろどろです。大中の干拓ができてから、もう全然ダメ。

Cさん

昔は、泳いで下を見ると、水が湧いていました。地下水もたくさんあったものです。

Bさん

 水温が上がっても、樋門は閉めているため、水が入れ替わらず温度が高いまま。やっぱり浚渫して深さを保って、そして冷たい水を送らないと駄目です。

知事

 なるほど。カヌー大会用の伊庭内湖としての深さは、一定保てているんですね。ただ、今おっしゃった、水温をよりよくするための浚渫というのは、あまり考えていないかもしれない。

Aさん

 先ほども申し上げていましたけど、苦労するのは、ものすごい量の藻をきれいに取るということです。もう手作業では限界です。滋賀県の方で、定期的に業者さんに依頼して除去してもらっているのですが、それでも1カ月もしたら、またすごく増えてくる。

Eさん

大掛かりに船で回収しておられますね。

知事

大掛かりといっても、大したことはないんです。

 Cさん

あの船も、船幅が広すぎて奥の方には、入っていけない。ある程度水深もないと作業もできない。

知事

今年度、琵琶湖環境部では何か対応を考えてるのかな。

琵琶湖環境部

とりあえず、試験的に琵琶湖の浅いところで、刈取船での作業をやってみようかと考えています。

Hさん

 小さいボートもあるんですよ。ただし、そのボートを持ち運びするのには、10トントラックが必要ということです。できたら小さいボートを係留してもらっとくとか。

 一番困るのは、先ほどお話がありましたように、ホテイアオイとかヒシで近寄れないんです。ナガエツルノゲイトウ、これも問題なんです。節の途中で切れると、そこから新たな芽が出てくる。

知事

 千切れて、どこかへ流れ着くと、そこからまた殖えていく。しかもヨシなんかあると、その中に定着してしまいますね。

Hさん

まず、小さいボートを出して、近くの水草を駆除し、その上でここら辺の和船でも入って取るという人海作戦をやらないと、追い付かないと思います。

 

知事から

 ありがとうございます。来てよかったです。オオバン、ゴミ、水温、浚渫、そして水草を刈り取る船の話。たくさん現場でお話を聞かせていただきましたので、どうしたらいいか、我々も一緒に考えたいと思います。

 ただ、先ほどもおっしゃってくださったように、それでもゴミが減ったり、モロコが捕れるようになってきたとかいうのは、皆さんの活動のおかげさまですし、やっぱり諦めたら終わりだと思いました。継続すれば、それが成果につながることの証左だと思うので、是非これからも、ご自身のお体をご自愛の上、この活動を頑張って続けていただきますように、よろしくお願いいたします。

 本当にありがとうございました。