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第64回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「油日・上野共有生産森林組合」および「コープしが」の皆さん

「油日・上野共有生産森林組合」および「コープしが」の皆さん

「油日・上野共有生産森林組合」および「コープしが」の皆さんと対話を行いました。

両団体は、琵琶湖森林づくりパートナー協定(※)を締結されており、きれいな水・地球温暖化防止のために整備された『コープの森 あぶらひ』において、苗木を一緒に植え、保育活動を行っておられます。

今回は、『コープの森 あぶらひ』の現地視察の後、両団体の皆さんと三日月知事が、企業等と森林所有者が一体となっての森づくりの推進・滋賀県の森林づくりに必要な取組等について意見交換を行いました。

※森林を次世代に健全な姿で引き継ぐため、環境運動に熱心な企業・団体等の支援を得て、地域と協働で本県の森林整備の推進を図ることを目的とした活動。

知事から

今回の対話にあたって

●今回で11回目となる短期居住、今日まで五日間、山の向こうの多羅尾に住まいを移しており、今日は油日に入らせていただいた。信楽では山の課題や可能性について話し合い、昨日は治山施設や造林施業の取組等も確認をさせていただいた。

●今日はこの、油日・上野共有生産森林組合の皆さんと、またコープの森ということで、コープしがの皆さんと連携協働しての森づくりの取組についても学ばせていただく機会であり、しっかり皆さんの御意見を承りながら、今後の方策について一緒に考えていけたらよいと思っている。

●再来年、天皇・皇后両陛下にお越しいただき、全国植樹祭をこの甲賀市内、鹿深夢の森を主会場で開催するため、そこに向けてもしっかりと準備していければと思っている。

両団体の皆さんから

油日・上野共有生産森林組合の取組について

●古くは江戸時代から油日と上野は共有の林野を所有して経営しており、組合として発足したのが昭和47年。過疎化の影響か、発足時当初394人であった組合員が332名ということで60名ぐらいは減った。

●面積としては、全部で221haのうち、180haを私達が管理しているといったようなところ。場所は先ほど知事が行かれた、三重県の県境までの山である。

●作業としては、夏の7月に私たち組合員が林道の草刈り、秋に間伐と枝打ちを行うのが主である。

●私たち組合員は高齢の者が多く、地元の40歳、50歳ぐらいの若い人が最近は草刈りに出てきてくれるのでありがたく思っている。

●平成25年の10月にコープさんと同協定を結び、今年で7年目を迎える。この間、資金援助をいただき、面積として60ha余りの森林整備を7年間で行った。内容は間伐、枝打ち、搬出、間伐、皆伐等。組合の経営については、平成24年までは右肩下がりの状態で、大変厳しい状態となっていたが、平成25年から協定を基に助成金をいただき、横ばいという状態まで持ってくることができた。

●今後、5年、10年、どのように組合運営をしていったらいいのか、皆で頭を悩ませながら検討しているところ。

生活協同組合コープしがの取組について

●滋賀県内を活動エリアにする県下最大の消費者組織で、現在約20万人の県民の方に加入頂き商品やにサービスを利用いただいている。

●商品やサービスだけではなしに、協同して創ろう笑顔あふれるくらしをテーマに、くらしを良くしたい想いをもとにして様々な取組をしており、その一つとして森林を守ることがびわ湖の保全につなげようと琵琶湖森林づくりパートナー協定を締結させていただいている。

●この取組については、2012年度に余呉の中之郷生産森林組合、2013年度に油日・上野共有生産森林組合さんと締結をさせていただいており、10年間で1千万円の資金の支援を。決めています。ただ資金援助をするだけではなく森林整備をすることで、森林所有者や地元の人と信頼関係を築きながら、森林保全活動に協力するとともに交流を通して互いに成長していくことを目的とし、パートナー協定を結ばせていただいているところ。

琵琶湖森林づくりパートナー協定締結に伴う「どんぐりプロジェクト」の取組について

●先ほど知事に現場(コープの森)を見ていただいたが、平成28年に、整備事業計画にコープ生協組合員会員が関われる森に触れる機会をつくれないかということで、急斜面の中にありながら比較的フラットで、当時、松枯れが非常に深刻な状況になっていたあの場所を皆伐し、「どんぐりプロジェクト」をスタートした。

●ドングリの木はクヌギの木ということで、シイタケのほだ木にも使え、経済性が高く、動物の餌にもなるということで選ばれた。ただ植樹するだけでなく、生協組合員がそれぞれの家庭で10カ月間ぐらい苗木を育て、それをこの山に植樹するという取組である。

●「いつになったらドングリの実がなるやろう」、あるいは「どのぐらいの太さになったらシイタケの原木として使えるのかな」というような話が出ている。山の木はなかなか1年、2年で結果が出るものではないので、楽しみに待っていただきたいなと思う。

●自分は実際に「どんぐりプロジェクト」に参加した。山に植えた時は、本当に小さかった木々が、今日見たら自分の背と変わらないぐらいに大きくなっており、成長を感じた。

●ドングリがなってくるのは、植林した当時は小学生の子どもたちがちょうど成人する頃になると思う。それまでの間で、「ちょっと今どうなっているんだろう」ということを体験いただくような機会づくりというのも今後考えていきたいと思う。

●その他にも、生協組合員向けのワラビ採りの企画を実施している。組合員一人ひとりに、環境を守っていくことの大切さを分かってもらうためにも、そういう企画を共に続けていけたらいいと思う。

●それらの取組を通じ、山のことを気にかけている生協組合員がたくさんいる。今後も、森林に関わる人々と普段は関わりのないような人々との橋渡しを続けていきたいと考えている。

●一方で、一般市民に山に触れていただくという意味では、楽しかったというだけではなくて、木を育てることの難しさも感じていただきたいと思っている。森が水源となり、川を通じて琵琶湖に水が流れ注ぐ。大切に育て、植えた木々も、虫・動物の被害や自然災害にも遭う。その中で10年、20年単位で森を育てることの大切さ、それが琵琶湖を守ることに繋がっていくということを感じていただきたいと思う。

課題と今後必要だと考える取組について

●平成25年の台風18号の際は、林道の崩壊が多数あった。このあたりの山は、急なところも多く、花こう岩で岩崩れしやすい場所であるので、大雨があると山が痛んだり、作業道が崩れたりする。もちろん木を育てるのも大事だが、道がないその後の手入れもできないので、今後はそういった補修作業の必要性も増してくると思う。

●台風18号で、あちこちの林道が痛んだ際は、県の補助とか、コープしがの援助を受け、きれいに直していただいたが、それ以後も集中豪雨等であちこちが陥没している。簡単な補修については組合員で何とかやっているが、人手が全然足りていない山もたくさんあるので、これは早急に直していかないといけない。まずは道を守るということが大切だと思う。

●組合発足後、40年以上経過した。本来であれば、あとはどんどん木材を伐採し、計画的に販売を行っていくはずであるが、なかなか木材需要が少なく、採算がとれない。安定的な収入の確保、厳しい木材需要の中でどうしていくかが大きな課題になっており、頭を痛めているような状況。これから先、先祖から残して来たこの山を後世にどうやって引き継いでいくか非常に不安があるが、残された山をわれわれで守っていこうという気持ちはある。林業だけでなく、農業や水産業にも言えるが、どのように次世代に繋ぎ、後世で生かしてもらうのかが大切だと感じている。

●経済的な部分なので、木材の値段はなかなかコントロールできない。そうであれば、末端の値段は変わらないが、どうやってコストダウンするかが重要。出荷する経費を安くすることによって、山に返ってくる金額を増やすというのが1つ。

●40年という話が出たが、もう20年もすれば、四方無地のいわゆる「ひばり御殿」が建つような材が採れるかと思う。しかし、そういった建物の需要がない。建築の建て方が変わってきている。技術の進歩により、建て方が楽になった分、構造さえできれば後はクロスを貼ったりといった、木が見えない建て方が多いので、木の質、例えば、木に節があろうが関係がない。要するに、材がそれほど必要とされていない。

●最近はヒノキですら、いわゆる「かつらむき」をして、合板に使おうかというような話も出てきている。そういう時代の流れもあるので、上質材と言いながらも、そもそも需要がないと、それこそ供給する側の意欲がなくなってしまう。

●環状道路等、材を搬出しようにも、林道の整備もなかなか大事になる。最近は集中豪雨も多く、山の荒れ方がかなり酷く、何とかならんものかな。だいたい川に沿って林道があり、崩れやすく被害を受けやすい。組合でも色々と対応はしているが、せっかく補修してもすぐにまた大雨で荒れてしまい、寄りつけないというところが何カ所もある。何かよい手だてがないものかと考えている。

●山に舗装は似合わないかもしれないが、丈夫な林道という意味では、必要な個所を舗装する方がいいのかもしれない。それはそれで維持修繕費等がかかってきてしまうが。

●この地元に油日小学校があり、子どもが山へ行き、木を切ったりする「やまのこ」事業がある。私たちも何人か出向き、実際に立っている木を切って倒したり、その枝を払ったりところを見てもらう。素晴らしい取組であり、山に触れ、感じ、関心を持っていただき、山や林業が抱える問題を理解してもらうことが大切だと思う。

知事から

対話を振り返って

●お話をお聞きし、2点、大切だな、今後考えていかないといけないなと思うことがあった。1つは長年に渡って育んだ木を、需要拡大の中でも安売りせずにどう使うのか。そのことがまた次の世代に、こういった森林組合さんの運営にも繋がっていく。

●もう1つは、生産森林組合さんとコープしがさんとのこのような関わり、繋がりってすごく大切だということ。組合の収支にとって大きいのはもちろんだが、コープの組合員さんは色々なところで生活されていて、もちろん山の人もいれば、都市部で山に入ったことすらもない、木なんて植えたことがないという人が多いとして、そういうきっかけづくりにこういう「コープの森」がなっているとすれば、こういう取組をこの油日・上野以外にも、何かうまく条件が合うところで繋いでいけたらいいなと思う。

●「やまのこ」に御協力いただき感謝申し上げる。

●現在、「やまの健康」の取組をしているが、やはりキーワードは「関わること」。油日や上野の人以外にも、山に関わってもらえるような取組が重要かなと、お話を聞きながら思っていた。いい木が育っていると思うが、そんなに売れないものなのだろうか。

●林道の維持について、もちろんお金の問題もあるが、県としても知恵を出し合い、何度も崩れ、修繕が必要ということがないようにしていかないといけないと考えている。甲賀市も広いのでなかなか大変だが、もう少し目配りできるようにしないといけない。

●こうしてみんなが協力し合い、山に人の力や手が入る取り組みを、僕らもどんどん進めていきたいと思う。同時に、せっかくつくってもらったいい木を、色々な場面で使ってもらえるような取り組みをぜひ進めていきたい。おもちゃや家もそうだが、例えば、これから建て直しが必要な公民館、学校、保育園、公共施設等について、できるだけ県産材を使って建てられるように出来ればと思う。